Never stop lovi'n you…



東京スヰート






そして。
あの秋が来た。



「これは、俺たちへの、裏切りです…!」



 見据える瞳が、冷たかった。
 返す私の言葉も、氷を含んでいるように冷たかっただろうと思う。



「…裏切ったのは、どっちだ」



 そうそれは、私にとっては裏切りに等しかった。
 どんなに愛していると伝えても、伝わりきらなかったのだと。私よりも…恋人の頼みよりも、同僚に対する信頼の方が勝ったのだと。これは、裏切りなのだ、 と。まるで意趣返しをした小学生のように、私はいい気になっていた。
 後で思い返せば、売り言葉に買い言葉の応酬で…青島が、血を吐くような声で私の名を呼んでも、そのときの私には、なにも響かなかった。
 次第に厳しさを含ませ始める秋の風が、私の心を凍り付かせていた。
 いらだちを隠しもせずに残務処理を本庁で終えて、深夜近くに自宅に戻ると、留守番電話の赤いランプが点灯していた。
 まだなにか、残してきた仕事があっただろうか、と、疑いもせずにボタンを押した。
 そして…震える声が、聞こえてきた。
『…室井さん。賭けを、しましょう』
 青島だった。
『簡単な賭けです。次に会うときまでに…』
 背後から、喧噪が聞こえてくる。それはきっと、湾岸署の…。
『俺が、室井さんをまだ愛してるかどうか』
 押し殺した声が、低く響く。
『俺はまだ、あんたを信じたいと思ってる。…あんたを、愛してる…!』
 涙に滲む声が…愛を告げて…
『だけど本当は、このまま別れた方がいいに決まってる…』
 諦めに似た吐息が…
『だけど…っ』
 途切れ途切れに、絶望と悔恨と迷いを、伝えて…
『…次に会うとき、あんたを憎めてたらいい。そうしたら、俺の勝ちです。もう二度と会わない。けどまだ、あんたを愛してたら…』
 愛して、いたなら…?
『…会いたいよ…!』
 そして、留守録が切れた。
 機械的な女性の声が時刻を告げる。ほんの、数分前の記録だった。
 指の震えを押さえられないまま、消去した。
 信じ切れない弱さが、私を押しつぶそうとしていた。
 



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