6
ぼんやりと、薄く梔子色に灯る電気が点いた部屋が、湿った空気に包まれる。
煙る様な秋雨は、まだ止まない。
~~~~~~~
青島の内股が小刻みに啼く。
紅潮する頬は、与えられ続けた刺激に既に歪み、瞬く瞳からは、無数の涙が溢れ落ちていた。
荒く淫蕩に喘ぐ唇から、紅色の舌を誘う様に覗かせ、熱い息を絶え間なく漏らす。
汗で張り付いた前髪が束になり、呑み込みきれなかった唾液が、汗と共にキラキラと伝い、その姿態の淫靡さに拍車をかける。
「・・・・・・ァ・・・・・ッ・・・」
眉を寄せ、ピクリと身体がヒクついて、また、青島の額を汗が伝った。
青島の下肢は、膝を胸に付く程に折り曲げられ、室井の手に因って、淫らに限界まで開かれ固定されているため
刺激からの逃げ場がない。
思わず漏れた喘声とも取れない音を、羞恥に顔を紅潮させながら、青島が横を向き、噛み締める。
すると、空かさず室井の熱い唇に塞がれ、再び的を絞った刺激が施される。
「熱い・・・」
「・・・っ・・・・ぁ・・・・・ぅ・・っ」
あまりに身に余る室井の指先に
裂ける程、淫乱な格好を強いられた内股は、絶え間ない刺激に、痙攣したようにヒクついた。
既に2回もイかされた身体は、酷く過敏になっていて、室井に晒した醜態を気にするだけの余裕は、とうに剥ぎ取られている。
いつしか、室井の思うままに敏感に淫猥な反応な返すようになった身体の、隅々までを手と唇で染め上げられて、僅かな吐息も音になる前に室井の唇に吸い取ら
れた。
最も深い部分も、思う存分に掻き回されて、淫らな言葉に従わされる。
室井の指を数本咥えこまされている下肢は、たっぷりと蕩けて濡れていた。
反射的に喘声を上げる度、自分の声にも追い詰められる。
それさえも、今やこの凶暴な程の手酷く甘い仕打ちの前には、些細なことだ。
信じられない。
「青島・・・・」
この長い前戯の中で室井に探し当てられた箇所を、何度も何度も擦るように刺激される。
どんな抵抗も効果はなく、施される刺激に身体が素直に室井を誘う。
「・・・・・ク・・・ッ・・・・・・・・ァ・・・・」
こんなのって――・・・・・
何処か慰めるような口付けが与えられた後、ぬるりと侵入した分厚い舌に、嘆声ごと奪われる。
耳元にかかる室井の声は甘く、その手は傲慢だ。
淫らに裂ける程、大きく開かれた下肢を晒させられたまま、逃げることを赦されず、受け止めさせられる絶え間ない刺激。
何もかもが室井の手の平の上で、子供のように身を預ける。
その度に、身体の奥深くから湧き上がる愉悦が信じられない。
でも確かに己の総身を浸食していき、咽び泣くとこしか出来なくなっていく。
それでも捨てきれない最後の理性は、返って明確な羞恥を青島に齎した。
救いを求めるように、室井の筋肉質な背中を掻き抱けば、覆いかぶさるように与えられる口付けが深くなる。
同時に中心をまた弄られる。
熱い吐息が室井の口腔へ呑み込まれた。
そのまま、顎を逸らしても、唇をねっとりと塞がれる。
先程から、青島が堪え切れない喚きや喘ぎを漏らそうとする度、それは室井の唇に吸い取られる。
羞恥の最後の一線を哀れんでくれているのか、或いは、陥落の寸前を繋ぎ止められているのか――
室井の手に導かれ、吐息に煽られ、卑猥な刺激に溺れていく思考の中では、もう何も分からない。
前後を玩弄に曝されれば、嬌態を曝せずにはいられなかった。
「・・・・ァ・・・ッ・・・・・・・ぁ・・・っ」
手を緩めることなく与えられる刺激に、敏感に反応する身体を持て余すように、青島は紅い舌を覗かせながら荒い息を途切れ途切れに漏らした。
思わず揺れた身体を、汗ばんだ筋肉質の腕に掻き寄せられる。
されるがままに軽く仰け反ると、晒した胸元をねぶられて、総身が栗毛立つ。
室井の身体を挟んで開かれている脚の先が、ピンと跳ねた。
「も・・・っ、離して・・・・。こんな・・・っ、格好、・・・・・っ」
「まだだ・・・」
内に燻る感覚は、行きどころを失くし身体を震わせる。
奪えとは言ったが、こんな執拗な甘さを痺れるまでに与えられるとは、思ってもいなかった。
青島は、肌を紅く染め上げながら、唇を噛んで顔を歪ませるが、堪え切れぬ嗚咽がすすり泣くように漏れるだけだった。
それを見た室井が、今度は指で口を開かせる。
呑み込み切れない唾液が、またトロリと口の端から滴っていった。
下肢に咥え込ませられた指が、緩く柔く愉悦を与えてくる。
卑猥に濡れた音が、耳に届いた。
身体ごと流されそうな意識をせめて保ちたくて
青島の手が、腰の下でぐちゃぐちゃになっているラグマットをぎゅっと握りしめていた。
~~~~~~
口腔に咥えさせていた指をそっと引き抜くと
開かせた脚を解放することなく、赦しを乞う口にそっと己の唇を滑らせる。
滴る唾液の線を辿った。
「また・・・・泣いたな」
潤んだ唐茶色の瞳が、焦点を定めきらぬままに室井を見上げる。
「ひ・・・どい・・・・」
「君を傷つけたい訳じゃない」
「だ・・・・ったら、電気くらい・・・っ、消して・・・くださいよ・・・・」
フッと室井が笑った。
「言いたいことは、それだけか」
そしてまた、おもむろに、下肢に咥えこませたままの指をぐるりと回す。
「・・・ッ!!・・・・・ぅ・・・んっ」
青島が、喉元を美しく弧を描いて仰け反らせる。
薄明かりに浮かび上がらせた裸体は、汗で光る。
時折波打つように動く腹直筋と、引き締まったカーブのウエストライン、そこから広がる桃尻は、それだけで見る
者を釘づけにする。
滑らかなラインを描く腰が、時折震える様に持ちあがる淫乱さを見せ、その度に、肋骨が浮かび上がり、大腿部が痙攣した。
首を左右に振り、淫蕩に身悶える表情は、耐えきれない限界を伝え、室井を更に煽情していく。
拭いきれない羞恥心からか、手の甲で塞がれた口から、弱々しい抗議の声が何度も漏れる。
しかし、それさえ、完成させられた芸術のようだ。
長い手足が美しい。
その艶態を、室井は満足そうに見下ろした。
「もぉ・・・・や・・・・、・・・・っ・・・・ァ・・・・ッ」
嫌だと言いつつも、脚を大きく開かれ、室井のなすがままになっている青島の肢体は、ビクビクと震え、汗で艶めき
濡れた瞳で、恨めしそうに室井を見つめてくる。
衝撃で涙を零しながらも歯を食いしばり、時折抑えきれない吐息を漏らす青島の姿は
室井に、これ以上ないくらいの愛しさと雄の欲望を与えた。
その手を取って、歯を立てる。
青島がぼんやりと室井を見上げる。
頬を染めた貌を、涙で光らせた。
なにもかもが熱に浮かされているようだ。
「大丈夫だ・・・・」
身体のラインを辿るように撫で上げれば、また、青島の口から熱い息が漏れる。
首筋からも舌を這わす。
布一つ纏わない青島の裸体は、火照るように色づきをもって、うねる。
「むろ・・・・さ・・・・」
ヒップラインに沿って揉む様に撫で上げれば、また敏感な内股が震えた。
滑らかな肌が、瑞々しく染まる。
男を淫蕩に誘うだけのきわどい造形美を晒していた。
それは、室井の想像以上だった。
「もう・・・手放せない・・・・」
身体中に紅い花を散らしながら、胸の突起を舌で転がす。
下肢に加えこませた3本の指を回すように擦りながら、もう片方の突起も、舌で揉む様に撫でまわす。
「青島・・・・」
身体をラインをなぞりながら、隅々まで触れていく。
どうすることも出来ずに、今はまだ縋ることしか知らない初心な指先が、室井の背中を心細げに彷徨っていく。
あの青島が、自分の手淫で乱れ、堕ちて
いく様は、どこか倒錯的で
それは室井を深い官能の渦へと誘惑した。
汗で光り、熱を帯びた愛しい身体が、自分の与える刺激に
従い、ひたすらに震え、淫猥に乱れていく。
未だ、酒に酔ったまま、夢を見ているような、浮遊感がある。
眼の前の愛しい身体が、手を離すと・・・・覚めると、消えてしまうようで、何度も何度も掻き抱く。
確かな証が欲しくて、執拗に攻め続けた。
もう、どこまでが現実で、どこからが都合の良い夢なのか、判断がつかない。
施される刺激に必死に耐え、眉を顰めた喜悦に濡れた貌を、乱れた前髪の奥から覗かせる。
その余韻に震える歪んだ表情は、室井の淫戯に完全に堕ちていることを、教えていた。
堪らず、室井は塞ぐように口付ける。
「愛してる・・・・・」
紅潮した頬に、また汗が、煌めきながら滴った。
室井は青島の身体中を暴きながら、蕩けた内部を掻き乱した。
「ク・・・・ッ・・・、ぁ・・・・・・・・は・・・・・・っ・・・」
何か言おうとしている青島の唇は、堪え切れずに溢れる荒い吐息に震え、もう言葉にはならない。
腰がビクビクと痙攣するように震え、か細いすすり泣きのような嗚咽が、静まった室内に反響する。
既に力もなく、抵抗する余力もなくなるまで弄んだ身体を抱きしめる。
荒い息を吐く青島に、もう一度そっと口付けを落とした。
舌を緩やかに捩じ込んで、ねっとりと口内を舐め上げる。
その瞳を見つめながら、室井は力の抜けきっている青島を横たえた。
膝裏を抱え上げ、青島の眼前でぐいっと更に大きく左右に開かせる。
「・・・や・・・っ」
さすがに真っ赤な顔をして制止する青島を無視して、ぐっと前に膝裏を押しやるとぐずぐずに蕩けて濡れている秘部が室井の前に広げられた。
「まだ恥ずかしいのか」
「あ・・・・当たり・・・前・・・だろ・・・」
「もう今更だろ」
そう言って、室井は肩まで抱え上げた内股を、すぅっと舌で舐め上げる。
ピクリと筋肉が震えたのを確認してから、そこにもキツく吸い付いた。
室井は昂ぶる自身を、青島の秘所にあてがう。
「分かるか・・・・?」
「・・・・!!」
室井がこれからいよいよ成そうとしていることを悟った青島は、一気に表情を強張らせる。
室井はその顔を愛しそうに見下ろし、眼だけを和らげた。
そのまま、断りも無く力を込め、挿入を始める。
「・・・・!!・・・・ッ!!・・・・ウッ・・・・・ッ!・・・・ッ」
口を大きく開け眉を寄せ、声にならない悲鳴を上げて、青島が床を掻き、首を横に振りながら身悶える。
身体の下のラグマットを、両手でキツく掴み、衝撃に耐えているのが分かる。
それすら、室井を煽る嬌態だ。
グッと腰を進めると、青島の背筋が更に少し反り返る。
狭く、熱く締め上がる内部は、たっぷりと濡れ、室井を誘い込むようにうねっている。
無防備に晒された白い喉元が、薄暗いオレンジ灯に晒された。
闇に艶めいて浮かび上がり、脈動する。
引き締まった腰から綺麗な筋肉のラインが浮き上がり、美しい。
先程から何度も零れた涙の後を、更に新たな雫が辿っていく。
――キツい。
散々解した筈なのだが、そこは想像以上にキツかった。
先端だけが何とか押し入り、使用したジェルと既に青島自身が吐き出した体液で、卑猥な音を響かせる。
室井は、小刻みに腰を揺らして、わざと音を立てた。
青島が、眉を寄せながら唇を噛み締め、横を向く。
汗で束になっている髪が、ぱらりと流れた。
それ以上の挿入は室井にとっても青島にとっても辛そうに思えた。
一瞬、室井は躊躇う。
やはり早急すぎたのか・・・・
あれだけ解してもまだ駄目なのか・・・・
何分、勝手が掴めない。
いや、そうではないだろう。それはたぶん、きっとこれが青島のヴァージンだからだ。
青島を見ると、目を固く瞑り顔を横へ傾け、荒く息をして耐えていた。その目じりには、既に先程の行為から幾度も生じた沢山の涙が溜まっている。
室井が見ている傍からもハラリと零れ落ちていった。
それが窓から差し込む月の光を反射してキラリと輝く。
濡れた前髪が額に張り付いたまま少し表情を隠し、汗ばみ、艶めく肩で息をする青島を、じっと見下ろす。
綺麗だと思った。
こんな欲望を抱き、脚を限界まで広げさせ淫猥な格好を強い、組み敷いてまでして、暴こうとしている。
めちゃめちゃにしたくても、それでも青島は室井にとって憧れで眩しい存在だった。
彼がいるからこそ、自分が在れるのだと何の根拠もなく確信する。
迷いなく歩いていける指標なのだ。
だからこそ欲しい。こいつが欲しい。
俺がこの先、俺でいるために。
痛烈に思った。
ゾクリとした戦慄が、室井の背筋を走り抜けた。
動きが止まった室井を不審に思ったのか、荒い息を整えつつ、青島がゆっくりと瞼を持ち上げる。瞬きによって涙がまた落ちた。
濡れた瞳で室井を見上げる。
「むろ・・・・さ、ん?」
その声は、もうとっくに掠れている。
不安そうなその瞳が合った瞬間、室井は理性ごと、持って行かれた。
開かせたまま押さえていた青島の脚を肘に抱え、覆いかぶさるように青島へ圧し掛かる。
室井が身体を倒したことで、青島の脚は更に卑猥に押し広げられた。
「・・・・ァ・・・・・ッ」
青島の身体は想像以上に柔らかく、柔軟性を持って開かれる。
その肌触りや抱き心地に、のめり込んでいく。
ぺろりと舌を出して青島の唇を舐める。
髪を梳いて、一度だけ唇にそっと触れた後、青島の両手に自身の五指を絡ませ、しっかりと握り、顔の横に貼り付けた。
不安げに見上げる青島の瞳を、挑むように覗きこむ。
「青島。お前の初めてを、俺が貰うぞ」
言い放つと、眼を剥いた青島に構わず腰を動かし、先端だけ入っていた情熱の証を、もう気遣いも、迷いもなく、奥へと押し進める。
「・・・ッ!!・・・ぁあッ!!・・・・・・ぅ・・・・ッ」
声にならない悲鳴を上げ、青島が仰け反った。
開かれた脚で空を掻き、頭を左右に振って、苦しそうな息を吐す。
長い足でひっかく度脈動する腹筋や腰が、とても扇情的に映った。
「・・・・ッ!!・・・・ク・・・・ッ・・・ァ・・・・ッ」
青島の熱い身体が、室井の下で跳ねる。
頭を左右に激しく振り、涙を光らせる姿に、嗜虐心も煽られていく。
室井が手を縫い付けたまま、そっと耳元へ唇を寄せ、低い声で囁いた。
「青島・・・・力、抜け・・・」
「・・・ぁ・・・・・・・ッ・・・ん、ぁっ・・・アッ・・・」
止める気配のない室井の腕から、反射的に逃れようと、身体を捩らせる。
両手を押さえ付けているため、上半身を背筋から反るようにして、ビクビクと震わせる。
耐えきれずに逃げようとするその身体を、室井は身体ごと体重を掛けて押さえ込んだ。
「・・・あぁ・・・・ッ」
室井が容赦なく、ずぶずぶと奥へと犯していく。
肉の感触が、既に室井にこの上ない喜悦を齎す。背筋に電流が走る様な快感が走った。
青島が、汗ばんだ手で室井の手を強く握り返してくる。
同じく熱い手で、室井もキツく握り返す。
体重を掛け、ググッと腰を進める。
青島の固く閉じられた目じりから、沢山の涙が次々と溢れ出した。
顎を逸らし、背筋を反り返らせる。
「ぃや・・・・ぁ・・・・・・・・ア・・ッ、あぁ・・・っ」
それを敬虔な想いで見つめながら、室井は腰を回し、自身を最後まで挿入させていった。
そこは熱く、灼けるようだった。
――やっと、ようやく、手に入れたんだ・・・・。
そうして、室井はあることに気付く。
俺のものになったというのではなく、青島が、俺をここまで受け容れてくれたんだ。
俺が、青島のものになれたんだ。
青島の全てに俺が関わる許可を――
何とも言えない感動と、どうしようもないほどの恋情と、下肢から溢れだすように伝わる快楽に、溺れそうな程の衝撃を感じる。
室井は吐息のようなものを吐き、居てもたってもいられなくなった。
気持ちが溢れ出て止まらない。
好きだとか、愛してるだとか、恋しいとか、欲しいとか。
そんな言葉が全部、陳腐に思えた。
伝える言葉を何も持たず、溢れ出る感情に任せて、室井は噛みつくように青島へ口付けた。
食い尽くすように何度も何度も貪る。
重ねた手を解放せぬまま、舌を強引に差し入れ、全ての自由を奪う。
止まらない。感情が止まらない。
愛しくて、大事で、大好きで、そういうもの全部をひっくるめて、青島に伝えたかった。
「後悔するな・・・・。ちゃんと・・・・・好きだから・・・・っ」
焦点の合わない視線が、ぼんやりと自分を見つめあげる。
溢れる涙は止まらないようだった。
浮かんだ涙に窓から入る月明かりを浴びて、薄茶色の瞳がカナリア色に艶めいた。
今その瞳に室井だけを宿す――
室井は強烈な酩酊感に呑まれ、ただ一つ現実感のある燃えるような唇を、ひたすら貪った。
口内を熱く掻き回されながら、青島は室井の舌に応えることも忘れて、無防備に口を開かされたままだった。
散々に蕩けさせられた身体は灼けつくようで、明確な思考は何も残っていない。
圧し掛かられている身体が、異様に熱い。
脚を促されるままに大きく広げられ、中心を貫かれ、両手は指を絡められ逃がさぬようにしっかりと押さえ付けられている。
太く貫かれている下肢から這い上がる、痺れるような熱が、未知なる感覚を呼び覚ます。
上から身体で強く押さえ付けられ、抗いきれない。
抵抗を全て封じられたまま、息も吐けない激しいキスをされ、自分さえ流されそうだった。
自分の境界が、もう、曖昧だ。
もう戻れない――・・・・・
室井の想いと欲望を、嫌というほど受け止めさせられる。
羞恥も愛情も、今は何も分からない。
もどかしさと、未知の恐怖の最中、ただ室井が与えてくる膨大で重たい激流に、溺れるように溶けていく。
この先、この痛み以上の、凶暴なほどの貪欲さで、自我を失う程、蕩けさせられるのだろうことだけを、どこか遠くで理解した。
青島の眼から、ただただ熱い雫が溢れ落ちた。
やがて、口内を蹂躙し舌を激しく絡めながら、室井がゆるく腰を回し始めた。
7
暗闇の中で、青島は覚醒する。
此処が何処だが把握できず、寝返りを打とうとして、身体中に走る強烈な痛みに、呻いて身体をベッドに沈ませた。
その衝撃に――――昨晩・・・今朝方まで、与えられ、奪われ続けた、甘く濃厚に蕩けさせられたものを思い出す。
今更ながらに、やけに質の良い寝装品に包まれていることにも、気が付いた。
――ここは室井のベッドだ。
多分・・・・・・ついさっきまで、この上で、好き勝手に良い様に全身を支配され、貪られていた。
「ぁあ、んっ・・・や・・・だ・・・・もぉ・・・・、やぁぁ・・・・っ!」
あのまま、床の上で自分を抱いた室井に、容赦はなかった。
いざ交接が始まると、執拗に喘がされ、怯まずに身体の奥深い所を繰り返し追い詰める刺激に、絶え間なく身悶えさせられる。
「ぁあ・・っ、ぁあ・・・っ」
身体中を這う優しい手の平とは裏腹に、激しいキスと突き上げる強さは、理性を手放されるに充分だった。
反射的に逃げようとする身体を、室井に体重で押さえ込まれ
導かれるままに、甘く淫猥な声を返せば、その度に室井の律動が強まる。
流され、奪われていく勢いに、せめてもと呑み込まれないように、あの灼けるような身体に、必死で縋りついたのを、おぼろげに憶えている。
その手は、みっともなくも、震えていた。
・・・・・あとは、もう、ほとんど覚えていない。
室井さんがあんなに強引だなんて。
室井のみっしりとした筋肉は、ぜい肉などほぼなくて、細身の総身は几帳面な性格に相応しく、無駄なく鍛えられていた。
その筋肉質な身体が、自分を抱え込み、淫猥に動く。
きっちりと引き締まった、しなやかさと弾力さがある肉体は
男でも惚れ惚れするような色香とセックスアピールを持ち、その、際どいラインが闇に浮かび上がっていた。
なんかずっと甘えてたっていうか、縋って泣いていた気がする。
思い出すと恥ずかしい。
いや、恥ずかしいのはそこじゃない。
それまで我慢していた全てを刻み付けるかのように、室井の行為は獰猛だった。
昼間の清廉な仮面を脱ぎ捨て、容赦ない愛撫は酷く淫らで、その手で裂ける程に開かされた脚を抑え込まれ、卑猥に腰をくねらせる。
男らしい律動で激しく揺すられながら、荒い息で唇を熱く重ねてくる。
身体の隅々までを、室井の手と唇によって蕩けさせられ、内部の最も深い部分は熱い昂ぶりによって奥まで濃密に覚えこまされた。
その存在で、内と外から攻められ、咽び泣くしかできなかった。
男の手で・・・・室井の指先が、あんなに淫猥で蕩けるようなテクニックを以って自身を翻弄するなど、想像もしていなかった。
初めは殺していた声も、途中からは室井の清潔そうな指を咥えこまされ、咽び泣く仕草さえ、覚え込まされた。
ベッドに連れてこられ、ここでも思うがままに繰り返し掻き乱された。
どんなにやめてくれと懇願しても、聞いているんだか聞いていないんだか。
熱い口付けで、すべてを浚われた。
幾度果てても、熱い腕で掻き寄せられ、湿った吐息に呑み込まれる。
何回抱かれたかは、それこそ覚えていない。
***
・・・・・まだ辺りは暗い。
青島は、気だるげに頭だけを持ち上げ、部屋を見渡した。
秋口に入り、夜明けは遠くなった。
身体は酷く重く、疲れているのだが、未だ心も興奮状態にあるのか、神経が高ぶっていて睡眠の質が浅い。
室井に抱かれてしまった事実は、大きすぎて、今はまだ何だかよく分からなかった。
ぼーっと青島は、何ともなく部屋を眺める。
初めてこの部屋へ訪れた時、この部屋の夜の表情をその瞳に映せる全ての人に嫉妬した。
でも今、その風景を、自分が見ている。
「・・・いやだっ・・・いや・・・ぁッ、室っ、室井さ・・・っ、・・・んあぁっ」
自分が漏らした、甘ったれたような喘声が、耳に微かに残る。
まさか本当に抱かれるなんて思いもしていなかった。
羞恥とか戸惑いとか躊躇いとか、そういうこちらの中の僅かな綻びは全て見抜かれて、身体中から曝け出された。
それこそ、身も心も、一番奥深い所まで。
・・・・・まだ多分、自分の中で、折り合いがつけられていないのだと思う。
愛情に溺れ、際限なく室井に甘えてしまう欲望と、愛する事に縋らず共謀者としてのポジションで在り続けるという自尊心と。
しかし、そんなものは抱かれている最中には、根こそぎ奪い取られていた。
室井の甘い手に導かれ、流され、促されるままに淫猥な反応を引き出され
限界まで耐えた喘声は、喘ぐタイミングで突かれて、止めどなく溢れさせられた。
何もかもが、自分の思い通りにはならなかった。
強烈な痛みや違和感を感じていたのは最初の一、ニ回くらいで、その後は回数を重ねるごとに、身体は隅々まで反応していき
想像も付かない耐えがたい快楽を、奥底から引き出された。
僅かばかりのちゃちなプライドなぞ、もう、さして意味も効力もなく。
どこまで自分の陳腐な意地が通せたのかも、分からない。
室井の思うがままに縋り、脚を開き、焦らさず突き上げられる愉悦に、最後には正気を自ら手放した・・・・・ような気がする。
だって、こんなのとんだ酔狂だ。
昨夜の交接は、青島にとって圧倒的な体験で、これまでのベッドタイムへの認識さえも、根こそぎ返られてしまった。
ただ、律動するだけだと思っていた交接の概念も、吹き飛ばされた。
それこそ、彼とこれまでに夜を共にした全ての女たちに苛烈な嫉妬心を抱く程に。
「やっ・・・・・ゃめッ・・・ダメ・・・・・っ、・・・・んぅ・・・んぅ・・・っ」
「ク・・・・ハ・・・ッ・・・・・・ァ・・・・ッ」
荒い息遣いが耳元に吹き込まれ、彼の感じ入っている吐息に、痺れが走る。
卑猥な言葉を、あの低く痺れるような声で耳元で囁かれ、促される。
荒く濡れた息が、耳元で断続的に吹きかかる。
煽られた身体は、室井の身体にとても従順だった。
もう、蕩けた内部を掻き乱される感覚に、ただ、啜り泣くことしか出来ない。
「ぁ・・ヒ・・・ィ!室・・・っ、あ・・・室ぃ・・さ・・・・、ぁああ・・・っ!んあぁ・・・っ!」
「クッ・・・・・ハ・・・ッ・・・・・ゥッ・・・」
ふたつの荒く熱を帯びた息が、重なっていく。
自分の出した、信じられない声と室井の息遣いが鮮明に脳裏に残っていて
青島は顔を真っ赤に染め上げ、耳を塞ぎ布団へと潜り込む。
・・・・・いや、ベッドにもぐりこんだって晒した痴態は消せやしないんだけど。
ハズカシイ・・・・。
潤みきった瞳で見上げれば、歪んだ視界の向こうに、燃えたぎるように光る黒目がちの瞳が、逸らされることなく自分を見下ろしていた。
握られた手が、汗で外れるのが心細く、必死で握り返す。
その手の強さだけが、この激しく熱に浮かされたような交接の中で、唯一の真実のように、思われた。
名前を呼ぼうとした声は喘ぎにしかならず、間を置かずに熱い唇に塞がれる。
時折、愛していると、繰り返し囁かれた。
・・・・・そんな陳腐な言葉は欲しくないなんて、笑ってたくせに。
――自分は、その想いの一欠片でも、返せたのだろうか
青島は、ふっと溜め息を吐き、視線を上げる。
リビングに掛けられていた時計の秒針が、開けられたままの扉の隙間から、この寝室まで微かに聞こえてくる。
静かだった。
~~~~~~
「起きたのか」
背後でもぞりと寝具が動く気配があり、すぐに筋張った男の腕が身体に巻き付いてきて、後ろに引き寄せられた。
「・・・っ、む・・・・ろい、さん・・・」
出した声は、呆れるほどに掠れていた。
気恥ずかしくて、俯く。
顔なんか、絶対見れない。
首筋にちゅうっと音を立てて、吸い付かれた。
そこから逃れようと、身じろぐ。
身体のダルさと重さで、その抵抗はさして意味の成すものでもない。
室井は容易く青島を抱き込み、片手で青島の口を開かせ、指を押し込む。
先程まで自分を淫らに翻弄した指を咥えこまされたまま、首から肩にかけて、口付けを降らしてくる。
「ん・・・っ、ちょ・・・・ぁ・・・」
「風呂、入れるか?」
「あ・・・や・・・っ、・・・も、俺、帰ります・・・・」
「・・・・・・まだ始発動いていないぞ」
「ぁ・・・え・・・・、じゃ、タクシーで・・・」
「・・・・・」
くぐもった声で答えていると、下唇を親指でなぞられ、ようやく指を抜かれる。
途端、キツく抱き締められた。
「・・・・るな」
「え?」
くるりと身体を反転させられる。
強い瞳と出会ったと思った瞬間、両手をベッドに押さえ付けられた。
「な、に・・・」
「後悔しているか」
「え・・・・・っ?」
「・・・・・」
室井がじっと青島を見下ろす。
「・・・し・・・てないですよ。そうじゃなくて・・・・・ただ・・・・」
恥ずかしさから、眼を真っ直ぐ見ていられなくて、顔を横に倒し、視線を伏せて応えると
それを何かを誤解したらしい室井が、手に力を込めた。
「帰さない」
「え?・・・ぁ・・・っ、痛った・・・」
間髪入れずに、首筋に噛みつかれた。
呻いて、身体を竦ませた瞬間、全身で圧し掛かられる。
滑らしていた手が、胸の突起から腹、腰へと辿る。
隅々までをまさぐられ、青島の顔を仰け反らせると、上から覆い被さり、そのまま口を塞ぐように唇を重ねられた。
片手をぎゅっと絡ませ、この一晩ですっかり慣れた仕草で、スルリと濡れた舌が入ってくる。
「う・・・・ん・・・っ・・・・っ」
飲み込み切れない唾液が零れていくのも構わず、思うままに舌で口内を犯され、身体をなぶられ続ける。
「・・・・・・ぅっ・・・・・・ん・・・・ぁ・・・っ・・・」
思ったよりずっと早く従順な反応を返す身体に、浚われていくような心許なさを覚え、青島は身体を震わせた。
先程しつこいほどに覚え込まされた喜悦の箇所を、容易く探り当てられ、導かれていく。
ぎゅっとシーツを掴んだ。
直向きに寄せてくる火照った身体に、室井が、眠ってなどいなかったことを知る。
多分、きっと、不安から眠りに落ちれなかったのだ。
忙しなく指が這いまわる。
その身体で、両脚を開かれた。
「・・・!」
白いシーツの上で、二つの身体が縺れ合う。
何度も重ねてくる唇に吐息ごと吸い取られたまま、室井の身体によって広げられた青島の脚の内股を、あやすように撫で上げられる。
ついさっきまで、散々弄ばれたからだろうか。ビクっと顕著な反応を鋭敏に返してしまう。
顎が仰け反って、そこでようやく長いキスが解けた。
「はぁ・・・・っ、・・・っ・・・・ぁ・・・・」
たったこれだけで、すっかり力の抜けてしまった瞳で、室井を見上げる。
「後悔なんか、させない」
囁くようにそう言って、室井は再び青島の脚を裂ける程開かせ、その中心を直接弄り始めた。
「や・・・っ!な・・・・に・・っ、勘違い、してるんですか・・・っ。・・・ッ・・・んぅ・・・・・ぅん・・・・」
室井は、黙ったまま、青島を見下ろし、巧みに手を動かし続ける。
「・・・っ・・・・ァ・・・ッ、・・・っ、後悔、なんかして、ないですったら・・・っ」
「なら、俺が好きだと言ってみろ」
「な・・・っ、信じてよ・・・、本当で・・・・んぅ・・・・っ、・・・く・・・っ」
「・・・言え」
青島は、喘ぎの中、一生懸命、室井を恨めしそうに見上げた。
すると、とうとう堪え切れなくなったかのように、室井がその口の端に労わるような笑みを少しだけ滲ませた。
「!!~~っっ!離せよっ」
真っ赤な顔をして、青島が暴れ出す。
「嫌だ」
室井は簡単にその身体で抑え込んで、掠めるように唇を重ねた。
「ぅん・・・・・・・っ・・・」
濡れた音が、薄暗い室内に響いた。
「ひどいよ、なんか室井さん、昨日から意地悪いよ・・・」
「なら、何で俺を見ない?」
「どんな顔していいか分かんないんだよ・・・。・・・・っ、察しろ!」
桃色に染め上がった頬を膨らませて、青島が横を向く。
両手をシーツに縫い付けられたまま、はらりと束になった前髪が横に流れた。
「青島」
「・・・っ、何ですか」
「青島」
「も、だから、何っ」
「好きだ」
「・・・・・」
「君が、好きだ」
「もう・・・・分かったってば」
「君は言ってくれないのか」
「~~っ、・・・・あんた、もう、ちょっと頭溶けてんじゃないの」
「そうかもな」
室井の舌が、青島の首筋を辿る。
「っ・・・っ、ちょ・・・と!止めろって・・・・んっ!」
「・・・・まだ夢なのではないかと」
「・・・・?」
「おまえが。ここにいることが」
室井は、今度はそっと優しく唇を重ねた。
青島もふっと身体の力を抜き、白いシーツに身を沈める。
「――・・・・うん・・・・・それは、俺も」
「朝になったら、全部消えてなくなりそうだ」
「俺を――・・・一夜の夢にしちゃうんですか・・・・?」
室井は青島の闇に煌めく瞳をじっと見つめ返した後
覆いかぶさって、何度も何度も口付ける。
青島の手が、初めて室井の首へと縋るように回った。
「行かないでくれ」
「・・・・・繋ぎ止めろよ」
「――・・・。覚悟は出来てんだろうな」
「え?」
「帰すつもりはないぞ・・・おまえが俺に素直になるまで・・・・」
「え・・・?」
室井がグッと青島の脚を一気に押し広げた。
ギシリとベットのスプリングが鳴る。
「や・・・っ、ちょ・・・そういう意味で言った訳じゃ・・・!」
「聞こえない」
「・・・!・・・・や・・・ぁっ・・・ぅそ・・・・・・やだ、やめッ・・・・ぁああ・・・っ」
噛みつくように口付けられ、その先の言葉は愛撫によって嬌声へと塗り替えられた。
「ゃめッ・・・・アッ・・・・だめ・・・・んんっ・・・・・・・ぅあぁ・・・・っ」
「・・・・ぅぅんっ・・・いや、だ・・・もぉ・・あぁ・・・っ・・・んぁっ・・・」
青島の声だけが、青白い夜に、細く長く通り抜けていく――
夜明けはきっと、まだ遠い。
