仮初めの光が朝靄を裂いて、優司と村井が眠るマンションのカーテンの隙間から差し込んだ頃。
室井は、微かな音が聞こえた気がして目を覚ました。
のろのろと身体を起こして、音源を探る。
部屋はまだ薄暗く、寝起きの視界ははっきりしない。
けれど…この音には、聞き覚えがあった。
…携帯だ…。
ぼんやり思いながら、室井は寝起きの頭を振って、リビングに置いてあるはずの携帯電話を探した。こんな時間に…なにか起こったのだろうか。事件ならば、 すぐにしゃきんとしなければ。
しかし、脱ぎっぱなしのコートから取り出した携帯電話は、沈黙していた。
微かな違和感を感じる。
着信の表示もなく、さっきまで聞こえていたはずの音は耳の奥に残った幻聴のような気がし始める。
だが…確かに聞こえた。幻聴などではないはずだ…。
はっとした。
サイドボードの抽出に入れて置いたもう一つの携帯電話。プライベート用で、番号を知っている人間は限られている。
表示を見た。非通知だった。
なぜ…?
胸が騒いだ。
ただの悪戯だと思い切れないなにかが、胸の奥に渦巻いていた。
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