STRAWBERRY KISS~真夏の夜の夢
後日談のえろの続き
7.
ボタンも外され、ほぼ意味を成していなかったシャツを、青島がバサッと脱ぎ捨てた。
足元にはらりと落ちる布が、薄紫の波紋を描く。
続けて、同じく既に外されていたベルトをシュルっと抜く音が続く。
バックルの外されていたスラックスは、辛うじて腰骨に掛かっているだけで、青島が軽く手を添えれば、細身の身体から崩れ落ちた。
下着だけを付けた青島が室井の前に立つ。
夜になって冷え、研ぎ澄まされた月明かりは、冴え冴えと部屋の奥までを照らし
肌の美しさまで仄めかす蒼い大気の中で互いの輪郭が浮かび上がっていた。
言葉はなく、動く音さえ聞こえそうな一種の緊張感が、これから始まる行為の熱さを許容させる。
いつもは室井が剥ぎ取る布を、自分で脱ぎ捨てていく様をつぶさに見つめて――見惚れていた室井は
更に露わとなった、芸術的なフォルムに、室井はただ目を見張った。
海の倉庫で、傷だらけの青島と再会した時、月光に浮かぶその曲線美に、仄暗い恍惚感を抱いた時のことを思いだす。
今となっては、その完成度の高い裸体の隅々まで室井は知らないところはなく、肉の奥深くまで繋がり合ったというのに
年齢を感じさせない艶と香りに、室井自身知りもしなかった獰猛な獣を自覚する。
青島が近づき、室井の前に膝を付いた。
それに合わせ、室井は膝を割り、腰を突き出すことで、求めている行為を伝えた。
恐らくあの噂は、各所轄にも触れ回っていて、青島の耳にも入ったのだろう。
面と向かって問われたのは今夜が初めてだが、青島は常に何かを問いかけたがっていた。
思わずといった形で零れ落ちた今夜の切欠が、暗く静かな海の中に混じり溶けていくように
いつしか室井の過去と共に、鎮められると思っていたわけではない。
あれほど懼れた海は、塩辛く、ただ無限に広がる息吹もない、墨色の世界だった。
全てを手放した気になって飛び込んだ海も、こうして日常が戻ってくれば、意気地のなかった子供の家出と同じだ。
青島が室井の股間に覗く太く赤黒いものを口に咥える。
スラックスも引っかかったままの格好は、より一層室井に官能的な気分を与えた。
既に外されていたワイシャツの隙間から、ややひんやりとした青島の手が滑り込み、胸元を弄ってくる。
胸の尖りを潰すように捏ね回してくる動きは、恐らく青島がかつて抱いて来た女への愛撫スキルなのだろう。
「そんなものか・・?」
奇妙な苛立ちは、意地の悪い言葉となって、青島へと降りかかる。
が、その口調とは裏腹に、室井の目は自身を咥え込む光景に釘付けだった。
なんて多情で淫奔な光景なのだろう。
必死に室井の熱塊を咥え込む青島の苦しそうな顔と、半分だけ寛げられた自分のスーツ。
濡れて光る青島の紅い口唇が熱塊の形に窄められ、上下するたびにぬめって卑猥な水音を立てる。
少し赤らんだ目尻も、乱れた髪も、艶のある素肌も、雄を狂わす素質に富み、苦悶の表情は凶暴な独占欲と支配欲を巻き起こす。
婀娜な色を放つ裸体は背徳の歓喜に近く、過去に関係したどんな女性よりも室井の劣情を刺激した。
跪く格好となり後ろに突き出されている青島の丸みを帯びた桃尻が下着からはみ出さんばかりに熟れて揺れる。
腰に紐だけを結ぶタイプの下着は、深い海の色だ。
青島は元々トランクス派だったが、抱くようになってから、室井が買い与えた。
やましい意味合いもあったが、Gストリングは動きやすく、布の面積が小さいので高い通気性など、蒸れにくいところも嬉しいメリットだ。
ゴムの締め付けがないのでラインが綺麗に出て、スーツ着用時にはキャリアは皆、重宝する。
ただ慣れるまでは陰部に食い込むことがあり、室井と違って肉のふくよかさを持つ青島の肉体は、はち切れんばかりに実り
脱がす時の室井を愉しませた。
「ん・・・、んぅ、・・は・・・ぁ・・・」
喉奥まで押し込んだせいで、青島が小さな呻き声を出す。
拍子に敏感な室井の先端が青島の喉奥で締め付けられ、室井も眉を寄せた。
美味そうに咥え込んでいた口を外すと、唾液で光る反り立った巨根に青島が見せつけるように赤い舌を這わせる。
チラリと室井に視線を上げ、目だけ細める艶笑に魔性の素質を見る。
青島は、強気な視線を一度だけ室井へと向けると、指先で室井の胸の尖りを摘まむようにこねまわし、青島はもう片手で室井の熱塊を上下し
室井の首筋に舌を這わせた。
甲斐甲斐しい動きに、満たされるのは躰だけではない。
青島の長く麗しい手足が室井に四肢に絡みつき、律義な口唇が甘い息と共に掠めて、そそられた。
そこら中を舐め回され、再び熱塊を咥えられる頃には、室井も熱い吐息を洩らす。
軽く仰け反り、局部を青島の口奥に押し込みながら、室井は片腕で目元を覆った。
懸命なだけのぎこちない愛撫に、どうしようもなく感じる。
絡め合った指が、お互いに食い込むほどに強く握り合った。
思えば青島とは昔から感情のままにぶつかり合う方がウマが合った。
裏切ったと責め立てれば、信じられないと糾弾される。
これも、まるで、児戯だ。
噛み合わなくなったのは、室井が離れ、心を閉ざし、海に呑まれた時からだ。
こうして言葉よりも感情のままに肉を貪り合う時、束の間の一体感は奇妙に歪んだ形なのに、互いに交じり合うことを覚えた躰が妙にしっくりとくる。
その呷りを一番喰らったのは、池神派の親族だろう。
室井と婚約を結ぶところまでこじつけた見合いは、あの一件でご破綻となった。
男と心中するような夫はいらないということだろう。
池神を大層立腹させたこの一件は、麻取を出し抜いた手土産のおかげで、なんとか首の皮一枚繋がることになる。
不思議なことに、あの日以来、海の音は聞こえなくなった。
その代わり、海の匂いをさせる彼が毎夜室井の腕の中に帰ってくる。
そうして明白だった距離感が喪失して、今度は青島と自分が近いのか遠いのか分からなくなった。
「・・・イイ、青島・・・ッ」
「もっと、だろ・・・」
赤い舌を覗かせ、青島が下唇を舐める仕草は、まるで淫乱な娼婦のようで、それは灼け付くような焦燥と不安を室井に焚き付けた。
夜気に晒される熟れた素肌がしっとりと薫る。
根元からゆっくりと室井の熱塊を愛おしむと、青島は先端からゆっくりと咥え込んだ。
口腔内は灼けるほど熱い。
猥らに轟く媚肉のように不規則に吸われ、舌で捏ね回され、室井の腰が上下に揺れる。
荒い息を殺し、室井の眉間が寄せられた。
敏感な内股を何度も撫でられ、双袋も同時に刺激され、せり上がるような快楽の中、意思とは関係なく室井の腰がビクつく。
「くぅ・・・ッ、ソコをもっと舐めてくれ・・」
「おっき・・・」
「コレが、そんなに欲しいか・・・」
貧欲に飢える躰を持て余し、もっと手に入れたいと願う。際限などなく、理性など残さぬほど乱れて、溺れてしまえばいい。
「・・ほしぃ、よ」
「ならば、誘え」
「俺が、なんのために黙ってずっと待ってたと思ってんの・・?」
意地悪な命令は、どこか児戯で室井自身、おかしくなる。
舌で輪郭を辿られ、軽く甘噛みされると、涎を零すように室井の腰が戦慄いた。
必死に奉仕してくる青島が愛おしく、思わず伸ばした指先で、その柔らかい髪をくるりと指に絡ませた。
途端、泣きそうな顔をするから。
「・・ッ」
室井は思わず青島を引き寄せ、口付けながらベッドに一緒に倒れ込んだ。
足が縺れ合い、腕に囲い、見つめ合えば、青島の濡れた口唇が闇に光る。
上がる吐息を飲み込み、室井は深く強く口付けた。
犯した新たな罪と罰が、闇に彷徨うだけの運命だとしても、誠実で真摯な情熱だけは、揺るぎない。
乱暴に組み敷いた躰を気遣う余裕もなく、室井は口腔の奥まで舌を差しこみ、深く強く貪った。
腕に抱き寄せ、頭を抑えつけ、優しさも甘さもない口付けに、青島が噎せ返る。
「む・・ぃ、さ・・ッ」
忙しなく繰り返される口付けの合間を盗んで呼ばれる名前は、自分を抱こうとしている男のそれだけで
薄く開かれた青島の口唇は、室井の執拗なキスに酸素を失い、戦慄いた。
それでも室井は離さず、吐息も奪って執拗に口唇を重ねていく。
先を強請るような反応に、骨まで溶けそうなキスをして、室井は青島の顎を片手で固定し、腰ごと引き寄せる。
指先を絡ませれば、それは同じ強さで握り返された。
胸が潰れそうな幸せを感じながら、室井は青島の内股を撫ぜ、拓かせてその間に身体を割り込ませた。
*:*:*:*:*
抱え上げた膝の上で少しづつ解け、乱れていく青島の躰を室井は柔らかく揺らしていく。
頬を染め、薄く半開きの口唇が妖艶で、すっかりと熟れて絡みついてくる媚肉に、緩やかな刺激を与えた。
口許を覆った腕が不自然に強張り、卑猥な言葉で強請らせたくて、耳朶に口を寄せて甘く咬む。
誘うように舌先を延ばして輪郭を舐めとれば、青島は噛みつくような激しさで室井のキスを求めてくる。
舌を奥まで挿し込み、深く絡ませながら、咽る吐息を奪い、敏感な口腔を愛撫する。
緩慢で気怠い動きと、密着しないキスに焦らされ続け、全然足りないと強請る仕草が可愛くて
つい室井は口唇を重ねたまま、端を持ち上げ、低い笑みを零した。
「・・なに、・・・ってんすか・・・」
「いや――・・・」
淡い言葉尻は宵闇に溶け、繋がった下肢から漏れる濡れた音に掻き消される。
おまえが愛おしすぎてなんて正直に言ったら、どうせむくれて機嫌を悪くするに決まっている。
そんな、らしくないベッドマナーすら、この歳になってセックスの手筈に加えることになるとは、室井自身考えていなかった。
飛び降りた先の人生に、何があるか分からないものだ。
「・・・ッ・・・ア・・・ッ」
青島の汗で濡れて束になった髪に口付けを幾つか落とし、耳の後ろまでねっとりと舐め上げた。
ぞわりとする感触に青島が小さく震え、その反動で室井を咥え込んだ内壁がきゅっと収縮する。
熟れた肉に熱塊を包まれ、ふたりの喉から同時に呻きのような声が上がった。
「あ、おしま・・・ッ」
室井を直向きに信じ、まっすぐに思い続けてくれる見返りのない情熱が、こんなにも心地よいものだとは知らなかった。
今はそれが痛みに変わる。
その時やっと、室井は青島の底なしの人の良さに気付いたのだ。
危うく、強烈な色香を含む青島の髪から、微かな海の香がした。
自分の人生はやはり海の気配が漂うものらしい。
せり上がる快楽に眉根を寄せ、きつく目を瞑ることで律動に堪えていた青島が、薄っすらと瞳を覗かせた。
その透明に光る美しさに、室井は吸い寄せられる。
「むろいさ・・・」
名を呼び合うだけの声がベッドには似合いだ。
生理的に上がる刺激に、青島の瞳はひどく潤んでいた。
熟れて過敏になっていく肉壁を繰り返し擦り上げられる快感に身悶えながら、青島が舌足らずに室井を呼ぼうとする。
何も言わせたくなくて、室井はしっとりとその口唇を塞いだ。
熱い舌を絡ませれば、青島も必死に応え、口付けを深いものに変えてくる。
アイシテイルとは素直に言えない関係だった。
ずっと、今も、これからも。
兇悪な快楽から逃れようと腰を引く青島の腕を引き、衝撃に仰け反った躰の内股を抑え込んで、欲望を突き立てた。
途切れない快楽が青島の目許を歪ませる。
過ぎるほどの青島の切ない情が、込み上げてくる室井の情動に交錯した。
あんな風に乱暴に逃げ出そうとした俺に、付いてきてくれた。自分を選んでくれた。
室井にとってこんな愛おしい存在はない。
独り占めして、どこまでも、連れていく。
だが、もういつまで経っても決定打がないセックスに熟れ切った青島は、酸素を不足させ、キスを解きその端から嬌声めいたものを洩らして天井を仰いだ。
「もう俺は、おまえのものだ」
だから、海には浚われない。
好きになるのも、君が罪だというのなら。
きっと自分はもう迷わず罪を手に染めるだろう。
滴り落ちる甘い毒に犯され、骨まで溶けそうな快楽に痺れるまま掻き寄せたその躰を抱き込んで
彷徨う視線を、その顎を捉えることで引き戻す。
断続的に上がる濡れそぼった啼き声に名を呼ばれ、それが堪らない快感を室井に与えた。
仰け反る喉元から肩に幾つも所有印を落とすと、室井は青島の後頭部を鷲掴み、潤んだ青島の瞳を覗き込んだ。
「おまえの、――・・・」
全てが欲しいだなんて。
しかし言葉を飲み込んだにも関わらず、透徹な青島の瞳はぞっとするほど鮮明で、喘ぎ、快楽に溺れ切っているまま
正気を保っているような健気でありながら何にも侵されない強さで、室井を見つめ返してきた。
薄っすらと青島の口唇が戦慄く。
「――・・・」
無意識の誘惑に、室井の限界もそこまでだった。
押し倒し、求めるまま一気に奥まで腰を進め、容赦のない動きで律動を始めた。
室井が体重ごと深く抉ったため、更に奥深い部分まで貫かれることになった青島は、衝撃に悲鳴のような呼気を発する。
最奥まで容赦なく貫かれた青島の躰は、衝撃に仰け反り、その顎から首筋、弓なりの背筋までが美しい曲線を描いて、室井の前に晒された。
目の前の肉を貪る以外、何も考えられなくなる。
自分の中にこんな凶暴な獣が潜んでいたなんて。
あの朝焼けに見た曲線美が自らの下で再現され、咽ぶような喚き声は、間断なく打ち寄せる波のように、赤い口から零れ出る。
その頭を抱え込み、室井は深く強く口付けた。
吐息のような音で囁かれた青島の本音が、室井の目頭を熱くする。
すっかりと蕩けて蜜を垂らす青島の秘花は、室井の先端を呑み込もうと猥らに息づいた。
室井に内股を裂くほど抑え込まれ、耐え兼ねた青島の躰は、穿つ強さにベッドの上へと身を捩り、逃げようとする。
「逃がせない・・・」
短く命令し、キャリア然とした強引さで青島の躰を引き摺り戻し、無理矢理シーツに縫い付けた。
否応なく、室井の雄が煽られていく。
深く腰を回せば、敏感に海老反りとなる美しい輪郭が、室井を視界から強烈に煽り
差し出すように晒された胸に、室井がむしゃぶりついた。
「・・・・ッ・・・・・ヤッ・・・・・そこ・・・・・っ」
仰け反り晒す喉元に室井が嬲るように口付けを滑らせるたび、飲み込み切れなかった唾液と混じる涙が、青島の頬を伝った。
「・・ク・・ッ・・、あ、・・アッ・・・アッ、・・ア・・ッ・・」
室井の熱塊を受け入れさせられている秘花が、咥え込むたびに痙攣し、爛れた水音を溢れさせる。
ふたりの腰の振動にベッドが耐えきれず、軋んだ音を立てた。
強すぎる快楽に切なく歪み、涙を浮かべながら虚ろに室井を見上げてくる青島の腰は、無意識に室井の動きに合わせていて
絡め合った指先が、きつく握られる。
「深く・・・もっと、深くだ」
それでも傍にいることが、こんなにも愛おしい。
「青島・・・あおしま・・・、あ・・お、しま・・」
「・・・ああっ、あっ、・・う、ん・・、ここ・・、い・・る・・ッ」
「ああ・・・」
奪い取っても豊かなままの青島に室井は憎しみにすら似た感情を覚え、夢中で愛咬の痕を残すように腕の中の肉を味わった。
激しい行為の記憶を青島に刻むことで、囁かな抵抗に溺れる。
散らかっていた自分の人生のそれぞれの欠片が繋がって、仕舞い切れずに持て余していたものも、捨てきれずにこびりついていたものも
いつか青島に伝えたい。
つまらない昔話を、彼はどんな顔で聞いてくれるだろうか。
懸命に生きた証を、どんな風に共有してくれるだろうか。
「・・ぁあ・・・っ、あっ・・・やぁっ、んぁ・・・っ」
細い媚びた青島の嬌声が、夜気に熱を孕ませていく。
熱い。
なぁ、青島。俺はおまえとだったら、どこへだって行ける。
「そこぉ・・っ、ああんっ、・・キモチ・・ッ、んあっ、んあっ」
濃密な情事の時が去り、当たり前の日常に戻っていくとき、青島の中にも海の欠片が残されていたらいいと、室井は祈る。
優しさも甘さもなくても、それは室井が自分の意思で選べた。
戒められている現実に、室井は薄い笑みを浮かべる。
「もっと、啼いてくれ」
恐がるように縋り、放埒に絡み合う真夏の夜に見る夢が、燃え尽くすように更けていく。
俺の全部をおまえにやる。
忘れないでくれ。
いつか終わりを迎えるとき、記憶も思い出も、ふたりで駆け抜けた時間も、俺も、全部、連れていって欲しい。
それが室井の最後の願いだ。
happy happy end

いつも似たようなえろですみません。
このエピローグは読者さまのリクエストにより追加されました。ありがとうございました。