恋 煩い 7.5









16.
「寝室へ。それとも床の上がいいか?」
「なんか、ヤらしい、言い方」
「ヤらしいこと、したいんだろ」

耳元で囁かれる言葉はそれだけで妍冶だ。
肌を栗立たせつつ、そうだけどと口籠る青島の顔を室井は覗き込み、一度だけ頬を撫ぜると馬乗りとなっていた身体を起こした。
青島の手首も掴み上げ、そのまま青島も引き起こしてくれる。
勢いに任せ、青島は両手を延ばして室井の首に巻き付けた。

「・・・おい」

離れたくないとばかりに懐いてくる青島に、咎める室井の声は柔らかい。
慈しむように後頭部を掻き混ぜられ、それだけで青島の心ははしゃいだ。

「連れてって」
「暑い」
「んな格好してっからっしょ」

室井の襟首を手荒に引き寄せ、脱げとばかりに、その理性の塊のような秩序立つ室井のスーツを青島が指摘する。
夏も間近というのに、ベストをきっちり着込み、ワイシャツのカフスまで留めている室井は
それだけで青島に犯し難い禁域を見せ付けた。
額が擦り合う距離で陰影に潜む艶めいた青島の瞳が誘うように妖しさに堕ち、室井の口元が軽く尖った。
食い入るように見つめる室井は、それでも理知な顔を保ち、膝を立てる。


手首を放さない室井に連れられ、廊下を出て、電気を点ける間も惜しみ、奥部屋にあるベッドへと連れ込まれた。
尤も、ここにはベッド以外何もなさそうな手狭な部屋だ。
蒼に溶け込む大気に、二つの影が軋みを上げるベッドへ崩れ落ちる。

「厭なら・・・ちゃんと拒んでくれ、青島」

己のネクタイに人差し指を掛け、左右に緩めながら室井が最終確認だと言わんばかりに聞いてくる。
厭なわけないだろと思いつつ、未だ煮え切らないことを聞いてくる室井に、青島は顰め面を返した。
そのくせ、迷うことなくベッドの上で大胆にキャリアの背中に手を回せるほどには、青島も開き直れない。
せめてもと、覆い被さってきた男のネクタイを奪い取り、引き抜いてベッド下に放り投げてやった。
ベッドに倒れ込んだままの態勢で指先を伸ばし、未だにきっちりかっちりと理性ごと武装するワイシャツのボタンにも手を掛ける。

室井の喉仏が無暗に上下し、極度の緊張を保つ強張った視線は青島を凝視したままだ。
青島の指が室井のベストのボタンを見せ付けるようにゆっくりと外していく。
注がれる視線がひとつごとに擦り切れる緊張を孕む。
肩から剥ごうと伸びたその時、仕掛けるように青島が一度視線を上げる。
二人の視線が瑠璃の大気に混じった。
自分の魅力を存分に熟知している青島の挑発だ。
強張った頬を硬直させ、室井は音もたてず、その手を遮るように掴んだ。

動きを止めた青島を目線で縫い止め、室井はがばっと自分でベストを脱いだ。
スレンダーな胸板がシャツ越しに浮き上がる。

「聞くだけ、野暮だったな」
「まどろっこしいよ」

ワイシャツまで脱ぎ去ると、室井はそれもベッドの下へと落とした。
筋肉質に引き締まった逞しい肉体が、青島の上で夜光に浮かび上がる。
息を止める青島をベッドに沈ませ、室井はその首筋に口付けを落とした。

「おまえ、抱きたいか?」
「んだよ、抱く気満々のくせに」
「分かるのか」
「わっかるよ」

室井の手は戸惑いもなく青島の白シャツの下から手を滑り込ませ、素肌を暴いていく。
男に組み伏せられることに情欲が煽られる日が来るなんて思わなかった。
視覚だけでこっちがどぎまぎさせられるばかりで。
青島の滑らかな肌の感触を何度も確かめるように、室井は弄ぶ。
腹を弄られ、その指先が平たい胸へと忍ばされ、合わせて首筋をなだらかに柔らかな口唇で辿られて、思わず青島は顎を反らした。
室井に膝を割られて、圧し掛かる重さに、くらりとした熱に冒される。

「・・ふ・・ッ」

不意に強く一度鎖骨近くを吸い上げられ、乱れた髪の奥で痛みに青島が顔を歪める。

「・・痕、付けんなよ・・」
「明日、休みなんだろ」
「消えないと思うけど」
「見えるところには残さない。今夜はそれで勘弁してくれ」

室井が独占欲を丸出しに貪ってくる姿に、青島は何も言えなくなる。

「んな、優しくすることなんか・・・ねぇよ、俺なんかに」
「優しくなんかない。君を破滅に追いやるかもしれない男に、優しさなんか――ない」

それでも、青島に触れる手は酷く繊細で、壊れ物を扱うような仕草で親指と人差し指で胸の突起を戯弄する。
労わるような、慈しむような、その恐々とした触れ方に、室井らしい性格が透けている。
じれったさを齎すような、そんな捏ねたり揉んだり、耽る様子は女として扱われているようで、むしろ青島の方がじっとしていられない。
そんなところ感じるわけがないと思いつつ、体温の違う男の手は心地好い。

「またそんな、ずるい言い方する・・・」
「君に嫌われたくないだけだ」

泣きたくなるような心境で、青島は細長い足を片方折り曲げ、室井に首筋へ舌を這わされるままに顔を横に反らした。
シャツがはだけ、室井の眼前に晒される青島の長い首筋の輪郭に、吸い寄せられるように室井がしゃぶりつく。
刹那、獣のような荒げた息に、思わず身を竦ませる。

「ん・・、」
「やっぱり、海の匂いがする・・・」
「たばこ、じゃなくて?」
「煙草も・・・」

顎から喉仏を辿られ、はだけたシャツの隙間へと室井の舌が移動する。
顔を胸に埋めるようにして、室井はまた一つ、そこを強く吸い上げた。

「・・っ、けっこ、じょーねつ的なんですね」
「本当に厭だったら言ってくれ。そうでないと、俺はもう、止まれない」
「そしたら、止めちゃうの・・・?」
「・・・逃がしてはやれないが」

言葉尻を濁しつつも、室井の指は青島の白シャツの前ボタンを全て外してしまった。
するりと室井の腕が背中に回され、青島は仰け反らされる。
綺麗に反る青島の背中を、室井はシャツの上から執拗に何度も玩弄し、背骨を辿った。
その間、青島の丸みを帯びた肩に何度も口付けられ、手の行き場がない。
どうしようかとうろうろ宙を彷徨うまま、視線も彷徨って。
薄く脚を開き、室井を挟んだ状態で、扇情的な格好をさせられ、ざわざわとした感触が青島の全身を支配する。
暗くてあまり見えないけど、きっと今、室井の眉間に皺が寄っているに違いない。

室井の顔を両手で持ち上げた。
強請るより先に口を塞がれる。が、すぐに室井は離れた。
芯から灯る焔に、青島は思わず震え、凝視する。

「すごく、欲しい」

本当に、自分を欲しがってくれて、でも必死に雄の傲慢な情欲を抑え込んでいる、大人の男の眼だ。

強張る躰を囲うように室井の腕がしっかりと抱き締め、もう一度首を傾けた。
確認するように視線を合わされ、それでもまだ触れてはこない。
一cmほどの距離を残し、じっと覗き込まれる強い男の視線は、熱く、鋭い。
青島の裡まで焼け焦げそうだった。

息を止め、視線が駆け引きをする。
じわりと熱を上げるような時に堪え、青島がじっと見上げれば、室井はゆっくりと口唇を近づける。
まだ触れない。
焦れる熱は極度の色香を以って青島を支配し捕り込まれる。
震えるままに赤い口唇を薄く開けば、それが合図となって室井は口付けを許してくれた。
初めに軽く、そして、徐々に深く。
ゆっくりと青島が瞼を閉じる。
今度は躊躇うことなく両手を室井の裸の肩に巻き付け、首を傾けて口を明け渡しせば、口付けは深いものへと変わった。

忍び込む男の舌が灼けるように熱く、口腔を探るように妄りに擦り上げていく。

触れることなど有り得ない筈のぬくもりだった。
絡み合う舌が卑猥な水音を立てはじめ、甘ったるい夜気に溶け出した。
忍び込ませたままだった室井の神経質な指先が、何度も胸の尖りの周りを円を描くように遊玩し、執拗に捏ね始め、青島の全身が火照っていく。
強くも弱くもない、緩やかな愛撫は絶妙な力加減で、室井の器用さを呪いながら、熱い息を吐きだした。

「・・は、ん・・っ・・・」

キスの合間に酸素を欲することで必然的に甘い吐息を漏らされる。
それが嫌で息を殺せば、躰も力む。
キスくらいで敏感な反応をする自分を見抜かれ、室井が口端だけを持ち上げたのが分かった。

ってゆーか、俺の方がすきだって分からせたいのに。

負けん気のまま口腔に誘い込めば、容易く乗ってくれる。
でも、そのまま埋め込まれた分厚い肉に上擦るほどの刺激を与えられ、口の中から痺れていく。
解放は許されぬまま、室井が解すように背中を何度も愛撫し、キスの角度を変えてくる。
薄い男の口唇は、器用に啄み青島のふくよかな膨らみを遊玩し、上質なリードを奪った。

室井が名残惜しむように口付けを解いた。

「そんな声も、出すんだな」

感じているのかと、わざわざ問われている気がした。
そんなこと、朱をはたいた青島の顔を見れば一目瞭然である。
答えるのも癪で、強気な眼差しを湛えれば、闇の中で室井の漆黒の眼が艶めいたのが分かった。

「さっきみたいな、激しいの、してよ」
「・・壊されたいのか」
「こわれません」
「君を大事にしたいと言った」

腕だけに絡まった青島のシャツはそのままに、室井は組み伏せた肢体に目を眇め
今度は直接胸の尖りを口に含んだ。
濡れた感触が夜気に触れ、熱を意識させる。
先端には触れず、室井は舌で円を描くように何度も刺激し、柔らかな個所は赤く濡れ光った。

「この躰に触れたくてずっと待っていた・・・」

室井の赤い舌が青島の艶肌を物欲しそうに這い回る。

「泣かせたから。待たせたから。気付いてやれなかったから。――理由など幾らでもあるが」
「・・・」
「でももう、俺のほうがもう、待てないから」

その掠れた雄の声に、青島は身震いする。
ようやく理解した気がしていた。室井の中の自分の存在の大きさ、室井の愛情の重さ。室井がどういうつもりで自分を欲しがっているのか。
無理だと分かっていて、すべてを欲し、一つとなりたがる不安や心細さ、そしてただ一人の相手を永遠に願う、情愛の強さ。
愛が齎す男の剛健さを建前に、それを押し付け植え込む原罪意識への葛藤。
それらを一人で抱えようとする室井の覚悟と、直向きに向けられる執愛は、恐らく青島の想像すら超えている。
こんなにも想われて、胸が軋んでくる。

「ね、俺の・・どこが好き?」
「いきなり、なんだ」
「どこ好きになってくれたんかなーって。オトコだし、けっこ、ハードル高いじゃん。惚れてるって境目、分かんなく・・ね?」
「顔」

未だ胸にご執心だった室井が即答する。

「なんだそれ」

小さく青島が吹き出したが、室井は真剣のようだった。
複雑そうな顔で室井みたいに青島が眉間を寄せて考え込んでいると、室井が夢中になっていた肌から顔を上げた。
宝物を扱うような手つきで怪訝な青島の髪を撫ぜ、頬を包み、優しく微笑みを湛える。
その顔に、うっと詰まって青島は硬直した。
室井は時々、見せたこともない顔をしてみせる。

「君こそ、俺なんかのどこが好きだというんだ」
「お、面白いところ・・・かな」
「・・・つまんない男だろ。何もかも」

自虐的でもなさそうだが、淡々と告げる室井の声に、青島はまた小さく首を傾けて見せた。
恋に疑問を感じることはあっても、そこに懸念はない筈だった。少なくとも自分たちにおいては。
自分たちは愛だの恋だの現をぬかす前に、魂から共鳴するような、そんな運命共同体な感覚を経験してしまっている。
だからこそ、その爛れた共有感覚と、今更後付けしたような恋との境目は、青島にとっては割と不透明だ。
いっそ、恋でも愛でもなんでも良いのである。
室井とこの先同じ強さの同じ気持ちで共に歩んでいって良いのなら。

手の平をそっと室井の背中に回し、青島は室井の肩から肩甲骨、そして括れる腰を撫ぜ、臀部を辿った。
堪え入るような室井の吐息が、名を呼び、それが耳を爛れさせた。

「すごく、カッコイイ・・・。どやったら室井さんみたいに大人のオトコって感じの身体になりますかね?」
「そう見えるか?」
「はい」

シックスパックが盛大にあるわけでもない。
だが、腰に掛けて引き締まり、逞しい臀部がそのラインを作り出していることはスーツの上からでも分かるものだ。

「トレーニングしろ」
「もしかしてずーっとやってるとか?」

まあなと言って、今度は室井が青島の躰のラインを辿る。
肩から胸、滑らかなカーブを描く腰と、男にしてはふくよかな桃尻。
さわさわと弄られ、青島は思わず身体を捩らせた。
それを許さず室井は足で青島を縫い付けると、身じろいだ動きに合わせ、強引にスラックスを尻下まで引き下ろす。

あまりの手際良さに、驚いた青島が緊張も忘れ、盛大に目を丸くした。
ただのベッドトークが性行為になっている。
これが大人の男のベッドテクなのか?

既にワイシャツは腕に絡まり、トランクスが露わとなった青島の躰が夜の帳に照らされ、艶冶に浮かび上がった。
その顔をしてやったりと覗き込むと、青島の色素の薄い瞳が揺れ、室井が淫靡に口端を持ち上げる。

「確かに筋肉は薄いな」
「ぃ、意地悪いっ、ですよっ」
「骨格の割には付くべきところについてない。踏み込みも甘くなる。もっと瞬発力をつけろ」
「・・・・どやって」
「刑事だろ」
「うぅ~・・・でも確かにこの肉の硬さは羨ましい・・・一朝一夕じゃ・・・」

引き抜いた青島のスラックスをベッド下に落とすと、室井は青島を抱き締めた。
意図が分からず、青島も無意識に室井を抱き返す。

「女がほっとかなさそうな男に言われてもな」
「見た目にかっこい~とか言われたことはあるけど、具体的にどことか、みんな言わない・・・」
「言い難いんだろ」
「・・そお、かな?なんか、ありますかね?」
「顔」
「・・・誤魔化すんだ」

さっきと同じ答えに、青島がむくれた声を上げた。
額を掻き揚げ、室井がそこに軽くキスを落とす。
ん、けっこ、このひと気障だ。

「嘘じゃない。君の甘い顔や透けそうな瞳は、魅入られ視線を奪う」
「・・・」
「君の瞳は光線を浴びると何とも言えない不思議な色になる。甘そうで蕩けそうで、綺麗だ」
「・・ん、んん?」
「童顔で幼そうなこのマスクも、人好きのしそうな高めの声も、俺の好みだ」
「・・マジ・・?」
「それに、君の髪はとても綺麗だ。細くて手触りが良くて・・・艶めいて光っている」
「えぇ~???」

そういえば室井はやけに青島の髪に触れたがることが多かったことを思い出す。
男の短い髪だ。しかしふわふわと風に乗り、今もベッドに乱れ散る。

「誰かに持っていかれやしないかと、ずっと冷や冷やしていた」
「誰にですか、もぉ」

自分の魅力には無頓着な青島に、室井は眉間を深め、切羽詰まったような顔をしてみせた。

「おまえが欲しいと思ってから止まれなくなった。それが恋であるとかないとかは関係ない。俺はおまえを手に入れたかった」

一度堰を切った室井の饒舌は止まらない。
ぇ、こんな喋る人だったの?
軽く茶化す青島の言葉も無視され、室井は青島の首筋に甘く口唇を這わせ、耳朶を柔らかく口に含んだ。
湿った体液の感覚に、肉の触れ合いを思わせる動きだ。

「肌も綺麗だ。滑らかで透き通っている。色付いてて、こんがりと焼いたパンみたいに香ばしい」
「パンって」
「背中も綺麗だ、ニキビひとつなくて、手触りが良い」

室井の手がくしゃくしゃとなって腰のあたりで丸まっている青島のシャツの間から忍び込み、背中を下から、つつと辿った。
ひくんと身悶えてしまう。
気恥しさもあって、室井に気付かれたくなくて躰を硬くしているうちに、スッと室井の手が青島の内股へ潜り、片足を持ち上げられる。

「この長い手足も、見栄えの良い姿態も」

そのまま内股にキスを落とされ、さすがに青島は赤面した。
驚き、小さく悲鳴を上げた青島を放し、室井は今度は舐めるような視線で視姦した。

なんてかっこさせんの・・っ。

室井の唾液で濡れそぼる胸の尖りが紅くてらてらと二つ灯っている。

「待っ、あの、おろして・・」
「腰からのラインも官能的だ。尻も丸みがあって艶めかしい。未開発なのも、そそる」
「・・・かんべん、し――」
「おまえがこんな躰をしていたとは、想像以上だった」
「・・ぁの、ゃ・・・」
「俺には全部が眩しくて堪らない」
「分かったので、あの、」
「君の容姿に惚れたわけではないが、君の容姿に嫉妬し、欲情してるのも事実だ」
「・・ば・・っ」

恍惚とした貌で、室井が青島の白い内股に紅い舌をぞろりと這わせる。
赤い肉が闇に光り、濡れた軟体の感触に、思わず青島の内股が痙攣したように戦慄いた。
そこを室井はきつく吸い上げ、紅い印を付ける。
際どい端に刻印され、同時に青島に電気のようなものが走った。

「・・っ」

膝、内股をそろりと撫で上げ、室井は横目のまま青島から視線は外さない。
暗闇で、担ぎあげられた脚の間から漆黒の眼がなお黒く、吸い込むように青島を捕える。
壮絶な流し目に、青島は完全に呑まれて、戦慄いた。

「その腰の傷。・・あの時のものか・・・」
「ぁ――・・」
「その意地っ張りなとこも、勝ち気な眼も」
「・・、・・っ」
「自己犠牲的な愛に自己陶酔しているところも、その相手に俺を選んでくれたことも、全部が可愛くて仕方がない」
「も・・」
「鈍いとこまで可愛くて困る」

青島の片足を肘に抱えたまま躰を折り、髪に乱暴に五指を差し込んで室井が青島に深く口付けた。
青島の顔横に片肘を付き、誘うように口唇を重ねてくる。
室井の下で裂けるほど押し広げられた脚が宙に浮き、トランクスを付けているとはいえ、淫らな態勢を強いられ、青島は思わず身震いするが
その隙に室井が舌を捻じ込ませ、青島を口腔から制圧する。
舌を奪われ、呼吸も奪われ、技巧も追いつけない。

多淫に強弱をつけて舌を吸い上げられ、甘やかな吐息が朱に染まり、紅い口唇から零れ落ちる。

「だからもう、大人しく俺に抱かれてくれ」

言われ、カアァァッと顔が熱くなっていくが、淫蕩した瞳がぼんやりと室井を見つめ上げる姿態に
室井が目を眇める。
星々が瞬きをするようなか細い囁き声で、そっと語られた室井の低い声は、青島の細胞に満ちるように降ってきた。

それこそ青島は顔を作れなくなり枕を取って顔を埋めた。

「ベッドの中でいつもそんなクサイ台詞吐いてんの」

その枕も取り上げられ、親指で顎を掴まれて視線を縫い付けられる。
おでこをこつんと当てられ、キャリアでも官僚でもない一人の漢である室井がそこにいた。
恋人を抱こうとしているのに渋く眉間を寄せた顔に、青島はむろいさんだ、と遠く思う。
至近距離で二つの瞳がくすりと笑い合った。

このひと、ほんっとに俺のこと好きなんだよなぁ。
どうしてだろ?
いっそ照れを越えて賢者タイムに入りそうな思考を、ふるふると振り払う。
そんな好かれるような覚えはしたことがないし、だったらどこかで目が覚めたと言って室井に我に変えられても
ここまで振り回された代償は大きすぎる。
覚悟、させられちゃったのだ。封印しておく筈だった恋に。

室井の低い嘆息が口唇を擽り、吐息に酔わされる。

「すまない」

何を謝ることがあるのだろう。
瞳を閉じて、もう戸惑いも躊躇いも、恥じらいすらなくなった青島が、そっと裸の背中を抱き寄せる。

「俺が俺の意思でおまえを抱く。後の責任は何も感じることはない」
「!」

本当に、心の奥から震えた。
抱き締められた男の腕の中で見る部屋は、オーシャンブルーに染まっていた。
その宵闇が、重なり合う二人を神聖に包み込む。

真夜中の逃避行をしているみたいだ。
織姫と彦星も、毎年こんな景色を二人きりで見たのだろうか。
それともお互いしか見えなくて、天気なんか忘れてしまうんだろうか。

室井の覚悟があれほど切なかったのに、今は甘く青島を痺れさせる。

迫害されても追放されても、途切れない強い愛が二人を結ぶ。
相手へ印す罪の重さに、背徳的な罪悪感と優越感を抱いて共鳴する。
勝手に恋したあんたのせいとまではまだ開き直れない。それでも堕ちていくのなら、あなたとがいい。
いずれにしても、恋人にだけ紡がれる、贖罪の時間なんだと思う。

「もっと・・・触ってください。俺に」

室井の清潔そうな手を取り、膝を開いて、自ら花芯へと導いた。
躰の裡から、はしたなく、熱が糜爛する。

「先、進めてくんないなら、俺から襲っちゃいますよ」

愛撫されるまま、青島もまた指を侍らせ、室井の臀部を回り、スラックスのベルトへと指を絡めた。
小指で淫虐に刺激してやりつつバックルを外せば、既に形を変え始めていた室井が淫蕩に目を眇める。
青島の後頭部を乱暴に鷲掴み、引き下ろすと同時に、室井は青島の喉仏に強く噛みついた。














17.
「ふあ・・っ、・・アン・・ッ、く・・っ」
「いい声だ」

必死に歯を食いしばって声を堪えれば、耳元に妖しく囁かれた。
ぞくりと栗だった肌を隠すことも出来ずに、青島は身を捩らせて、室井の視線から逃げる。
汗で畝った前髪が朱に染まる目元を恥じらうように隠してくれる。

着々とシーツに縫い付けられ、リズミカルに要所を攻め落としていく動きは柔道の掛け技のようだった。
鍛え洗練された肉体も、非の打ち所のない攻撃も、無口なこの男の問答無用の挑発なのだ。
圧倒的な努力と自信と才能を見せ付け、相手を無言で黙らせる。

「俺だってさわりたい・・っ」

手先が器用な室井が恨めしい。
擽られるような接触が、痺れのような感覚を齎してくる。
いつの間にか手際よく脱がされたトランクスの間に室井の高潔な手が入り込み、青島自身を嬲っていた。
はしたなく露出し、ぬれそぼる青島の花芯を、先程までグラスを持っていた室井の手が優雅に玩弄する。
室井の趣味なのか時間稼ぎか、腕に絡まったワイシャツはそのままに、仄かに色付く形の良い下肢はシーツを絡まらせたままで
それを縛りとして、青島は淫乱な格好で固定されていた。

時折双袋も揉まれ、その度に打ち震える躰がヴェールに沈むシーツを波打たせる。
いつしか完勃ちとなって室井を求めるそこは、痛いほど赤黒く腫れあがっていて、男の手で感じるわけがないと高を括っていた自分が情けない。
眉尻を下げ、救いを求めるように室井を見上げれば、焦爛の闇が熱く見下ろしていた。
見られていることも晒していることも青島の羞恥を底から煽り、腰に熱がカッと集まる。
恥ずかしくて、拳を握り締めて声を塞ぐ。

「ん・・っ、ふ、・・、ぅ・・っ、」

くちゅくちゅとした粘性の水音が響く。
目が慣れて、知らない家具が見え始めた室内は、見知らぬベッドに組み伏せられた自分を意識させ
熱がこもり、青島の柔肌を艶めかせる。
年齢を忘れさせる青島の肌は、仄かに色付き、汗を弾いて、またひとつ、真珠を転がせた。
下肢の濡れ光る茂みの中央で、屹立つ昂りの根元をしっかりと握り込まれているそこが、黒々とした光沢を放つ。

襲い掛かる射精感を男の手でコントロールされる初めての経験に、青島はただ息も絶え絶えに室井を見上げていた。
どう反応すればいいのかも解らない。
あられもない姿で淫乱に細腰を浮き上がらせてしまう青島に、室井は丹念に、執拗に、容赦なく攻め立ててくる。

「・・ぁ・・っ、そんなとこ・・っ、ぁっ、あっ」
「そんなに腰を振って。それとももっとひどくしてほしいのか・・?」
「ん、んんっ、ゃ、だめですって・・・っ、ぁっ、あっ、それ・・っ」
「こんなに大きくしてる」
「・・く・・っ・・ぅ、ぁ、あっ、んぁっ」
「声を堪えるな」

室井が身を寄せ、青島の耳に低く命じれば、それだけで敏感な若い躰は刺激に震えた。

「あ、あ、うそ、嘘だろ、こんなの・・・っ」

あの室井さんがこんなこと・・!
さっきまであんな澄ました顔してたくせに。
さっきまであんなに無関心な顔見せてたくせに。

絶え間のない愛撫に変え、年上のリードで室井が主導権を奪う。
卑猥な言葉は青島を嘲弄するエッセンスだ。
頑是なく首を打ち振る青島の両手はシーツをきつく握り締め、室井によって付けられた情痕がアイスブルーの月光に妖しく浮き上がる。

「・・ぁっ、ぁっ、・・も・・っ、だめ・・っ、うま、すぎ・・っ」

ずっと惚れてた男に辱められる羞恥は想像していた以上に苛烈で、青島は手放せない理性との間で苦悶した。
なんでこんなに感じんの?
てゆーか、俺が感じさせたかったのに。
おればっかり、快楽に落とされて、恥ずかしくて。
室井さんが俺のあんなとこ、触ってるなんて。
室井さんのキレイな指が俺のあんなとこ、弄ってるなんて。

眉間を切なげに寄せて、青島は何度も膝を戦慄かせる。その度に撚れるシーツが青島の下で海のように波打った。
中途半端に足に残るトランクスが快楽を堰き止め、卑猥な染みに染まっていく。

室井の指先が鈴口を捏ねるように、親指で先端を揉んだ。
その絶妙なタイミングといったら。

「・・ぁあ・・っ、そこ・・っ」
「またそんな貌を見せる・・」
「こんな・・っ、の、ぁっ、や、も・・っ」
「可愛すぎる」
「ばっ、・・ぁ、アッ、はぁっ・・あ、あんたオトコ抱いたこと、あんのかよ・・っ」
「あると言ったら・・?」

驚いたような、ショックを受けたような、何とも言えない顔をして、青島が眉尻を下げた。
年上の余裕に抗ういじらしさに、室井はの目尻は闇に耽溺する。
こういう所が室井は可愛くて仕方がない。
歯向かってくるじゃじゃ馬っぷりも、負けん気の強い跳ねっ返りも、無垢で直向きな信愛も、室井にとっては愛しいやんちゃ坊主だ。
でもそれは、今はまだ室井だけの秘密にしておく。

「もうギブアップか?」

室井の腕の中、甘噛みされて低い声で姚冶な嬌笑に囚われ、涙目となった青島の瞳が不可思議な色に色付いた。
果実のようなふくよかな膨らみから、甘やかな吐息が零れ堕ちる。

「ま、まだまだ・・っ」

でも、本当に、こんなんじゃあっという間に達かされちまう。自分だけ。
俺も、触りたかったのに・・!
しかも自分ですら知らなかったポイントも次々に暴かれ、青島は躰から力が抜け落ち、端麗な背筋を仰け反らせた。

「・・ぁ・・っ、ンッ、おれ・・っ、んっ、・・くそ、」

荒く頭を打ち振るった。
汗が光となって青島を纏う。
息を途切らせ、燻る腰の痺れに喘ぎながらも、青島は必死に怺えた。
すっかりと紅く腫れあがった胸の突起は室井の唾液でぬれそぼっており、そこにまた室井は舌を這わせた。
敏感になっていたそこを甘く這い回られ、青島はまた掠れた悲鳴を上げた。

「む、・・ぃ、さん・・っ」

甘ったるい声で名を呼ばれ、室井は腫れた尖りに官能的に歯を立てた。
身を捩るように青島が室井の下で小刻みに身悶え、甘く熟し始めた躰が凄艶なラインを見せ付け、シーツを更に乱す。

「は・・っ、ぁ、ぁあ・・・、」
「おまえ、少し感じやすすぎやしないか」
「んなッことッ、んッ、ゃ、ああっ」
「警察官だろ」
「関係あるか・・っ、ぁ、ゃ・・っ」

ぴちゃりと濡れた音が淫靡に耳に届き、蜜をまた滴らせた。
自分から誘った。抱かれてもいいと思った。触れてほしかった。めちゃめちゃにすらしてほしかった。
だけどあまりの技巧に啜り啼き、こんな嬌態晒させられるなんて。
男にここまで乱されるなんて。

葛藤する男のプライドとは裏腹に、青島の抵抗も忘れた内股は、続きを強請るように室井に向かって淫乱に開かれる。
その艶冶な姿に室井の雄が煽られる。

火照った躰に、室井が遺した紅い華が幾つも咲き乱れ、青島の腰の傷がほんのりと桜色に充血する。
そこを室井はそっと指先で辿った。

「この傷は、ずっと俺の枷だった。何と詫びたらよいのかと。でも」
「・・っ?」
「背負わせてくれるのなら、今は俺の印にしたいと思っている」

なんてこと言うんだ。

「こんなに濡らしている」

わざわざ指摘し、室井は身体をずらすと、青島の昂りを握り込んだまま、要求通りにそこを口に含んだ。
熱くねっとりとした柔肉に咥えられ、青島は上半身を緊張させ、大きく顎を反らす。
大きく口を開け、節張った喉仏が男らしい精悍なラインを見せ付ければ、内股が室井を淫らに強請った。

「・・ぁああ・・・っ」

痛いほどの快感。

なんでそんなことまで躊躇いがないんだよ?
こんな風に幾人の女も男も抱いたの?
どうして俺にここまで・・っ。
どうして俺は、ここまで・・っ。
自分の知らない室井に激しく嫉妬し、自分の知らない自分に溺れ、底のない欲望に囚われる。

視線を落とせば、トランクスが片方絡まったまま脚をはしたなく男へ広げる卑猥な自分の姿と、その股間で自分の昂りを頬張る高潔なキャリアの姿があった。

「ひぃ・・っ、ん、ぁ、ぁ、ぁあ・・っ」

美しい輪郭を浮かび上がらせる青島の嬌態を、室井がじっくりと視姦しながら、頭を上下させていく。

「ぁ、ぁあ、すご、・・も、ゃ、あ」

視界から犯され、壮絶な快感が青島の腰の奥から引き出される。
みっともなく上げさせられる声が恥ずかしくて、必死に歯を食いしばるが、青島は堪えきれない。
啜り啼くような声で室井に哀願する。

「あ、あ、おねが、ぃ、・・くぅ・・っ、はぁ・・っ」

自分の股間で浮き沈みする室井の頭部を遮ろうと伸ばした手は、力なく室井の硬い短髪を掻き混ぜた。
官能的なその仕草に室井がより煽られることを知らぬまま、青島の目尻に薄く膜が張り、光を放つ。

「あっ、そこ・・っ、ぁ、アッ、く・・っ、ぅ、それッ」

喚き怺る青島の昂りに、室井は淫らな舌戯を繰り返し、高貴で端麗な男を穢す背徳感は、妖艶に滴る香りを纏い、極上の悦楽へと変化した。
浮かされたような熱い感覚に、何もかもが蕩けさせられて、ぐずぐずになって、濡れていく。
両膝を身体を使って抑えつけられ、舌をくねらせ先端をしゃぶるように刺激され、青島は白濁した粘調の液を滴らせた。

「・・ぁ・・っ、むろい、さんっ、俺っ、おれ・・っ」
「大丈夫だ。すごく・・きれいだ」
「ん、もっ、だめ・・っ」
「おまえこそ・・・今の自分が分かっているのか・・?」
「あ・・っあ・・、ぁあ・・っ、く・・ぅ・・っ」
「ものすごく、そそられる。男からの愛撫に随分と順応が早いし、強請り方も巧い」
「・・あっ、あんたにこんなことされて・・っ、・・っ、へーきなわけ、あるか・・っ」

真っ赤な顔をして室井の愛撫に息を乱す青島に、室井の眉尻が下がる。

「どこまで持つか・・」

痛いほど屹立した昂りの周りを舐め回しながら、独り言のように呟いた室井の声は、最早青島には届かない。
どんなに貪っても、抵抗らしい抵抗は見せずどこまでも受け入れてくれるように拓くかれる感度の良い青島の躰は
初めての男の愛撫を悦んでいるように熟していく。
その嬌態に雄として欲情しないわけがなく、豊かな太腿やふくらはぎの美しい脚線も、室井の手は味わうように隅々まで弄った。

「ぁあん・・・っ」
「たまらない・・・」

唸るように室井が一言告げ、室井は焦眉の顔で絶頂へと誘う動きへと加速させた。
青島が両手を広げてシーツを手繰る。
数度強く吸い上げたのち、室井が根元まで深々と加え込めば、青島は大きく口を開け、紅い舌を覗かせながら、眉をきつく寄せた。

「~~ッッ!!・・ッ!!」

さっきよりも強張るように、青島の身体が緊張し背を反らして仰け反った。
もう声すら出せない。
きつくしがみ付いたシーツがうねり、その上で青島の無駄のない背が海老のように反り上げる。
室井が拘束していた指を放し、そのまま再びグルリと舌で掻き回された青島は意識を飛ばしそうな程の快楽に息さえ忘れた。
顎を反らし、その引き締まる喉仏を室井の目に惜しげもなく晒す。
刺激の強さに思わず室井の腕を掴むが、縋ってはいけない人のような気がして、代わりにシーツを手繰る。
無粋な恋人に腹を立てたのかは定かではないが、室井は更に口を窄めるようにして、猥らな快楽を惜しみなく注ぎ込んだ。

「やあ・・・っ・・アッ・・・・・・だめっっ・・・・ぁっ、くっ・・!そこぉ、も、やめてくださっ・・・くぅうっ!」

理性が弾け、女のように内股を痙攣させ、足を掻きながら、もう声すら抑える理性も奪われる。
容赦なく攻め立てられ、青島は淫乱に何度も腰を振りたて――

「・・ぁっ、・・はっ、・・ッッ!!」

差し迫っていた欲望は室井の口淫に、あっさりと爆ぜた。
ようやく許された解放に、声もなく躰を震わせ、腰を突き上げるようにして青島が室井の口腔に濃い欲望をしとどに吐き出す。
恥ずかしげもなく震える下半身が熟れるように熱く、痺れていた。

喉を引き攣らせ、仰け反った躰は美しく光を纏い、有り余る快楽に芳香していた。

「あ・・、はぁ・・っ、はっ、はぁ・・、あぁ・・・」

色付いた身体を弛緩させ、青島が肩で荒く息を整える。
享楽の雫に濡れ、瞼を閉じた彫深い面差しは、セクシーながら無垢なままの純潔で、堕ちた快楽にも屈しない強さがあるくせに
蠱惑的な妖艶さを放つ。
その嬌態に室井が付けた赤い華が幾つも咲き、室井が息を呑んだことは、青島は気付く余裕もない。
開かれた両脚が室井を誘い込むように戦慄き、伸縮する秘肉を室井の眼前に晒した。

身を起こし、室井は長い指先を向ける。
匂い立つ色香に負け、昂りから滴った蜜で濡れた花襞に、室井は人差し指でそっと円を描くように戯弄した。
ピクリと反応し、青島が薄っすらと瞼を持ち上げる。
抵抗はない。

室井は青島に覆い被さると、柔らかな口付けを与えた。
室井の髪を無意識に握る手に、きゅっと力が籠もる。
弛緩したまま、言葉も発せない青島に、室井は傲慢な倖せを感じながら、室井の成すがままに躰を赦す青島を凌辱した。

「ん、んぅ・・、ふ・・・ぅ・・・ん」

淫らな水音を立てられ、隙間なく塞がれる熱に切なく青島が眉を寄せる。
力なく抵抗した指先は、結局室井の腕に縋るようにしかならず、それがまた室井の雄を煽っていく。

つぷり・・と室井が第一関節まで指先を挿入すると、青島は痛みよりも圧迫感で呻いた。

「ンッ、・・っ、」

狭いそこを、室井の指はゆっくりとタイミングを計るように撫でまわる。
ひくひくと喘いで内の肉の猥らさを室井へと教えた。
青島を胸に抱き込み何度も口唇を啄みながら、室井がもう一度指先を挿入する。

「ァッ、・・ッ、ィ・・ッ」

初めての挿入に違和感も痛みもある。
でも室井が望むことを、今は拒みたくはない。室井に一心に求められることを、ただひたすらに願ってきた。
ほんとに、すっげー好きで、見惚れて見惚れて、持て余すくらいの情愛に、窒息しそうだったのだ。
それがこういう形となって叶った。
今室井は青島のことしか見ていない。
好きって気持ちが溢れてくる。

室井の胸板に額を押し付けながら、青島は割られた脚を自ら開いた。
もっと貪られたい。もっとぜんぶ、もっと奥深いところまで暴かれたい。
それよりも、室井をもっと悦ばせたくて。室井の自我を崩壊させ、自分に夢中になってくれたらいい。
開いた脚で自ら腰を上げ、室井の指を媚肉で締め付けた。
それを承諾と取り、室井は愛おしいその兇悪な魔力に誘われ、室井は更に指を注ぎ込んだ。

「・・ッ、は・・っ」
「青島・・」

掠れた男の声に、煽られながら、それでも青島は、室井の胸に顔を埋め、呻き、啜り啼きを上げる。
室井が耳にむしゃぶりつく、荒い息遣いが聞こえる。
空いた手で、身体をラインを辿られながら、隅々まで暴かれていく。達したばかりの未開発の青島の肌は桜色に室井を誘惑していた。

「やめる、か・・?」

涙目となって、青島は潤んだ瞳を向けた。

「・・やめないで・・・ください・・・」

自ら脚を大きく開いて促せば、熱く熱る瞳で刺し、小刻みに揺らしながら室井の指が青島の秘花を奪う。
室井の人差し指が根元までくぷりと挿し込まれた。
透明の液体が溢れ、青島の茂みを更に濡らす。
太腿には室井の熱をもった肉棒が強く押し当てられた。
硬く、天を向くほど怒張している。

「俺を、奪って・・・。俺を、犯してください・・」

室井は繊細に人を求め、抱き締める男だ。
冷冽で硬派な面持ちとは裏腹に、熱い情熱に飢え、同じだけの熱量を相手に欲する。
そうでなければ閉ざされた室井の心は溶けださないのだ。
氷のように頑なで、その実怯えているからこそ、求めた相手を苛烈に捕え懇願する。

「おれを、あんたのものに・・室・・っ、さん・・っ、」
「知らないぞ・・」

髪から額、瞼へとキスが降ってくる。
室井はベッドでの相手のボルテージが上がるほどに燃えていくタイプだ。
深い愛情がなくても誘われていく青島とは真逆である。
その身体が、その目が、その指が、青島を愛していると叫んでいるのが、痛いほど伝わっていた。

「も・・っと・・、いい、よ・・っ」
「ああ、おまえの後ろは、俺の指をこんなにも埋め込んでいる・・・」
「もっと・・貴方がほしいです・・」

ぐいっと中に二本押し込まれる。

「・・・アアッ・・・」
「すごいな・・・こんなに中は熱くて、淫らで、絡みついてくる・・・」

反動でしなり、仰け反る躰を預け、耳へ舌を入れられながら囁かれて、青島は身体を熱くする。
いつの間にか指が増え、男の指を根元まで咥え込んでいた。

「分かるか・・?」

妖しく囁かれ、赤面した頬を拳で隠し、青島は横を向いた。
その弛緩した身体を横たえられ、室井が圧し掛かってくる。
割り込む室井の肢体を違和感もなく挟む青島の意識は、相変わらず室井の指だ。
ゆるりと出し入れされ、肉を嬲られる。

「・・ぁ・・っ、ンッ・・ンッ・・」
「こっち、見ろ」
「やっ・・」
「見られたい」
「こんなこと・・っ、されてて・・っ?」
「だったら俺にしがみつけ」
「でき、ないよ・・っ」

この期に及んで尚反抗する青島に、室井は征服するように覆い被さってその吐息ごと口唇を奪った。そのまま指先で青島を翻弄する。
こんなところまで赦して、自分はどうなってしまうのか。
室井の皮膚に爪を立てたくなくて、シーツを掴む。
漢に貫かれ、善がり果てる自分は、受け入れられるものなんだろうか。室井も、自分も。
室井が示す先はいつだって限界が見えない。

「淫乱だ。すごく・・」
「は・・っ、んっ、よ、欲情する?」
「憎らしいほど、そそられている」
「ほんと・・・」
「・・ああ・・」
「こんなの・・・俺じゃない、ですもん」
「ならそれも貰おう」
「っ」
「青島」

痛みなのか違和感なのか、初めて知る知らない感覚に、青島の細腰は合わせてビクビクと痙攣する。
淫らに開かれた内股が、朱に染まり、その中心で陰毛が光る先に反り立つものが揺れる。
それでも少しだけ、笑んで見せた。
その汗ばむ額に室井が口付ける。
追いつけない変化は爛れた色をして青島を喜悦へと塗り替えた。

どうしよう、すっげ、すきだ。このひとが好きだ。自分が思う以上に、好きだった・・・っ。

美しい弧を描く喉元に噛みついた後、室井に耳を舐められ、その水音に濡れた瞳を持ち上げれば、焦点が合わないほど密着して室井が映る。
掠れた吐息を含む口許で、耳を弄られ名を囁かれる。
耳に響く低いバリトンに反応し、青島は顔を歪めた。
呼ばれ慣れた名前のはずなのに、室井の声音は温度が違って感じる。
やっぱり、ずるい。

室井の綺麗で繊細な手が髪から頬へと移動し、青島の首を後ろから持ち上げた。
必然的に上向かされた格好になる。

「壮絶に、綺麗だ。・・・こんなものを抱けるなんて」

信じられないくらい、こっちだって煽られる。
片手で室井の後頭部を引き寄せ、青島は自分の口唇を押し当てた。

どれだけ好きだったかなんて、気持ちが破裂する。
やべ、も、・・・タガ、外れる・・・。
煩った恋心は封印してきた長い年月だけが知っていた。気付かぬままに囚われて、忘れ得ぬままにこじらせて。
欲しくて、でも触れることは叶わない筈だった口唇に、何度も何度も青島は口を押し当てた。
室井に甘く舌を引き出され、同じように花襞を掻き回され、何が何だか分からない。
吐息ごと奪うように口唇を塞がれ、舌を勢いよく奪われる。
激しく搔き乱された口接に、それでも目を閉じて青島は舌戯を委ねた。

主導権を奪わせない技巧に雄の強かな強引さが透けて見え、青島は抵抗も虚しくなすがままとなったまま
誘われるキスに、もっと欲しくて、自ら舌を差しだす。
患った気持ちは無自覚のまま、際限のない色香にやられて、それほどまでに魅せられていたのかだとか、もう良く分からない。

「熱くて、溶けそうだ」

耳に囁かれる甘い睦言も、滴る毒のようだ。
青島に口付けを返しながら、室井は秘花をくちゅくちゅと激しく玩弄し、熟れてきた肉壁を愉しむ。
熱く脈動し伸縮するその卑猥さを楽しむようにぐるりと撫ぜた室井は、その指を関節で折り曲げた。

「んっ」

室井が施す熱と、その指先からくる刺激に青島は頑是なく身悶える。

塞がれた口から注ぎ込まれる室井からの重すぎる愛情の丈を、全身で受け止めて、言葉に出来ない想いに翻弄されて。
勝手に応えだす身体の反応に惑乱する暇さえ与えず、身体の尤も深い部分までたっぷりと濡らされて。
羞恥も戸惑いも、蕩かされて、形を失っていく。
怯まずに重ねられてくる熱に息を吸い取られ、掻き寄せてくる腕に陶然とする。
咥えさせられたままの室井の指が、熱い。
もし、これが室井自身だったら。

再び室井の指が昂りに掛けられ、萎えていたそこにゆるりと熱を上げさせられ、敏感な個所を同時に戯弄される感覚に、躰はもう力は入らない。

「・・ろ、ぃ・・さ・・ッ」

恋しい相手を呼ぶ声に、返事はなく、室井は淫虐に刺激を与え、青島の口をまた塞いだ。
息も吐けない長いキスに、脳髄まで熱をもち、訳も分からなくなり、逃げ場を失った未知の感覚に怖くなった躰が勝手に震える。

酸素が欠乏し、それを補給しようと一旦顎を上げるが、それを追われ、塞がれ、息苦しさに軽く呻くが、室井はもう口唇を放さなかった。
下肢から湧き上がる見知らぬ感覚と、酸素の薄さに白濁とした意識は、堪えきれず漏れる嗚咽も飲み込み犯していく。
頑是なく首を振るが、口腔を隈なく制圧され、青島の目尻から強すぎる感覚に幾筋も滴が光筋を描いた。

「俺のを触るんだ」

青島の昂りに、灼けそうな熱が当てられる。
それがはちきれんばかりに雄々しく勃起した室井自身だと気付く頃には、室井は青島の昂りと合わせ、一緒に梳き上げていた。
されるがままに両脚を大きく広げ、擦り合わされる肉の熱さが、爛れた淫蕩を呼び覚ます。
口唇を塞がれたまま、捕られた手を重ねられ、青島は本能のままに腰を揺すりあげる。

室井は青島と共に想いを遂げ、青島は室井の指を咥えたまま初めて射精した。










18.
汗で艶めかしく光る青島の肌が、熟れた果実のようにオーシャンブルーの海に染め上がっていた。

「・・ぁ・・っ、・・は、・・・っ」
「最初に煽ったおまえが悪い」
「てかげんっ、して、くださいよ・・・っ」
「俺だって加減が分からない」

男に弄られてここまで感じるのかというほど、腰砕けとなった躰は今尚不規則に痙攣を繰り返す。
その淫靡な嬌態に、室井が怺きれずに柔らかなボディラインを指先で舐めるように辿った。
微かな刺激にさえ、今の青島の躰は敏感に戦慄く。

「ひどいよ・・っ」
「・・・」
「鬼っ、ヘンタイっ」
「さっきはあんなに可愛かったのに」

室井が覆い被さり、煩い口を塞いだ。
それでも青島の文句は止まらない。
というかもう、半分照れ隠しだ。
何度イかされたか分からなず、晒した醜態は、そう簡単に割り切れるものではない。
愛の共同作業は、実は赤っ恥体験の宝庫である。

「オンナノコだったら泣いて逃げちゃうんだかんねっ」
「・・・逃がすか馬鹿」
「どーせ一回逃げられたクチでしょ」
「・・・・、ヨシ。ならもう一回だ」
「うそっやめて・・っっ」
「そこまで言われては男が廃る」
「うぎゃあっ、ごめんなさい・・っ・・ぁ・や・・っ」

咬みつくように素早く口付けられ、両手をシーツに縫い留められる。
だからこの早業が憎らしいって言ってるのに。

苦情を言おうとキスを振りほどくが、緩んだ隙に舌を囚われ、乱暴に貪られる。
後頭部を掻き回され、室井の手が青島を押し付けるように引き寄せると、更にキスは深まった。
兇悪に甘いキスに、やっぱり絆されてしまうのは惚れた弱みなんだろうか。
全身にあった青島の緊張感の波が一気に流れ、余計な力が失われていく。
青島は両手で室井の頬を引き寄せ、顎を上げて口付けた。
今あんたが貪ったのは俺なんだと、せめて知らしめてやりたかった。
青島が腕を室井の首に回してきたころ、室井の腕が青島の腰を引き寄せ、顔を斜めに傾けることでキスはより濃密なものへと変化する。

あれから、室井の手で何度も何度も達かされた。
室井が飽きるまで、室井に肌を嬲られ、奥深くまでを赦し、全身に華が散るまで、貪られた。
熱い舌が這いずり回った感触が、まだ消えていない。

「今度は、最後まで抱く。俺のモノを受け入れさせる」

真剣な眼差しで、室井が青島の目を射抜いた。
焦点が合わないほど至近距離で見つめ合えば、一線を越えてしまった男がそこで自分をしっかりと捉えていた。

「明日は全てを貰う」
「今からでも」
「――、君は本当に俺を煽るのが上手い」

至近距離で囁かれる吐息にくらりとなる。
どれだけこっちが拗らせた愛情持て余してきたと思ってんだ。

「あんまり焦らすと、俺が喰っちゃうんだから」
「・・ほんとにおまえ、かわいいな」
「絶対に、俺のこと、離さないで、ください・・」
「離すものか」

室井が青島の左手で光るリングに誓いのキスを印す。
もう二度と置いていかないでと言う言葉は、瞳の奥底に隠し、青島は室井の口唇を盗み取った。

「ね、俺にも贈らせて?」



恋人たちの甘い長月夜は始まったばかりだ。










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