―ring down 2―

「青島、着いたからちょっと・・・」

引き剥がそうと腕を掴んだが
打ち震えるように、青島は室井に身を擦り寄せたままだった。
離れたら死んでしまうとでも言う様に、肩に顔を埋め、首にしがみ付いてくる手に力が籠もる。
打って変わって大人しくなった青島は、海岸からずっと、俯いたまま甘えるように室井から離れようとはしなかった。


口元にひっそりと微苦笑を滲ませ、室井は無理に放そうとはせず、そっと抱き寄せる。
ぎゅううとしがみ付かれたままに、片手で扉を施錠した。
チェーンもロックする。
手探りで玄関ライトのスイッチを探す。
ぼんやりと橙色に浮かび上がる天井を見つめながら、室井は両手を青島の腰辺りで組み直し、玄関脇の壁に背中を預けた。



――あれから。
ずぶ濡れの二人はタクシーを拾い、室井の官舎へと戻ってきた。
あまりに悲惨な姿になっている二人は、通行人にも、タクシーの運転手にも、かなり怪訝な顔をされたが
警察手帳を見せて何とか無理を通した。
青島の自宅へ送り届けるのが筋だったのだろうが、今の青島を一人にしておける気には到底なれなく
ましてや本部へ顔を出させる状態でもなく
なにより、やっと再会できた魂の片割れを、ここで実質的にもむざむざと手放すことが出来ず
ならば、近くのホテルでもと過ぎったが、ここ数カ月、青島はおよそホテル暮らしだったことに思いを馳せ、妙な対抗心が湧き上がり――
室井は、思案の末、自宅の官舎へと連れ帰った。



磯の香りを漂わせる重たいコート越しに、海に入っても取れなかったオーデパルファムの残り香が微かに鼻孔を吐く。
浸みついたその香りが、今の青島の全てを物語っているようだった。

宥めるように背中をゆっくりと擦る。

今一歩遅ければ、確実に掴み損ねたギャンブルのような賭けだった。
願って止まなかった愛しい存在が腕の中にいる幸福を、この上なく貴重なものとして噛み締める。
切なさを忍ばせるこの数カ月の哀惜と後悔が、霞んだ。
今頃になって、ギリギリの所で掴み取れた幸運に、間に合えた実感に畏れすら抱く。
この温かな余韻が手の内にある間は、俺の人生も捨てたものではないと思った。
自分たちは道を間違えなかったのだ。
この腕に抱き締められる現実が、それを証明している。


ほぅ・・・、と、大きく安堵の溜息を吐く。

室井もまた、ここにきて、ようやく肩の力を抜いた。
未だ湿って束になっている青島の髪に指を差し入れ、頭を自分の肩に押し付ける。
濡れて粗末な身形になっている青島は、されるがままに室井に身を預ける。
まるで、人形のようだと室井は思った。


「このままじゃ風邪をひく。服を替えないと」
「ごめん・・・・なさい・・・」

柔らかく抱き留め、内緒話をするように耳元へ直接言葉を吹き込むと
室井の仕草に反応し、青島の微かな声が室井の頬を掠めた。


「いい。何も謝るな」

くしゃりと後髪を鷲掴みにする。
お互い、海水に浸り全身ベタベタだ。
シャワーでも浴び、温めた方が良いだろう。


「ちょっと・・・放せ」
「ヤ、だ・・・・」

泣きそうな震え声でそう言い、青島が室井の首筋に頬を擦りつけるように、顔を埋めた。
きゅっとしがみ付かれて、甘い温度がクラリと空気を酔わせる。


さっきまであんなに突っぱねていたのが嘘のようだ。
意地を張って、警戒心に夢中だった分、傷心に疎く、その反動も大きいのか。
糸が切れてしまったのかもしれない。

そう言えば、普段の青島は、ここまで感情溢れるスキンシップこそしてこなかったものの
何処か人に懐くような仕草を見せる人間だった。
すっかり化けの皮が剥がれて、今は人形みたいではあるが、これも見たことがなかっただけの、青島の一部だろう。


そっと目元を緩めながら、室井は、青島が今、何の警戒も上辺も取り繕っていないことを感じ取る。
剥ぎ取られた後に現れた、警察官でも社会人でも、室井と熱い約束を交わした同士でもない、ただの青島俊作がここにいた。



ポンポンと腕を宥めるように叩いて促し、二三度、擦る。

「とりあえず、上がろう。何か出す。・・・だから離れろ、そんなにしがみ付くな」

ふるふると、室井の首筋に顔を埋めたまま、青島が嫌嫌をする。
愛しさ溢れる想いを隠し、口調は努めて冷静さを保つ。

「風邪まで引くつもりか、ばか」



視線を彷徨わせ、どうしたものかと逡巡した後、靴を脱ぎ、室井はおもむろに床に上がった。

強行手段に出る。
抱えたまま引き摺るように青島を部屋へと招き入れた。
元々青島は靴を履いていない。
海に飛び込んだ時、失くしたようだった。

リビングの扉を足で蹴飛ばし
ぶら下がるようにひっついたままの青島と部屋の奥へと入っていく。
その腰に片手を回し、ガスファンヒーターのスイッチを入れた。

ゴォォという温風が排出口から吹き出し始めると、ようやくお互いの身体の状況が予想以上だったことを知る。
少し高めの温度に設定を上げる。


「着替えた方がいい。寒い・・・っていうか気持ち悪くないか?」
「・・・・・」

問い掛けるが、青島は室井の首筋に顔を埋めたまま、やはり動かなかった。
室井は、もう多くを聞かず、青島の好きにさせたまま、黙々と青島からコートを剥ぎ落とす。
海に浸かり、ぐっしょりと重くなっているコートは、支えるものを失い、どさりとフローリングへと落ちた。
されるがままになっている青島を良いことに、そのままジャケットも剥ごうとしたが、今の濡れそぼった状態では、脱いだ方が寒いかもしれない。

ボタンを外しただけで脱がす手を止め、今度は、自分のコートを近くに脱ぎ捨てる。

そのまま、室井は膝を折った。

案の定、室井の身体に従うように、青島もまた、しゃがみ込んでくる。
お互い無言で抱きあったまま、崩れるようにフローリングへ腰を下ろす。
後ろ手に身体を支えて腰を落ち着けた。
靴下を両足共、脱ぎ去り、部屋の隅へ放り投げる。ついでに、青島の靴下も手を伸ばして引っ張り上げた。

濡れたために、パラパラと落ちてくる前髪を片手で掻き上げ、室井は青島を抱え直す。
モーター音だけが室内を満たした。



しん・・・と静まり返った部屋に、ファンの音が静かに響き渡る。

――嘘みたいだ。
数ヶ月前、同じ部屋の同じ場所で、決して抱き締めてはならない存在だと思っていた。
寝ているどさくさに、身勝手に一度、衝動で抱き寄せたあの秋の夜。
最初で最後の、哀しい抱擁だった。
それが今、隙間がない程、二人は密着し、二人の距離はゼロとなっている。
お互いの意志で。



月明りが天まで満ち、部屋を青藍に彩り浮かばせる。
麗かな春霞の夜だった。

室井は眼のやり場にも困り果て、天井を見上げる。


「その、腹、減ってないか。身綺麗にして・・・・酒でも呑むか」

苦肉の策で、ありきたりな言葉を発してみるが、今の青島からは返事はなかった。
それさえ今は嬉しい。
社交術に長けている青島は、必ず気の良い返事を返し、センスある言葉で取り繕ってくれた。気を使ってくれていた。
こんな風に、空気すら読めない態度は、青島から室井への遠慮が消えているということだ。
もし、申し訳ないという気持ちが少しでもあるのなら、こんな状態でさえ、身を犠牲にし、感情を殺して
青島は室井に付き合うだろう。


その消えさせた切欠を思えば、胸が痛み、室井は柔らかく青島を自身へと凭れさせる。

「おまえの声を、聞きたい」

黙ったままの青島の髪をくしゃりと撫でる。
ふと、あの秋の夜、寝ぼけ眼で青島が言った言葉を思い出す。
室井に褒めてもらうのが一番嬉しいと、言っていた。


そっと腕を回し、胸に抱きながら、後頭部を見下ろし呟く。

「随分・・・頑張ったんだな。よくやった」

子供をあやしているようだと思いながら後頭部を見ていると
ピクリと青島が緊張したのが手の平から伝わった。

「今じゃなくていいから・・・・いつか・・・。いつもみたいにまた笑ってくれ」
「・・・・っ」
「君が笑ってくれると俺は嬉しい。・・・ホッとするんだ。君の笑顔が見たい」


競り上がる感情を堪えているような嗚咽が耳元を掠める。
細い青島の髪が、室井の頬を擦った。

「・・・――て」
「・・・っ」

室井の身体が瞬間的に沸騰したような気がした。
思わず、回した腕に力が籠もり、強く抱き返す。

―もう少し傍にいて・・・

「ああ・・、大丈夫だ・・・っ」
返す室井の声が、掠れた。




ぎゅっと目をつぶり、力の限りに抱き締める。

青島の想いが、言葉が、直向きなほどに、愛しく、切ない。
同時に、それを喜んでいる自分を意識し、複雑な自我が苦い痛みを胸に刻む。
それは、初めて青島の口から聞く、直接的な室井へと向けられた言 葉だった。
今、それをどんな想いで言っているのか。
だけど。

「・・・・ッ」

濡れて束になっている青島の髪に指を差し入れ、後頭部からグッと力強く掻き 寄せる。

逃げないのを良いことに、抱き寄せる腕に力を込めれば、青島の温もりがほんのりと室井に伝わった。
コートを脱いだせいで、より華奢になったボディラインに手を回し、その存在を確かめる。
心細くても、頼りなくても、今ここに青島はいる。俺も居る。
今は二人で抱き締め合うことしか出来なくても。
それがどんなにちっぽけでも、何より確かで、必要な、俺たちの出発点だ。

それを、青島も望んでくれるなら。

圧倒的な感情を、目を瞑って奥歯を噛み締め、溺れる熱を享受した。





~~~~~~


ゆっくりと、衝動をやり過ごし、室井はそっと瞼だけを持ち上げる。
静寂だけが部屋を支配していた。

青島の頭をそっと持ち上げる。
少し抗う素振りを見せたが、室井の手に従わされ、至近距離で見上げてきた。
唐茶色の衒いのない瞳が、放心したような虚ろな表情で惑う。
その顎を掴むことで、視線を自分へと従わせた。


「落ち付いたか?」

ゆっくりと長い睫毛が伏せられた。

「・・・・・ごめん」

伝える術も知らない子供のように、青島が口唇を噛み締め、露骨に視線を逸らす。
そのまま、身体まで離そうと、室井の胸を手の甲で押した。

それを遮り、腕を取って引き寄せる。
今は、一人で抱え込むようなことをさせたくない。
もう一度しっかりと腕の中に引き込んだ。


「こっちを見ろ」
「・・・ッ」
「一人で消えさせたりしない」
「・・・こんなつもりじゃなかったんだ、俺・・・」
「分かってる」

立ち上がろうとした青島を、背中から羽交い締めにする。
青島が息を呑んだのが分かった。


「行くな」
「・・・・・」
「ここに居てくれ」

暫くの沈黙の後、俯いた青島から震えた声がポツリと漏れる。

「いつも・・・・やさしすぎるんだよ・・・」
「役立たず、の間違いだろ」
「そんな、こと」


自分の鼓動が聞こえるんじゃないかというくらい、ドキドキと脈を打つ。
青島の甘い匂い。少し高めの体温。柔らかい肉感。
強張った身体も、無防備に晒されている首筋も。
どれもが室井を捕え、離さない。

室井はそのまま、青島の髪に鼻を擦り寄せた。
頬を寄せ、抱き締める腕に想いを込める。


膝立ちのまま、二人とも、無言だった。



やがて、きゅ、と室井の手を握り返してきた青島が、腕の中で肩越しに振り返る。
コツンとおでこを室井の額にくっつけた。

「あんたに出会えてよかった・・・」

舌っ足らずな甘さを残す声で、小さく呟き、室井の手に片手を添えたまま、瞳を閉じる。
湿った髪が室井の額に優しく掛かった。


「出会わなきゃ良かったなんて・・・・嘘です。思ってない・・・」

どこかまだ戸惑いを覗かせたまま囁くように口ずさむ声が、直接室井の肌を焼く。

青島の甘い囁きに、室井は硬直したまま、動けなかった。
その表情にじっと捕らわれていると、青島がしっとりと瞼を持ち上げ
その澄んだ瞳に室井を映す。

「・・・ッ」
もう駄目だ・・・・っ。



二の腕を引き寄せ、振り向かせ様に、強く抱き締める。
青島の後ろ髪を乱暴に引っ張ることで上向かせ
驚いている青島に構わずに、何も言わせないまま口唇を重ねた。

腰を引き寄せ、ふっくりとした口唇に押し付けるように、幾度も擦り合わせながら、舌で口唇の輪郭と触感を感じ取る。
そのまま、半ば強引に口唇を割った。
後頭部を支え、吸い込む勢いで、応えることも忘れている舌を絡め取っていく。

「・・ぅ・・・・く・・・っ」

舌先に歯を立て、痺れるくらいに吸い上げれば、急激な室井の勢いに、青島が苦しそうに眉を寄せ、瞳をキツく閉じる。
合わせた口唇の端から、喉を鳴らす音が荒く刻まれ、濡れた音が混じった。

時折、耐えきれずに漏れる甘い吐息に、強烈な酩酊感が室井を襲い、煽られていく。
海岸とは違い、閉鎖された自室で人目のない空間が、男の劣情に歯止めをかけない。
強く引き寄せ、髪を撫で上げ、耳裏の柔肌をなぞり、その指先で青島の首筋を辿る。
行き先も分からず奔出する感情のままに、丹念に辿っていきながら、舌先で口内の奥深くまでをまさぐった。



「ッ・・・・ぁ、・・・・も、苦し・・・っ」
「逃げるな・・・・」

ペースを乱され、貪るような口付けに追い付けない青島が、顔を緩慢に振って室井の腕から身体をズラした。
口唇が離れたことも勿論、僅かに開いた二人の隙間に入り込む外気すら
心許なさを与え、他愛ない仕草なのに、酷く熱を渇望させる。

「逃げないでくれ・・・」

何か言いかけた青島の唇を、親指の腹を滑らせて黙らせる。今は言葉よりもう少しだけ確かなものが欲しかった。
熱く震えるような吐息を漏らし、室井は青島の両頬を掴み、額を押し当てる。
不安に揺れる澄んだ瞳が、衒いなく室井を映していた。

そのまま無言で顔を斜めに傾け、熱く漲る口唇を押し当てるように塞ぐ。



近くのソファの背に、青島の身体を強く押し付ける。

ソファの背と室井に挟まれ、身動きの取れなくなった青島の口唇を、呑み込むように奪っていく。
身体を密着させ、触れる傍から暗闇に霧散していくような覚束なさに、溺れるような余韻が室井を襲った。
どれほど密着しても、余すことなく口内を奪っても
縋りつきたくなるような渇望が、抑えきれぬ強烈な衝動を、後から後から生んでくる。

背中を押し付けたまま、角度を変え、飢えが滲み出る口付けの獰猛さを隠しもせずに、室井は幾度も幾度も粗く口唇を重ね直す。


やがて、青島が、たどたどしい動きで室井に手を回してきた。
きゅ、とシャツの裾を掴んだのが伝わる。

自ら口を浅く開き、室井を迎え入れるように舌が絡み合った。
ドクリと鼓動が高鳴り、身体が火照る。
青島が応えてくれた、その強烈な甘さに、意識が底から奪われる。


失敗したと思った。




~~~~~~~~


どちらの呼吸かも分からない荒い息が二つ、重なって春宵を色付かせる。

モーター音だけが床に広がる暗い部屋に、月灯りが斜めに射し込んでいた。
静かな初春の月は、冷め冷めとした夜空に、どこか安穏を思わせる黄蘗色の柔らかさを湛え、二つの影を浮かび上がらせる。
春月夜だった。



抑え込まれたまま、息継ぎをし損なった青島が、苦しそうな表情で呻る。
強く引き寄せたために、青島の背中は綺麗な弧を描き仰け反っていた。
弱弱しい抗いを見せながらソファからズルズルとずり落ちていく。
顎を捉え、口唇を解放せずに、脅えるように奥底まで逃げ込んだ舌を引き摺りだし、吸い上げる。

「ぅ・・・ッ、く・・・っ・・・」


ずっと焦がれていた存在が、こんなにも無防備に自分を慕う姿を見せられたら、抑えていた火傷しそうな熱さが奔出した。
愛しくてたまらない。
ずっと欲しくてたまらなかった。――ああ、本当は、ずっと。

一度失いかけた恐怖が拍車を掛け、室井を急き立てる。

多分・・・・今夜を逃したら、もう、きっと、青島は手に入らない――!
朝になったら、朝もやのように消えてしまう気がした。


「ッ・・・・んん・・・・っ」

ウエストで窄まるように引き締まる、滑らかで細いラインを辿りながら、浚うようにグッと片手で腰を引き寄せると
その反り返った背中を、ソファで辛うじて支えながら、熱を孕み始めた身体が、室井の腕の中でしなやかに震える。

膝を青島の両脚の間に差し入れ、強引に割り裂く。

バランスの悪さから、促されたように青島の手が室井の首に周り、きゅ、としがみ付いてきた。
そんな仕草一つに、室井の胸は甘い痛みに痺れ上がる。
青島の甘い匂いが室井を虜にしていく。


押し付けるように狂おしく口唇を重ねていると、次第に脱力した青島の身体は、ついには重心を失った。
膝から脆く崩れる。
口付けたまま体重を掛けると、容易に傾ぐ。
カクン、と膝が折れたそのままに、室井はフローリングへと押し倒した。



身体の下に組み敷き、口唇を塞ぎながら、濡れたネクタイの結び目に手を掛ける。

舌の勢いに追い付けずに、切迫した息使いに喘いでいる青島が、緩慢に首を振り
苦しそうに顔を歪めながら口唇をずらした。

「・・・ぁ・・っ、はぁ・・・・っ」


ネクタイをスルリを紐解くと、今度は自分のネクタイに人差し指をかける。

上ずった熱を漏らす、その口唇を追って覆い被さり、上から押し付ける。
顔の横に片肘を付いた。
押し開いた青島の脚の間に身体を密着させ、長く艶美な青島の脚に、自らの脚を絡ませていく。

眉をキツく寄せ、眼を閉じたまま余韻に耐えている青島の表情は
室井の本能的な部分を煽るのは、最早困難なことではなかった。
圧し掛かる形で完全に封じ込め、拘束した身体の肉感に、感情の奔流が決壊していく。
まるで乞うように薄く開く光る口唇を、顔を傾けて奪った。


濡れたシャツの上から、細身で均整の取れた身体を乱暴にまさぐる。

あの青島に触れているのだと思うと、歓喜で何もかもが真っ白に溶けていく。
遮るように室井の首から外れた手を、柔らかく絡ませ、吐息ごと口唇を奪う。




頭の片隅で、失敗した、と思った。

こんないきなり押し倒すなんて、想像もしていなかった。
そんなつもりで家へ連れ込んだのではない。
もっとゆっくり、穏やかな関係を築いていけたらと思っていた。まずは青島を安心させて、味方だと伝えるつもりだった。
そうして、確固たる絆や距離感を再確認してから、その上で、今後を二人で考えていけたらと思っていた全てのプランが
思う傍から白濁した思考の彼方へ散り散りに霧散していく。

だが、もう止まれない。
これは、俺のものだ。



「・・・・っ、む、ろい・・・さ・・・」

抜いたネクタイを邪魔くさく放り投げると、ワイシャツのボタンに手を掛ける。

緩慢な動作で、青島が僅かに袖口から覗く指先で、室井の手を制止しようと抵抗を思しき仕草を見せた。
室井に組み敷かれ、抗いとも取れないその手を握り、口唇を耳に滑らせ、柔らかく歯を立てれば、青島の身体がピクリと震える。
キツく寄せられた眉が切なそうに歪んだ。
室井の下で、緩く身体を捩じらせる。

「・・・ッ・・・待っ・・・、室・・・さ・・・っ」
「行くな・・・・」

ずり上がっていく身体を引き戻し、するりと舌で耳朶を舐め上げながら、横目で見遣れば、濡れて光るぷっくりとした口唇に目を奪われる。
いつもと違う雰囲気に、心を奪われていく。
いつだって、そうだ。
青島が与えるものに、室井は魅せられていく。そうだ、最初から。

狂暴な引力に犯されるように、その口唇に自身を委ねる。

感情の機微を左右されるだけではなく、それはこんな肉欲的な部分に置いてでも差異はないのだと
極自然なことのように嚥下出来た。



ボタンを2~3個外すと、艶肌が月灯りに晒し出される。

湿ってしっとりと薫る若い肌は、月明りに透明に浮かび上がり、妖艶な誘惑を纏う。
柔らかく、瑞々しいハリがある。
そこに散らばる卑猥な情痕が更に男の目を奪う。
濡れている身体に張り付く薄地のシャツは、リアルな肉感を引き出し、緊張にうねる筋肉が艶かしく室井を誘い込んだ。
アンダーは何も身に着けていないらしく、ワイシャツから伝わる生々しい 質感が、彫刻のように浮き上がる。

初心に震える肉体と、青島の石鹸のような香り。

ゾクリと室井の全身に電流が走る。

待ち切れずに、舌を這わせるのと同時に、スラックスからシャツを引き出し、下からも手を潜らせていく。
青島が息を呑んだ気配がした。

「・・・ぁ・・・ま・・・っ、待って、待って・・・・」
「今日、何故あそこに居た・・・」
「ぇ・・、そ・・・れは・・・」

青島が、あの公園にいなかったら、大人しく引き下がるつもりだった。
では、何故青島はあの公園に居たのか。

「間に合えた・・・だからこのままおまえを手に入れる」
「ぅん・・・っ、ゃ・・・・でも・・・ッ、待って・・・待っ・・・」
「待てない・・・もう、待てない」

流れる髪を指を差し入れ、腕の中で顔を振る青島の、制止を求める口唇を上から塞いだ。



深い宵の闇に吐息が舞う。
開かれたシャツの首筋に顔を埋めれば、磯の匂いと僅かに残った香水が、ここでも鼻孔を吐いた。
未だ嗅ぎ慣れない、見知った匂いに、無意識に眉間を寄せる。

再会してからの青島から薫る、覚えのある満ちるような芳しさ――
室井の知る、懐かしい煙草さえ覆い尽くすように、その存在を密かに誘う、薫り高さ――

それは、青島に、掴みきれないミステリアスささえ仄めかす。


嫉妬心と嗜虐心が煽られ、室井の身体にカッと灼熱が走る。
相手が同性であるとか、何の了解も取っていないとか、そんな羞恥も矜持も遠くに霞んだ。





残りのボタンを外しながら、忙しなく無垢な肌を暴く。
肌理が細かく、吸い付くように馴染む肌に誘い込まれ、青島の肌の上を彷徨っていた口唇が、首筋から鎖骨へと辿った。
本能的な衝動に支配され、余裕も失っていた室井は
そこで初めて、首の付け根辺りの、紅い印に気が付いた。


鬱血の痕だ。
窓枠から注ぐ月光を受け、鮮やかに浮かび上がる。


かなり、情熱的にこの肌に吸い付いたものであることは明白だった。
どれほどこの身体を気に入っているか、そして手放す気がないか。奪えるものなら奪ってみろという自信と独占欲。この肌を知っているのは自分であるという自 尊心。
誰にも渡すつもりはないという執着心。
その苛烈な主張を、まざまざと見せつけてくる。
・・・・この紅さなら、これはごく最近に付けられたものだ。昨夜・・・・もしかしたら先程。


シャツのボタンを外していた手が止まる。

室井の異変に気付き、息を詰めて、室井の下でキツく瞑っていた青島が、ふっと瞼を持ち上げた。
茶褐色の透明な瞳が、焦点を彷徨わせたまま、見上げてくる。

室井は強い眼差しでじっと青島を見下ろした。


「これは誰が付けたものだ」

低い声でそう言って、両脇に肘を付き、その眼を捕える。
スッと音もなく身を寄せ、その箇所を舌でねっとりと舐め上げた。

「・・・?・・・っ!」

一瞬呆けていた瞳が、次の瞬間ハッと揺れて、逸らされた。
着崩れて僅かに袖口から指先が覗くだけの手を首筋に当て、頬を染めながら横を向く。
細くやわらかい髪が、ふわりと流れ、赤らんだ目元を少し隠した。


首筋を押さえている手を取り上げ、そのまま床へと縫い付ける。

「野上か。それともまさか一倉か」
「ぇ・・・」
「その反応・・・。つまり野上か」

そう言ったかと思うと、室井は、その箇所に、野性の獣のように噛み付いた。

「ィ・・・・ッ」

青島の身体が痛みに弾む。
その肌に、刻印のように、鬱血痕よりも遥かにくっきりとした歯型が刻まれる。
痛みから抵抗しようとしたもう片方の手も浚い、同じく床に縫い付けた。


「いつ付けられた」
「ぁ・・・・」

答えを言わせず、そのまま、噛み付く勢いで口唇を奪い取る。
打って変わって荒々しく舌を絡ませ、痛みを伴うほど、強く吸い上げながら、無作法に口内を掻きまわす。

「・・・ッ!・・・ぅ・・・・くぅ・・・・っ」

突然の粗暴さに、青島が明確に嫌がって顔を振るが、押さえ付けたまま、息つく暇も与えない。
擦れ合う肌が火照り、淫蕩に身体が跳ねる。
濡れた音が激しく淫猥に響き、徐々に落ちていく唾液が肌を光らせた。



室井の中に確信はあったが、嫉妬は本能的なもので、容易には制御出来ない。
自分より先に、この肌に触れた人間がいることが、腹立だしく
護りきれなかった己が不甲斐なく
どうにも行き場のない怒りが、膨れ上がる。
こうして乱暴に肌を暴くことで、青島の中の記憶ごと、全て塗りつぶしてしまえたらいいのに。
深層下に沈ませていた本能的な欲望が競り上がり、暴走するのが止まらない。


「・・・っん・・・・ぅ・・・く・・・っ・・・」

痛みを伴う強さで舌を吸い上げると、息苦しさから青島が喉の奥で咽ぶ。

急激に蹂躙される強引さに戸惑っている様子が伝わってくる。
軽く開かれたままの脚で床を掻き、抵抗と思しき仕草を見せるが
室井はそれを身体で封じ込め、両手も封じたまま、情熱に漲る舌を荒々しく絡ませ、執拗に奪い取った。

「・・・ぅ・・・っ、・・・・ぅん・・・っ」

熱くうねる舌を強引に擦り合わせ、その感触を覚えていく。青島に覚えさせていく。
蕩けるように滴る柔肉のうねりは甘ったるく、獰猛な所作とは裏腹に、濃密に室井へと刻み込まれた。



この誘惑に、理性ごと持って行かれそうだった。
留まることを知らぬ欲求が、後から後から膨れ上がる。
後を引く、極上の官能だ。

可愛く無害な振りをして、気付けばその甘い蜜の渦に取り込まれている。

この甘い感触を、自分が知るより先に、他の人間に奪われたのだと思うと、苛立ちを越えて怒りにも似た感情が湧いた。
これなら誰もが夢中になっても当然だ。
だからこそ、誰にも知られたくない。青島にも他の人間の触感を記憶させたくない。
誰にも、横から掻っ攫われてしまいたくない。


「・・ぃ、・・ゃ・・・・だ・・室井、さん・・・っ」

青島が、着崩れて袖口にほぼ埋もれている指先で、戯れのような抗いを見せる。
だが、開かれた脚をバタつかせる姿態も、激しく上下する胸も、室井をどこまでも煽り、誘い込む。
薄闇の中、飴色にも見える細髪が、頭を逸らす仕草に合わせて舞った。

下唇に諫めるように強めに歯を立て、真上から何度も口唇を塞ぐ。
室井の崩れた前髪が、ハラハラと額にかかる。

「やめ・・・・・っ、んぅ・・・ッ」

誰にも渡さない・・・!


押さえ付けたままの手で、指を絡め力の限りに握り締めた。
きゅ、と、微かに握り返してくる指が室井の指を求めるように絡めば、今度は右指に冷たい硬質なものが当たったことに気付く。

口内を奥深くまで蹂躙しながらチラリと視線を送れば、それは野上が青島に贈った、リングだろう。
同じ輝きを以って、月白色の光を纏っていた。
揃いのリングが野上の指にも光っていたことも同時に脳裏を過ぎる。


室井は眉間の皺を深め、口唇を解放した。

青島の手を掴み上げる。


「他の男から貰ったものなんか、身に付けるな」
「ぇ・・・・。あ・・・っ」


指からリングを抜き取り、遠くへ投げ捨てる。
カランカランという乾いた甲高い音を尻目に、その指に歯を立てた。
息を呑む青島を余所に、当然のように付いている同色のピアスに目を映す。
深い深い海色のピアス。
吸い込まれる濃い蒼は、彼の清純さを纏い、野上の烙印を背負う。


顎を掴み、横向ける。
明るい髪に良く映える、その透明な輝きがクロスに光った。

確か、穴のいらないタイプだと――
なのに、海に入っても取れなかった粘着さに、室井には益々面白くない感情が湧く。


無言のままピンッと人さし指で弾く。

「こんなものも付けるな」

室井の長く綺麗な指が青島の耳を掠め、反動でポロリとピアスが脱落する。
外れたピアスを、それも遠くへと放り投げる。
二つの小さな金属音が反響して遠ざかっていった。


驚いて少し潤み始めていた目を丸くしている青島の頤に乱暴に手を掛け、上向かせる。

「服もだ。もうこれも着るな。貰ったものなんか全部破棄してしまえ・・・・。欲しけりゃ俺が買ってやる」
こんなもの・・・・!
そう言って、もう、残りのボタンは外す手間もなく、シャツに両手を掛けると一気に切り裂いた。


ボタンの弾け飛ぶ音と、少しビビッと布地が裂ける音が高らかに響き、空気を鋭く切り裂く。


「んな・・・・っ、室井さ・・・・っ」

眼を見開く青島を鼻にもかけず、抗議の声が上がる前にもう一度両手を掴み、顔の横に縫い付ける。
至近距離で強く射抜くように見下ろした。

先程噛み付いた箇所からひとつ、ぷっくりと血液が丸く浮き出ている。

無表情の貌で、そっと近付き、室井はその血をぺろりと舌で味わった。
艶めく肌は滑らかで、血の味と海の味がする。

顔を上げ、不安そうに見上げる瞳を捕える。


「無防備に愛想も振り撒くんじゃない」
「何、何言っ・・・」
「二度と他の男に触らせるな」
「・・・!」
「誰が渡すか・・・!」

口唇を激しく塞いだ。





~~~~~~~


大事にしたい想いはあっても、大切すぎるからこそ、抑制が効かなくなる。
こんな激しく身勝手な劣情が
自分の中にあるなんて、自分だって知らない。

独り善がりな暴慢を押し付けたことは重々承知するだけの理性は未だ残っていたが
たまには、このくらい奔放なことを告げておきたかった。
これは、青島に対する甘えだと分かっている。青島にも、自分にくらいはそのくらいの僭越さを抱いて欲しかったからだ。




「ぅ・・・・んぅ・・・っ」

青島が息を詰め、何度も身体を震わせる。
都合も考慮されない舌の動きに翻弄され、長いキスで青島の息はすっかりと上がり、完全に身体の力が抜けていた。

舌で歯列の裏を何度もなぞり上げると、青島が喉を鳴らして顎を逸らす。
その反動で少し持ちあがった身体に腕を回し、背中を反りかえらせた。

ローズグレイのシャツが衣擦れを立てて青島の肩から滑り落ちる。

アンダーシャツは何も身に付けていないため、はらりと素肌が室井の眼前に晒された。
吸い寄せられるように、無防備に反り返る喉元から口付けを落とし
室井は首筋に顔を埋める。
舌を突き出し、上から味わっていく。


「・・・ッ、むろ・・・さん・・・っ、ゃ・・・っ」


されるがままに身体の下でうねる肉体が美しい。

片手でベルトのバックルを外す。

「・・・っ、ちょ、ちょっ・・・と、待って・・・・ッ」
「待てないともう何度も言った」


スラックスのフロントを寛がせると、流石に室井の勢いに事態を察知したのか
動揺を浮かべた青島が、室井を頼りなく見上げてきた。

「でも、あの、」
「駄目だ。逃がさない。今度はもう、逃がさない」


青島が、腕に辛うじて引っ掛かっているだけのシャツからほとんど隠れている甲で、口元を覆う。

「ぁ・・・っ、あの、俺、オトコだよ・・・?」
「知っている」
「・・・っ、えと・・・・」

ねっとりと耳の後ろの柔肉を舌で舐め上げる。


「・・・っ、俺・・・・その、男に・・・・」

青島が言い淀んだ先は、容易に想像が付いた。

「嫉妬で狂いそうだ。でも――」
「?」

肌を味わうように、舌でそこかしこを舐め上げる。

「おまえのファーストキスは俺だろう?」
「!!・・・な・・・な・・・、なん・・・でっ」
「あんな初心な反応見せられて、経験アリとは思わないだろう」
「~~っっ」

言葉もなく赤面した青島を、室井は優しく見つめた。


一倉の話が本当だとするならば、一倉は“今年の初め”と言った。
今年の初めに、青島の口唇を奪ったと。
話の内容から、まず野上、一倉の順で青島に無理を強いたのだと考えられる。それも、身体に情痕がお互い見られるくらいのタイムラグで。
とすれば、彼らの話は全て、年明け以降なのだと推測できる。
客観的に考えれば、去年の暮れに室井が青島に口付けたのが、一番最初という結論が導かれた。
単純な計算である。



そっと下口唇に歯を立てる。

「あの時、衝動に負けてでも、口付けておいて良かった」
「何言って・・・っ、ファーストって言ったってね、男とはって・・・意味ですよ・・・流石に」
「そんなの分かってる」
「っ」
「それに。・・・・どうせ誰にも抱かれてもいないんだろう?」
「っっ」

頤を掴んで、強引に視線を合わせる。

そして、青島のこの反応。
今度こそ、青島は真っ赤に染まった。

色付く頬の朱い艶かしさをじっと瞼に焼き付けながら、室井は思う。
一倉の話では、その身体も与えているかのような口ぶりだったが、一倉がそう解釈したのか、室井を煽るためだったのかは定かではないが
恐らく、青島はバックヴァージンだ。

勿論、隅々まで触られはしただろうし、淫らな行為を強いられたことまでは、確かなようだが
とても、雄に抱かれたような荒廃的な色が見えなかった。



「俺が欲しいんだろ。違うのか」

青島の瞳が益々羞恥に染まり、ぷくっと頬が膨れる。
軽く睨み上げてくる表情に、内心ほくそ笑む。
30歳を遠に越えた男の表情とは思えない、初心に赤らんだ顔を見せる青島が、取り繕われていないようで、とことん愛しい。


「なんか室井さん・・・・さっきから横暴だ・・・・」
「こんなんじゃ、全然足りないな」

室井が、ふっと甘い吐息を漏らして、眼を眇める。
こんな眼をして、あんなキスをして、あれほど身悶え重なり合って、それでも尚、認めようとしないのだ。


青島の顔の横に両肘を吐き、重ねるように問う。

「欲しいって言ってみろ」
「・・・・・言えるわけ、ないだろ」
「言ってほしいんだ」
「・・・別に欲しくない」


髪を掴んで、少しだけ持ち上げ、上向かせた。

「ほんっと意地っ張りだな」
「何でそう思うんだよ」


今、出会ってから長い時を経て、あれだけ焦がれ続けてきた熱が、蘇る。

「決まっている。俺の――俺にとっても、ただひとつの聖域が、おまえだからだ」


ピクリと身体を震わせ、青島が息を呑んだ。

澱みなくサラリと告げた室井の言葉の純潔さは、青島こそが、知るだろう。
驚愕に震えた瞳が、夜の闇に宝石のように瞬く。
それを、息が口唇に触れる距離で、真っ直ぐに室井は見下ろした。
瞳と同じ色をした室井の黒髪が、ハラハラと落ちていく。


出会った時から、少しずつ、訳も分からず惹かれ、魅せられ、近付いていった。
掛け値のない、数多の時間は、いつしか室井の人生を鮮やかに彩る。
何度ぶつかり、何度焦がれ、何度奪われただろう。
その度に、分かった気になっていた。

今この瞬間、己の内部から急き立てるように吹き出す熱い感情が
腕の中の熱い体温と融合し、室井の胸を切なく締めつける。

捕り損なった欠片を、今、手に入れる。



掠れた声が、鋭く闇に溶けた。

「本気でかかってこい。おまえの全力を俺が全部受け止めてやる」
「・・・!」
「おまえの本気はこんなものか」


青島の潤んで光る唐茶色の瞳が、室井を映して艶めいた。

人は、哀しみを越えて美しくなる。
青島の魂が惹きつけてやまないのは、幾重にも折り重ねられた過去があるからだと、室井は思った。


生まれたての若葉のような純潔さを湛え、息苦しくなったかのように、青島が口唇を震わせながら瞼を閉じた。



閉じられた瞼を追うように、それを合図として室井はゆっくりと覆い被さった。









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