どこか既視感のある、白い空気に包まれた東京の街を見下ろしながら、室井は再び鳴った携帯電話を見つめていた。
また、かかってくるんじゃないか、と…馬鹿な期待をして、持ち歩くようにしていた。
天国にも携帯電話の電波は繋がるのか?
徹夜明けのぼやけた頭で考えながら室井は苦笑して、悪戯電話にちがいないそれを手に取った。
「室井です」
…告げられた名前は、いつか聞いたことのあるものだった。
「なぜ、きみが…?」
声が震える。
東京を包む、白い朝靄。
それに消えていった緑色のコート。
今なら手を伸ばせば、その裾を捕まえられる。
「…少し待ってくれ」
室井は怪訝な顔をして自分を見る中野に目を向けた。
携帯電話を耳から離し、小さく言った。
「…全員集めてくれ」
中野は、はっきりと頷いた。
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