「おし、完成」
満足感いっぱいで、テーブルに並べられた食事を見渡す。
今日はなかなかがんばった。
最近忙しいらしい恋人に、せめてもの手料理を、とまだ仕事中の恋人宅にこっそり忍び込んで、彼の好きなものだけをつくったのだ。
彼の好みは、和食である。
胃に優しく、栄養バランスも考えて、彩りまで気を使ってみた。
…もしかして、俺って天才?
一人悦に入る青島であった。
…それにしても、遅い。
料理を見て満足するのにもすっかり飽きた午後11時。
もちろん料理は冷めきっている。
青島が、もう今日は室井の顔を見るのをあきらめて帰ろうか、と身支度を始めた頃、やっと部屋の主が帰ってきた。
がちゃりと鍵が閉まる音がして、すぐにもう一度鍵を開く音がする。
青島が玄関に顔を出すと、不機嫌な顔をした恋人がコートを片手に立っていた。
「…青島、部屋に入ったら」
「鍵くらい閉めとけ、ですね」
にっこり笑顔で答えると、恋人はますます眉間の皺を深くした。
「お帰りなさい、遅かったっすね」
「…ああ」
「今本部いくつ抱えてるんすか」
「…三つ…」
「大変ですねー」
「寝る暇もない…」
室井のコートと上着を受け取る。
「そんなかんじの顔色っす」
ハンガーに掛けながら、室井を伺うと、ソファに深く沈み込みながらも手は持ってきた書類を掴んでいる。
ため息をつきながら、室井の腕を取った。
「…あのね、室井さん」
「…なんだ?」
「少しくらい休憩しないとね、体壊すでしょ。俺メシつくっときましたから、仕事はくってから」
そして強引に腕を引っ張り、室井を食卓に引きずっていって椅子に座らせる。
「ね」
必殺笑顔と食事。
これを見れば室井も笑って、「いただこうか」と…
「…すまないが、青島」
…こなかった。
室井は片手をあげて椅子から立ち上がる。
「食欲がないんだ。片づけなければならない仕事もあるし」
…忘れていた。
このおいそが氏には、「ザ・警察官僚」のほかにもう一つ名前があったのだ。
「ミスター・ワーカホリック」。
呆れて見ているうちに、室井は食卓から離れようとする。
ちょっと待て。
青島は、緩められただけでまだ首にぶら下がっている室井のネクタイをぐいっと引いて、室井の頬に口づけた。
「ちゃんと食べて」
そして、目を大きく開いて固まっている恋人に、そっと耳打ちする。
「俺がつくったんだから、ウマイに決まってます。仕事は、それから」
ね?とにっこり笑ってみせる。
室井は、眉間に皺を寄せた。
そして、小さく息をついて青島に啄むようなキスをした。
「…俺の負けだ」
そう言って、室井はおとなしく再び椅子に腰掛けた。
「よろしい」
青島も重々しく言い、室井の向かいに腰掛け、世話を焼き始める。
小皿を差し出してしょうゆをさし、温かいご飯をよそって手渡して。
嬉しそうに手を出してくる青島を見て、室井は心中で苦笑した。
ああまったく、この男にはかなわない。
ほっぺたへのキス一つで、仕事でささくれた心をいとも簡単にほぐしてしまうのだから。
この恋には、勝ち目はないな。
そう思いながら、恋人の微笑みに、ぎこちなく笑みを返す室井であった。
げろ。(ざーざー)←砂を
吐く音…
これはね…新夏でアップした方がカワイイ話だと心底思うのですが、
どうにも新城さんが夏美ちゃんのつくった料理を無視して仕事してくれないので、室青で…。
「ネクタイ引っ張ってほっぺにチュウ」が書きたかっただけなので、
話的にひでえ出来なのは、許して下され…。
あ、でも朋んのはみんなそうか(笑)
なあんだ、いつもどおりじゃん!(開き直るな)