ショートショート~present
中国からとても可愛いお話を送ってくださいました!/管理人による意訳でよければどうぞ。
時間軸は室井さん管理官時代。登場人物はほぼ室井さんと青島くん。告っちゃった室井さんの苦悩のお話です。張り込み中の密室ストーリー。
室青的王道ラブストーリーをご堪能あれ。全1話
TETRIS
(日本語ver.)

1.
ドアの外に立っている人物を見て、青島は驚き固まった。
和久が背後からもう一度ドアを開けてやれと促すと、青島は着ていたスウェットを手早くなおし、ドアを細く開けてやる。
そこに立っていた男は、一瞬にしてそんな隠蔽工作に眉をひそめた。
「——室井さん」
頭を掻きながら愛想笑いを浮かべ、青島は何しに来たのかと訊こうとしたが、ドアを開けたままでは声を出せないことに思い至る。
躊躇しているうちに室井は自らドアを大きく開け、監視用のだだっ広い部屋に入ってしまった。
窓際に座っていた和久が、立ち上がろうともせず、「おぅ、こりゃまた…」と少し驚いたような声で応える。
室井は怜悧な視線を走らせ、ここにはテーブルもないことを確かめると、手に持っていたビニール袋を床に置いた。
「ご苦労様です」
それに返す和久の声には苦笑が含まれていた。
「そういうつもりじゃなかったんだが、やれやれ、本店に本当にお金を使わせちまって……」
青島は足元に目をやり、その袋のロゴが有名な弁当屋の名前であることに気がついた。
以前すみれから聞いたことがあるが、基本定食だけで二千円近くするんだそうだ。
だが礼を言っている和久とは違い、青島にとってはもっと気になることがあるのは明白である。
立ち上がって室井のそばに勇み寄ったが、その勢いは室井の黒曜石のような二つの瞳にぶつかり、一気に崩れ去る。
意味を成さない小さな声しか出せなかった。
「あんた、ここに、何しに来たんですかね…… 」
室井は片眉を上げて青島を見たが、直接返事はしなかった。
逆に、既に身を乗り出してパックから弁当を取り出している和久に、声を掛ける。
「それは是非お持ち帰りになって召し上がってください。長丁場、ご苦労様でした。今夜は私が代わります」
そこまで言われてしまうと、まだ淡々としていた和久も目を丸くし、青島は壁に手をつきたくなるほど眩暈がした。
和久さんにはまだあのことを話していないけど(もちろん話すつもりはない!)、今の、この展開は、ちょっと……
和久の弁当を持つ手の動きが固まる。
「ええっと、こりゃ参ったな、俺ぁ意気地がなくてなぁ。これをこのまま署に持ち帰るとなると、すみれさんがきっと諦めねぇだろうし……」
室井が静かにうなずき返す。
「恩田君のことも考えましたので、三人分用意してあります。一食分だけここに残し、あとの二人分は持ち帰ってくださって結構です」
和久の手にしていたインスタント箸は床に落ち、青島は自分が石化して砕ける音を聞いた。
頑固な様子で一歩も譲ろうとしない室井に、和久はやがて渋々と立ち上がった。
袋の中に弁当を戻しながら、だが老獪な指摘を光らせる。
「そんなことより、訳を言ってもらわねぇと。本部にいればいいだけの大物が、いきなりウチみたいな前線の仕事に首を突っ込んでくるなんてなぁ……。
現場は所轄の領地なんだよ」
よく言った!
青島は無言でガッツポーズを作ったが、室井に睨まれるとすぐに治めた。
「他意はありません。 ただ、和久さんが若い美人の住居を監視していると聞いただけです」
室井が壁に留めた容疑者の写真にサッと横目で視線を送る。
「この案件では年齢も性別も条件に合わない相手だろうということで、早く正業に戻ってもらいたいと思ってのことですが」
視線を戻すと、室井は呆れ顔の和久に向かって付け加えた。
「それに、いつまでも同じ姿勢を続けていては、貴方の腰も痛める。メリットはないでしょう」
腰を押さえて袋を提げていた和久が口元を歪めた。
荷物をまとめ、帰ろうとする老刑事の後ろ姿を呆然と見送っていた青島が、「なんか急なことで……」と小声で弁解すると
すでにドアから出ていた和久が、また顔を戻し「青島」と呼びよせる。
青島もすぐに廊下に顔だけ出して「しーっ」という身振りをし、ドアの隙間から室井の反応を窺いながら「なんすか」と訊いた。
和久も同じように戸惑った顔で、中を覗き込んでくる。
「室井さん、今日おかしくねぇか、そんな気の利いたこと言うような覚えはねぇなぁ」
「お、おれもおかしいと思ったんですけど。和久さん、室井さんにもう一度何か言ってくれませんか、俺一人でここにいたらも~緊張しちゃって……」
今度は和久が吹き出す番だった。
「あのなぁ、相手は室井さんじゃねぇか。馴染みといえば、お前さんがいちばんよく知ってる相手だろう。それに俺ぁ、腰が痛ェのは確かでな……」
「和久さんっ」
青島の捨てられた犬のような哀願を無視し、和久は手を伸ばして、「いいからさっさと戻れ」と肩を叩いた。
「 張り込みなんざ、所轄より本店のほうがうまくやれるとは思えない。
今夜は若いお二人さんに頼むから、青島、気ィ張って、うちの署に恥をかかせないようにしてくれよ」
「——和久さん」
毛糸の帽子で耳まで覆った和久は、勝手に手を振って遠ざかっていった。
呆然と立ち尽くしていると、しばらくして背後でビニール袋を手にした音がかすかに聞こえる。
「青島」
後ろから名前を呼ばれ初めて、青島は廊下の寒さに気づいた。
スウェット姿の身体が反射的に震える。
青島は我に返り、一歩、部屋に戻ると、ゆっくりとドアを閉めた。
室井は見慣れたいつもの黒いコートを脱いでいた。
ラシャの質感のあるそれは丁寧に畳まれ、無造作に放り出していた青島のコートの脇に置かれていた。
部屋の中央にはスリーピースのスーツを着た室井が立っていて、「いつまでそこに立っているんだ」という顔で眉を寄せている。
青島は大きく息を吸い込み、頭を掻きながら室井のそばに歩み寄った。
腰を屈め、足元のコンビニエンスストアの袋から缶コーヒーを取り出す。
「飲みます? もう冷めてますけど」
室井は黙ってコーヒーを受け取ると、窓際のもう一つの椅子に腰を下ろした。
二つの椅子の前にはレンズ付きの長い監視用カメラが据えられており
向かいマンションの三階の一号室が、今回の任務対象となっている四十歳・麻薬密売容疑者宅である。
海外から帰国したばかりとの情報だ。
2.
時刻は既に深夜十一時を回っていた。
アクシデントがなければ、容疑者もすでに眠っているはずだった。
しかし念のため、監視班のうち少なくとも一人は夜半も起きて待機していなければならない。
さっき室井が入ってきた時の状況から見て、和久が午前零時まで監視し、それから青島に代わり徹夜で当直することになっているようだった。
室井は俯いてコーヒーを握りしめたが、自分が和久と入れ替わった突発的な状況で、青島がどのような当直を選択するだろうかと考えた。
あるいは、自分が言いだすのを待っているのかもしれない……。
*****
青島に告白したのは、二週間前のことだった。
場所は潮風公園のベンチである。 冬の夜、こんな潮風の吹き荒ぶ場所に人が来るはずもなく、薄暗い街灯の下、室井は間を置かずに口を開いた。
「好きだ」
口に出した瞬間、何ヶ月も張り詰めていた体からは力が抜けた。
しかし次の瞬間から、心臓のどこかがその言葉と共に空いてしまったような気がした。
何か大切なものを失ったように、今はがらんとしている。
青島の表情が街灯の光を受けてくっきりと浮かび上がっていた。
口を半開きにしたまま、子供のように驚き、身体を一瞬反射的に竦ませた。
「——すまない、今すぐ答えてくれということじゃない」
官舎に戻って徐々に気がついたが、あの落胆は口に出して即座に青島から返事をもらえなかったからだ。
室井はもちろん、青島が感極まって「俺も」と飛びかかってくるとは思ってもいなかったし、告白を決める前から百パーセント拒否される覚悟さえしていた。
拒絶されることを予想しながらも告白を選んだのは、それを認めなければ生活ができなくなるという自覚があったからだ。
何をやっても相手のことを考えてしまう。
本庁から所轄への支援要請、会社員案件の相談処理、そういった些細な局面でも
自分の頭の中で最初に浮かんだのは「青島」という名前だったに違いない。
ここまでしてもまだやめられない。
食事をしているときも、眠っているときも、本庁の廊下を歩いているだけでも、ふとその人物の顔を思い出しては
ちゃんと規則正しく食事をして健康的に眠っているのだろうかと考えてしまう。
最近一倉と飲みに行った際、「湾岸署とは本当に親しいんだなお前」と言われただけで、心臓が耐えられないほど激しく痛んだ。
一倉の言っていることが、尤も真実っぽい嘘にすぎないような気がしたからである。
誰の目にも馴染み深く、キャリア組や所轄からもおかしいと思われるほど親しくなった二人だが
自分が密かに望んでいたような、本当に密接な接触は一度もなかった。
自分が要求しすぎているのだ。
そのことは室井自身よくわかっていた。
しかし、青島に自分が本当はどんな想いを抱いているのかを知らせないで、あんなに無防備に自分に熱い眼差しや親し気な態度を見せ続けたら
本当にこっちが気が狂ってしまうかもしれない。
だったら、教えてやればいい。
面と向かって怒鳴られてもいいし、殴られてもいい。
気持ち悪いと罵られても。 馬鹿笑いで誤魔化されても、それっきり付き合いが失われてもいい。
むしろ、室井が望んでいたのはそっちだった。
こんなふうに、すべてのつながりを刃できれいに断ち切り、少しでもスパイラルのチャンスを見つけられないようにすることが
自分にとって最適な解決策であることには間違いなかった。
だから、これは完全に身勝手な行為だということだ。全て。
青島のこれまでの純粋な友情を無下にし、彼がその後どのような戸惑いを見せるかも気にしなかった。
ただ単に今の気持ちを吐き出して早く押し流し、自分が解放された後の軽さだけを選んだ。
しかしそれは失策だった。
心のどこかで期待していたのか、それとも青島がそんな反応を示すとは予想もしていなかったからなのか。
室井の前には、街灯の下にちょこんと座っている青島しか映らなかった。
青島は苦笑し、困ったように頭を掻いて。
「急にそんなことを言われても……じゃあ、室井さん、ちゃんと考えさせてください」
「……わかった」
言葉を発するたびに心臓がちくりと痛んだが、それに頷いた。
******
青島が身につけている服は、これまで見たことはないラフなものだった。
紺色の厚手のトップスから白Tシャツの襟がのぞいていて、ファッションについてはまったく見識がないにもかかわらず、室井はその格好がよく似合うと思っ
た。
そして、なんだか... ... 家の中のような感じがする。
プライベートではこんなふうな格好をしているのかもしれない。
室井の視線に気づいたように、青島がじっと見つめていたファインダーから顔をむけると、室井はパッと視線をそらした。
目を合わせなくても、青島が自分を見ているのがわかる。
しばらく硬直状態が続いたが、やはり青島が先に負けて、口を開いた。
「室井さん、先にお休みになりますか?」
お休み?
室井は暖房器具の脇に置いてある寝袋に目をやった。
視線の動きに合わせ、青島は説明を加えた。
「そうそう、あれです。昨夜からあそこで寝てるんですけど、あったかかったですよ」
昨夜の監視レポートには、監視人の欄に青島と真下の名が記入されていた。
どうやら後輩である真下の方に徹夜をさせたらしい。
室井の返事がないので、青島ははっと気付いたように弁解した。
「あ、ごめんなさい。使用済みじゃ、室井さんが寝たがらないのも無理ないんですけど……」
「青島」
室井が遮る。
声に異常なほど緊張をにじませていた青島が、すぐに口をつぐんだ。
縮みあがるように項垂れる青島の仕草を見て、室井は深いため息をついた。
「そういうわけじゃない。でも私はそこでは寝ない」
「え?」
青島の目に痛みが見える。
その大袈裟な反応に、室井は泣くに泣けず笑うに笑えなくなった。
いつも大袈裟な奴ではあったが、二週間前に男に告白されたことさえ忘れているほどではあるまい…… 。
そんな心境でここまでやってきた男が、これ以上苦心して夜を明かさず自分から眠ることなどできるはずがない。
そんなこともまったく予想していなかったのだろうか。
しかし、すべてをはっきりさせたくもない。
室井は冷静を装って理由を取り繕った。
「何しろ二日間も張り込みを続けているんだからな。睡眠不足の状態で無理に続ければ、任務の質にも影響が出る」
「…… 」
青島は無言で室井を見つめ返し、唇の端をわずかに引き結んだ。
微妙な不快感が全身を包んでいた。
青島にこうして見つめられていると、居ても立ってもいられなくなってくる。
青島は、室井が自分に対しどのような劣情を抱いていたのか、ようやく思い出して、嫌悪感でも覚えたのだろうか?
それとも、任務態度に不満があるからと思われて、そのまま監視続行してしまうのだろうか?
あるいはただ、もう何を言っても嫌われるところまで来てしまったのかもしれない... ... 。
室井の胸に痛みが走った。
室井と数秒顔を見合わせてから、青島は後ろを振り仰いだ。
「じゃあ、ちゃんと寝ないでね。室井さんが寝ないとこっちも安心して眠れないんで。一緒に徹夜して、どっちかが寝落ちしないか見張りますよ」
……安心。
眠っている間に俺が何かとんでもないことをしてしまうのではないかと心配しているのだろうか。
急に腹が立ってきて、室井は語気を強めた。
「そんな勝負、全然意味ないだろう。最後まで寝ないくらいなら、いっそ今からでも寝てしまったほうが合理的だ」
「室井さんが寝ないって言ったんじゃないですか」
振り向きもしない青島が、一歩も譲らず反撃してくる。
「 それならこちらにも自信がある。 せいぜい一人の手間を無駄にする二人の徹夜ぐらいで、損もくそもないだろう」
「 …… 」
室井は歯を食いしばって、薄闇の中の括れたシルエットを眺めた。
街灯の光がなくても、こんな薄暗い中でも、室井には青島が怒っているのがわかった。
出迎え、自分を見咎めた瞬間から、和久が本当にあのまま帰ってしまった時から。
ついさっき、室井がこの当直を手伝うと言い出してからの、青島の中の怒りが頭をもたげ
たのだ。
いや、本当にさっきからあの時のことを思い出していたのかもしれない ……
室井は目を逸らし、そんな事実を喜ぶべきか悲しむべきか、迷った。
虚ろな思考のまま、自分の前に置かれたカメラに手を伸ばそうとすると、目の前に小型無線機のようなものが差し出される。
目を上げると、青島はまだ室井には目もくれず、ただポケットからそれを取り出して、室井のところに突き出していた。
「これは」
その黒い小さな機械を受け取り、室井が下段のボタンを押すと、すぐに画面が表示された。
「湾岸署刑事課特注品、テトリスのゲーム機。室井さん、寝ないとつまらないから、これで遊んでていいですよ」
前方を見つめたままだったが、その声は少し柔らかくなっている。
室井はスクリーンの上端からゆっくりと落ちてくるブロックの組み合わせを眺めて、ちょっと間を置いて、呟いた。
「私は... あまりこういうの得意ではないんだ」
「…嘘でしょ」
青島は目を丸くして室井を見、室井が嘘をついているかどうかを確かめるように首を傾げて室井の顔を左右から揶揄い気味に覗き込んでいたが
やがて室井の手から機械を奪い取った。
椅子を動かして室井に近づく。
「これはね、このブロックの向きを変えることによって、下に溜まっているこれらを消していくゲームじゃないですか ……全然難しくない
し、時間を潰すこともできる。
そう、この今落ちてきた長い棒を横にしてみて!で、 ここを押して下さい」
青島の指示で、室井は「転向」と表示された丸いボタンを押してみる。
縦から横へ変化した四連格子のブロックが、ちょうど最下層の溝に落ちたところだった。
一瞬にして三列が消え、ビープ音とともに画面の隅の点数が三十点上昇する。
「…なるほど、そういうことか」
室井は固い表情のまま呟いた。
隣では青島が相変わらず信じられないといった顔で、「マジで?」と二度呟いた。
思わず口走った言葉に、こんなことを言っては失礼だと思ったのか、すぐに話題を変えてくる。
「んなことより、室井さんは子供の頃、どんな遊びをしていたんですか。あ、キャリアだから、ずっと本を読んでいたとか?」
室井は言いかけた「本を読む」という言葉をかろうじて飲み込んだ。
有体な子ども時代のないオタクだと思われたくなかった。
格好の付く子ども時代の遊び方について必死に思考を巡らせる。
「大概は外に出た。ハイキング、クライミング、サイクリング。あとは部活」
「部活?」
「柔道部だ」
「そうなんだ」
青島は考え深げにうなずき、それからまた笑った。
「ちょっと意外です。室井さんは本を読んでばかりいたと思っていました」
「もちろん、本も読んでいた」
室井はちょっと咳払いをして顎を上げる。
ほとんどの時間を勉強に費やしていたのは事実だった。
しかし、思い出の中では自分も周りと同様に活動的だったことも少なくなく、今考えても自分がどのように遊んでいたのか朧げだ。
室井はさらに三十秒ほどゲームをやってから、青島の手にゲーム機を戻した。
「やっぱりお前のほうが似合うな」
「似合うって、どういう意味ですか……」
青島はちょっと苦笑し、操作されることなくどんどん増えていくブロック画面を見つめた。
何かを思いついたように、ぼんやりと呟く。
「上から降ってくる未知数のために適宜な場所を見つけるというゲームは、室井さんには向いていると思います」
「青島―ー」
室井の声が低く掠れる。
青島は気を取り直したようにへへっと笑った。
「ほら、だって、論理的で頭の回転が必要な感じがするから。エリートっぽいところがあるでしょ」
室井は何も言わず、黙ったまま今度はカメラのファインダーに目を凝らした。
容疑者の窓に向けられたレンズの中は暗い。
人気のないベランダで、ぽつんと置かれた風鈴が、冷たい風にそよいでいた。
時折チリン、チリンと幽かな音が届く。
隣の青島は相変わらずゲームで遊んでいるようで、数秒ごとに点数が上がる音がしていた。
しばらくすると、それまで鳴り続けていたボタンの音やスコアラーの音は止んでいた。
室井はじっと夜の町を見つめ、それからもしばらく静寂は続く。
青島が眠ってしまったのだなと確信して、何気なく振り向いた視線が、そのきらきらと光る瞳とぶつかり、室井はドキリとして息をのんだ。
いつの間にか、青島がこんなに近づいてきていた。
あと半歩で前髪が感じられるほどの距離だった。
アクシデントだったら青島だってとっくに避けていたはずなのに、青島は逃げようともせず、じっと室井の顔を見つめてくる。
「 …おまえ……」
室井がやっとの思いで口を開いた次の瞬間、青島は顔を反らして声を立てて笑った。
「あははー、室井さんの顔、本当に、びっくりしてるー」
その喉元が無防備に室井の目の前に晒され、弄ばれた相手に思い切り噛みつきたい衝動さえ覚えさせた。
その襟首をつかもうとする手を堪え、室井は努めて平静を保とうと理性を保つ——
「子供か」
顔を背けていた青島は、その言葉を聞いて笑いを引っ込めた。
「いぃえ~、俺は、室井さんの好きな人ですよ」
瞬時に凍りついた室井の反応を見て、青島はまた少し唇の端を引き上げた。
「それとも、室井さんが好きなのは子供なんですか」
室井は足元で拳を握りしめ、青島の表情の変化に合わせて目を泳がせた。
いきなり本題に入られて気持ちを波立たせた今の自分は、気恥ずかしさのあまり心を開けたくない気持ちでいるはずなのに
しかしなぜか、こうして悪戯っぽい笑みで冗談を言う青島に対しては、釘付けされたように身動きひとつ取れない。
室井の頭の中が真っ白になっていた。
「室井さん、ここに来てからずっと、そのこと一っ言も触れないんですもん、俺のほうから言わないと思い出せないんじゃないのかなーって」
……そういうわけじゃない。そんなことより、おまえの方が……
室井は衝撃のまま振り仰いだが、口を開けば彼の名前しか出てこなかった。
「青島……」
青島は体を斜めにし室井に向き直り、あの夜のように髪を掻き上げた。
室井は青島の指が豊かな黒髪の中に隠れている仕草まで好きだった。
「考えさせてくれとは言いましたけど、その後一度もあんた、連絡してこなかった。
挙句、今日はこんな乱暴なやり方でキャリアがシフト交代なんてしちゃうしさ。二人きりになっても何も言わないし」
そこまで言って青島は徐に顔を曇らせた。
鼻にかかった拗ねた声だった。
「いまさら冗談だったって言われても困るけど、ほんとに……俺、ほんとにさ……」
「青島」
青島の顔をじっと見つめ、室井は悲痛な声を絞り出す。
「これは冗談じゃない」
かすかに振り仰いだ青島の目に、室井は潤んだものを見た。
「本当ですか」
青島の声はほとんど涙声に近かった。
これでは本当に子供みたいだ……
室井は真顔でうなずく。
「本当だ。こんな冗談は言わない」
鼻を啜りながら、青島はまくし立てた。
「じゃ、どうして今まで黙っていたんですか?ここまで一度も聞かなかった!
自分だけが言えばいいとか、俺の答えなんて、本当はどうでもいいんじゃないの?」
そんなふうに目を真っ赤にしている青島を見て、室井は言葉が出なかった。
そんな彼をそのまま抱きしめてやりたい、キスして涙を落としてやりたい、一人で涙を流してはいけないと言いたい――
そんな数多の衝動が二人の現在の関係すら強制的に中断し、浮かんでくる。
「そういうつもりはなかった。朝になってこのシフトが終わる前に聞きだそうと思っていただけなんだ…… 」
八時からは薬対課の警官が昼勤の交代でやってくる。
青島を寝かせ、自分で監視をし、朝が近づいたら起こしてやり、後片付けが終わって同僚を待っている間に、この間のことを聞くつもりだったのだ……。
どんな時でも答えは変わらないはずだ。どう転んでも返答は拒絶の言葉であり、夜中の二時に聞くのと朝の七時に聞くのとはまったく変わらない。
ただ、結末を知った上で、こんな狭くて密閉された空間に彼と二人きりでいることは、残酷なほど耐え難いことだという気がした。
当然、告白される側の青島には、そんな室井の惑いなどまったく知る由もない。
室井の反論を聞き、青島はしばらくじっと黙っていたが、やがてぽかんと口を開いた。
「どうしてこんなまどろっこしい結論になったんですか・・・」
室井はかろうじて表情を抑えこむ。
「だってお前、無理だと言われた方が、先に進めるだろうから」
もちろん「無理」とだけは言わないだろう。なにしろ男に告白されたのだから、青島といえども内心、嫌悪を禁じ得なかったのかもしれない。
案の定、自分の言葉を聞き終えた青島の顔には苦悶の表情が浮かんでいた。
「どうしてそれしか答えがないような気がするの? じゃあ、もしそのときになって、俺がイエスと言ったら?」
……想定外の事態が起きた。
室井はそんなことは考えたこともない。
青島の問いに、少し間を置いてから、それでも今、何も考えずに思いついたことを口にした。
「そうならば、あと五分でキスが出来る」
それは口に出したら自分でも頬が熱くなるような言葉だった。
それはきっと、青島の心の中の嫌悪をさらに高めることになるだろう言葉でもあったに違いない。
今殴られたら、おとなしくしているしかないだろう…… 室井は目を伏せ、青島の膝の上に置かれた指に視線を落とした。
それから半秒、次の瞬間、まるでスローモーションのように、
一瞬、青島の髪が室井の額をかすめる感触をはっきりと感じたような気がした。
一瞬、薄茶色の目をそこに見たような気がした。
それから感覚が覚醒し、知覚が戻り、唇に残っていたぬくもりが一度だけで消え、室井が瞬きをした時
青島はもとの場所に座り込み、背中を丸め、口に拳を軽く当てていた。
「……!」
何をしたのかと思い至った時、最初に気づいたのは、長めの髪の毛先に隠れて赤くなっている青島の耳だった。
「 ……こゆことですか?」
青島は唇に手の甲を押し付けたまま、含みのある言い方を零す。
いつの間にか開いていた対青島への特殊技能が蘇り、室井は一目で相手が照れているのだとわかった。
信じられない思いで手を伸ばして唇に触れると、さっきまで伝わっていた温もりは消えていた。
まるで幻覚のような、ほんのわずかな相手の気配だけが残っていた。
「そんなところだ…」
室井は頭の中の歯車がすり減りそうになりながら、のろのろと声を発した。
途端、青島は吹き出した。
細まった目尻にはまだ雫が光っている。
「なんだよ、本当にこれでいいのかよ、あのとき室井さんがあんなに積極的だったから、てっきりそうだとは思ったん——」
青島が発した語尾が途切れたのは、いきなり押しつけられた室井の唇のせいだった。
これまでのいかなる接吻体験とも異なり、今塞いでくる唇の舌は男性的な匂いを醸していて、知識としては知っていても青島が経験したことのないテクニックで
襲いかかり
青島は手首と襟首も囚われる。
膝の上に乗せてたゲーム機はとっくに落ちてしまっていたが、実際に目の前の男以外のものに目を向けさせるのは至難の業で
室井のキスはあまりにも強引で攻撃的で、ほとんど無意識のうちに青島を心の中で確信させていた。
このひと、ずっと我慢してたのかも。
どういうわけか、そう察した瞬間、青島の心の中にもぽっかりと空いていた穴は埋まっていた。
きちんと縫い合わせて繕う。
それは まるでテトリスのように、相手の感情を肌で感じた瞬間、世界は欠けたピースで埋めれば完璧な流線平面になる。
それ以上でも以下でもない。 一番左端から一番右端まで、突出した障害は一つもなく、一格子の凹みもない。
それはどこか、想像もしなかった流れるような感覚だった。
そうして、すべての柵が剥がれ落ち、脱げ落ちていく殻の下で、青島はその何かが今、絶え間なく躍動しているのをはっきりと見た。
室井さんじゃない。
俺の心だ。
あの告白以来、十数日も昼も夜もそのことで悩み、何をしても、あのひとに関することしか頭になかった。
かつて室井が自分に何をしたのか、自分を見る目はどんなものだったのか、自分と話しているとき、他人とは何が違うのか。
そんなことを考えた。
そのたびに、あの容赦ない「好きだ」という言葉を思い出しては、熱い想いに変わっていった。
ぜんぶ、室井さんだった。 室井さんが俺のこと好きになるなんて。
もちろんそれは「 like 」であって「 love 」ではないと自分を誤魔化すことはできるけど
そんなことしたって獣に睨まれて逃げ場のなくなったように追い詰められるだけだ。
子供みたいに意地張ってるつもりはないけど。
ずっと室井さんだったんだ。 室井さん、なんであんたなんだ ……。
そんな無意味な感情を頭の中で繰り返しているうちに、青島の心臓が締め付けられる。
翌日。 三日目。
あのときあの場所の真剣な表情を一瞬たりとも忘れることができず、そのたびにすみれさんや和久さんに叱られてきた。
だ
から最初の1週間が終わらないうちにもう耐えきれなくなった。
朝目を覚ましてから夜眠るまで室井からの電話を待っていたし、署にいるときも外回りに出て、帰ってきたら真っ先に本庁からの連絡はないかと尋ねちゃってた
し
メールもしそうにないこと知っているくせに、それでも何度も何度も受信ボックスを入れたり閉じたりした。
理由なんか、一度も出せなかった。
出せないというよりは、その答えはずっと自分の中に存在していたことには薄々気づいていた。
これまでの室井の行動のすべてをそのような心理状態に置き換えて考えてみると、実は青島も相手の一挙手一投足に対して心の中で反応していたことを思い
出す。
ただ、その時はこの動悸が何なのか分からなかった。
飲みすぎとか思ったり、思い違いだったのかと思ったり。まだ外が明るすぎて電気の明かりが曖昧だった時みたいな。
室井と過ごした一分一秒をひたすら慈しみ、今だけを見て、未来を見据えない。
そ
んな非生産的の逃避理由は何か、それさえも考えないようにしていた。
潮風公園で、あの一言を聞くまでは。
あの日、仕事を終えて、ふと横を見れば、室井が署の前で待っていた。
暖房の効いた店内で食事をするよりも、人気のない公園に足を向けてしまった。
そして、熱いコーヒーが冷めそうになって、海風に吹かれて、頭がぼんやりして。
隣にいたさっきからずぅーっと無口だった男が、急にこっち向いて、あんなこと、言ったんだ。
唇がかすかに開いていた。 声は、逆に、はっきりと通った。 街灯の下で、いつになく威圧的な黒い瞳が、底知れぬ哀感を湛えていた。
あの光景を、俺は一生忘れることができない。
室井のほうから告白したはずなのに、次の瞬間には立ち去ってしまいそうな、不本意な気配が室井の全身に漂っていた。
青島が何を言っても、うなずいてそのまま立ち去り、二度と戻ってこないように青島には見えた。
だからその場に硬直し、室井を失うかもしれないのだという事実を初めて直視させられ、自分の気持ちを整理するよりも、無意識のうちに室井を引き止めたの
だ。
困ったふりをするのも、時間稼ぎをするのも、みんなそのためだけだった。
そして「よく考えさせてください」とだけ、答えた。
そうすればきっと次があるだろう。
そうすればきっと、たとえ礼儀上答えを探るべきなのかもしれないけど、室井ともう一度話をする機会があるだろう。
しかし、そんな淡い期待は、一週間が過ぎると、崩れ去った。
後悔して夜中眠れなかった。
どうして室井さんは、連絡して来ないんだろう?
どうして何の返事を聞かなくても、黙っていられるのだろう?どうして、よく考えるまで待つって約束したのに ……
んなこと、自分自身の問題じゃないか。
もう一人の自分が心の中で嘲笑っていた。
こうなるってわかってたら、なんで最初から返事しなかったんだよ俺。
だって、そのときは本当に知らなかったから……
ちがうな。 本当はとっくに知っていたんだと思う。
その場で告白するタイミングを逃したけど、もう一度聞かれたら躊躇なく教えてやれる自信があった。
だからこそ、「言いたいことがある」という一言でも、室井からの何らかのアクションを待ったんだ。
ドアを開けて廊下に本当に室井が立っているのを見たときは驚いたが、もしかしたらこれが仕事人間の室井にとって、会いに来る唯一の口実なのかもしれないと
思った、
どきどきしながら、ひそかに期待した。
その結果、こっちが何言っても、室井は結局事務的な顔をして冷たく答える。
途中までは和久さんがいたからだとしても、二人きりになってからだって、ずいぶん経つじゃんか。
このまま何事もなかったかのように、あんな目で、あんな言葉で、あんなふうに振る舞うことに、もうとっくに未練なんかなくなっていたんだとしたらって……
このキスまでは。
室井に求められるように強くキスされて、「好かれている」という確信感が、青島の二週間前から失われていた心を満たしていた。
今なら、自分の本音を伝えられると思った。
唇が解放された瞬間、二つの唇が揃って酸素を溺れるように肩で吸う。
大きく息をついている青島とは違い、まだ青島の頬に親指を残している室井は、唇を結んだまま何度か深呼吸をしてから、ゆっくりと手を離した。
「すまない」
「……」
落ちていたゲーム機に気づいたのか、室井が屈んで拾おうとしたが、青島は我慢できず、室井の腕をつかんで無理やり顔を上げさせた。
「青島ーー」
「室井さん、室井さん今、どんな顔をしているか、自分でわかりますか」
きつく腕を掴まれた室井の目に明らかに動揺が走り、乱れなく撫でつけられた髪の毛がほんの少しだけゆるんでいるように見えたことが
青島に一歩踏み出す勇気となった。
「俺のこと好きだって先に言ったの、室井さんじゃないの? 今キスしてきたのも、室井さんじゃないの?
今度は俺が言ってしまえばいいわけ?それとも俺がどう答えるのか、俺が室井さんをどう思っているのかとか、そんなことはどうでもいいことなの」
室井が言葉を詰まらせる。
青島が目を上げれば、その目はいつもの穏やかさを取り戻していた。
「もし最初から嫌われていたら、そんなことを君に言う筈がない。君は私のことが嫌いではないし、私のことが好きかもしれない。
ずっと、ほとんどそんな感じに見えた.。しかし、好きというのもいろいろな形がある…… 」
「違うって!」
青島が声を張り上げる。
焦るあまり、ここが静かであればあるほどいい監視用のマンションであることも抜けていた。
「室井さんを好きなんじゃない。愛してるんだ。室井さんを愛してるの!」
「…… 」
室井が瞠目する。 同時に、自分が何を口走ったのかに気づいた青島も目を丸くした。
すぐに慌てたように言い訳を付け足していく。
「つ、
つまり、愛しているようなスキです... 愛していないって言ってるわけでもなくて、とにかく、とにかく、そうじゃないんです……ええっと、だから!
」
青島は大きく息を吸った。
「とにかく!室井さんが俺のことを好きだって言ってくれて、嬉しかった」
顔を上げた室井に向かって、恐々と、室井の垂れ下がった手に軽く 指を延ばす。
「だから、今は、恋人同士ってことになるんだろ? 」
青島はさらに顔を近づけ、焦茶色の瞳を室井に向けた。
「俺たち?」
室井は青島の手を取り、少し自分の方へ引き寄せてから、もう一度キスをした。
今度は軽く触れるだけのものだった。
しかし、青島にとってはこの上ない安堵感だった。
青島に髪を愛おし気に指を指し込まれながら、室井が掠れた低い声でぼやく。
「馬鹿みたいだな…」
青島は室井の肩に顔を埋めて笑った。
「それは誰のことを言っているの」
室井の指先が青島の頭を軽く上向かせる。
「自分のことだ」
「ですね」
青島は室井の首に腕を回し、その独特の清潔な匂いを嗅ぎながら瞼を閉じた。
「この件に関してだけは、俺のこと信じてくれない室井さんは、本当にばかでした……」
3.
目が覚めると青島は毛布の中にうずもれていた。
ここがどこだったか思い出し頭を出すと、隣で室井が顔を傾けこちらを見ている。
「おはよう」
「……おはようございます」
青島は毛布を広げて身体を起こし、膝の上や床に落ちているベージュの毛布を眺めたが、どうやっても昨夜自分がそれを体にかけたという記憶はなかった。
どうやら室井がやってくれたようだった……
視線を向けると、室井も分厚い防寒具に包まっている。 一昨日に一晩寝た青島の寝袋だった。
青島の視線に気づき、室井はかろうじて体にかぶせていた寝袋をはらいのけ、床に戻した。
「ただ、夜中少し涼しくなったからな、今朝はもういらないな」
……本来なら徹夜する人間が毛布を使うはずである。
青島が寝てしまったために、室井が毛布をかけてくれたのだ。
かすかに胸が熱くなり、青島は小声で言った。
「今、何時ですか」
室井が腕時計に目を落とす。
「薬対課の方は、あと三十分ぐらいで着くと思う」
十分ほど前に一倉から電話があった。
朝になってこの一件を聞き、昨夜の当直変更を知ると、冷やかし、最後には薬対課の警官に少し遅れて来るように言いつけたらしい。
相手の言葉に含まれた揶揄に、室井は返す言葉もなかった。
電話を切ってから、室井は自分が赤くなっていることに気づいた。
青島も腕まくりをして腕時計に目をやる。
「あ、もう八時近いや。薬対課は遅れてるんですかね」
室井はその理由を説明せずに、口早に告げる。
「本部でちょっと所用があるという話だった」
「あいつら……」
青島はきちんと椅子に座り直し、ぐんと伸びをした。
「でも、初めて遅刻ってのがいいことだったなって思うよ」
ひょいと長い首を延ばし、青島が室井の頬に素早くキスをする。
「まさか、これも室井さんの仕組んだことじゃないよね」
いきなり襲われた室井は手の甲で顔を覆い、青島が気ままにトイレに行って顔を洗うのをぼんやりと見送っていた。
数秒後、「違うだろ」と気づく。
恋人になった最初の日。
冬にしては珍しく晴れ渡った朝だった。
雲の一角から金色の太陽が顔を出し、向かいのベランダにある風鈴が風に揺れている。
容疑者の取引証拠が見つかったのは、それから十分後のことだった。
テトリスの歴史的スコアが記録を更新したことに青島が気づいたのは、一時間後に監視機材を引き渡した時だった。
大学時代にテトリスで優勝したことがあると青島が話したのは、昨夜だ。
今朝の薬対課の遅刻も室井がやったに違いないと青島が確信したのも当然である。
久しぶりの晴天に、青島はモスグリーンのコートのファスナーを開けた。
赤いネクタイが胸のあたりで緩んで風に飛ぶ。
それよりも、室井にとっては心中を占めるものがある。
「青島、クリーム、ここについている」
「えっ、どこ。どこです?」
「……」
ほのかな甘味。
「んなことをするなんて、やっぱ室井さんって、ずるい」
「「やっぱり」とここで使うのは間違ってないか」
「密かにキスしたのは、やっぱり、と言うべきなんじゃないの」
「先に襲ったのは、俺じゃないだろう」
テトリスゲーム機。湾岸署刑事課特注の監視用機材。
たまごっちのようなファッショナブルなものでもなければ、過度に注意を必要とする携帯型ゲーム機でもない。
頭を使う古典的なゲームとして、テトリスは空から降ってくる未知数を最適な位置に上下左右、上下反転させていく。
正しいところを見つけて適切な組み合わせを作り出すことが重要だ。
上級レベルに必要なスキルは、忍耐力、自制心、そして必要なときの行動力。
奇妙なことに、そのゲーム機の得点記録を見ると、現在1位のプレイヤーの名前は「 muroi 」となっている。
刑事課・真下警部は、これは先輩である青島巡査部長の、ある警察庁官僚に対して抱いている過度な思い込みだと言い張った。
end
作・翻訳:レナさま/意訳:みんと
20200530

室井さんの青島ばかっぷりが苦笑を誘う逸品ですねv
拗ねちゃう青島くんのかわいいことかわいいこと。こういう子供っぽさを残しつつ、しっかりと恋に向き合う男前な青島くんがめっちゃ好きです。
そしてザ・室青。やっぱ室青はこうだよなぁと懐かしくなる味わいがたまりません。拙宅の変化球系などではなくストレートな室青愛に悶えましたvv
毎回思うけどキスシーンがとってもドラマティックでピュアだと思います。
可愛い作品をありがとうございました!