君をさがして
封筒を渡し、優司は村井に耳打ちした。
「あんたから渡してください」
「…お前が行きゃあいいじゃねえか」
村井は渋い顔をした。
「ああいう手合いは、苦手なんだよ」
「俺だって」
できればお近づきにはなりたくない。この商売を始めたときから、否応なしに身に付いた習性だ。危険を察知する。まるで、獣のような。
「とにかく。あんたはあのひとの顔を覚えておいたほうがいい」
優司は、ソファに座ったまま、出されたコーヒーに手も着けずにいる男を顎でしゃくってみせた。
「あんたの仕事を邪魔するとすれば…あのひとですよ。泣く子も黙る、四課のトップ。九嶋さんも、目を付けてる」
「…そうか」
村井はサングラスをひょい、と下げて刑事を見遣った。
そして、不意に気づいたように、おもしろげに優司を見た。
「…なに」
「俺が上手くやっちゃあ、まずいんじゃないのか?“東京”は自分だけで甘い汁を吸おうってんだろう」
「…さてね」
優司は肩をすくめた。
「俺にはどうだっていい、そんなこと」
正直、どうでもよかった。
「どっちが持ってこうが…俺たち下っ端には関係ないですからね」
表情を消して、村井の背をどん、と押した。押された村井は、仕方ないとでも言いたげにぴら、と封筒をかざしてから、また陰険漫才を始めた九嶋と室井を止めに歩いていった。
それを見届けて…優司は背を向けた。
近寄らない方がいい。
…本能が、そう告げていた。