短編「純情円舞曲」のあの後です





08.純情円舞曲~夏の夜
line
1.
「締めちゃダメだ・・・力を抜いて。そうだ、もっと奥まで入りたい。挿れてくれ、俺を・・・もっと奥まで」

繋がったまま室井がぐっと抱き寄せ、耳たぶに舌を這わせば、青島の濡れた口唇から、ふあっと甘えた声が上がった。
うねるような後庭はかなり狭く、熱を持って室井の楔を半分ほど咥え込み、ひくひくと震えている。
しっとり濡れた媚肉は搾るように室井の楔に絡み付き、雄を強請るように誘っていた。

宵闇の中、汗ばむ青島の若く瑞々しい肌は光の粒を纏い、荒く胸元を上下させ、妖艶な影を落とす。
蒼に波打つシーツに頭を傾け、濡れた前髪を束に額に張り付かせる様は、男の視線を奪うのに充分だった。

粘性の水音と熱いぬめりに誘われ、室井は腰をゆっくりと回す。
青島が緩くいやいやと首を振る。
その頭を抱え、室井は胸に抱き込んだ。

止めるつもりはない。力を込め、男根を挿し込んでいく。

汗にしっとりと濡れた栗色の髪に何度も口付けを落とす。
青島の呻きが室井の頬に掛かった。
それだけでゾワっと室井の肌が逆立ち、本能の動き宛ら、室井は腰を埋め、目の前の色付いた肉をじっとりと貫いた。
白くなるほど、青島の指先がシーツを掴む。

呻くことも、叫ぶこともならず、青島は室井を根元まで呑みこんだ。

「ぁ・・・っ、ハッ、・・は、・・ぁ・・・っ」

呼気を堪える濡れた口唇を慰めるように、室井が柔らかく塞ぐ。

みちみちと熟れた媚肉が裂け、室井を挟んで開かされている下肢は淫猥な刺激に小刻みに震えていて挿入の余韻を伝えていた。
熟れた果実のように芳しく淫靡に堕ちた肉体は淫な香を放ち、これまで開いたどの女よりも室井を劣情する。
壮絶に、艶やかで、淡麗だった。
快楽の堕として尚、青島は透明だ。
美しい光景に、そこに穿つことを赦された男として、室井に敬虔な感慨が湧く。

「ようやく、抱けた」

小さく名を呼ぶと、苦しみに耐える息の中から青島が薄っすらと濡れた睫毛を持ち上げる。
睫毛は濃い陰影を揺らし、その奥から表れた透明に光る栗色の虹彩が室井を映し込んだ。
その途端、室井の胸の奥が軋む。

「ずっと、こうしたかった」

出会って幾星霜の月日が経っていた。
遠く離れた日も、火走る鬩ぎ合った日も、みな室井の記憶の奥底に確かな息吹を与えている。
届きたいと思ってた。受け入れられたいと思っていた。
今ようやく辿り着いたのだと確信する。
熟れた熱を睦み合い、背徳の歓びに壊され、それでも罪の甘さに陶然となって、深みに溶けあって、ひとつのものとなっていく英断に
室井は純情なだけでは得られなかった確かな源泉を知った。

これで、きっと、室井は誰より強靭となれる。
ここから始まるものを、例えそれがこの世の果てほど深い場所であっても、浅い亀裂の予感であっても
互いの熱の間に蘇らせようとしているものが、二人にとっては確かなものであることを、実感させた。

その決意を、神聖な儀式の如く埋め込まれた青島の目尻が光を放つ。
全ては独り善がりで、青島にとっては、何にもならないこの交わりが、室井にだけ掛け替えのない強さを齎してくる。
無情な交接に、だからこそ男の満足が秘められているのだ。

「ほんと・・・・、泣き虫だな」
「だれ、の、せい・・・っ」

つつ・・・、と目尻から流れる新たな雫が美しい軌跡を描く。
批難を込めて睨み上げる強い珠玉も絶品で、あらゆる雄の欲を根こそぎ奪われる。
いっそ溺れそうなのはこっちだと思いながら、室井は再び青島の口唇を塞いだ。

力無く、室井に応えようと震わせる仕草に胸がいっぱいになる。
不意に込み上げてきたどうしようもないほどの強烈な愛おしさに、室井は困惑すら感じた。
掛ける言葉も見失った室井が零した一言に、それでも青島は笑ってくれた。
そのまま、目尻から頬、顎、咽喉へと甘ったるい接触を残し、室井は抱く者の、自分を包み込む者の感触を、舌と手を使って確かめた。

「・・・ん・・・、ン・・っ・・」

不規則にうねる熟れた媚肉は甘く奥に引き摺るように室井の楔を包みあげ、淫らに挑発してくる。
室井が雄の本能だけで組み敷いていたのだとしたら、ここぞとばかりに突き上げただろう。
それだけ、青島という男は、男も女も惹きつける、魔力のような芳香を放っていた。

「・・ろぃ、さ・・・」

啜り泣きに近いトーンの息で、青島が室井の二の腕を掴んでくる。
間近で視線を交わし合った。

「つらいか」
「んん・・・どんとこい・・・です」
「強がるな」
「照れくさい・・、んだっ・・つーの、察して」

気を抜けば野生のままに走りだしそうな身体を治めるため、室井は人差し指の腹で青島の口唇をなぞる。
室井が吸い付きすぎたため紅く濡れて少し腫れている。そこは弾力を持って震えた。
小さな衝動に駆られ、不意にそのまま室井は指を口腔へと押し込んだ。

「ふ・・、・・ァ・・・」

舌をなぞって、そのまま先をつまむ。
とろりとした唾液がその口腔内で銀色に撓んだ。

「ぅ、・・・は・・・ぁ」

上と下を支配され、青島は眉を潜めて室井を焦点のぼやけた瞳に映す。
青島は大きく広げられた下肢の痛みに内股を震わせながら、口を開けて室井の指を含んだ。
ゆっくりと根元まで侵入してきた指に舌の根元を押され、苦しさに青島は涙目になる。

「んぁ・・・、は、・・ァ・・」

唾液をとろりと流し、紅い舌を覗かせる青島の顔に、室井の眼が少しだけ眇められる。
眉尻を少し下げ、頬は朱に染まり、陶然と瞬く青島の眼差しからは、両脚は裂けるほど広げ、口を明け渡す無防備さに少女のようなあどけなささえ混じってい た。
室井も腰は埋め込んだまま動かさない。

抵抗はしてこない。
苦悶と快楽に身悶える紅潮した表情を眺め、室井は傲慢な幸せを感じた。

室井の眼が少しだけ意地悪な揄いを乗せていることに青島が気付き、その寄せられた眉の下で瞳だけが苦情を乗せる。
室井がゆっくりと指を抜いた。
青島の唾液がとろりと垂れたその指を、今度は室井が自分の口に運んだ。
紅い舌を見せ付けるように伸ばし、視線を向けたまま舐めあげる。

「・・・・」

途切れないスコールの音はいつしか心のざわめきを記す轟音だった。
不規則に窓を叩く波音が、果てない緊張と、罰に屈するほんの少しの後ろめたさを狂気に変えて加速する。
それでも甘受する運命に、いっそ回避不能の無力感よりも、遍満していく蜜に逆らう気などそもそもなかったことを諒解する。

暫く唾液を舐めとる室井を見ていた青島が、するりと室井の首の後ろを片手でゆっくりと引き寄せると、首筋を長く伸ばし顔を近付けた。
瞼を伏せて軽く室井の口唇に触れ合わせる。

「・・・ん・・・、ん・・っ」
 
室井が胸板を密着させて覆い被さる。
ベッドと室井の間に閉じ込め、今度は、舌を絡めて深く濃蜜なキスをする。
頬を撫ぜ、首筋から肩、胸へと愛撫すれば、青島が室井の首に両手を回した。
自ら口唇を薄く開き、紅い舌を差し出し、室井の舌を誘う。
必死になって強請る姿を見せられ、可愛くて愛しくて、たまらなくて、室井が男の顔になった。

「ずっと・・・あんたを、知ってみたかった。それ止めるの大変だった・・・」
「・・・知れたか・・・?」
「まだ・・・」

室井の崩れた前髪が青島の額を擽る。

「俺も、まだだ・・・」

薄っすらと笑みを滲ませ、室井が青島の口唇を柔らかく塞ぐ。
お互い、この先の期待しているものを、瞳に浮かべている。
青島も室井の首に両手を回した手で、室井の後ろ髪を玩ぶ。

「どきどきして、だけど届かないなんて生殺し、あんたくらいだ・・・」
「・・・」
「カノジョにもそんな感じでした・・・?」
「・・・・どうだったかな・・・」

スコールと闇に隔離された空間は二人きりの密度の濃い空間となって、囁き合う声が肌の上を湿度を孕んで滑る。
夏の嵐は止む気配を見せなかった。

「今は他の人間の話なんかするな」
「あんたで、いっぱいだよ」

涙目で微笑む青島に、傲慢な倖せが室井を満たす。

「どきどきして・・・もう、くるしいよ・・・。俺、もう、あんたじゃなきゃ、駄目みたい・・・」
「そんなの、俺は最初っからだ・・・」
「なんとかしてよ・・・」
「なんとかって・・・・?」
「・・・言わせんの」
「俺ばかりが突っ走ったって狡いだろ」

青島が目の前の室井の節ばった男らしい肩に軽く歯を立てる。
勿論、痕は付けない。だが、その僅かな刺激と熱い吐息が神経を擽り、室井の肌がぞわりとそそけ立った。

クスリと笑った笑顔に負ける。
どこまでも青島に埋もれたい。
流されていく先が地獄でもそこから何も見つけ出せなくても、今はこの肌に溺れていい。
・・・もう、待ってやれない。

室井がふっと瞳を強めた。
制圧する男の眼に変わる。

「青島」

視線だけの命令に従わされ、物言わぬ男の深く壮絶な色気にくらくらとした青島が見上げてくる。
仕方ないなぁというようにその瞳が揺れて。
紅く濡れた青島の口唇が震えた。

「・・・俺に・・・、あんたを、ください・・・・」

あえかな金色を射す闇色の瞳が美しく映えた。


室井がスッと手の平で、卑猥に開かれていた青島の内股を撫であげる。
じっと見下ろしながら、その左足だけを大きく掲げた。
濡れそぼった青島の秘花が室井の眼前に剥き出しになる。
そこには硬く赤黒い室井の熱塊が、反り返るほどに屹立したまま、薄い襞を引き裂かんばかりに埋め込まれていた。
小刻みに顫え朱を差す青島の内股が、桃色に震え、室井をこの上なく煽情してくる。

室井がそっと、自身を咥えこませた縁を人差し指でなぞる。
男にどうされているかを青島に分からせ、挑発する。

室井がゆっくりと腰を引き、律動を始めた。






2.
「・・ひ、ぁ・・・、は・・っ」

見つめ合い、お互いに肉を感じ合う。
漆黒の闇の瞳も青島しか映していない。
刺激に収縮する蕾の中を、室井は柔らかく掻き回していく。
熱を持った肉壁と擦れて、不規則に吸い込まれ、室井の腰が熱く轟いた。

初めての男との交わりだった。
バックバージンである青島も同じであるはずで、極力快楽だけを拾い上げて与えていく。

「っ、・・はっ・・、・・っ」

室井が腰を進める度、青島の口からは押し殺した吐息が漏れ、ピチャリと濡れた音が淫靡に室井の鼓膜を顫わせる。
女性よりもかなり締まる内壁に陶然となる。
粘調の液体が熱った花蕾は銀色の光を放ち、熟れていた。
ヒクヒクと喘ぎ、内部の肉襞の淫らさを、室井に眼前に曝してくる。

この景色は堪らなく室井の劣情を刺激した。
強淫な玩弄に伴い、青島が顎を反らせば、美しい肋骨が浮き上がる。
その美麗な背中を、室井は指先で辿り降りた。

「青島」
「・・は・・・っ、ァ・・・、いい、から・・ほかのオトコ、わすれさせて・・・」
「あたりまえだ」

濃密な蜜が、室井の脳髄の深くで滴った。
両腕を広げたまま、必死に撚れたシーツを青島の指先が手繰る。
顔を横に倒し、眼を閉ざして口唇を噛む青島の顔は煽情なまでに色っぽく、たまらない。
焼き付けるほどに室井の視界を凌駕する。
指先が白くなるほど強く切なく堪えている横で、蒼の大気に長い首筋が反らされる。

「しがみつけ・・・大丈夫だから」
「・・ァッ、はっ・・・・で、も・・・」

覆い被さり、キスを仕掛けながら、室井がなんだと聞く。
腰の律動を緩やかに、青島を前後に揺さぶった。

「あんた・・・を、傷つけ、たく・・・・ない・・・」
「――いい」

その両手を取って、室井は自分の首に回させる。
近付くことで、青島の甘やかな呼気が頬を擽った。
腕の中で青島の長い睫が見下ろせる。

少女とは違う、だけど可憐で清純な美しさと清純さを失わない姿態に、敬虔なものを犯す背徳感が室井の背筋を走らせた。
目の前に青島が居て、目が合って、心臓がうるさいほど音を立てて。
こんなにもひとつになることの歓びを知ってしまって、この先、些細な違いひとつ、許せなくなりそうで。
自分の中の貪欲な妄執が怖い。

「咬んでいい」

後頭部から青島を肩口に押し付け、室井は腰を振る。
キツイ交わりは、だが、一層の背徳と加虐を含羞していた。
倒錯的な肉の滴りに、何もかもが、根こそぎ覆る。
次第にスムーズな動きとなった楔は、怯むことなく熟れた肉を突き上げていき、青島の息を上げさせた。
微かに触れ合う内股や尻の肌や陰毛の感触にも、肌がそそけ立つ。

「・・つらく、ないか・・・?」
「へ・・、・・・っき・・・」
「・・・、持っていかれそうだ・・・」

片手で抑え込んでいる青島を覗き込み、前髪を慈しむように掻き上げ、こめかみにキスを落とす。
ちゅっと音を立て、青島も口唇にキスを返してくる。

「す、こしッ、は・・・っ、き、もち・・・?」
「――少し、どころじゃない」

素直に白状すると、青島の眼が羞恥と驚嘆と、そして少しばかりの含羞を混ぜ、彩られた。
上目遣いに探られる。

――この場で世辞など言うものか。

だが、セックスの相手を賛辞するのは男のベッドマナーだとでも言いだしそうな男に、悶々とした嫉妬が湧く。
一体、何人の人間がこんな性の熱に染め上げられた美しくも淫靡な姿を目にし、その口で愛を囁かれてきたのだろう。

室井は囲っていた腕を外し、態勢を変えた。
ベッドに串刺しにした躯を横たわらせ、両側に肘を付いて、上から見下ろす。

室井の楔が伸縮する秘肉を押し開き、少し抉るように突き上げた。
青島の変化をじっくり観察しながら、暴いていく。

少し眼を見開いた青島は、しかし抵抗することもなく、猥らに咲いた身体を室井の眼前に晒した。

ただ自分を組み敷く男を胡乱に見上げたが、すぐに恥ずかしそうに、視線を横に反らしてしまう。
その姿もあだっぽく、淫蕩な表情を曝けた貌に、室井は簡単に挑発され誘惑される。
青島の熟れた肉の先からは、透明の汁が零れ散る。
男に貫かれ、それでも感じてくれているのだ。

「く・・ぅ・・・っ、は・・・ッ」

不意に強く突き上げられ、予期せぬ刺激に青島が大きく背中を反らせた。
室井が内股に手を当て、肌を滑らせながら少し押し開く。
同時に花芯を手で擦り上げ、明確な快楽にすり替える。
奥深くまでを奪われて、自由が効かない躯に残酷に与えられ続ける甘い熱に喚き、青島の紅潮する面は歪に歪んだ。

「・ゃ・っ、は・・・っ、く、ふ・・っ」
「つらい、か・・・?」

もう戻れないことも重々承知の上だ。
だったら、めちゃくちゃに罵られても、文句は言えなかった。
それでも、他の誰にも連れ去られないくらいに、確かな印がほしい。

「ん・・っ、もっと・・・っほしい・・っ、あんた、だけ・・」

室井が青島の胸元に口唇を這わせ、胸の尖りを何度も味わう。
時折強く吸い上げるせいで、幾つも華が散っていく。
緩やかな律動に促され、青島の下半身がヒクヒクと小刻みに震動しているのが分かった。
快楽を堪えようとする脚の動きに、このまま、また室井の手で達くには抵抗があることを察するが、室井はそれを許さない。

「・・・ぁ、だめ・・・っ、も、それっ、もたな・・っ」
「いいから」
「ヤ、ですよ・・っ、俺、ばっかり・・・っ」

室井の眼が雄の焔を灯し、覆い被さる。
室井を挟んだまま、青島の脚は大きく裂けるほどに卑猥に開かれた。

「・・ゃ・・ッ、だってッあんた、未だ・・」

切れ長の横目で射抜く艶めく瞳に青島の心臓が跳ねる。

「――達け」
「――ッッ」

耳元に口唇を当て、低く囁かれ、青島の肌がゾクリと粟立ったのがわかった。
同時に室井の手が強く梳き上げ、青島がその手の平に白濁液をまき散らす。
大きく口を開け、眉を潜めて青島は顎を曝して背筋を綺麗な弓なりに反らせた。


声も上げずに達かせられた青島は、顎を反らし、仰け反ったまま、荒く酸素を欲する。
室井が律動を止め、優しく青島の反り返った美しい咽喉部にキスを繰り返す。
気怠い射精感が身体中を支配され、青島は室井を咥えた両脚を妄りに開いたまま強張っていた身体をシーツに沈ませた。

一晩で何度絞り取っただろう。でもまだ足りない。
室井のキスに口唇を開きながら、青島が無意識に重たさを残す腕を回してくる。
愛おしさに、室井はしっかりと抱き留めた。

それでも今は初めて室井のペニスを咥えさせられて青島は達った。
肉の快楽に溺れた頭の片隅で、室井が与えたものだと知らしめるため、何度もキスをする。
圧し掛かったまま、まだ痙攣する青島の尻や太腿を揉むように堪能し、青島を腕に抱き込んだ。
蕾の中が、収縮し、腫れて熱い。

「イイ貌だ・・・」
「・・・見ないで・・・ください・・・」

まだ収まらない荒い息の下で、青島が男に凌辱を受けた戸惑いを、目尻に染める。
バックバージンを捧げてもらった相手に、室井にも愛おしさと恥ずかしさが湧く。
こそばゆい感覚に、青島の身体の上でその後ろ髪をそっと掻き回した。
そのまま楔を引き抜こうとする。

その腕を青島が掴んだ。

「・・?」
「出ちゃ、ヤです・・・」

眼を見開いた室井は一瞬止まり、それから男の深い喜悦を目尻に滲ませ気配を和らげた。
顔を斜めになるほど傾け、また青島に触れるだけのキスを落とす。
それでも室井はこの期に及んでも、焦れったいほど嫌味な柔らかさと冷静さで微かに眼だけで笑った。
その表情に、青島がうわ言のように喘ぐ。

「・・あんた、まだじゃんか・・」
「青島」
「今度は、ちゃんと、シますから」

惜しげなく絶頂後の仄かに色付く躯を晒し、目だけで男を誘惑する青島に、室井は固まる。
そんなことを言わせたいわけではない。
だが室井の口は固まっていた。
滴る汗が粒となり、大気の僅かな光を取って、大人の色気を引き出された青島の肌に散りばめられていた。
室井は見知らぬ人間を見たかのように息詰まる。

答えず黙ったまま見上げる男に、僅かに怖じけ、室井の喉が異様に渇く。

「君の躯に負担になる」
「ここまでヤっといて?今更逃げんの?」

続けての行為に少し躊躇う室井に、青島が室井の胸板に手を滑らせた。
下からラインを淫靡になぞり、胸の突起をそっとなぞり、円を描く。
室井が奥歯を噛み締め、目を眇めた。

「今夜の目的は達している」
「目的?あんたにとってセックスってただの夫婦義務なんだ?」

青島の掴んでいた二の腕の指先をそっと外し、室井が指先を絡める。
ぎゅっと手の平を付けて握り返し、蜂蜜色に瞬く青島の瞳に室井が吸い寄せられていく。

「ここまでされて、まだ足りないのか」
「・・・足りないのは、あんたじゃないの・・・?」

まだ躰が痛むだろうに、青島が淫乱に室井の胸板をなぞり、脇腹を辿り、仕掛けてくる。
喉仏を上下に動かし、室井が顔を寄せた。
ピトリと二人の額が重なる。

「やせ我慢をしているんだ。男の意地を分かってくれ」

ここで抱く訳にはいかないという大人の男の寛容と確固たる精神が、室井の情動さえも律していた。
その瞳が柔らかく青島を映しながら、欲に滲む。
が、青島の顔が切なく苦笑する。
蜂蜜色に光る瞳が、微かな色欲を混ぜていることを感じ取り、どうしようもなく辛くなる。

「不用意に男を煽るな。めちゃくちゃにしてしまう」

青島がそっと口唇を突き出し、、目を見つめたまま室井の口唇に触れた。
ただひとり、たったひとりだけを堕とすための、誘惑の眼差しを投げる。

「足りないって・・・・言っても?」

そんな筈はないことは分かりきっていた。
初めての行為の強要で、躯は酷使され、悲鳴を上げている筈だ。
本来受け容れる器官でない花蕾も、腫れて熱を持っている。今も、ビクビクとうねり、室井を埋め込んでいる。

強がりだ。
だけど、正直な身体と脳が、室井の心拍数を上げる。

「青島、」
「やっぱり、抱いてくれって言わなきゃ、シてくれない・・・?」
「・・・青島、頼むから」
「あんたは、独りで達って、それで満足するセックスしか知らないんだ・・・?」
「ッ、おまえ――」

少し鋭い目で室井は青島を睨みつけた。
だが。

「さっさと・・・・あんたの腕の中で・・・喘がせてよ・・それとも、俺の躯じゃ、やっぱりダメだった・・・?」
「ッ」
「なら俺、どうすればいい・・?あんたのセックスって、こんなもん?」

女を心行くまで満たしてもこなかったのかと、雄の自尊心から刺激されたも同然だった。

「――ッ、後悔させてやる」


青島の後ろ髪を乱暴に鷲掴み、上向かせると室井はその腰を片手で引いた。









3.
最初から奥底を掻き回すように腰を回し、欲望のままに室井が最奥まで捩じり込む。

「ひぁ・・・っ、あっ」
「おまえが誘ったんだ・・・っ」

まだ一度も達していないために強く反り上がったままだった自身の楔は、悦びに震えた。
もう一度熱いうねりの中に突き戻、大きくグラインドすることで馴染ませると、室井は青島の腕を引き寄せ、肩から抱き込んだ。
瞳を見つめながら、迷いなく雄の律動を刻み込む。

「・・ッ・・・んっ、ふっ、ぅ・・っ、ぁ・・っ」

労い、慈しむような素振りのあった先程までの抱き方とは、明らかに違う。
獣欲に支配された、欲しがるだけの男の情動に、青島の柔らかい髪がベッドに揺れる。

「壊されたいのかッ」

押し倒す前にも言った同じ台詞。
今度は意味合いを変える。

「壊してって・・っ、言った・・・、もっと・・っ」

室井に縋り、室井を感じさせようと男の造りなのに必死に脚を開き、先を強請るように室井の腰に絡まって、室井を埋め込むように腰を浮かせてくる。
強請る姿がこの上なく可愛い。
自分だけに拓いてくれる姿がこの上なく愛おしい。

いつもよりも熱く火照った躯。競り上がる肋骨から脇腹には室井が付けた華が幾つも散り、汗で濡れて光る波打つ胸。
細い歔り啼きを漏らし、悶絶しながらも室井を感じさせようと青島も腰を振る。
その行為のどれもこれもが可愛くて、愛しくて、いじらしくて、室井は目の前が真っ白になった。

それが彼の優しさなのだろうと。彼の情の深さなのだろうと・・・・ずっと、思っていた。

身を委ねる青島の、それでもその丸く小さな指先が、頼りなく震えて力んでいることに気付き
室井は意識を反らさせるため、耳の中にぴちゃりと舌を入れ た。
ひくんと、若い躰が弾む。

コイツにここまでさせてんのが自分だと思うと、たまらない嗜虐感が湧きおこっていた。
こんな貌も仕草も、誰にも見させたくない。
渡せない。

青島だけが普段冷静な室井にこんな獣のような昂りを与えることが出来るセックスは、事実上支配権は青島にあった。
煽られた情欲に室井は、激しく、奥底まで奪いとり、快楽というよりは眩暈のような陶酔感を感じ
満ちた身体が感覚を細胞まで凌駕する。
乱れ、怺るその艶やかな姿がより室井を煽っていく。

「ハ・・ッ、ぁあ、ぅ・・っ、くぅ・・っ」

徐々に室井の雄に貫かれ、奥まで挿るようになったため、青島が口元を腕で押さえ、顔を紅潮させながら呻きを上げる。
揺れる細い髪と、反り返った喉仏、浮き上がる鎖骨と張ってる肋骨は、本能を甚く満足させるに充分だった。
こんなにもこっちは夢中にさせられて、なのに青島にはまだ声を堪える理性が残っているのかと思うと
室井には悔しさのような敗北感のような、参った気持ちが湧きあがる。

喘がせてみたくて、不意に室井は律動を大きくする。
何の前触れもなく急激に密度を増した快楽の激しさに、薄く開かれた青島の口唇が戦慄き、押し殺された微かな悲鳴が洩れ出した。

「・・ク・・ッ・・・・ぁ、・・アッ・・・・ッ・・・」

これ以上は無理という最奥まで容赦なく貫かれ、衝撃に仰け反った青島の顎から首筋までが美しいラインを描く。
室井の眼前に晒されたその美しい躰を、押さえ付けて強く穿つ。

蟠った腰に溜まる熱に散らそうと、頑是なく頭を振る青島の髪の音と、熱を作り出す室井の立てる濡れた音も、スコールに消され、夜の中に溶けていく。

「もっと・・・っ、ちゃんと、あんたを俺に刻みつけて・・・ッ、忘れられなく、してください・・・っ」
「ク、・・ゥ・・ッ、後悔はさせない」
「し、ない・・っ、ですからっ・・・お願――・・」

齧りつくように口唇を奪う。

「君を忘れることなんか、俺には出来ない」

獣欲に支配されたまま、室井が腰を青島を打ち付ける。
悲鳴に近い声さえ、心地好く感じてしまう狂った思考に、身体だけ暴走する。

どれだけ青島が室井を心から欲し、その分、身を引いてくれていたか、ようやく室井は実感する。
・・・これが欲しかったのだと理解させられたのは、室井の方だった。
そうだ、いつだって、こうやって青島に急き立てられ、室井は溺れさせられる。
それはそのまま室井の深い自己肯定感にスライドする。
その認識を持って、室井の男の素質が開かれる。

青島がいる限り、室井の人生はそう捨てたもんじゃない。

「あ・・っ、や・・っ、んん・・っ、」

室井の律動に合わせ、青島の口から洩れる吐息は、確かに室井が上げさせているもので、男の支配欲を存分に満たしていた。
下肢に伝わる甘い刺激に室井が夢中になっていると、勢いと汗でズリあがり、挿入の角度が僅か、ズレる。
不意に青島の口から噛み殺すような啜り啼きに色が混じった。

「・・くっ、ぁ、・・・むろ・・・ッ、・・あぁ・・ッ」
「・・感じて、いるのか・・・?」

青島の変化に室井も気付く。

熟れて過敏になった内壁を擦り上げられるに身悶えながら、青島はしきりに悩ましく頭を振った。
さっきまでとは違い、今室井の手は青島の下肢には触れていない。
だが、躰が不規則に痙攣し、室井の雄を嫌がるように足を掻き、紅く爛れた柔肉はぐずぐずに蕩かされ、室井を柔らかく咥え込む。

「・・ろぃ、さ・・ッ、ちょ・・・、そこ・・・っ」

譫言の様に取り止めのない吐息で青島が哀願する。
怺る両手を縫い付け、室井は、ぱちゅっと腰を打ち付けた。
 
「・・ッ、ぁっ・・・!」

ポタリと室井の汗が額から鼻梁を通って青島の頬に流れた。
ふ、と黒い瞳だけで微笑んだ室井は青島の脚を肩に担ぎあげ、もっと奥を嬲る。

「ひぁっ、・・・ぁ、ぅんっ、ぅっ、・・ふ・・っ」

仰け反る拍子に晒された無防備な喉元に室井が緩く牙を立てると、雄を含んだ内壁が淫らに蠢いて、更に室井を昂らせてくる。

「すごい、な・・・感じてるの、分かる・・・・ぎゅうぎゅうに動いてるぞ、おまえんナカ」
「ひ、ぅ‥‥っ」

室井が青島の片足を肩に担ぎ上げると、より深く挿入した。
青島の爪先がピンッと突っ張り、足先が反り返る。
濡れた音を響かせ、室井の楔が抵抗なく蕾の奥へと埋没する。

「や・・っ、、へん、そこ。やめて、くださ・・ッ」
「強請ったのはおまえだ」

埋没させたまま、肉の奥でグルリと円を描いて室井が回転させる。
青島が小刻みに身体を痙攣させて悶絶し、薄っすらと、青島がその口唇に室井の名を乗せる。
溜まらずその口に齧りついた。

悶えればいい。狂えばいい。狂って、俺以外忘れてしまえばいい。

右に左に、変化を加えながら腰を回す。
悶えて喘ぐ青島の膝から下が力が抜けて、室井の両肘に抵抗とも言えない仕草で力無く掲げられる。
室井が腰を振るたび、濃密な蜜が深みで滴り、何処もかしこも敏感に反応し、媚肉は淫乱な動きで室井を翻弄する。
なんて快楽なのだろう。信じられない。
茹だるような感覚に、室井はベッドの上で躰を踊らせた。

「あっ、あっ、はげしッ、や・・っ、・・・だめ・・っ、やだ、いい・・・むろぃさ・・・・っ」
「ッ・・ッ、はっ、おまえッ、可愛すぎる・・ッ、壊して、しまいそうだ・・・ッ」
「・・ん、あ・・っ・・・ア・・ッ・・・」

男に身体中をまさぐられた青島の肌は、やがて潤むようにしっとりと濡れ、室井の雄に歓びを見出す。
みっともない程に息を上げさせられる羞恥に頬を染めるも、青島は室井の成すがままだった。
長く続く律動の中、さらに奥を穿たれて、もう叫ぶこともできずに整えきれない息を必死に吸う。
背中が跳ね、腰がビクビクと勝手に動く、その妖艶な姿に、室井も理性を手放していく。
愛し合うという行為の最たるものを、感受していく。

「・・っ・・・ん、ゃうっ・・・ふぅっ」

空気を求めて大きく喘いだその口唇を、室井が上から奪い、両腕に青島を包み込んだ。
獣みたいに深い息を奪い、離れた端から伝う唾液を辿るようにして、喰い尽すようなキスに変える。
良く分からない苦しさに、青島の目尻からは雫が流れ落ちていた。

「ほしかった・・・ッ」
「あっ、あっ、・・・すき、・・・すき、です、室井さん・・・、俺っ、・・・・あんたが好きだ・・・っ」

室井が茹だるように青島にキスを降らせる。

「君は俺のものだ」
「ひぁ!・・ァアツ!・・・あッ」

両手で室井に縋り、青島が声もなく悲鳴を上げた。
その強烈な痛みと熱と卑猥な光景に、細腰がビクビクと痙攣している。

「ここが感じるんだな・・・」
「ぁ・・っ、ァアッ、・・それッ、だめッ・・・ぁっ、ああっ、すご・・っ、ゃっ、ァツ、、ぁあ・・っ」

青島の甘い声に耳から犯されそうだ。
細い歔り啼きを漏らし、自分に縋る青島の哀願の声は、室井の耳を悦ばせ、眼を眇めて穿つ動きを強めていく。
どうせなら、忘我のままに男を煽る青島を、手ではなくペニスで達かせてやりたかった。
回数を重ねていけば、いずれは善くなっていくだろう。
今は、指で反応の良かった箇所を小刻みに突き上げながら、胸の突起を指で捏ね、濡れた舌で青島の首筋を辿る。

「ゃっ、は・ッ、・・くぅっ、んぁっ・・・」

三点を同時に刺激され、青島がシーツの上で悩ましく跳ねる。
本当に一回目とは反応が全然違う。
喜悦に濡れたと思わせる淫蕩な表情を曝けだし、青島が身悶える。
紅潮した面差しの中、眉が繰り返し与えられる刺激に歪んでいる様が、どうにも室井を淫靡な熱に翻弄させ、勢いづかせた。
見たことのない青島の痴態に、細胞から昂奮している。

「・・・・・あっ、ァッ、んゃ・・・やだ・・・・、イイ、ぁあッ」

激しい雨の音。獣のような息遣い。
流れる汗と高まる湿度の空気に、熱を籠もらせる。激しさを増すスコールの中で、甘い吐息も溶け込んでいく。

「もっと欲しいって言ってみろ・・・」
「・・ぁ、も・・・と・・・、ほ、しぃ・ッ」
「欲しいか」
「・・ほし・・ッ」

爛れた思考でも意識が判然としなくなった青島が言われるがままを口にする。
その言葉に自ら昂り、室井は下半身も解放を我慢しきれなかった。

「・・ァッ、・クゥ・・ッ、・・・くそ・・・ッ」

両手を青島の顔の横に付き、室井が悪態を吐いて目を閉じる。
予期せず、持っていかれた。

悔しさに俯き、全力疾走のような倦怠感にただ荒げた息を整える。

なんていう快楽なのだろうか。
女と性交した時とはまるで違う悦楽に、身体が咽ていた。
ヒクヒクと痙攣する腰が、快楽の余韻に崩れていく。

なんてセックスだ。セックスの手順も先手も何もあったものじゃない。
性交とはこんなに激しいものだっただろうか。
獣欲に支配された、こんな乱暴な情交など、室井は知らない。
青島としか、きっとできない。

「はあ・・っ、は・・っ、あ・・・」

目を開け、青島を見降ろす。

まだ、息が整わず、彼も汗に塗れてシーツに埋もれていた。
同時に達していたようで、その白濁液に塗れた躯は、なんとも淫猥に夜露に光る。

疲れの残る手で室井は青島の顔を掴み、口を塞ぐ。
酸素が足りなくて、咽ぶ青島の意思を無視し、口内を弄る。

「ふぅ、ぅん・・・っ、ん、んぅ・・・」

嫌がるように頑是なく首を振る青島を押さえ付け、悔しさのままに口腔を貪った。
愛しさと可愛さに満ち溢れ、切ないほどの愛情を自覚する。

ゆっくりと腰を引き抜く。
万一にとゴムをしておいて良かった。
青島に煽られるままに、中出ししてしまうところだった。
だらりと抜けたそれを片手で始末し、傍にあったティッシュで包む。


キスからようやく解放すると、青島は吸い付き過ぎて腫れあがった口唇で、うっすらと室井を呼んだ。
それだけで、また室井の身体は熱くなる。

吸い寄せられるように距離を詰め、覆い被さり、前髪を梳き上げた。
見つめ合った。
言葉など、どれも陳腐な気がして、室井の口からは何も出て来なかった。

蜂蜜色の瞳が、室井だけを映しだし、あえかに揺れる。


・・・・青島の躯の負担になるとか、執拗だとか。


室井は肩を抱き寄せ、深く口付ける。
青島の脚を膝で開き、再び立ち上がっていた楔を、濡れている秘花に押し込んだ。

柔らかく包み込む感触に、陶然となりながら、そういえばゴムを付け忘れたことを頭の片隅で思う。
だが、鮮明に感じる生々しい肉の感触は、室井の思考を途切れさせた。

「ふ・・・っ、ん、ぁ、・・は・・・」

ゆっくりと室井が腰を律動させていく。
力なく青島の腕が室井の首に絡んでくるその無意識の様子に、室井は何とも言えない愛しさと幸せと充足に満たされる。

直接楔を包み込む肉の感触は、室井の腰の奥から熱を疼かせる。
何時しか青島の呻きは歔り啼きに変わり、譫言のように取り止めのない嬌声が震えて夜の闇に溶けていく。

「・・ァッ、んぁ・・、」
「すきだ・・・」
「む、ろ・・ぃさ・・・・・・もっと・・・・・・」
「・・・ああ・・・」

強請るままに腰を引き寄せ、熱い楔で伸縮する秘肉を押し開き、繰り返し淫らな淫戯を与え支配していく。
淫蕩に喘ぐ口唇が、紅色した舌を覗かせ、強請るように開かれ誘う。
突き上げる度、しなる肉の化身が壮絶に美しく、誘惑の色香を滲ませたラインが芸術的に夜に縁取られる。

狂乱に色付いた夜は、淡く震えて絢爛に満ちた。
失っていく錯覚に、声を堪える理性さえも、今はスコールに流され、闇の中に溶けていった。












4.
目が覚めたそこは、白一色の眩しい朝陽の中で、目の前に青島の寝顔があって、室井は瞠目する。
下肢が生々しくまだ青島の内壁の爛れを憶え、濡れていた。
室井は思わず口元を手で覆った。

昨夜、心ゆくまで青島を抱いた。
抱かせてくれた。
確かに自分たちは一つに繋がったのだ。
何度も果てては突き合わせ、最後は崩れるように眠った青島の身体を抱いて眠りに付く幸せと、艶やかな狂乱と耽溺の夜が蘇る。

どこまでも欲すれば、青島が深い純情で愛の輪郭を描き、導いてくれる。
青島がいる限り、室井は未来を見誤らない。
恐れ、しまい込んでいた日々よりも、爛れ合った果ての方が不思議と純情が見えた。
今更この関係を純潔だなんて妄執するつもりはない。
だが、それでも。

「・・・ん・・・・」

甘い吐息で青島が寝返りを打つ。
それを腕の中に抱き込みながら、夢じゃないことを実感する。

今は安らかな眉間に軽く口付けを落とし、室井は顔を上げた。
昨夜のスコールは通り過ぎ、今朝は透き通るような夏空が覗く。
今日も暑くなりそうだった。

布団から覗く青島の艶肌には、いくつもの情痕が浮かぶ。
湧き上がってきたのは、静かな感動だった。





happy happy end

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珍しく積極的な青島くんを目 指しました。最後は喰われちゃうのはまあお約束。
20160812