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ソファに折り重なったまま、さわさわと素肌をまさぐられていく。
交わし合う言葉もなく、二つの熱い息だけが暗い部屋を満たした。
「・・・・・ッ・・・ぅ・・ん・・・・ッ」
緩められることのない蝕まれるような強淫に、青島は指先にさえ力が入らない。
室井によって破かれた濡れたシャツは、既に腕でくしゃくしゃに絡まっていて、もどかしさだけを与えた。
下着ごとスラックスも半分剥ぎ取られ
室井の身体を挟む形で押し広げられた脚のせいで、辛うじて途中で止まっている。
それもまた、自由度を拘束する戒めのようで
四肢のもどかしさと不自由さに、青島は嬌態を震わせることしかできない。
溺れそうな息遣いで押さえ付けられ、もどかしげに脚で引っ掻けば、上質な革のソファが背中で軋んだ。
敏感な舌の縁を擦り合わせる所作も猛々しく、付いていくのに必死で
重なる口内で混ざり合う唾液が、粘膜の間で濡れた音を響かせる。
普段の室井からは想像も付かない荒々しさで
ねぶられる優しさの欠片もない粗雑な手や、激しく奪われる口唇の執拗さに、むしろ感じたのは
情熱よりも恐怖だった。
「・・んぅ・・ッ・・、ァ・・・・ッ・・・」
呻きとも喘声とも取れない音が青島の喉から漏れる。
気怠い重さを残し、闇に溶ける。
このまま雪崩れ込まれる先の濃密さを、如実に示され
その受諾を、言葉もなく理解させられていく。
最早、何を隠そうともせず、あからさまに性的な欲望と渇望をぶつけてくる男に
剥き出しの室井を初めて思い知らされながら、自分こそが何の心構えも覚悟も
持てていなかったことを思い知った。
与えられるがままに翻弄され、竦み上がる。
――どうしよう・・・・
その心細さに、一旦室井の濡れた感触を引き剥がしたくて、たどたどしく胸元に翳した手は、簡単に絡み取られ、抵抗は封じられた。
解放されない口唇に、息苦しさを覚え、ペースを取り戻したくて身を堅くすれば
ソファにその身で身体を縫い付けられる。
「・・ァ・・・・ゃ・・・・ぅん・・・っ」
片手を頭上に縫い付けられ、激しく奪い取ろうとする野性的な淫戯に肌がそそけ立つ。
顎を捕えられ、口内の奥深くを厚みある男の舌に圧迫され
意に反して思うままに呻かされ、その度に情欲に色付く空気に困惑した。
開かされている脚が、羞恥を呼ぶ。
室井はシャツの前を寛げた
だけなのに、既に自分だけ全裸に近い姿にまで辱められているのも、忸怩たる思いだった。
そのシャツが、密着する素肌の間で擦れ、肌を刺激する。
咽返るような、室井の熱と室井の清潔そうな匂い。仄かな海の香り。
熱を孕んだ室井の素肌に巻き込まれ、密着する質感に、強烈な酩酊感が青島を襲う。
信じられない。
この歳になれば、キスなど数え切れぬほどしてきた手慣れた行為だったのに
室井から受ける口付けは、経験したことのないほどの深甚だ。
愛を伝えるよりも、強く深く欲しがられている男の征服欲を感じた。
こんなにも、キスだけで圧倒的に支配されるなんて、想像もしていなかった。
ぽぅっと青島の頬が熱く染まっていく。
内股を撫で上げられ、途切れ途切れに、噛み締める口から嗚咽が漏れた。
触れる室井の指まで熱い。
初めて他人にそういう意味で触られる素肌は、鋭敏で、追随して電気の様な痺れを生んでいった。
好き勝手にあちこちを探られ、過剰な刺激に身悶え、噛み合わない口付けのリズムに息を乱す。
「・・・・・ァ・・・・ッ・・・く・・・っ」
室井の細長い指が、胸の突起を優しく捏ね回した。
胸元をねぶられる慣れぬ感覚に、身体がピクリと強張る。
耳に直接吹き込まれる、名前も愛の言葉すら口にしない男の、荒っぽい息遣いは余裕のなさを示し、熱だけを青島に伝えた。
それが逆に、青島を戦慄かせる。
熱い。
耳元の灼けるような熱から逃れるように顔を背ければ、耳たぶに歯を立てられ
怯むような制止の言葉は、再び角度を変えた室井の口唇に再び呑み込まれる。
鼓動が跳ね上がりそうだった。
「く・・・ぅ・・・・んぅ・・・・ッ」
これが、この恋の結末だというのだろうか。
室井を貶めて、二人で脱落して。
こんなの、赦されて良い筈がない。
こんな筈ではなかった。
だけど――
「・・・ッ・・・・く・・・・」
肋骨から脇腹を撫でられ、同時に鎖骨を緩く吸い上げられ、ゾクリとした感触に思わず目を見開く。
身体を浮かせ、軽く腰を捻った拍子に、室井の手が脇腹の傷跡に触れた。
皮膚が薄いせいか、くすぐったさのような過度な刺激が、顕著な反応となって身体を駆け巡る。
何度も慈しむように指先で傷痕を辿られ
青島は歯を喰い締めて嗚咽のような音を呑み込んだ。
腰を何度も左右に振って拒絶の意志を見せるが、室井の手はそこを離れようとはせず、執拗に何度も何度も確かめるように、ただ辿る。
「・・・ぅ・・・・ん・・・っ、ん・・・・ッ」
押し広げられた脚を、蹴り上げ、悶え動かし、足掻いて身体を振る。
室井の脚が青島の脚に絡まり、動きを塞がれ、押さえ込まれた。
縫い付けられた身体は、思うような抗いも散開する。
それに室井が気付いていない筈はないのに、止めてくれない。
「・・・ぁ・・・も、室・・・さ・・・っ」
縋るように自分を抱き締める男の名を、ようやく口に乗せれば
思う存分、口唇で青島の肌を彷徨っていた室井が顔を上げ、青島を見下ろしてきた。
「初めて見た・・・。随分大きな痕になっていたんだな・・・」
いつもより低い声でそう囁かれ、つい羞恥に顔を背ける。
そっと乱れていた前髪の束を掻き上げられ、顎を捕えて視線を戻された。
室井の細長く繊細そうな指が、殊更ゆっくりと、青島の喉仏を通り、肩から胸へ辿り降りていく。
「・・・・ッ」
胸の突起から、脇腹。
腰骨。そしてまた、あの傷痕へ。
瞳を見つめたまま、触れるか触れないかの微妙な力加減で、ラインを辿り降りていく。
「ぁ・・・、やめ・・・・・っ」
「この時は・・・・」
青島に語りかけるというよりは、独り言のようなトーンで、室井が確かめるように呟いた。
指に因って青島の喉は小さく呻き声を上げさせられ、身体の芯がカッと灼け付くような疼きを持て余し、熱が走る。
室井の繊細そうな細く長い指は、火傷しそうに熱く、触れる傍から容赦なく痺れを生み出した。
野上に触られた感覚とはまるで違うものが、躯の奥から這い上がる。
信じられない。
懇願するように、強靭な瞳を見上げる。
漆黒の深みに捕らわれれば、当時を思い出したのか、室井の眉間の皺が深まり、じっと青島を見下ろしていた。
その苦悶の表情に、青島の息も詰まる。
まるで魔法にかけられたように、身体が硬直して動けない。
室井の清潔そうな指先が、焦らすように傷痕を撫で上げる。
「・・・ッ・・・」
男に触られることへの違和感よりも、触っている相手が室井であることのほうが、苛烈な羞恥心を生んだ。
「ぁ・・・、やっぱり・・・ゃだ・・・、ヤです」
片手を縫い付けられたまま、青島はきつく目を瞑り、顎を逸らして咽ぶ喉元を無防備に室井へと晒す。
その顎からのラインが、月夜に金色に縁取られる。
追い込まれ、解かれて、凶悪なまでに与え続けられた暁に、互いの熱で蕩けるように堕とされていく自分の身体の反応が信じられない。
他の人間に触られた時は、嫌悪感と冒涜しか感じなかった傷痕も、その傷で繋がる相手が、今、その素肌で触れている。
強烈な憂威の記憶と合わせ、身体に電流みたいな痛覚が這い上がる。
このひとに触られるということが、どういうことを意味するのか
今になって強く思い知らされた。
どうしてこのひとなんだろうか。
ど
れほどこのひとに飢えていたのかを、肌が思い知らせてくるようだった。
触れられる度、胸迫る愛しさも、このまま抱き締めてしまいたい衝動も。
しかしそれは、青島にとっては愉悦ではなく、恐怖と絶念だった。
「お願、い・・・」
「俺が・・・嫌か」
「じゃ・・・なくて・・・、・・・っ」
「じゃ、何だ」
「だって・・・っ、あんたが俺に・・・・触れてるなんて・・・っ」
しくじった、と思った。
今夜が、ただ一度授けられた奇蹟の夜なら
このひとのために、捧げたいと思った。
この至上最低な夜を、救おうとしてくれた人へ。
だけど。
「こんな、の・・・っ、これ以上は・・・やっぱ、駄目、です・・・っ」
熱い吐息混じりに、必死に懇願する。
室井が触れることに、自分が意識してきた以上に肌が喜悦に咽ぶ玄妙を、もう無視できない。
このまま、形を失って、陶然の彼方へ溺れていってしまいそうだった。
こんなにも自分が乞うていたのかと、嘲笑われているような虚無感。
とてつもないことへ突き進んでいく背徳感。
今夜限りで手放す筈の温もりは、その尾を引き、後ろ暗い余燼を燻らせる。
自分の迂闊さに、失望した。
こんなにもこのひとに触れられることが、圧倒的な激情を齎すものだったなんて。
こんな厖大な感情と喜悦と嵐のように根こそぎ浚う、底知れぬ行為だったなんて。
愛してる、だからこそ、このひとによって救われるわけにはいかない。なのに。
自分を保てない――・・・
このひとを捕り込んでしまう。
こんなつもりじゃなかった。
頤に手を翳され、強引に視線を捕えられる。
ふっと、闇に溶けるように同じ色味を乗せていた室井の瞳が明度を上げる。
真っ直ぐに自分を見下ろしてくる男の双瞼が闇に艶めき、その壮厳さに息を呑んだ。
「そんなことをおまえに言われて俺が我慢出来ると思うのか」
「・・・っ」
「この傷も、俺のものだ・・・。そうだろう?」
優しくさえずりのように囁き、室井が首元に顔を埋める。
舌を突き出し、晒された喉元に吸い付きなから、辿り降りていく。
他の男らに付けられた数々の情痕の残る身体が、小刻みに震える。
その痕の上を室井が上書きするように、更に鬱血させていく。対抗するように、それ以上の華を散らされ、身体が朱に染まる。
脚に絡まっていた下着とスラックスを粗雑に脱がされると
室井の熱を孕んだ手の平が、艶かしく下肢を辿り、芯を撫で上げた。
「・・・ッ・・・・んッ・・・・」
直接的な刺激に肌がそそけ立ち、身体が跳ね、身悶える。
胸から脇腹を辿り、痕を残しながら、室井の濡れた粘膜も降りていき、やがて傷痕に辿り着く。
まるで、浄化していくかのように、何度も何度も、そこを丹念に舐め上げられ
何年も前の傷痕とはいえ、他より敏感になっている肌は、闇の中で桃色に染め上がる。
「・・・・ぅ・・・んぅ・・・・ゃ・・・ッ、は・ッ」
肌の上を濡れた粘膜が這い回る。
傷痕に、淫蕩に這う指と舌に容赦なく苛烈な淫戯を与えられ、青島は眉を寄せて背中を反り返らせた。
強請るように浮き上がらせた脇腹に、誘い込まれるように室井が舌を這わせる。
そのまま、もう片方の手で、内股に手を添えられた。
そのまま一気に中心部を躊躇いもなく口に含まれ、同時に裂く程に、淫猥な角度で脚を開かされる。
「んぅ・・・ッ・・・・く・・・っ」
ギリギリの所で声は呑み込んだ。
顎から首筋のラインを限界まで逸らし、肋骨が浮き上がる。
目を閉じて全身に痙攣を齎すような衝撃に耐える。
荒い息が、不規則に闇に浮かんだ。
「なん・・・で・・・ッ」
男の指が肉茎に添えられ、根元を絞り込まれたまま、熱くうねる口内で緩く強く吸い込まれていく。
熟れきった肉茎は、甘い刺激に身悶え、熱く渦を巻くような悦楽に、指一本動かせない。
「・・・くぅ・・・ッ、ぃ、や・・・ッ・・」
室井の舌が口内で昂ぶりをねっとりと舐めまわす。
ゾクリとした灼け切るような焦燥に、上半身を捩ると、無防備なウエストラインのカーブが室井の眼前に晒され、腹部が波打った。
滑らかな曲線で引き締まった腰を小刻みに左右に揺らす。
開かれた脚を閉じようと小刻みに震わせれば、室井の手に阻まれる。
青島は淫乱に膝頭を振った。
「ァ・・・ッ、ク・・・ッ」
一気に連れて行かれる・・・!
紅潮した貌を歪ませ、青島は脚を何度も競り上げる。
強烈な快楽に、開いた口から、音にもならない吃音が、切れ切れに盛れた。
室井の舌戯に合わせ、脚の間から唾液の濡れた音が響き、苛烈な衝動に頭の中が白濁していく。
信じられない。
自分にこんな強淫をしているのが、普段、官能とは無縁の高潔で壮厳な室井の、濡れた粘膜である。
あまりの羞恥と淫蕩に、頬を紅潮させ、苦悶の表情を浮かべた貌を、後ろに逸らす。
歯を食いしばり、顔を横に叛け荒い息を吐くと、唐茶色の柔らかい髪が舞い、青島の表情に陰りを付けた。
キツく閉じられた額には、しっとりと雫が浮かぶ。
青島の艶やかな肌は桃色に染め上がった。
「室・・・っ、さ・・・・ッ」
掠れた声で制止を求めれば、それは媚びるように、闇に溶け
自分に強淫をしている相手が、この世で一番高潔だと認識し、近い存在である室井であることを逆に自覚させる。
それがまた、青島を強く扇情させる。
言葉も返さず、室井に黙々と敏感な肉茎の括れに執拗に舌と歯を這わされ、濡れた口内で締め上げられる。
自分の卑猥に開いた脚の間に、室井の形の良い頭部が浮き沈みする。
「く・・ぅ、・・・ぁ・・っ、うっ」
もう悶える仕草も最早弱弱しいものでしかなく、肉体が淫蕩に堕ちていく術を止めるものは何も持たない絶望を、青島は感じた。
身体が解放に向けて小刻みに震えている。
必死に汗ばんだ手でソファを掴んで、白濁していく意識を繋ぎ止めた。
「・・・・ぅん・・・・ッ、く・・・・嫌、だ・・・っ・・・やめて・・くださ・・・っ」
誤魔化しきれない・・・。
このひとに、伝わってしまう。
自分を掻き抱く逞しい腕に囚われ、残酷なまでの優しさと、与えられる熾烈な情熱に、身体が竦み上がる。
酷く疲れた心は、縋りたい気持ちを堪えるだけの魔力を持たず、抱き締められるままに募る想いが染み込んだ。
しくじった、と思った。
このひとは、一緒に堕ちると言ったけど
こんなところまで堕とされて
自分のこんな感情にまで気付かされて。
本気を見せろとの挑発に、本気で煽られた訳ではなかった。
ただ、そこまで決めてしまった男への想いに、応えたかった。
ただそれだけのつもりだったのに。
このひとに捕らわれたままだった心が悲鳴を上げていく。
こんなのって、ない。
背中を彷徨っていた指がゆるりとした動作で、双丘を割り開く。
卑猥な音を立てながら青島の中心に室井が顔を埋め、淫らな舌戯を繰り返したまま
中指が後襞をねっとりと撫で回す。
「・・・ッ!」
目を見開き、意味を察して青島は身体を硬直させる。
恐怖と苦痛に怯んだ身体を一気に開かれ、同時に、その神経質そうな形の良い指が、奥へと穿たれた。
~~~~~~~
規則正しいモーター音に、粘膜の濡れた音がピチャリと混じる。
強めに設定したヒーターのせいで、室内は充分に乾いた温度に保たれ、寒さなど遠に忘れていた。
キスを仕掛けながら、破るようにワイシャツも脱いだ室井の肩や腕も、少し汗ばみ始め
群青色に染まる春月夜に、銅鐸のような艶を浮かび上がらせている。
程良く鍛えられた筋肉質で無駄のない、無防備な肢体を惜しげもなく晒し、青島に喰らい付くように圧し掛かり
行為の不自然さも違和感も感じさせない動作で、浅ましく溺れて雄の色香を纏って
いく。
「・・ぅ・・・クッ・・・・・んぁ・・・っ」
ソファの背もたれに片脚を掲げられ、もう片方を室井の手に因って、大きく淫らに抑え込まれたまま
下肢は、室井の端正な指を数本咥えさせられていた。
肌理の細かい滑らかな肌には、至る所に紅い印が浮かび上がっているが
それでもまだ足りないとばかりに、室井は青島の肌に濡れた舌を這わし、痕を残していく。
啜り泣きに近いような青島の声が、噛み締めた口の端から、断続的に漏れる。
「・・んぅ・・・ッ・・・ぅ・・・・くぅ・・・・っ」
達かないように肉芯の根元を握りこまれたまま、咥えこまされた指が内部でグルリと回され
その刺激に抑え込まれた脚が、反射的にピンと反り返る。
痛みや気持ち悪さを感じていたのは、指が二本入る頃までだった。
三本目が咥えさせられた頃には媚肉は卑猥に蕩け、熱を孕んで室井の指を悦んだ。
的確なその淫戯に、青島は、何とかその圧倒的な快楽から逃げようと、背中を何度も浮き上がらせた。
輪郭と肉の柔味と淫らさを味わうように、更に奥深くへと差し込ま
れた。
「・・・・・くぅ・・っ・・・、ん・・っく・・・ッ」
意地でも声は上げたくなかった。
歯を喰い締め、横を向く。
前髪が流れ、汗で束になったまま、額に張り付く。
目を閉じて、荒い息を吐いた。
浮き上がった無防備な首筋に、室井が強めに歯を立て、その刺激にも呻く。
崩れ落ちそうなギリギリの所で、青島は必死に耐え、その肌は褐色に艶めき、額には汗が浮かび、妖艶な香りを放つ。
三本の指を纏めて抜き差しされ、穿たれた指で柔肉を掻き乱される。
卑猥な音が室内を満たした。
肋骨が浮き上がり、腹部の筋肉が紺瑠璃の宵闇に美しく縁取られる。
「・・ぅ・・・・ぁっ、・・・・は・・・ぁ・・・っ、ぁあ・・・・」
脱力して深みに落ちていく身体で、どうして良いか分からず戸惑う青島の指先が
視界の端に捕えたしなやかで肉の締まった腕に、制止を求めて辿る。
その仕草が今の室井をどれだけ煽ることになるか、今の青島には思い至る余裕はない。
汗ばんだ瑞々しい肌の芳醇な芳しさ、しっとりとした手触り。
荒い息遣いに合わせ、脈動する腹筋。汗で光り内股まで仄かに朱色に色付く肌。
吸い付くようなそこに手を這わせた時の初心な反応は、それだけでも充分嗜虐心をより煽り、室井を妖艶に誘い込んでいた。
困ったような、不安そうな、頼りない瞳をした青島が、泣きそうな顔をして見上げれば
そのまま言葉もなく口唇を塞がれる。
「ク・・・ぅッ、ぅ・・・んんっ・・・・もぉ、や・・・・っ」
噛み締める口唇を、口付けで解かれ、更に深く秘部を指淫に穿たれる。
蕩けた柔肉に埋没させた室井の指を濡らしながら、緩く強く、掻き乱されていく。
こんな膝が胸に付く程、卑猥な体位を強いられ、室井に恥ずかしい格好を見られ
未知なる場所を弄られることに因る初めての感覚を与えられ
身体を好き勝手に反応させられる状況に、身も心も追い付けない。
初めての異物感に緊張した身体は、玉のような汗を浮かばせ、溺れるかの如く背後のソファへとしがみ付いていた。
力を込め、筋張った手が汗で濡れ、ソファの革をキュッと小鳴きさせる。
「んぁ・・っ・・・・室・・さ・・・・っ」
再び肉茎を咥えられ、舌戯に耽溺させられていく。
膝を折られ、裂く程に開かれ
た格好で固定されている太股や陰部が、小刻みに震える淫乱さを、室井の眼に晒す。
その慚愧に堪えない。
全てを見下ろされている羞恥が、青島の身体を芯から扇情させた。
「も・・ぉ・・っ、ゃめ・・・・っ」
啜り泣くような吐息を放ち、首を何度も左右に振り乱し、哀願する。
汗で束になった唐茶色の髪が、乱れていく。
苦しげに眉を寄せ、無理に抑え込もうとすれば、疲労と共に、より息が上がった。
卑猥に開かれた秘部の違和感と、肉茎を口淫される強引な喜悦は、圧倒的な支配を以って青島を蹂躙した。
何もかもが意識の向こう側へと蕩けていく。
止めても貰えず、達かしても貰えない淫蕩の世界は、青島から微々たる矜持を奪い去る。
室井から与えられる刺激に、押し潰される。
性の制御の何もかもが、自分の思う様にいかず、導かれる経験は初めてで
どうしてよいのか全く分からないままに、身体の暴走に呆然とする。
「・・・くぅ・・・、んん・・・・ァ・・・・ッ」
怖くて、目の前に相手に縋りそうになる手を、必死で留めていた。
室井が突如、肉茎を絞っていた手を緩め、強引に頂点へと誘い始めた。
先端の一番敏感な箇所をゾロリと舌で刺激しながら、喉の奥で波打つように翻弄され、同時に秘部に咥えこませた指で柔肉を擦り上げる。
「・・・ッ!!・・んん・・・っ・・・は・・ッ・・・あぁ・・・ッ・・・」
余りの愉悦と身を灼く焦燥に、青島は歪んだ表情を室井に晒し、引き攣った喉元からは、掠れた悲鳴が漏れる。
腕に布が辛うじて纏わりついているだけの無防備な姿態の、淫蕩に身悶える様を、惜しげもなく室井へと晒し
背筋で弧を描きながら、荒く息を繰り返した。
一番身体が悶える内壁を繰り返し擦られ、引き締まった腰が、圧倒的な愉悦に蕩ける。
「・・・ッ、くぅ・・・・ッ、は・・・ぁ・・・・ッ」
初めて、後孔を穿たれたまま、青島は絶頂へと導かれた。
両脚を大きく広げさせられたまま、達した余韻に震える弛緩した身体にも
室井の手は緩まることはなく
咥えこませたままの指を内部で淫猥に動かし、のめり込む様に探り当てた青島の敏感な箇所を、それでも尚翻弄し、耽溺させてい
く。
その度にビクンビクンと身体が仰け反り波打った。
残酷なまでに甘い、音無き命令に従順に従わされ、熟れきった身体が絶望に投じる溺惑に震慴する。
「・・・ン、ァ・・・、は・・っ、・・んぁ・・・ッ」
青白い月明りに淡く縁取られた総身が、室井に染められ、淫乱に揺れ動いた。
あまりの強淫な愉悦と衝撃に、声もなく、青島の睫毛が黒く濡れた。
口唇を薄く開き、荒い息を整えられないまま絶頂の余韻に陶然とした表情でソファに身を沈めたままでいると
そんな青島を見下ろし、口の端に少しだけ笑みを滲ませた室井が覆い被さってくる。
非難を込め、呆けていた焦点を合わし、目の前の男を霞む視界の向こうに凝視すれば
言葉を奪うように口付けてくる横暴な口唇に、強制的に口を開かされ、痛みを伴う強さで舌を吸い上げられる。
もう抵抗する気も吸い取られ、室井の成すがままに犯される。
蕩けて形を失い、散り落ちていく怖さの中、何かを失っていく寂寥感が胸に広がり
切なげに眉を寄せた。
唾液が密着した口の隙間から漏れ出し、滴り落ちるようになってから、室井が少しだけ口唇を解放する。
至近距離で、獣のような光を宿した漆黒の眼が壮厳な光を宿す。
「いいな・・・・?」
覚悟を聞かれたのか、それとも行為の許可を問われたのか。
どちらにしても、もう青島にとってはさして意味はなかった。
膝裏に手を掛け、限界まで開かれた脚を胸に付くくらいに押し上げ、三本の指が未だ埋められたままの秘部に弧立した昂ぶりを押
し当てている男を
荒い息の弾む中で、霞む視界の向こうに捕える。
この先の、このひとの隣に立つ自分を思い描けない。どこかで二つの道が外れるのは必至だった。
なのに。
喜悦に揺れ、道連れにする
背徳に咽び、同じ想いである同胞感に、戦慄いた。
自分に執着する執念に、その想いの強さを思い知らされた。
優しさから、放っておけないだけの節介だとも思っていたのに、それだけではない熱と執着を感じる。
ああ、きっと室井も、自分に捕らわれたままなのだ・・・俺みたいに。
俺たちの時間は、ずっとあの日から止まったままなのかもしれない。
だったら、俺がこの想いと心中してやる・・・!
どこまでも優しいこのひとを護るには、それが一番だ。
俺がこのひとの時代に、決着を付けてやる。
このひとは想いを昇華して、俺から解放されて、未来へ進める。
このひとの踏み台になれるのなら本望じゃないか。このひとを救うのは、俺だ。
後の想いは全部、俺が引き受けてやる。
「あんたは、それで・・・?」
見下ろしてくる室井の瞳の奥に、どこか寂しそうな色を見つけた時
青島の中に悠然と、灼熱のような感情が湧き出でる。
キッと、眼差しを強めた。
「残せよ・・・あんたを・・・俺の中に・・・!」
情愛なんて、簡単に言えない。
言葉にしてしまったら、引き返せなくなる。
俺に刻み付けて。
あんたを見失わないように刻み付けろ。
あんだが見失わないように刻み付けろ。
覚悟は決まった。
こんな甘い想いを抱けるのも、相手が室井ならでは。
一生分の感謝と憐情を込めて、受け止めてやる。
このひとに対する、これが俺の役目だったんだ。このために出会ったんだ。・・・これは俺にしかできない。最高の勲章だ。
これで、俺たちは綺麗に終われる。
「俺に、刻み付けろ、あんたを・・・!」
その後の俺が、どこまでこの一夜に捕らわれようと、知ったことではなかった。
室井の腕を掴み、誘惑するような挑発するような、挑む光を宿した妖艶な瞳で、覆い被さる男を見上げる。
室井はその瞳を真っ直ぐに見下ろし
黙ったまま、昂ぶりを秘部に押し入れ始めた。
~~~~~~
抱かれて密着した二つの身体が同じ汗で濡れていく。
室井がゆっくりと侵入を始めると、指とは比較にならない、充分な圧迫感と重量が、青島を貫いた。
痛みと、経験のない閉塞感に、目の前が暗くなる。
両脚を高く抱え上げられ、衝撃に顎から喉元を限界まで逸らさせる。
紅潮した顔が汗で光った。
溢れるほど濡らされた秘部から、じわじわと粘液が漏れ出し、股を伝わるのが分かる。
室井の動きには迷いはなく、卑猥な濡れた音を立てて、体重を掛けて情熱の証を挿し込んでいった。
穿たれる感覚に、急激に込み上げる灼ける感覚が深部から沁み渡り、青島の顔は苦悶の表情に歪み、浅ましく喉を鳴らす。
こんなにも、奥深くまで奪われて、室井に染められる。
思考も千々に乱され、何もかもを暴かれ、解かれて、形を失っていく。
大きく口を開け、紅く色付く舌を覗かせる口からは、喘ぎ声すら出ない。
限界まで左右に開かれ、室井の手で押さえられた内股が、みっともなく打ち震えていた。
強烈な刺激に戦慄く身体が、妖艶に艶めき、ぬめる肌が青銅色にしっとりと生まれ変わる。
「・・・んぅ・・・く・・ぅッ」
性の責め苦に崩れ落ち、声も上げられず、滴る汗を散らしながら、身体が室井を受け容れていく。
室井にその淫蕩を伝えていく。
強請るように押し殺した吐息が室井の耳元に掛かると
室井が小さく呻き、青島の腰に手を添え一気に昂ぶりを押し込んだ。
灼けるような熱を深めていく身体はもう思う様に動かすことも出来ず、荒い息で仰け反って反射的に逃げようとすれば
腰を押さえられ、深く咥えこまれる。
思わす剥がそうとした両手を掴まれ、広げてソファに縫い付けられた。
身動きの取れない状態で、室井が切り裂いていく。
顎を逸らし、仰け反ると、ついに室井にグイッと奥深くまでを貫かれた。
「・・・っ、ぁ、は・・・っ、ぁあ・・・」
「凄い、な・・・熱くて・・・うねって・・・、俺のを全部埋め込んでいる・・・・」
宥めるように、仰け反った
背中を長い指先が幾度も辿り、しっかりとした胸筋に抱かれたまま、耳元に室井の耐え入るような押し殺した息がかかる。
灼けるような熱が、圧倒的な質量で、既に蕩けている内壁を押し広げ挟み込まれていた。
「抱くぞ・・・・」
ひとつ、大きく息を吐いてから、身体に廻してした手を解き、室井がもう一度青島の両手を取る。
指を絡ませ、キツく手の平を合わせた。
そのまま、紅く濡れている青島の下唇に歯を立てながら、室井が顔を傾け、口唇を塞ぐ。
一夜だけでもうすっかり馴染んだ所作は、躊躇いもなく薄く開かれた口内へ熱く滾る舌を潜りこませた。
室井が淫奔な動きで、緩く腰を回し
始める。
擦れ、裂くような痛みに、一瞬現実感が戻る。
口唇を塞がれているだめ、くぐもった悲鳴しか出せない。
両手を頭上までスライドさせ、しっかりと押さえ付けたまま、室井は少しだけ唇を離し、青島を見つめながら腰をグラインドさせる。
自分ではどうにもならない感覚に、息が否応にも乱れる。
ねちゃねちゃとした卑猥な音が響き渡った。
青島は漫然とした瞳で室井の目を見つめ、眉を切なげに歪ませながら、体内を貫か
れる感覚に耐えた。
――室井が自分の中で動いている・・・・。
あの清廉な室井に組み敷かれ、室井の孤立した肉茎で体内を貫かれている事実は、途方もない幻惑の世界で
白濁していく意識の中では、全てが曖昧だ。
されるがままに両脚を大きく広げ、犯され、下肢に打ちこまれる熱だけが確かな実感となっていく。
――もう引き返せない――・・・・
満たされる欠けたものの充足の悦びと、終末への足音が、無尽に青島を責め立てる。
もどかしさと、未知へ室井に引きずり込まれる恐怖から、震えるような掠れ声が漏れ
切られるような痛みが、胸を鋭く貫いた。
絶望の淵に追い込まれ、軽視してはいけなかった二人の繋がりの脅威と憂愁と、閉ざされた過去に怯み
耽溺する先に感じるのは、途轍もない冒涜と背徳感。
そして、捕らわれたまま抜け出せず止まっていた時間に、留めの烙印を押すように突き付けられる、情の呪縛。
もう、きっと、自分はこの罪から抜け出せない。
こんな圧倒的な情熱を刻まれて、なかったことになんか出来る訳がなかった。
この過去に閉じ込められ、置き去りにされる。
青島の閉じられた瞼に雫が一粒浮かび上がる。
何も変わらずにいられたらと願うのは、過去への呪縛を望むものなのか。或いは罪を犯さないための最終通告なのだろうか。
卑怯だろ
うが姑息だろうが、これは、それを一瞬でも願ってしまった報いなのだ。
室井が左右に揺らすように腰を淫靡に回し、埋め込んでいる箇所を大きく広げるように動かした。
ぺろりと舌を出して青島の唇を舐める。
やがて前後に腰を振り始めた。
ゆっ
くりと揺らされていく。
「・・・ふっ・・っ・・・んっ・・・んっ・・・っ」
律動に合わせてを吐息が漏れる。
ああ、そのために口を解放したのかと、ようやく理解し、悔しく思うが、室井の思うがままに、濡れた吐息を室井の頬へと吹きかける。
恥ずかしくて口を固く閉ざすと、口付けで柔らかく解かれた。
青島を至近距離で真っ直ぐに見下ろしながら、室井は角度を変え、奥を擦るように青島を貫いていく。
両手は相変わらず頭上に縫いとめられたままだ。
圧し掛かられている身体が異様に熱い。
汗ばんだ額に口付けられ、頬を舐め、再び口を舐める様に塞がれる。
その間も間断なく腰をゆるやかに律動させていく。
乱された息遣いの中、口を塞がれ、息苦しくなって酸素を求めて上を向くが、追いかけるように塞がれてしまう。
苦しさから頬を赤くさせ、青島はキスを解こうと首を振った。
「はあ・・・っ・・・ぁ・・・っ・・・・苦、し・・・っ」
そんな青島の抗議も聞こえないかのように、室井は更に強引に口を塞ぐ。
艶めかしく音を立てながら、口内も激しく掻き回す。
「あ・・・・おし、ま・・・・・ッ」
「・・・・・・っ・・・ん・・っ」
ようやく聞こえた自分を呼ぶ掠れた声に、雄の深い淫らさを感じ、身体がカッと熱くなる。
「全部、入っている・・・・分かるか・・・」
そう耳元に吹き込み、淵を辿るように腰を回す。
内壁を灼くような熱が、はち切れんばかりに押し広げ、擦り上げてくる。
青島は真っ赤な顔をして、視線を逸らした。
息を殺しながらも、悔しそうに横を向いたまま、唇を噛み締める。
だって、室井が自分に欲情している。その様がありありと青島を貫いている。
破裂しそうなほど腫れあがった肉塊が、きついほど埋め込まれ、奥深くまでを擦り上げる。
男の欲望を受け止めきれずに視界さえ閉じれば、室井の動きは更に卑猥になった。
両手を頭上に押さえ付けられたまま、少し乱暴にゆすり上げられる。
「・・・・・・・・んっ・・・はっ・・・ぁっ、」
室井の律動に合わせて上がっていく吐息。
深くまで奪われ、声を上げることすら出来ずに、荒い息が肺から室井の動きに合わせて漏れていく。
ざわざわと肌がそそけ立ち、慣れぬ感覚に、溶けていく錯覚を感じる。
室井は決してスピードは上
げず、ゆっくりと、しかし、しっかりと、しなやかに太く強く体内に楔を打ちこんだ。
男らしい筋肉を使った、力強い律動だった。
身体の奥底から室井に奪われ、蕩けさせられ、刻まれていく。
これが、この人に縋った代償なのか。
ヤケになって、他の人間に身体を差し出そうとした時とは全く違う哀惜や無常感が募った。
あの時は、キスだけとはいえ、こんなに切なくはならなかった。
今、焦がれた愛しさが行き場を失い、なのに、室井からは惜しみない情熱が息吐く間もなく注がれてくる。
その与えられる刺激も熱も、降り注ぐ傍から受け止められずに、零れ落ちていく。
どうにも逃がしては貰えそうもない現状なら、一夜だけの罪過を赦されると思った。
罪と痛みと引き換えに、この人を解放するための、これは通過点・・・儀式であると。
でも。
ちっぽけな二人が、こうして抱き合い、共有することが、一体どれほどの力になるのだろう。
何の価値もない、無駄なことかもしれなかった。
なのに、身の内から外から、室井を鮮烈に刻み付けられる。
誰にともなく、赦しを乞うて、自分を揺さぶる男を見上げる。
たった一夜でも、これが捕らわれた罪の代償だと言うのなら、出会ってしまった成れの果ては
確かにここなのだ。
そんな愚かな惰性に堕ちる俺には、相応しいかもしれない。
その深みに嵌まり、密かに一生を捕らわれる負荷を、赦して貰えるだろうか。
肌に刻みつけられる熱の重さに、俺は一人耐えられるだろうか。
多くの人は、ここでその甘い誘惑に根負けして、この手を取るのだろう。
そうして、利己に生きられる人間だけが、成功者となり、幸福者となっていく。
・・・でも俺は、そういう生き方が出来ない。
このひとを、巻き込んでまで幸せになんて、なれる訳がない。
こんな結末しか呼べなかった。
これが、恋の代償だというなら、ただ、哀しかった。
自分たちは近すぎたのかもしれない。
与えられる感情が。この恋が。あまりに綺麗で清浄すぎる――。
この強烈な記憶を、一人で抱えるには重すぎた。
青島の眼から涙がついに一筋零れ落ちて行った。
室井が、抱え上げ抑え込んでいた脚を片方解放すると、指先で、零れ落ちたその涙をそっと拭いとる。
青島が、切なげに眉を寄せた表情で、室井に焦点を合わした。
前髪が零れ、額に影を造っている室井が真っ直ぐに青島だけを見つめ下す。
「きれいだ・・・・・」
「・・・っ、何も・・・変わらない・・・で、いられたら、良かったのに――。そうしたらこんな決断、あんたに・・・・・」
「まだ、そんなこと言ってるのか」
室井はその涙に潤む瞳を見下ろしながら、一つ、強く腰を入れる。
きゅ、と閉じられた瞼から、また新たな雫が流れ落ちる。
室井が涙を拭った手を青島の下唇に這わせた。
なぞるように輪郭を辿ると、指先で口をこじ開ける。
そのまま二本、指を口内に侵入させ、強引に開かせた。
「どうせおまえはくだらないこと考えているんだろうな・・・、こうして俺に抱かれることもだ」
「・・っ」
「でも、なんでもいい。今のおまえを救えるのなら。そして――」
室井がゆるゆると腰を律動する。
「本当のおまえがここにいるのなら」
「・・んっ、・・ふ・・っ」
「もう絶対に逃がす気はない・・・・」
指で口内を掻き回し、舌をねっとりと絡め取る。
「諦めろ」
青島は弱弱しくそれを解こうと首を振るが、そのままグッと腰を入れられると吐息が漏れる。
「おまえが厭だと言ってもだ・・・・・逃がす気はない・・・俺が、全部を貰うぞ」
膝裏から左右に裂くほど押し広げられ、グッグッと腰を入れられる。
余すことなく突いてくる質量は、圧倒的で、ざわざわとした感覚を呼び、躯を火照らせていく。
奥深く、打ち込まれる度、何やら電流のようなものが躯に幾度も走り始める。
深く穿たれ、思わず青島は仰け反り、胸を晒す。
「ぁ・・っ、く・・・っ、くぅ・・・っ」
室井の指を噛む訳にはいかないという、辛うじて残った思考が、これまで堪え続けた嬌声を崩壊させた。
「は・・・っ・・・・アッ・・・っ・・・んっ、あぁっ」
艶めかしく、青島の声が途切れ途切れに漏れ始める。
室井はワザと乱暴に腰を入れ続けた。
「は・・ぁ・・っ、ゃだ・・・・、ァ・・・・ッ、んぁ・・・ッ、あぁ・・・ッ」
咽び泣くように、青島から声が零れ、その瞳を涙で濡らしていく。
それを、室井は愛おしそうに見下ろす。
室井は身体を倒したまま青島の脚を更に広げさせ、そのまま肩に抱え上げた。
奥深くまで室井の欲望が突き刺さる。
室井はそのまま腰を何度も回して中を抉った。
「ハッ・・・あぁッ・・・ァッ、・・・んぁ・・・・ッ」
青島は恥ずかしさのあまりに、腕で目元を覆い、身体を捩るが
太く貫かれている下肢から痺れるような熱が身体の奥深くに与えられ、その未知の感覚から逃れられない。
細い啜り泣きのような嬌声漏らし、悶絶する。
「あぁっ・・・ァ・・・ッ・・・くぅっ・・・あぁ・・・ッ」
「青島・・・もっと、見せてくれ・・・」
揺すり上げる律動は乱暴で、室井は獣のように腰を烈しく振り、角度を変えて腰を突きあげる。
圧し掛かるように体重をかけ、渾身の力を込めて、突き上げるスピードを上げていく。
内壁が、熱くねっとりとうねりながら室井の情熱に絡みつくのが、自分でも分かった。
粘着質の水音と、荒い二つの息遣いが重なる中、初めての男の感覚を憶えこまされ、痛みと圧迫感と、疼きに思考が白濁させられる。
室井の質量が、太く熱く、青島を捕える。
熱を持て余す蕩けさせられた内部を、何度も擦り上げられていく。
その違和感と痛みの狭間から、疼くような刺激が青島の身体を駆け巡る。
「くぅッ・・・あ、ぁっ・・・ゃ、あぁっ・・・」
僅かな理性と最後の意地まで無残にも崩壊させられ、浅ましく喉を鳴らした。
髪を振り乱し、指を咥えさせられた口から、唾液と共に、色付く吐息と喘ぎ声が、もうひっきりなしに漏れていく。
痛みより、正体の掴めない恐怖にも似た強烈な感覚と、溶け合うような錯覚が、身体中を過ぎる程の渦に引き落としていた。
奥底から込み上げてくる熱い想いが、喉も胸も詰まらせる。
足掻くことも赦されない、野性的な支配下に置ける交接は
思考も感覚までも、深い底に突き落とされるような経験で、脅える精神は子供のように無防備だ。
ソファを掴む手が、ついに室井を求め、青島は抱きしめるように縋りつくように室井を引き寄せる。
応えるように、室井が片手で青島の腰を引き寄せ、擦るように腰を動かし、的確に奥だけを刺激する。
余りに強い刺激に咽び泣き、身体が反射的にずり上がろうとする仕草を、室井が逃がす筈もなく
腰骨を掴んで引き戻され、下から容赦なく突き上げられる。
身体が大きく弾んだ。
広げられた脚が、痙攣したように震え、淫蕩の深さを室井へ伝える。
「はぁっ、ふぅ・・っ、ぅ、ぁあっ、んぁ・・ぁっあぁ・・・っ!」
「感じているのか・・・・?」
室井の楔は太く熱い。
そのどっしりとした質量感が、容赦なく突き立てられ
青島の秘部は思い切り開かれ、咥えこまされ、覚えさせられ、反応させられていく。
「・・ぃ・・・ゃあ・・・っ、ァッ、んあぁっ・・・、や、め・・・・・っ」
「答えろ・・・・」
奥深くまでを奪われながら、晒された胸を舌でねぶられ、脚を大きく押さえられ、内部から満たされ、壊される。
こんなやり方が、あって良い筈がないのに。
でも、溺れるような勢いに、引き摺られる。
痛いのか熱いのかも、分からない。
「・・・ぁん・・・ッ、あぁ・・・っ、んあぁ・・・っ」
「いい声だ・・・・・」
耳元にそう囁かれて、腰を回される。
「・・・アァッ・・・やめて・・・・・っくださ・・・っ・・・」
「だめだ・・・」
「も、赦して・・・っ・・・・・恥ずかしッ、んぁッ・・・ぁあ・・!」
「誰にも渡さない・・・っ。あぁ・・・おまえはもう完全に俺のものだ・・・・・」
唇も荒く塞がれ、室井の動きに合わせて揺さぶられる。
青島の細く柔らかい髪が、汗で光り、雫を帯び、肌に張り付いた。
「はぁ・・・っ、あぁ!・・・ゃあ・・っ!」
「・・く・・ッ、持って行かれそうだ・・・」
室井の荒い息遣いが耳に掛かり、室井も昂奮していることが伝わる。
欲望を出し入れする強い律動は止める気配はなく、全身で押さえ込まれたまま、抉るように突き上げられ
秘部から濡れた音が何度も響き渡った。
刺激に震え、頑是なく青島が顔を左右に揺する。
両手で青島の腰を掴み、室井が滑らかな動きで青島の腰をグラインドさせる。
「俺を見ろ」
「・・・やぁ・・・っ・・・くぅ、んッ・・・・むろ・・っ・・さ・・・・」
「ちゃんと、見ていろ」
青島が嫌がるように、首を振る。
もう一度、同じ場所を突く。
青島の下肢がビクっと反応する。
熱いだけじゃない、電気とも違う、もっと別の感覚が腰の奥から湧き出てくる。
媚肉の淫猥な動きで、室井にもそれが伝わる。
室井が何度も同じ場所を攻める。
「・・・・・・アッ・・・・あぁッ・・・・んッ・・・・っく・・」
「脚を閉じるな」
室井は青島が一番反応を見せた箇所をワザと小刻みに突き立て、両脚を両手で左右に開いて押さえ付けた。
「ぃやぁ!そこ・・・っ、放せ・・・っ、んぁ・・・、ぁ」
青島が顔を何度も振る。汗で前髪が光る。
膝裏を胸に付く程押し広げ、卑猥な体位を強要される。
荒い息を漏らし、身体を強張らす。
「や・・・だ・・・・・もっ・・・・、っ・・・・アッ、あぁッ・・・」
「すごく熱い・・・」
小刻みに奥を刺激する。
室井は卑猥に腰をくねらせ、ひときわ大きく腰をグラインドさせた。
「・・んぁっ・・・!・・・・・や・・そこっ・・だめっ・・んぅ・・・」
「柔らかくて・・・・・俺に・・・・吸い付いてくる・・・・・」
そのまま数回、室井の楔が秘部を掻き回すように動かす。
「ぅんっ・・・くぅ・・・っ、んあ・・ッ」
「感じているんだな・・・?」
そのまま、ひときわ強めに腰を入れられ、奥をクイックイッと突かれた。
しがみ付く場所もなく、強烈な刺激からの逃げ場もない。
ビクビクと跳ねるように身体を震わせると、必要以上に脚を割り開かれ、穿つ動きを少し強められた。
「・・ァ・・・ッ、ぁあ・・・っ、ぁあ・・・っ、も、そこダメ・・・ッ」
「もっと・・・だろ」
「ぃや・・ぁ・・、それ・・っ、おかし、くなる・・・ッ」
「ここ、か・・・」
晒された箇所を室井に思う存分弄ばれた青島は背中をシーツに海老のように逸らして嗚咽を漏らす。
咽ぶような息の元、青島が絶え絶えに告げると、室井は時折腰を回しながら穿つ動きを早めた。
もう戸惑いも遠慮も払拭した男の律動は獣のようで、雄の本能のままに凌辱する相手の躯を的確に翻弄し始める。
「ぁあ・・っ、は・・・っ、っく、ぅあっ、ん・・・ぁ」
「もっと・・・・見せろ・・・見せてくれ」
「ひっ、ぁ、んぁ・・・っ、・・っ、く・・っ」
忌々しいほど、熱の中に残る室井の冷静な自我が、対象的に乱されている自分の羞恥を煽り、好き勝手される強淫に躯が火照る。
押さえられた躯に打ち込まれる熱の逃げ場がない。
室井の楔が青島の中に完全に咥えまされる度に、鋭い電流みたいなものが媚肉に走りだす。
それを逃れようと身体を身悶えさせると、逃がさないように更に押さえ込まれた腰に、一点を執拗に抉られた。
眉を寄せた淫蕩に歪ませた貌で、口を大きく開け、背中を反らせて青島は掠れた悲鳴を上げる。
「い・・や・ぁぁ・・っ、ぁああ・・・っ・ぁあッ室井さんっ室井さんっっ」
助けを乞うように、青島が忘我の中で、ついに室井の名を呼んだ。
次の瞬間、青島は室井に後頭部を引き寄せられ、強く唇を塞がれ、口内をめちゃくちゃに掻き回される。
思うままに舌を痛むほど吸い上げられ、同様に腰も抱えられたまま、大きく内部を掻き回された。
室井の腰が激しく蠢く。
熱く怒張した楔が太さを持ち、口唇の隙間からも後穴からも、粘液の卑猥な音がする。
空いている手で、青島の反り立った中心の根元を達しないよう握り締められ、熱く蕩けた内部を意地悪くグリグリと弄られた。
「あぁッ!・・・っ・・・う・・・はぁっ・・・むろ、さ、あぁ・・・ッ、あぁっ、あぁ、んぁ・・・っ!」
肩を抱かれ、力強く腰を振られる。
「っ・・・ほしい・・・っ、お、まえがほし・・ぃ・・っ」
「ヒィ・・ッ、ん!・・あぁっ!・・んぁあっ!・・・・・室、さんっ!やあぁっ・・・っ」
涙と唾液でぐちゃぐちゃになった顔を室井に晒し、火照る身体に、容赦なく欲望を埋め込まれる。
いつしか青島の貌は、達することの出来ない絶頂に歪み、耽溺していた。
「それッ、ああ・・っ、あっ、あっ、んあっ」
室井に全身を揺さぶられながら、快楽とも痛みとも取れない涙が、幾筋も零れていく。
頭を振って、何度も逃げようとする大きく開かれた脚の中心に、楔を強く緩く幾度も打ちこまれる。
荒く、熱い吐息を漏らしながら、揺すぶられ、青島は必死に室井の律動に堪えた。
余りの衝撃に、仰け反り、頑是なく顔を振り、喉元を筋立てて晒す。
「ァア・・ッ、あぁ!・・は・・・っ、ぁ・・んぅ、っく、アッ」
蕩けさせられた内部は何度も擦られ、熱を持ち
青島は全身の力が抜けるように、最早室井に促されるままに、卑猥な格好で、身も心も解かれていく。
「ふぁ、んくっ、ゃ、ぁあっ、助けッ、赦しッ・・、も・・ぉ、ムリ・・・・っ」
初めて与えられる場所からの、強烈な悦楽に、意識は霧散した。
何を口走っているのかも、分からない。
こんな崩れ去るような快楽は、知らない。
もう、思う様にも動けず、力の入らない滑る手で、それを与え続ける室井に必死に縋る。
卑猥に開かれた内股が、小刻みに痙攣していた。
「・・あぁっ・・・・くぅぅん・・・っっ、ぁあ!ぁあ!・・ああ・・・っ!達き、た・・っ」
「う・・・・くっ・・・・・ウ・・・・っ」
「・・ろぃさん・・っ、いやあ・・っ、ああっ、ああっ、ああっ」
二人分の荒い息だけが、室内に響き渡る。
「ぃい・・・ッ、もっと鳴けばいい・・・ッ、俺の前で・・ッ」
「ヒィ・・・ッ、んああッ、くぅ、んぁあ・・・っ」
か細い啜り泣きのような声だけが、聞こえていた。
我慢して、一人で泣いて、一人抱え込む男は、縋り方も下手で。
だったらいっそ、泣かせて啼かせて。
全部壊してやる。
「おまえ、のッ・・・全部をくれ・・・っ」
室井がうねるように腰を揺らす。
腰を持ち上げられ、反り返る嬌態が、汗で光り、ソファの上に浮かび上がった。
青島は肩しか付いていない状態で、室井の淫蕩な動きの情熱で抉られ、大きく揺さぶられ続ける。
「んあ・・っ、ぁあっ、ぁあっ、・・はっ、・・・ああぁっ・・・っろい、さ・・ッ」
灼けるような雄の炙りを発する漆黒の瞳で、室井は青島を見降ろした。
一際大きなグラインドで下から穿り、わざと手酷く、腰を回すように突き上げる。
「あっ、あっ、ぁあっ、ヒン・・ッ、んあ・・っ、ぁあっ、ぁあっ、」
組み敷かれた身体全てを奪われていく。
淫らに脚を広げ、理性も、羞恥も、何もかもを剥ぎ取られていく。
肉の底を灼くような焦燥に、身悶え、喚き叫ぶしかできなくなる。
もう思考はとっくに放棄させられていた。
室井に導かれた同じ享楽の中に、二人は確かに一緒に居た。
今だけは、確かに同じだった。
倒錯のような非現実感と陶酔の彼方へと導かれ
流されていく意識をせめて留めたくて、青島は、せめてもと、ぬめる室井の背中を凍えるように抱き寄せていた。
~~~~~~
解放の余韻に全身が痺れている。
室井は、荒い息を整えながら、自分の腕の中で横たわり、弛緩している青島のこめかみに、そっと口付けを落とした。
欲望はまだ青島の体内に埋め込まれたままだ。抜きたくはなかった。
「室井さ・・・も、達った、の?」
「・・・・ああ」
目を瞑り、荒い息を吐きながら、それでも自分を気遣う青島を、室井はじっと見下ろす。
汗が春の月を浴びて碧く浮き上がる身体は、抱いた後だというのに、清廉だった。
額に張り付いた前髪の、真珠のような水分を口に含みながら、優しく手串で梳かす。
未だ自身を埋め込んだままの箇所は、余韻に熱くうねった。
己に向かって淫猥に開かれたままの内股を、そっと撫で上げる。
愉悦に濡れた身体は初心に震え、濡れた口唇から甘い吐息が打ち震えた。
濡れて光る口唇に、そっと己の口唇を重ねる。
これが初めての交接なのだ。
男だから、局所を弄ばれれば達くことはできたが、それでも初めての青島にとっては、苦痛もまた、同じくらい感じていただろう。
口付けながら見下ろせば、宵の中に浮かび上がる青島は、本当に綺麗で
閉ざされた瞼に光る雫が宝石のように映る。
この上ない、神聖なもののように、思われた。
この存在に手を出して良いのは、自分だけだという誇りが、室井を熱くし、芯から酔わす。
これ以上ない深奥まで奪い、浚って、それでも脆く、尊く愛しい存在は、室井を捕え、離さない。
なのに、どうしてこの壮麗なるものが、俺のものじゃないのだろう。
身体だけ手に入れても、酷く、遠い。
抱いている傍から消えて行きそうな儚さに、息が詰まった。
生涯を掛けて、手放さないと、心から誓う。
秘めやかに誓いの口付けを落とす。
こんな、大切に想える存在が、自分の腕に在ることが赦される、夢幻に彩られる春月夜だった。

ネットで浚って頑張ってえろに挑戦して惨敗した残骸。長すぎだ・・・でもどこを削ったら
良いのか分
からない・・・。
そもそも恥ずかしくて読み返せない・・・////////