シー ズン企画
毎年恒例クリスマスストーリー2023のつづき









今宵、聖者に雪は降る 3
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8.
些細な口論をした翌朝、室井は池神から登庁を命じられた。
青島はまだ眠っていた。
今日は一日オフで、明日が交通安全週間の開幕セレモニー、そして明後日から政府主催の大型イベントが始まる。
メインイベント目前、最終確認といったところだろう。

尤もそれが口実であることは、室井自身が一番良く解かっている。

括れたラインの腹を出し、裾が捲れ、襟元がはだけ、毛布を抱き枕にして眠る彼の細く長い腕が、冬の白い朝陽に純粋だ。
腰から太腿の豊満な露出部分は室井にはない瑞々しさで、呼吸を伝える様子はだらしなくて無防備で。
ズクンと室井の下肢に鈍い、馴染みの重みが走った。
日焼けして、まるで愛撫を施したような肉は、見る者の官能を狂喜に容易く誘った。
獣欲のままにむしゃぶりつきたい衝動は、そもそも一体どこから湧いてくるのだろう。
全ては男の朝の生理現象のせいにして、室井は部屋を出た。

テーブルには書き置きを残し、本庁に行ってくるとだけ書いた。

二人の写真がまだ昨日のまま散在している。
一枚を手に取った。
密かな古い共鳴があったから、室井はなんだって出来た。
そんなこと、青島には言えない。


*:*:*:*:*:*


室井が池神から解放されたのは、もう夕刻となる頃で、徒労感を覚えた身体はろくに進んでいない仕事ぶりを責めていた。
朝とは打って変わり、日没を迎えた街に霧が立ち視界が煙る。
気重く濡れた石畳に足を出したところに、ヤジが飛んできた。

「あらら、変態野郎がこちらにも」

「今そこで片割れ君、見たよ~」

青島のことか?
来ていたのか?
俺の残したメモを見て、ここまで来たのか。
室井が無視して階段を数段降りていくと、更に下品な声が矢継ぎ早に刺さった。

「もう帰って来ないかもよ~、新婚早々奥さんに逃げられちゃうとか~」

「シラケるよね~そりゃ惨めだしね~」

口ぶりに何か含みを感じ、室井は足を止める。
室井が池神に呼び出されるとそれを嫉む者が出る。何度か見たことのある顔だった。

「何を言った」
「ふーん、気になるんだ。アイジンだもんな」
「彼を侮辱する発言はやめろ」
「うお~出た~!つまり性欲?やべえ、俺も食われないように気を付けないと!」

「あれだけトップになりたがってた男が金と情事でつまずくなんてなァ!」

そもそも厚生労働省が懸念しているのが、こうした偏見や揶揄の蔓延だったりするのだが
それを一番分かっていない連中が身近にいるというのが室井を不機嫌にさせる。

今回の任務は、凡そ全方位に理解を得られてはいないだろうことは承知していた。
ただでさえ室井と所轄と言えば数年前の副総監の事件以来から、面子を潰された内輪では悪目立ちをしていて
一部で英雄となったことも強い反感を買った。
今回の選抜により、当時の英雄がこの男だったのかと人目を引いた形に持っていかれた。
無論、そうやって外堀から室井を追い込むことが池神の悪意なわけだが
よりにもよってまた、青島が見映えもスタイルも良い、人好きのするイケメンだったこともあって、やっかみ半分、嫉妬半分
面白く思わない連中の方が圧倒的に多かった。
その上、局長直々の推薦とあらば、無派閥で東北大出身の室井への特別待遇に、点数稼ぎ以外の思惑は想像に難くない。

「局長相手に、愛人の相手。色魔ですな」

「まあ、青島クンって若いし可愛い顔だしセンスありそうだし」

「これで池神に点数貰えたんだ、実際、上手くやったよ、綺麗面してんじゃねぇよ!汚らわしいわ!」

「よせよ、昔、上に逆らって心中しようとした人間だぜ?」

室井は真黒い瞳を闇に隠し、もう背を向けた。
こういう扱いには慣れている。
頬には冷たい飛礫も当たり、室井は蝙蝠傘を差した。すると、孤高の背中に、また一つ、冷たい声が刺さった。

「イイコト教えてやるよ!室井は池神のお気に入り!ここでは常識だって教えてやった」

室井の身体が硬直する。
傘を打つ雨音が鼓膜を騒がせる。

「君は室井に売られたんだよって!キミが躰を差し出せば池神は手を引くんじゃないともね!親切?」

「室井サン、用なしになるんじゃね?ってか、もうそれ狙いだろ」

「そもそも今回の件、池神への身代わりだろ。みんな噂してる。実際問題逃げ出したところでこの封建社会じゃ揃って抹殺される運命だろうけどな!」

三人の高笑いが、夜に沈む構内に卑しく響き渡った。
室井がゆっくりと振り返る。
街灯に照らされただけの影に埋もれた男の輪郭が三つ、闇夜に縁取られていた。

「どっちに行った」
「あらら、愛人取り返すの~?三角関係じゃ~ん!駆け落ちするだけの度胸が、室井サンにあるとは思えないけどね?」
「どっちに行ったかと聞いている!」

ドスの効いた室井の声音が、一瞬の静けさを作った。
こいつらは何も分かっちゃいない。
青島の本性も、その本当の魅力も。その値打ちも。

「へぇ、そんなに青島の具合、いいんだ?」

キャリアは皆プライドが高く、ノンキャリと交流を持つことそれだけで、気に喰わないのだ。
ギロリと大きな目玉で室井が見据えると、三人も表情を変えた。

「しっ、知らねえよ!!そこの角で擦れ違っただけですから!駅とは反対方向に行った気もしますけどね!」

一歩も譲らない室井の迫力に押し負けた一人がそう言った。
途端、室井が走り出す。

「そこまで所轄が大事かよ!これまで通り自分が池神に尻振ってりゃ安泰じゃん!」
「・・・」
「おい!室井サン!!」

ちがう、池神の真の狙いは青島だ!
室井を弄ぶ最大のおもちゃが、青島なんだ。
青島なら迷いなく池神に奇襲をかける!

「早まるなよ、青島・・!」

青島を池神の餌食なんかにさせられない。
自分と同じ目には合わせられない。
室井は夢中で走った。

この感情はなんだ。嫉妬なのか?
何に対して、どんな風に妬いているというんだ俺は!今更!

彼には選ぶ権利などなかった。
自分にもなかったが。

冷たい雨が頻りに室井の頬を叩いていた。
スーツの裾が泥に塗れ、水溜まりに革靴が跳ねる。
凌ぐはずの傘が、邪魔だ。

この雨が叩くほど、室井の中で抗いがたいものが吼えた。
決して報われることがなくても、記憶は雪のように積もりゆく。
都心では雪は降らない。
年末に雪が降ることは、まず起こらない。

故郷ではもう今年最初の粉雪が舞い、一面真っ白に覆い隠してしまっていることだろう。
どこまでも白く埋め尽くされ濁りの無いまっさらな大地に清涼な大気が吹き下ろし、命も凍えさせる。
何もかもを白く塗り替えてくれる。
醜悪な欲望も、欲に腐った妄執も、脆弱な本音も。

ここでは、邪なものは埋もれてくれない。
どんなに隠していたって、消してくれない。
罪も過去も、この欲も、見知らぬふりは許されず、暴かれる処刑台となる。

雨は無常に打ち付けている。







9.
幾重にも重なる吐く息が、室井がどれだけ走ったかを知らしめていた。
汗ばんだスーツの中は、だが濃霧に急速に冷えていく。

「傘も差さないでいたら、風邪を引く」

静かに声をかけた室井の胸裏に浮かんだものは、安堵でも怒りでもなく、眩惑だった。
冬の霧雨は繊維にまで染み込み、吐く息を尚重ねて霞ませる。

「なに・・走って来ちゃってんの・・」
そんな、必死になって。

掠れたような吐息で返された言葉は思った以上に頼りな気で、昨夜の熱を室井に思い起こさせた。
雨が音を立てて銀杏を叩いていた。

ようやく見つけたモスグリーンの濡れ鼠は、防ぐものすら持っていなかった。
それが意味するところは、雨の降りだす前、室井のメモを見つけ、ほぼそのまま飛び出したということだ。
予想通りの結末は、想定通りの結論を備えている。
いつも以上に無防備で、今なら落ちそうな彼に、室井は勘弁してくれと天に願う。

「戻るぞ」
「何で迎えになんか、来るんだろう」
「まだ仕事が残っているからだ」
「・・・」

意地でも動きそうにない青島に、室井が諦観の溜息を落とせば、それは白く嫌味のように眼前に残る。
傘を差しだしたが、青島は目線もくれない。
その丸みを持つ顎のラインに雫が流れ落ち、濡れた褐色の肌を辿り、喉元へと降ちた。
幼さと我が儘を兼ね備える態度に、彼へ抱く迷いが室井を足止めしてしまう。
仕方なく、室井は青島が描いたシナリオに乗っかるしかなくなった。

「君が・・、本庁に行ったのかと思って・・」
自惚れでなければ。

「行ったけど。そう簡単に所轄の人間が面会叶うわけもありませんでしたけど」

そうか、会えなかったんだな。
室井はまずホッとする。
池神は、青島がいつ来るか、首を長くして待っていただろうに。
ざまあみろ。

「丁度出なきゃならないとこだったみたいで、・・別な日に部屋来いって」

あんのクソ狸。真正の変態野郎だ。
タイミングの悪さに、室井は胸の空く思いだ。
夕刻まで室井にちょっかい出していなければ、池神は青島と対面していた。

「どれだけ俺が苦心して君をそこから遠ざけてきたと思っているんだ・・」
「・・・」

室井の安堵した声に、青島は口惜しい顔で俯くだけだった。

青島は向こう見ずで、室井のためならこんなにも簡単に飛び込んでしまう。
ただ、青島としては仇討も出来なかったことで、行き処を失ってしまった。
暴かれた結末に、声をかけあぐね、室井は喉仏を上下する。
滴る雨に打たれ、黒光りする髪、長い睫毛に幾つも雨粒が溜まり、昨夜の風呂上がりよりも儚い彼から発する、凄絶な艶めかしさは
逆に室井を気後れさせた。

「聞いたんだろう?」
「まあ、ね」

どう思ったのか、それを聞くのはあまりにも拙く、世知辛い。

「呆れたか?」
「まあ、ね」

告げ口されたことで白日の下に晒された罪に、室井は堅く目を閉じた。
次第に本降りとなり始めた雨が傘を打つ音が鼓膜を騒がせていた。
自分は青島みたいに強くも美しくもない。
だがやはり、青島は室井の想像通り、池神に会いに来ていた。
室井のために、行ったのだ。
あまりの儚さに、室井は胸が潰れそうになる。

「その、・・すまない」
「あんたが仕組んだこの計画のこと?俺を騙していたこと?」
「――・・」

室井が言いよどむ態度で、あぁ思った通りかと青島も確信したようだった。
そう思わせるだけの深い深い溜息が沈黙の間に落ちていく。

「池神の最大の狙いは君だから、出来ればもう、簡単に近づかないでほしい」
「・・・」
「池神にとって、君の首も命も躰も、握り潰すのは――」

それ以上は、あまりに無残で言えやしなかった。
室井がここ警察で青島に見せたいのは、そんなものじゃなかった。

奥歯を噛み締めた室井の頬は血色を失い、煤けた肌に星彩が導くような青と白のイルミネーションが無機質に点滅する。
楽し気な鈴の音もない。凍えたサンタとトナカイのオブジェ。店仕舞いした扉にヒイラギのリース。聞こえるのは傘を叩く無機質な雨音だけだ。

「頼りないな全く。だが、君をこの件に推薦したのは、本当に私じゃない。選択権があったのなら、断固拒否した」

池神はおもちゃを欲しがる子供のように、サンタの夜を心待ちにしている。
その欲望と自らの飢餓が、そう違うものだとは室井には思えない。
愛というものが、もっとストレートに奏でるものだったならば、俺たちも何かが変えられたんだろうか。
けれど、自分が楽になるために青島を生贄にだなんて、するわけがない。
言い訳と称するには余りに都合の良い原罪も贖罪もごちゃまぜになって、クリスマスの街に流されていく。
排水溝すら溢れている。

「ふーん?妬いたの?」

いつもの悪戯気のある愛想もなく、前を見据えたままの青島の言葉は、不適切なようで実に的確だ。
室井は黙って傘を斜めに差し出した。
その手を無残に振り払われる。

「なにやってんだよ、男だろ、あんま、情けないことしないでくださいよ」

凍えて震えた声は、室井を責めながらも、やはりどこか傷ついていた。
苛立ちを乗せた瞳があまりに鮮明で、煌々とし、室井はようやく見つけた飴色の強い光彩にただ魅入る。
支えを失った傘が、風に煽られクルクルと回って電飾の撒かれた銀杏の木に刺さっていった。

「ちがう、こんなことが言いたいわけじゃないんだけど」

そもそも、お互い何を言い争っているのか、不明瞭だった。
青島が何に怒っているのかも、実際、室井が戸惑うわけもだ。
お互い肝心なところを暈すから、言葉を選ぶ隙間に氷雨が入り込む。
濡れて、沁みて、しっとりと形を失ったそれを掬い上げるだけの手段がないまま、もどかしさも沈黙に負けた。

「今更良識ぶるなら最初から男なんてやめておけよ・・っ」

吐き出した青島の白い息は銀の宝飾のように青島を取り巻き、前髪を狂おしく乱す彼の指先も白く色を失う。
モノクロに近い世界で、次第に強まる雨は刺すように骨まで凍えさせた。

お互いがお互いを護ろうとして、確実な手段を持ち得ず、返り討ちにあっている。
寂しい心だけが針を刺すように共鳴していた。
それでも、自分のために動いてくれる人がいるというのは、なんと尊い感じなのだろう。
息吹を凍らせるような季節にあって、圧倒的な熱に室井の心が眩む。
この至情こそが、室井を幾度とも救い、戦場に送り出してくれた。

言葉が紡げなくなった二人の身体を雨が打ち付けていた。
凍えた雨の冷たさは、まるでこの世の断罪だと思った。これまでしてきた、これは報いなのだ。
うねって額に貼りついた青島の前髪が雫を落とし、凄艶な男の色香の前で
室井もまた、形を失った頭髪を治そうともしなかった。

「約束」
「・・?」
「叶えたいだろう?」
「まさかそのためだったとか言い出すつもりですか、俺そんなこと」
「そうじゃなくて」

座り込んだ青島の前に室井が立つ。
吐く息の、煙が雨に光る向こう、必然的に見上げてくる青島を、敬虔な想いで見下ろした。

「上から見る景色、見たくないか?」
「見たい・・です。けど」
「俺もだ」
「?」
「中々、難しいんだがな・・、諦めたくはない」

見つめ合うだけで胸を灼く熱に、室井は知る。
たくさんの誘惑や陥穽、怠惰な罠も罪も張り巡らされているが、間違えてはいけない。
本当に大切なものと、俺たちが目指したものは、そんなにも空疎なものなのか。
クリスマスの夜に他人に願わねばならぬほど、本当に欺瞞に落ちたものなのか。
室井は背筋を高雅に伸ばす。
そのために殺すものがあるというのなら、俺は決して厭わないだろう。

ただ黙って二人は雨の中、見つめ合った。
足元から濡らし、吹き込む北風に芯から冷えて、だけど今確かに凍えている指も爪先も、今はどうでも良かった。
感じている愛おしさと、瞳の奥に隠したものは、どうしようもなく咆哮し、室井の胸を詰まらせていた。

「室井さん、イジメられてんの?」

余りに他愛ない言葉に、室井はひっそりと笑う。

「私がそれなりに出世できてるのは池神の力添えの部分も大きいんだ」
「俺のためだった?」
「自惚れるな。自分の出世のためだ」
「実力社会だなんて言いませんけど・・なんか・・でも・・」
「君がそんな風に、怒ったり、泣いたり、たくさんの感情をぶつけてくれるから、俺はこの世界の中で正常値に戻れる。
 ああ、ここは怒るところなのだ、ああ、ここは傷ついていいところなのだ。そう思ってリセットされる」
「・・なに、他人事みたいなこと、言ってんですか・・」
「そうだな」

青島がいてくれるのなら、室井は何でもできる。
その手に触れない代わりに、全てを貰えるのなら、一体どちらが貪欲なのだろう。
室井はそっと転がった傘を拾う。

「今回の通達には、君への想いを晒せるものなら晒してみろという悪意が裏にある。晒せないのなら、池神のものになれという取引だ」
「そしたら室井さん、局長と寝るの」
「・・・」
「キャリアってそんなことまでするんだ?」

蔑まれている気がした。軽蔑されたくはなかった。

「キャリアというか・・池神が変態なだけだろう」

それだけを言った。
そっか、と青島は呟いた。

「俺、少しは頼りになれてんの・・?」
「知ってるか?俺の細君はお転婆でな、大人しくしていてくれない。扱いに困ることがあるが、情に脆い。きっと、扱えるのは俺だけだ」

ふふと青島がようやく頬を綻ばせた。
少し失敗して、歪んだ瞳に、電灯が幾つも宿る。

「こんなとこで、弱味握られてんじゃねぇよ」
「まったくだ」

自分たちは、逸れ者ではあるが、今は確かに同志だった。
お互い、欲しがるものは、手に入れない。
手に入らないままそれでも奇妙に、強かに、息が合ってしまう奇跡は、余計に二人を惑わせ、雪のないクリスマスの街にも溶け込んでいく。
その奇跡に、室井は一つの終わりを悟る。

「君が相方で、・・良かった」

キツイだけの交わりで良かった。蔑まれ、時に罵られ、それでも君が俺を見てくれる間だけ戦っているのだと実感した。
青島は、室井の人知れず抱えるものを容易く見抜いて見つけてくれる。
薄汚れた身もこの手も。
思い描く度、胸を締め付ける圧倒的な切なさは、心に沁み行くばかりで、届かない。伝わらない。取り戻せない。
そんな風にずっと飢えていたことを、室井はようやく静かに認められた。

「で、どうするの・・」

どうする、か・・。
室井は厳かにほくそ笑む。
どうするかだなんて、その先の未来が委ねられていることが滑稽にすら感じた。
池神は決定権など与えない。
でも、青島は、俺に選択肢を与えてくれる。

「君に、玉砕するか」
「・・そうこなくちゃ」

帰ろう。
傘を差しだせば、今度は素直に青島は入ってきた。
相合傘をして、白く吐く息が交じるほどの距離で、同じ歩幅を刻みだしていく。
クリスマスに願い事はしない。
プレゼントも欲しがらない。
決して降らない雪を思い描きながら並ぶ足跡は雨に打たれて、渦となる。

「あのね。室井さん、最後に笑えばヒーローです」

嗚呼――その通りだ。
そう思って、ここまで耐えてきた。踏ん張れたのは、あの日から君が心の奥にいるからだ。

この決断は間違っていない。
世界を天秤にかけて、這い蹲る宿命ならば、最後の時に、隣に君にいて欲しい。








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