心地よい風が、吹いていた。
台場のホテルで行われた結婚式は、当初トラブルはあったものの、盛況のうちに終わった。
披露宴では、美しい花嫁の幸福の涙が、見守る人々の胸を温かいものでいっぱいにした。
いつもより数倍凛々しさを増した新郎に、寄り添うように微笑む新婦。
しあわせになって欲しいと、心から思った。
そして、二次会への誘いを丁重に断って、二人肩を並べて歩いた。
とくに話した訳でもないのに、いつのまにか海辺に足が向いていた。
東京の、どこかくすんだ海でも、やはり気持ちが広がっていくのを感じる。
風が髪をかき混ぜていくのにまかせながら立つ青島に、話しかけた。
「…いい、結婚式だったな」
「ええ」
「篠原くんは、とてもきれいだった」
「はい」
「新城は、日本一の幸せ者だな」
「…そうですね」
普段と違う反応に、室井が振り返った。
いつもは。
うるさいほど話しかけてくる青島に、室井が言葉少なに返す。
返事があっさりしすぎなんだと、青島が怒り出して、室井が苦笑する。
なのに今日は、立場が逆になったようだ。
「…どうした?」
「え?」
風に目をすがめながら、青島が室井を振り仰ぐ。
「…なにか、気にしてるのか」
「べつに、なにも?」
目を合わせずに言う青島に、室井は少し前から自分をとらえている思いを青島にぶつけてみた。
「…結婚でも、したくなったか?」
「はぁ?」
声をひっくり返らせて、今度は室井の顔をちゃんと見た。
「違いますよ。突然、なに言い出すの」
「まってろ」
「違うって言ってるでしょ」
呆れたように言う青島の笑みに、温かいものがこもる。
「今日みたいに祝ってもらえなくても…しあわせになろう」
青島の言葉をまるで無視したような言葉が、青島を優しく暖かく、包み込むようで。
きっとまた、青島が不安に捕らわれているとでも思っているのだろう。
だったら、素直に白状するしかない。
「今のままでも十分しあわせですよ」
こんなにも今、愛されているという自信が力をくれているのだから。
しかし室井は、青島の腕を掴んで引き寄せた。
「大勢じゃなくていい、心から祝ってくれる人だけ招いて、祝福してもらうんだ」
そして、啄むようなキスをして、こつんと額を合わせる。
「しあわせになろう」
真摯な瞳がすぐ近くで、この上ないしあわせをくれているというのに。
この気持ちの果てにある未来を、信じないわけがない。
青島は、返事の代わりにキスを返し、その肩に頬を載せた。
「…室井さんて」
「なんだ?」
「見かけによらず、ロマンチストだよね」
「…悪かったな」
憎まれ口に苦笑しながら、抱きしめた腕に力を込める。
「でもね」
「ん?」
「そんなトコにも、惚れてます」
「…そっか」
神の前での神聖な誓いや、これからの人生をともに過ごすという契約がなくても。
なにより確かな、思いがあるから。
…この腕を暖かいと感じる、しあわせがあるから…。
永久の愛があるのだと、信じることができる。
かたく抱きしめ合う二人の髪を、穏やかな午後の風が揺らしていた。
ぐはっ!
あ~、反省してます(笑)あ、甘すぎます…げろりん☆
自覚症状はあるから、許してくり~!!