幸福な毎日だった。
二人で過ごす時間は限られていたけれど、俺たちは幸福だった。
ぬくもりに包まれていなくても、腕を伸ばせばそこに温かさがあるとわかっていたから、不安を感じることなどなかった。
たった一人で過ごす夜すら、幸福だった。
電話越しの声は確かにいとおしさを伝えてくれたし、会えない日々は互いを想う強さを与えてくれると信じていた。
俺たちは、そんなものでいつでも満たされていた。永遠など望まなかった。
幸福な今日は明日に続いていたし、未来はその繰り返しだと思っていた。そんなものを望まなくても…互いの熱を信じてさえいれば、幸福な未来は当然のようにやってくると、そう思っていた。
世間も神さまも、二人を許してくれなくたっていい。ただ、二人でいられたら。この人が、自分だけ見つめていてくれたら、それだけで。
…あのころの俺たちは、そんなことを思うほどに、傲慢だった。