04.
愛の証明

1.
「また何か考えてる。俺の愛を疑うような感じのこと」
それは、ほんの小さな一言からだった。
ふざけたようでいて、愛らしい青島の言葉は、室井の思考を止めた。
軽い気持ちで、或いは笑いを狙って口にしたのだとしても、室井を絶句させるには充分だった。
だがどんな意図であれ、発せられたそれはチャンスかもしれない。
淡如を装いつつ、室井は注いでくれたグラスを傾け少しだけ口唇を濡らした。
「・・・どのタイミングで何を言ってるんだ」
「室井さんって少し勿体ぶってるとこあるからさ。仕方ない~だとか終わったことだから~だとか。アタマでっかち?」
「言いたい放題だ」
「キャリアでもやっぱ傷つくの、面倒ですか?」
「そんな柔であったら上には行けないだろう」
「自分のことはどうです?」
「・・・自己評価が低いと言いたいのか」
「そんなとこ」
少しだけ吐息に笑みを滲ませた室井は、今度はそのまま青島から目を逸らすことはなかった。
青島の部屋に招かれ、こうして個人的に酒を交わす日も多くなったころのことだった。
交わしたのは酒だけではない。
ここで勝負しなければ、一生無理だろう。
顎を少しだけ引き、態勢を傾けつつ軽く伏せ目にする男の影が徐々に青島に接近した。
自惚れても良いのなら、過信したいことがある。
――身体は何度も重ねた。
ウマが合った、弾みだった。相性も良かった。そこは何でもいい。
鍛錬の延長にすぎず、発散に協力してくれる、スキンシップのようなものだった。
キャリアに躰を与えさせる営みに、青島も不自然さは出さず、室井に任せてくれた。
疑問があるとすれば何故彼だったのか。
その理由はあえて考えないようにした――つもりだった。
でもダメだった。この胸を締め付ける感情と振れ幅の強い妄執に、室井は永遠に囚われ繋がれる鎖が欲しい。
そのくらい、青島と交わす時間も密度も、室井を虜にしている。
感情の赴くまま、室井は直前で動きを止め、目の前の存在に手を伸ばした。
キスを仕掛けたようでハグに変わった男に、青島の微かな苦笑が室井の襟首を擽る。
抵抗もなく納まった身体が温かい人のぬくもりを心の奥まで伝えてくる。それを離さぬよう、きつく両腕で抱きしめた。
ただ、痛い。そんな激情が竜巻のように沸き起こった。
青島は逃げなかった。全てが許されている。それが分かるから、我慢できなかった。初めての夜も。
「傷つくことなど怖くない・・・今は帰る場所があると知っているからな」
ようやく、ぎこちなく口唇が重ねられ、直ぐに慣れた温度を交換し合う。
重ねた口唇は徐々に熱を帯び、触れ合わせているだけなのに、じんじんと痺れさせた。
ふくよかな膨らみは弾力があって、いつまでもこうして重ねていたくなる。
口唇の豊かな感触を愉しみ、惜しみ、室井はゆっくりと解放した。
生暖かい吐息が残る距離で留まれば、至近距離で青島も瞼を上げた。
困ったように、少し不思議そうにも見える、はにかんで情けなく眉を下げている青島は純朴で、今度は室井の苦笑を誘った。
この瞬間の清潔なのにどこか欲情をそそる青島のこの表情は、多分、この世界で自分しか知らない。
その喜びと感動に室井は鳥肌が立つ。
幾度身体を重ねても、淫靡な色に落としても、青島は輝きと清楚さを失わない。
今宵もまた抵抗の素振りも嫌悪の予兆も浮かべないことを感じ取った室井は、片手を伸ばすと青島の後頭部を引き寄せた。
顎を反らさせ、刻むように、染み込ませるように、角度を変え、今度はしっかりと重ね合い、本格的なキスに変える。
「・・っ、・・んぅ・・」
焦点の結ばぬ淡い瞳を見つめ合いながら、皮膚の薄い耳の後ろを指先で刺激し、舌を誘う。
青島が意図を察し、自ら口唇を開き、舌を室井のそれに触れ合わせてくる頃合いに、自らの重心を下げ
室井は青島を腕に収めたまま、自分の背をソファに沈ませた。
合わせて倒れこんでくる青島の腰と頭に手を回し、愛撫するように髪を梳く。
「いいか」
「・・厭、だったらそこは・・・突き飛ばしてますけど」
「それは――」
言い掛け、室井が苦い顔をする。
「潔くないな・・・」
この期に及び、回りくどい言い方になった自分を室井は恥じた。
いつまでも核心に触れようとはせずに曖昧なまま誤魔化し続けるのは何のためだろう。
先程、怖くないと自分で言ったくせに。
行儀良く、平行線のまま、脅えた未来を閉ざし、逸る躰だけを繋ぎ合って。
気付いたらどうしようもない大人になっていた。
室井のいつもと様子が違う気配に、キスの息が整ってきた青島が態勢を戻そうと身動ぐのを、室井が穏やかな手付きで制する。
「おまえのことだ、気付いていると思うが・・・俺は君を求めてもいいんだろうか」
「どしたんですか急に」
「はぐらかすな。・・・いや。はぐらかさないでくれ」
きちんと、真摯な態度を見せると、青島も押し黙った。
「そろそろケジメを付けたい。覚悟を決めてほしい」
「けじめ」
「約束を反故にしたいという話ではないからそこは心配するな」
「じゃ、何?」
ゆっくりと間を取ることで応えると、青島がしまったという顔をした。
―――気づかれた。
だが逆に少し気が楽になった。
「急にどうしたんですか?」
なんとかはぐらかそうと、今度は青島の頭の中がフル回転していることだろう。
そこに敢えて室井は別の質問を投げる。
「約束が終わった後、おまえ、どうするつもりだった?」
恐らくお互い一番の気掛かりであるそれを単刀直入にぶつけてみれば、案の定、答えは青島の虹彩に一瞬だけ現れた。
「去っていくつもりだったな?」
「・・・そこは・・・バイバイでいいんじゃない」
「その気はないということか」
「その気って?」
言って、青島がまたしまったという顔で、俯いた。
言われるのが、コワイという顔だ。
「私の、正式な恋人になる気はないか?」
「・・・それ、意味がないし・・・」
室井は妖しく微笑んだ。
お互い成人男性としていずれ遅すぎる結婚する、立場を及ぼす家庭を作る、女を伴侶に選ぶ・・・それこそ約束に忠実に生きるために。
この関係はちょっとした火遊びに過ぎない。
そう言いたいのだろう。
まるで用意していたかのような嘘くさいテキストだ。
それは青島もまた似たような夢想をしたことがあるという結論には早計だろうか。
室井はそっと髪を梳いていた手を止めた。
青島の腰に回した手は外さない。
冷蔵庫の唸り声が二人の日常を伝えてくる。
室井に覆い被さった青島の態勢が電灯を防ぎ、陰影に沈む青島の輪郭はどこか儚い色気を醸し出した。
青島は探るように眉を寄せ、ただ室井を見下ろしていた。
それを室井もまた黙って見つめ上げた。
本気だということだけは伝わっただろう。
「割り切れなく――なりましたか?」
「最初から割り切っていたわけではない」
「・・・」
被せるように青島の言葉を室井は遮った。
「もう数えきれないくらい・・・ヤったじゃん」
「同じことを他の人間にさせたくないんだ」
「しませんよ。もう」
「俺だけのものになるという意味じゃないだろう?」
穏やかに言葉を選べば、青島も警戒を解いて室井に体重を預け、甘えたように額を押し付けてくる。
その背中に手を回し、室井がやんわりと抱き締めた。
チクタクという秒針の音がやけに大きい。
静謐な間に潜むのは、真摯な純情だ。
「逃がすの、惜しいんだ?」
「ああ。独り占めしたくなった」
「血迷ってんの」
「なんとでも」
「だからって・・・急すぎ」
「ここまで煽られて、もう、結構キツイ」
煽ったかな?と青島が視線を下げて呟きつつ、小さな苦笑を落とす。
促されるまま室井に脚を開き、あらぬところに埋め込ませてくれ
今宵だって抱擁もキスも、それらしい抵抗を見せてこないのだから、充分期待はさせてもらっている。
青島の頬に手を添え、室井は胸の上でその顔を上げさせた。
案の定、ものすごく困った顔をしている。
ただ無防備に双眼に映す青島は限りなく清洌だ。ベッドの中では特に。
幼さを思わせるその顔に、愛しさを感じつつ、室井は囁いた。
「急だと、思うか」
「・・っ、ずっるいなぁ」
「俺を潔白な僧侶かなにかと思ってないか?」
「表向きはそうでしょ」
「本当に分かっているのかなおまえは」
こうして触れているだけでも、いつだって理性を保つのに必死なことも、この躰に夢中なことも。
二の腕を取り、室井が額に柔らかくキスを落とすと、青島は黙ったまま顔を赤らめた。
室井の本性は口より瞳に出る。
強い独占欲に支配された青島が小さく喘いだ。
「わ、・・分かってる・・・と思います。分かってなきゃ、ここまで付き合わないでしょ」
「恋も?」
「恋って。・・まいったな、今日は随分可愛いこと言うんですね」
「セックスの基本が性欲処理にあるほど若くはないんでな」
「それらしいこと言ったことなかったくせにって言ってんですよ」
つつ・・と青島の尻のラインを室井の指先が辿る。
「本当に。・・・何も伝わらなかったか」
執拗な愛撫も、情熱的に走る指先も。息を吐かせぬキスも、あからさまに訴える雄の昂りも。
「・・・そこは・・・よく・・・わからない・・」
「なら、分かるまでするか」
今夜は。
何を?
それを青島が問うことは叶わなかった。
突如、力づくで引き寄せられた身体の反動を立て直す間もなく、室井が青島の腰を掴んで身体を入れ替える。
ソファに二つの身体が沈み込んで、先程までとはまるで違う嵐のような大人のキスに青島を巻きこんだ。
2.
ソファが窓の月明かりを取って妖しく軋む。
荒げた息の向こうで紫色のカーテンが幾重の襞を濃艶に染めた。
ソファから両手を離した室井は青島の腰を片手で強く引き寄せた。
シャツが肩からはだけ落ち、より深く穿たれた熱塊に、青島が熱い吐息を天井へと漏らす。
指先を絡め合い、勢いに負け、首を仰け反らせて揺さぶられる青島に、室井が喉仏から首筋に舌を這わせ、瑞々しい肌を舐めずっていく。
「・・ッ、・・・ん、・・は・・っ、はぁ・・」
「綺麗な肌だ。そそられる」
薄く開かれた青島の口唇が戦慄き、押し殺しきれない喘ぎが漏れ出せば
絡めていた指先が縋る強さで室井に手にきつく食い込む。
「キツイって、さっき、言った・・。こーゆー関係のこと?・・ァアッ」
シャツだけを羽織る室井の上で、全裸となったブロンズの肉体にはシャツが片腕だけ残り
隠すものは全て剥ぎ取られた下肢は黒々とした茂みが粘性の蜜を滴らせ、その中央には欲望が熟れている。
片脚をソファにかけ、自ら膝裏を持たせて室井は雄で青島の菊座をぬるりと戯弄する。
「本当は、もっと早く言うつもりだった」
大きく広げた脚の終点を室井に赦し、青島が猥らな刺激に眉を寄せ、汗に身体を火照らせている。
その不思議な色を持つ眼差しが、今は情欲に染まり、室井の奥底に眠る渇望を混沌と訴えるのだ。
“欲しいんだったら好きなだけあんたは奪えばいいよ”――初めて躰を赦された夜、青島はそう言った。
自分への敬愛は感じていた。
それが特別である証かどうかは分からない。
青島だから何をしでかすか分からないという不安もあった。
だから、その肌をこの手で穢した。
「誰かに盗られないか。盗られたって俺には文句言えないんじゃないか。・・ずっと色々考えていた」
「ぁ、・・・は・・・ぁ・・・、いかな、ぃ・・よ・・っ、どこにも・・っ」
意地っ張りな口唇から甘い溜息がくらくらと空気を淫靡に色付かせ、温度と湿度を上昇させる。
室井の腰の動きに合わせて、青島も腰を自ら揺さぶり、男の雄を味わう姿は、なんとも淫乱だ。
「今日は感度がいいな・・、乳首、立ってる」
「言わなくて・・いい、って・・っ」
「本当は悦んでいるだろう・・?」
何を、なのかを敢えて出さずに室井が微笑すれば、青島は快楽の淵からきつく睨み上げてきた。
菊座に咥えさせた雄を大きく回しながら、室井が眼前の胸の尖りを口に含めば熟れ始めた躰は容易く跳ね上がる。
啜り啼くような声に合わせ、室井を咥えるそこがきゅんきゅんと締まるのが、何ともたまらない。
そのまま、鎖骨、耳朶、顎、瞼と、忙しなく至る所に口付けた。
卑猥な水音が闇に溶け、どうして良いか分からない青島の指先が、掴みたいのか押しのけたいのか、はっきりしないまま室井の腕を手繰る。
分からないのは、こっちもだ。
「おまえは俺を裏切らない。でも、おまえが俺を見切って消えてしまう気がした」
「・・・んっ、・・ぁ・・、あ・・っ」
「情けないが、俺はただの男だ」
「そんな、時は・・・っ、抱き締めて、嫌味でも・・・憎まれ口でも言う俺の口を塞いで・・・黙らせればいいんですよ」
青島が手を外し、室井を引き寄せ掠めるようにその口唇にキスをする。
歯も爪も立てない青島のぼってりとした肉は、そのまま室井のうなじを這い、室井をゾクリとさせた。
舌先で室井の肌を味わうその顔をあげさせれば、闇の中で柘榴のような口唇が妖艶に光る。
「同情でも良かったよ俺」
室井の首に長い腕を回し、熱に浮かされた艶声で青島が囁き、キスの続きを強請る。
むしろそんな言葉で逃げられると思っている青島が不憫になる。
こんなにも敏く見透かされてしまうのに、こんなにもシンプルで肝心なことはちっとも伝わっていない。
もどかしさは室井に少しの苛立ちさえ呼び起こした。
「その気があるから手を出しただけのことだ、気紛れでも気の迷いでもない。同情なわけあるか」
色を帯びた声に負け、室井がその口唇を深く塞ぐと、青島が舌を求める。
室井はリードを保つため、敢えて触れるだけに留め、咥えさせた雄で媚肉を何度も摩擦する。
苦しくなって呻いたところ見計らい、室井は半開きになった青島の口唇を押さえつけるように呼気ごと吸いこんだ。
「は、ぅっ、・・ふ・・っ、ぅんん・・っ」
仰け反り弧を描く肉のない背中を室井が我が物のように手を添えて引き寄せる。
室井の縋るような腕に巻きこまれ、青島も熱く口唇を押し付けてきた。
長い手が室井の首に回され、舌を絡め合い、呼吸を奪い、同じ温度を探り合う。
二人ともが、その関係をうまく表すことのできる言葉をこれ以上探そうとはしなかった。
探そうとしてこなかっただけだ。
きっと彼はどれほど大事にされているか知らない。どれだけ欲しがられているかさえも気付いていない。
言葉では言い尽くせない曖昧で激しい感情がそこにある。
それでいいと思っていた筈なのに、身体を重ねる度、心が歪に不完全を訴える。
最早足りなくなった感情は身勝手な欲望を孕んで破裂した。
「ぅん・・ん・・っ、室・・・っ」
無意識に酸素を欲した青島が反射的に逃げようとするが、今夜の室井がそれを許すことはない。
いつもより濃密に、執拗に、舌を吸い上げ嬲り、呼吸を奪い、感覚がなくなるまで口付ける。
執拗に追う室井の荒い息に青島の呻きが混じり、ソファに押し倒した青島の躰に室井が圧し掛かるような態勢にもつれ込んだ。
捕らえた口唇は離さない。
愛おし気に室井の髪を力ない指先で梳く仕草に煽られ、酩酊するような意識が苛烈で野蛮な熱を生んだ。
口腔を隈なく暴いて侵略する。
青島の喉仏が苦し気に上下し、呼吸が早くなる。
容赦ない口唇に抗うように、室井を押し退けようと胸元をとんとんと拳で叩いた。
ようやく二人の口唇が離れ、荒く呼吸を繰り返し、どちらともなく無言で視線が交わる。
青島は何だか泣きそうだった。
「いい加減、ちゃんとしないか俺たち」
「せっ・・、・・っ、清算したいって、聞こえる」
「ばかやろう・・」
とてつもなくどうしようもなくなって、青島が瞼を落としたそこにキスをする。
横に倒した青島の顔が妖治に歪み、切なそうに瞼を閉じた。
薄く開いた口唇が断続的に吐く荒い息は甘く、うねった栗色の髪は汗に濡れて額に張り付いていて
ぼんやりとした明りに沈み込む。
「こんな関係、ばかみたいだと思わないか」
キスで乱れた青島の息だけが、室井に肌に漏れていく。
先に息の整った室井は青島を串刺しにしたまま、その両脇に手を付いた。
「室井さん―・・・はさぁ・・・、さっさと俺に・・、フラれ、ちゃいたい・・・わけ・・・?」
肩を竦め、沈黙で応えると青島の澄み切った虹彩は苦笑する。
大事すぎて恋にしたくなかった。怖くて恋にできなかった。彼に向かう室井の感情はあまりに多すぎて、重い。
だからこそ室井の中の潔癖な精神が自分を責めるのだ。
確かにいっそ、フラれてしまえば楽になれたかもしれない。
「おまえは本当の恋ひとつ、知らないんだ」
「経験値、そこそこ・・上げてきた、つもり、なんですけどね・・、っ」
「だからだ。明るくて楽しくて・・・爽やかな、恋愛だ。・・・俺が抱くようなドロドロした感情なんか、知りもしない・・・」
あんたと比べりゃどうせ俺は子供だよと、すねる青島の頭に掌を充て、室井は頬から耳、鎖骨に柔らかく歯を立て、リップキスを滑らせる。
タイミングを巧く掴めず乱した息遣いの奥から濡れた息がその口唇を湿らし
脱ぎ捨てたシャツを掴む青島の指先が白くなるほど力んでいるのが分かる。
「これを恋だなんて・・・思ってもいないくせに。――いや」
そうか、恋にしたくないのは青島の方か。
他に阻害するものは何もない。音すら遠慮したように息を潜める圧倒的に厳かで二人きりの夜だった。
その口唇を室井が舌でぺろりと舐める。
「・・・」
舌先が触れ合う。
舌ごと、はむっと食まれた。
乱暴に青島の髪を鷲掴み、頭を仰け反らせて室井が喉仏に歯を立てる。
「いたいよ」
「おまえにしか、噛みつかない」
「言っ・・たらッ、気まずくなるとか、避けられるとか・・っ、終わるとか、考えなかった、の・・っ」
「ないな」
「むっかつくな~・・・」
情欲を隠さない飴色の瞳が拗ねたような不貞腐れたような色を帯び、再び横に逸らされた。
青島の息が整ってきたことを感じ取り、室井は埋め込ませていたままだった雄を一際大きくグラインドした。
急に敏感な内壁を刺激され、青島が顎を反らせた時を狙い、強く腰を挿れる。
「・・ァ・・ッ・・」
「なぁ・・、挿れるのと挿れられるの、どっちがいい・・?」
「それ、いま、聞く・・?」
浮き出た羽根の形の肩甲骨を水音を立てて舌で味わい、鎖骨を辿り下りると、くすぐったそうに青島が笑った。
室井が舌で弱いところを責め立てる度、青島は身を捩り、ぴくんと背が跳ねる。
「ンッ、・・ひゃっ、ふふ・っ、も、それくすぐった・・っ、だめ、だって、ぁっ、室井さんっっ」
「おまえの背中、首筋、腰、綺麗だ・・」
「室井さんの方が筋肉質で整ってるじゃん・・・、おれ、うらやまし、・・ふひゃぁ、くすぐんなって・・っ」
「それだけか?」
「・・・あ、萎えちゃった」
「そんなの俺がすぐ勃たせてやる」
「あんたの良く持つね・・・感心」
室井の手が胸元に回り、凹んだ腹を擽り、茂みへ向かう。
同時に菊座に埋め込まれ開いた襞を広げるように指で遊ぶ。
「ココ・・、欲しいんじゃなかったのか」
「はぁ・・っ、知るか。・・・・って、なにしょんぼりしてんすか・・っ」
無邪気に笑う青島に、許されている無防備さが室井に愛しさを募らせた。
こうして見下ろす青島は童顔なせいもあってか、儚く華奢で、頼りない。
蕩けて消えてしまいそうな躰を繋ぎとめるように欲深な腕が囲い、更なる飢餓が湧いて、堅く怒張した室井の雄ははちきれんばかりに膨れ上がった。
溜まらずその喉元に歯を立て、青島の熟れた内股を押さえつける。
大きく円を描くように腰を回すと、雄を含んだ内壁は応えるように濡れて轟いた。
啜り啼く青島の声が室井の下らない矜持を引き換えにする。
「ぁあ・・んぁ、ァッ、んぁ・・っ」
細髪が後に舞い、色付く内股が不規則に痙攣する様子を愉しみながら、室井は浮き上がる背を支え
その細腰に緩く深く打ち付け、眼前で朱く腫れる胸の尖りにむしゃぶりつく。
意地っ張りな男が仰け反り、食い込みそうな指先でソファを掴む。
堪らない支配欲だ。
「・・・ァ・・・ァッ・・、・・はッ・・」
「善いのか?」
緩く深く律動を刻みながら快楽に薄く染まった耳元に舌を挿れ、室井が囁いた。
こくこくと、言葉もなく眼尻を濡らした赤い顔で青島が頷き、途切れがちに甘い息を吐く。
宣言通り、性感帯をダイレクトに探し当てる室井に、青島の花芯は蜜を零し始めていた。
「青島・・、口、開けろ」
「・・ん、」
濡れた赤い肉が男を誘う。
キスを強請っているかのようなぷっくりとしたふくらみに、室井が齧り付く。
唾液に塗れた口唇を擦り合わせ、浮ついた隙を縫って舌を捻じ込んだ。
熟れた舌を誘い、絡め、腰はノックをするようにトントンと絶えず打ち込む。
きゅと眉間を寄せ、室井が角度を変え、位置を変えながら、離れては追いかけ、重なり、そのたびに深さと蜜が増していく。
「俺のものにしたい・・」
耳に口を滑らせ、両手で青島を囲うように抱き込み、室井が濡れた声で囁く。
「はっ、ぁっ、・・なん、で・・っ?」
「そもそも、おまえ、俺のものじゃない」
もっと手に入れたいと願う。確実に自分のものにしたい。
訳がわかなくなるまで感じさせて、乱れて溺れて、めちゃくちゃにしてしまいたい。
際限なく、貪欲なままに、凶暴な色味さえ持ってそれは存在している。
「おまえ・・・他に・・・」
「いるわけないでしょ・・、俺、一途なの」
「・・嘘だろ・・」
「なに、考えてんの」
「ずっと女と続いていたのかと・・・」
「誰のこと」
「恩田くん」
両腕を立て、組み敷いた男を見下ろす。縊れた腰を掴み、再び穿つ動きを断続的に強くする。
そのせいで時折無防備に晒される胸元が室井に近づき、揺蕩う空気に潜む青島の甘い匂いに噎せ返った。
「あ・・っ、は・、ァッ・・すみれさん・・とね・・・。そういう、目で、見られて・・いたとは」
「抱かなかったのか」
「そう・・、見えました?」
「彼女、おまえのこと好きだろ」
「・・さぁ・・っ、ね・・っ、ンッ・・」
誰にでも優しい男は恋の駆け引きも先手を取って、自由で残酷だ。
「あんた、みたく・・節操なく襲ったりしま、せん・・っ」
「俺にだって節操くらいある」
「オトコ襲ったのに・・?」
室井の額からも汗が流れだしている。
それが堅い室井の黒髪を崩し、滴るままに青島へと落ちていく。
余光の中で、官僚然とした男の鎧が剥がれ、権限や肩書のない取り繕わないただの男が、そこにいた。
噎せ返るような熱が、室井の理性を飛ばし、朦朧とした酩酊感に持っていかれる。
「・・ッ、・・大体どうしておまえ、最初に俺に躰を開いた?俺はおまえの、なんだった?」
荒げた息の向こうで焦点をぼやけさせ始めた青島が、それでも覚束ない指を伸ばし、室井の頬を愛おし気に撫ぜる。
その丸い指先を捕らえ、一本ずつキスをする。
それだけで室井の昂奮で乾いた喉は上下する。
「室井さん・・に、悪い虫でも・・・ついたらヤだなとか。だったら俺が、とか・・・まあ、色々?」
「・・・悪い虫なんておまえだけで十分だ」
とてつもなく可愛い理由を言われて室井は内心身悶える。
お互いの息づかいが荒い。
「おまえの中、あっつい・・・、畝って絡みつく・・・すごい・・・」
「えろオヤジ・・っ」
「そんな締めんな・・」
「あ・・んたもッ、そーとーえろいよっ、澄ました官僚のくせして・・・、こん・・なっ」
目の前に晒された白い首筋に目を奪われ、軽く仰け反る顔は追わずに室井は耳元に舌を這わせた。
瑞々しく弾力のある艶肌は甘く汗に滴り、豊潤な香りで室井を誘い込んだ。
下肢が嫌になるほど疼き、室井は雄で花襞を広げるように、回し、指先で胸の尖りを捏ね、揉んで遊玩する。
そこかしこにキスを降らせ、甘噛みして。
「ン・・ッ、そこ・・っ、ばっかり・・っ、ゃ・・っ」
くちゅくちゅと粘性の緩やかなリズム音が響く中、吸い付くような肌の弾力に溺れ、戸惑いもなく室井が動いていく。
全身を執拗なまでに舐めまわし、その震える内股にも手を這わせ、知っている限りの青島の性感帯を玩弄した。
青島の口からすすり泣くような哀願の声が幾度も上がる。
もどかしそうにソファの上で掻く脚が淫猥に音を上げる。
それでも今夜は止める気はない。
「・・・っんっっ、・・・、なん・・か・・っ、ちが、う・・・っ」
「わかるか」
感度の良い躰だ。いつもより丁寧で入念な室井の手戯にきちんと反応を返してきた。
「ゃ、・・ああ、ぁ、・・くっ、・・ふぅ・・・っ」
「今日は全部見せてもらうと言ったろう?」
「・・ゃ、ヤだって、もぉ・・っ、ぁは・・ぁっ、」
内側のしこりを柔く強く押しつづける雄、戯れのように時折敏感になっている胸を這う手。
縊れたラインを確かめ、震える内股を往復し、首元を這いまわる肉厚の舌。
情欲を惜しみなく与え、意地っ張りな躰を溶かし、蕩けさせ、頑是ない仕草で何度も顔を横に振る青島を追い詰める。
今夜は手加減する余裕も気も毛頭ない。
今夜、もっと全部を触れたい。すべてを奪いたい。
好き勝手に弄られ、不自然に強張った青島が頑是なく頭を振った。
「ぁ・・っ、んッ、も・・っ、もぉ、いい、からっ」
これで誘っていないだなんて言うから、幼いのだ。
「ん・・っ、もぉ・・、く、っそ・・・ぅっ、・・もっ、室っ、ぃ、さん・・っ」
「焦れているのはこっちも同じだ」
わざと一番反応の良い個所で雄を抜き差しし、前立腺を揉むように刺激する。
「・・ック、ァッ、ああっ!」
だけど頂点までは導いてやらない。
生温くもどかしい快楽の狭間に、延々と落としていく。
「あっ、やぁ・・っ!ぁ、あんた、だって!誰にでもこうなんデショッ、澄ました顔で一線引いてたかと思ったら掌返して襲い掛かりやがってっ」
青島が喘ぎの奥から、強気の瞳を瞬かせ、自分の足の間に突き刺してある室井の股間を締め上げる。
ウっと唸って室井が眉間を寄せた。
額からは汗が落ちる。
ジロリと睨み上げれば、感じていることを悟られた。
知性を感じさせる潔さと、瞳ではっとさせる艶のある華やぎと。この従順には落ちない聡明さ。
挑発と煌めき。二つの異なる第一印象が一つとなって大人と子供の深みを語り、男を魅了する。
「いっつもいっつも力づくで押さえ付けやがって・・っ」
生意気な口を止めるように、耳朶を噛んで、くちゅくちゅと菊座を弄べば、妄りに開いた内股が桃色に染まり、断続的に痙攣した。
「ぁ・・ぁっ、ゃんッ、・・さいってー、・・・っ」
口許を覆った手の向こうで青島の眼尻が朱に染まる。
「も、いいっ、か、ら・・ッ!さっさと・・・よこせよッ!」
蹴り上げてきた悪戯な脚を捕らえ、左右に広げた。
僅かに背を逸らせる格好になった青島に室井が瞳を据える。
覆い被さり、驚いた青島を他所に間髪を入れず、室井が青島を押し倒し
逃がさないよう抑え込んだ腰にみっしりと昂った雄を深く埋め込んでいく。
「・・ッ、・・く・・っ、ぁあ・・っ」
肉拓く感触にこちらも息の仕方も忘れ息苦しくなる。繋がるただそれだけの熱を感じ合う。
きっと切欠一つでこの繋がりはもう崩れ去るところに来ていた。
こんな風に。
「俺に躰を覚えさせて、任務に奉仕して・・・・おまえ、それで、どうしようとしていた?」
「もッ、いいから・・ッ」
「駄目だ」
「こっ、今夜、は・・、随分と、おしゃべりな、ことで・・」
室井の口から重い呻きが漏れた。
どっしりとした雄を強引に押し込まれ、青島が眉を潜めて頭を振る。
軽く仰け反り、力んだ躰を抑え込み、室井は腰を揺すった。
「室っ、ぃ、さん・・っ」
頭を振り、うわごとのように名を呼ばれ、刹那、鋭い感覚が室井の中を走り抜けた。
青島の菊座から粘性の透明の液体がしとどに漏れていく。
ずりあがる腰を捕らえ、室井は更に奥深く埋め込んだ。
「はあ・・っ、あ・・っ」
苦し気に眉を寄せ、薄っすらと震えた睫毛が浮かんだ涙に濡れて光り、窓の月明かりを取る。
檻に閉じ込めるかのように腕で囲う中で、顔を傾け室井が青島の口唇を愛おし気に啄む。
ちゅ・・と濡れた音が何度が響くと荒い息の奥から透明な瞳が現れ、室井を映し出した。
青島が見ている世界が室井だけになる、この歓喜に満ちた極上の時間。
「気持ちイイくせに」
「・・そりゃ・・ぁ、ね・・っ」
たどたどしく青島が哀願の目をして強がってみせる。
情欲に支配された室井の切れ長の目が僅か、眇められた。
内襞をひくつかせながら青島が室井を見上げる。貫かれながらその虹彩を変えた。
先を強請る、色情に染まる夜の顔になる。
「その顔でどれだけの男が玩ばれているんだろう」
ニヤリと青島が笑みを湛える。
「相手に言わせるのもおまえの流儀か」
喘ぎの奥からむぅと睨みつけてくる愛嬌ある顔も男の嗜虐を煽るだけだ。
雄の本能のまま、支配したくて恥辱に組み敷いたのに、このままその顔を快楽に歪めたいのに
「・・それは・・・あんたの全部で、確かめてみたら・・・?」
こういう挑発的で挑戦的なところが室井を芯から煽る。
言ったな。
室井が眉間を深めて睨むと、青島がゆるりと腰を回した。
くちゃりという水音がいやらしく耳から冒す。
それは余計なけなしの余裕を室井から奪っていく。
たまらないというように室井の口からも甘い吐息が零れ、二人の熱が混ざり、やがて穏やかな律動を促した。
3.
「俺は答えを待っていてもいいか?」
幽暗で、黙ったまま室井に焦点を合わせる青島の瞳は海の色より深く沈む。
誰かをそこに入れたことはあるんだろうか。
この風のような男が、コイビト、なんてちっぽけな枠に収まってくれるんだろうか。
甘い口唇が、いつかは好きだと語ってくれるんだろうか。
「はぁ・・っ、あっ、あっ、・・ゃ、もぉ・・っ」
忘我の果てに、青島はもう何を言っているか半分は分かっていない。
浮き上がる鎖骨が流麗な羽根のようで、無心に幾つも吸い付いた。
いつもなら注意する箇所だ。
今夜はどうでも良かった。
汗を粒のように弾き、華が咲いていく肌ははんなりと火照り、濃艶に成熟する。
「・・っ、はぁ、くぅ・・っ、ぁあ・・・っ」
腰を大きく円を描くように突き上げると、青島は息も絶え絶えに喘いだ。
耳の後ろに濡れた軟体を押し当て、辿り下りていくと、艶肌は淫蕩に熟れ、震える。
羞恥で目元を覆った青島の腕を取り払い、横に縫い付け指先を絡める。
強すぎる刺激に逃げを打つも、今夜はそれを赦さず、腰を振れば、口唇からは猥らな喘ぎが合わせて浮かぶ。
「も・・っ、かんべん・・っ、むり・・っ」
「達かせない・・・今夜は付き合ってもらうぞ」
「・・ぁ、・・んぁ・・っ」
「躰は素直だ」
「・・る・・っさい・・っ」
じっくりと煮詰めるように媚肉を掻き回していく動作に、青島は恥ずかしげもなく長い脚を広げて背を弓なりにした。
俺を感じて流れる涙。俺のために流す涙。
蕩けた内壁が絡みついてくる。花襞に吸い付かれる。
ソファを掻く脚を抑え込み、自分だけを見つめさせるための命令を、その顎を掴み引き寄せることで訴える。
「その声で達きそうだ・・」
室井は一旦身を起こし、腕を引き上げ、引っくり返して、今度は背中から覆い被さる。
逃げようとした腰を、両手で引き寄せた。
「まだ足掻くか」
「まだ足掻くよ・・っ」
「しつこいな」
「それ・・が、持ち味」
にやりと汗の中から強気に光る瞳。
丸みある桃尻を突き出させると、質量ある雄を欲しがりひくつく充血した菊座が闇に光る。
今度は手と舌を使って青島の背中を味わった。
長いうなじ、耳のうしろ、丸みある肩。
聳える肩甲骨。
縊れる腰。
室井の神経質な指先が雄弁に愛を語り、青島の躰のラインを辿り下りていく。
「・・んあッ、・・は・・っ、ぁ・・、ふ」
「引っ越そう。二人で住めるところに」
「・・・で?・・・」
「朝から晩までセックスを」
「いつになる話だよ・・・」
青島の内股からは塗り込めた透明のジェルが愛液のように溢れ、二人の黒々とした茂みを光らせた。
肉茎の根本を塞ぎ、断りもなく、室井は後ろから突き刺していく。
「く、は・・ぁ・・っ、・・・っ」
「大歓迎だぞ、ここ」
「ソコ、ばっか・・ッ、・・ァッ・・、ひとでなし・・っ」
突き出た形の良い桃尻を両手で鷲掴み、室井が回すように揉みつつ、雄を深く埋めた。
青島が両手で必死に態勢を保ち、いじらしい。
「今すぐと言うつもりはないんだ。君の気持ちが定まるまでは待てるつもりだ」
「・・おっとな・・・」
「煽るな。ギリギリだ」
愛しいものでも見るように青島の瞳が闇に弧を描く。
勘違いはその程度の愛を究極の愛へと誤作動を起こした。
「俺にゃそんな、・・余裕ない」
「無理矢理浚っていいなら手段を変える」
「男らしい、よね・・っ、室井さん・・・」
「そりゃ男だからな」
柔らかく雄を包む肉の卑猥さと、晒された素肌が室井の目から煽った。
流れる蜜を感じながら、室井がグッと腰を入れれば、青島の躰が跳ねて淫蕩に痙攣する。
柔く、時に強く搾り取るように不規則に収縮する内壁は室井を根元まで包み込み
蜜やかに濡れそぼる。
「・・バレ、たら・・死刑か、な・・」
「どんな魔女裁判だそれ」
「・・ァ・・ッ!・・ぅ、・・ぅん・・っ」
室井の動きに合わせようと、いつしか夢中で腰を振りたくる青島は可愛くて猥らだ。
「あん・・た、自分、・・たち、ば、わかって・・ンの・・っ」
「分かっていると言ったら、応えるのか」
「・・・、一緒・・いっしょかぁ」
「不満か」
「俺の生活空間に・・室井さん、が・・、・・入ってくるってこと、だろ」
「そうなるな」
「は、・・ンッ・・、やべ、なんか・・・それ、泣けてきた」
緩く深い律動が細波のように細胞に満ちていた。
「いい、・・のかな」
「・・・・」
「起きたり寝たり、食ったり寝たり。パンツ一緒に洗ったり。一生していくのか」
「・・・寝てばっかりだ」
「他、何、します・・っ?」
腕を回し、その甘い躰を抱き留め、腰を入れる。
室井の均整の取れた身体と違い、少しの無駄と遊びを残す青島の躰は柔らかく滑らかで、肉を貪る本質さえ享受させる。
「勿論、セックスを。そのころには名前で呼ばせるけどな」
「なまえ・・・、・・・、呼べるか・・ッ」
肩越しに苦みを潰したような渋い顔の青島と顔が合った。
吐息で笑って室井が性質の悪い黒々とした瞳を光らせる。
「呼んでみろ」
「ああああああんたこそ呼べんのかよ」
「・・・・、おまえこそ」
「~~・・っっ」
「・・・・」
「・・・・・・・・は。」
「そこは息止めなくてもいいだろう」
がくりと青島が膝から崩れ落ちた。
達くことのできない焦燥感は嬌々の喘ぎを上げさせ、青島が腕を流し、頑是ない仕草で首を横に振らせる。
肉の奥が柔らかく蕩け、淫蕩に灼け付き、番う悦びを室井に晒してしまう青島に、室井は愛しさが湧く。
「も、イかせて、ください・・」
「ほう、素直だ」
背中が反るように両腕を後ろから引き、態勢を起こさせる。
膝で脚を更に開かせ、眼尻に浮かんでいた滴を後ろから拭い取った。
「ほら、膝で立つんだ」
仁王立ちにさせて腰で貫き、間断なく腰を律動させていく。
快楽に翻弄され続け、身悶える青島は隠すことも出来ずに肉茎を濡らす様を室井に晒す。
「・・ぁ・・っ、んぅッ、も、んぁ、そろそろッ、限界・・っ」
室井に熱った躰を預けるようにして背中から青島が甘えてきた。
達するのは許さないと目で射貫くと、従順な快楽に堕ちた瞳が室井をぼんやり捕らえた。
「ねぇ・・、カノジョ・・って・・・・いたんですか・・・」
「俺が童貞に見えたか」
「・・・いっちばん・・・抱いたカノジョ・・、は?」
「そんなの、おまえだろうが」
泣き笑いのような青島の表情を見る。
瞳が揺れている。動揺している。
どれだけ深く躰を繋いでも、プレイと呼べるような交接を強要しても、こんな他愛ない話をしたのは初めてだった。
それは多分、劇場型の演出が得意な青島の、ほんの小さなミスだ。それを青島も気付いている。
今夜を逃したら、もう二度と届かない。こんな夜は二度と来ない。
ならばもう正攻法でいい。
「見合い、すんでしょ・・」
「おまえが一言いやだと言ってくれたら断った」
「・・んだそれ、ずっりーの、・・ッ」
直後、背後から突き刺す腰を大きくグラインドする。
圧倒的な質量を誇る室井の雄が花襞を抉るような深さと態勢は、青島の敏感な個所を的確に捕らえていく。
その生々しさと滴る蜜は、そろそろ限界となった青島を息切らせ、哀願を含んで啼いた。
「いゃぁ、ァッ、いい、っ、も、そこ、だめ・・だって・・・っ」
ゾクリと室井の背筋も痺れが走る。
今夜はとことん苛めたくて無理矢理なセックスを始め、もうどのくらい時間が経っただろう。
甘く蕩けるような時間に、青島が室井によって引き出された快楽に、蕩けた顔になる。
「ふ・・ぁ、は・・っ、はぁ・・っ」
青島の淡い髪が濡れて、舞い、甘やかな吐息を朱に染め、焦らされる焦燥感と襲い来る射精感に
ついに淫靡な顔で崩れ落ちた。
後ろ手となっている不便さから、濡れた瞳で全身で室井の胸に縋り付いて鎖骨の辺りに熱く火照った顔を擦り付け
脳天から突き抜けるような快感に全てを委ねて抵抗を手放す。
引き起こし、その耳元に口を近づける。
「まだ踏ん張れるだろ」
顔だけ振り返る青島の薄く膜の張った水晶に心囚われる。
それは同じ熱に染まっていた。
「ァ・・ッ、ァ・・ッ、んぁ・・っ、それっ、ゃ・・ッ」
「俺の傍に居ろ」
「異動・・・になっても、警察、やめても・・?」
「どうせ縁なんて切れない」
じゃそれでいいじゃんとは、もう青島も言わなかった。
肩越しに視線と視線が合うと相手の本気がわかる。真実が見える。
――――もう、多分それはお互いが理解した。勘違いなんかじゃない。
「青島」
何を言われるか察した青島の躰が本能的に硬直し
一度、小さく顔を横に振った。
室井は口を噤む。
そのまま腰を大きくグラインドさせ、室井が二の腕を背後に強く引いて獣欲のまま奥まで突き刺した。
悲鳴のような青島の嬌声が甲高く上がり、しなやかな背中が張り詰める。
うなじを舐めしゃぶり、悶えて背中をしならせる青島の、首筋に歯を立てきつく痕を残す。
「 ン"んっ・・・っ、は、ぁあ˝、ぁ、ぁ˝、アッ・・!」
「・・ッ、ぅ、はッ、・・は」
ふぁさと揺れる青島の細い栗色の髪がビーズを散りばめ、肌を伝う。
その顎をつかんでこちらを向かせる。
汗で滴り始めた髪ごと引き寄せ、酸素を欲する口に無理矢理キスをする。
強く舌を吸い上げると同時に、ふるっと青島の躰が痙攣し、そのまま青島は欲を吐き出した。
達した青島は壮絶に綺麗だ。
口を塞いだため、嬌声は何も聞けなかった。
ラグが汚れるのも厭わず、室井はそのまま膝から崩れ落ちた青島の躰をひっくり返し、押し倒した。
びくんびくんと不規則に痙攣する内股を撫ぜ、裂けるほどに広げさせる。
首を引き寄せ、ぶつかる寸前まで引き寄せる。
「全然足りない」
上から噛みつくように乱暴に口唇を塞ぐ。
怒張したままの肉棒を室井は乱暴に押し込んだ。
柔らかく肉が絡み、喘ぐ振動が室井の身体を震わせた。
ただ一人を心に留めたいと願うのは、そんなに残酷なことなんだろうか。
歳を取るほど、分からなくなる。
「・・・こんなに傍にいて・・・・寂しい・・・、寂しいんだ、青島ッ」
「・・っ、く、・・んもッ、それッ、卑怯だ・・・っ」
ずるいと言って深く穿つ動きに合わせ青島が大きく背中を海老反りにした。
突き出た胸の尖りが赤く腫れあがり、小刻みに震える開かれた両脚まで、桃色に熱る。
絡めた指でしっかりと握り合った。
大きなグラインドでストロークを開始する。
「行くな・・ッ」
――おれ、室井さんの傍に居たいです
いつだったか青島が照れくさそうに告げた言葉が今も室井の胸に突き刺さる。
そうさせてやりたい。
出来るだけの男になりたい。
たった、それだけの未来を、どうか俺たちに。
「おまえだけだ」
「ぁあ・・、ぁあ・・っ、いい・・・ぁあ・・っ」
もっと感じさせたい。感じたい。
理性も躊躇いも微塵も残さず砕かせて、乱れて堕ちていた。
「他になんも要らない」
「もぉ、そこッ、・・や、め・・ッ」
次から次へと青島の涙が溢れ落ちる。
「おまえしか要らない」
「・・・む・・・ぃ、さん・・・っ!」
潤みきっている瞳が狂わせる。
喘ぎが頑なな口を開かせる。
「こんな・・ッ、やりかた、ひきょーだ・・っ、ぁあ・・っ、」
抱きしめ、口付け、熱におぼれていく。
「・・ぁ・・っ、はっ、・・も、おれッ・・」
アイコンタクトですべてを理解し、フォローしあい、共有できる唯一の相棒だった。
室井の意図は今まで一度たりとも読み間違えられたことはなかった。
「一度触れちゃったら・・っ!自分、じゃ止められないじゃんッ、こんなにあんたでいっぱいになっちゃって・・・、そんなこと、おれ、考えてもな
かったよ・・・っ」
お互い護りたかったものは何だったのだろう。
自分の地位か。相手の尊厳か。地位を確保することで得る相手を救う力か。
或いは相手が自分を想う気持ちへの遠慮だったのか。
「それでも俺はッ。あんたは世界一祝福とか喝采とかを受ける人だと思っているよ・・・っ」
それがリップサービスだとしても、泣けてきた。
限界や辛い別れを重ねていくと求める感情がセーブされる。
もう少し、ここで、このままで揺蕩っていたかった青島の気持ちも。
これは、唯一の人間と生きる幸せだ。
もういい。俺はこの男に、人生も、情熱も、純情も、希望も、全部捧げる。
原罪も烙印も過去も未来も、背負う強い覚悟と共に、捧げる。
脚を折れんばかりに胸に付け、室井が上から突き刺すように室井は雄を押し込み、掻き回す。
「――ッ、室ッ・・・それッ、ヤだッ・・ぁ、・・だめ、・・・あ、ァアッ」
掠れた悲鳴を嬌々に上げた躰を両腕に抱き留め、怒張した雄を強弱を付けて律動する。
室井の肩で青島の脚がぴんと突っ張った。
「ぅあ・・っ、――っ、あ、あ˝っ、い、室・・ぃさっ!」
「っっからッ!それ、逆効果だ・・ッ」
「む・・ろ、ぃさ・・っ!ァアッ、おくっ、だめ、・・あ˝、ぁっ」
「もっと奥まで挿れさせろッ」
深い夜の中で蕩け切った舌足らずな掠れた声が霞む。
狂おしく激しく思うさま揺さぶっていく。
「ッ、ぁあっ、・・ぁあ˝ッ、・・ゃ、んぁ・・っ」
青島の凶悪で強烈な魔力に引きずられる。
「や・・ぁ・・っ!・・あ˝、むろぃ、さん、がぁ、善すぎる、んだよ・・・っ!こん、な・・っ、はん、そく・・っ」
「っっからッ!そうやって男を煽るな・・ッ」
健気な仕草が嬉しくて、愛おしくて、なのに苦しくて。
快感も痛みも苦みも、怒りも怖さも。
二人でなければ意味がないのだ。
室井の身体が再び震え、青島が応える様に身を反らせた。
戯弄される肉体に、青島も喘ぎを隠さない。
「達って、みせろッ・・・・ぜんぶ 、ッ、もう、全部ッ俺にッ、ッ・・・よこせっ!」
「ア・・・っ・・・・ああっ・・・・・・ク・・っ・・・すご・・・っ、ああッ、ああッ」
「青島・・・・っっ!アッ・・・・クゥ・・・青島っ!青島っ!」
こんな無茶苦茶なセックス、おまえとしかできない。
「・・ッ、ゃ、ぁあッ、・・は、ぁあ"、アァッ!ひっ、・・ばかぁ・・っ、こ、われちゃう・・ッ、イっちゃうッ」
青島の額や肩に室井の汗が滴り落ちる。
青島が室井の髪を握り締める。
弾みで腰が何度も浮き上がる。
「ぁあ、ぁ、ゃ、だめ・・っ、イく、・・ん、あ、ぁあっ・・!」
負けず嫌いな青島とのセックスはいつもどこか戦い染みて気が抜けなかった。
こんなセックスを覚えたら自分がおかしくなってしまいそうで怖かった。
「ァ・・ッ、ァ・・ッ、ぁあ˝ッ、ゃ、もっ、――んん˝ッ」
顔を固定仕返し、口を塞ぎ、声もださせないまま絶頂に導いた。
3.
弛緩した青島の上に崩れるように汗で滑る身体を投げ出し、室井が覆い被さった。
痺れるような重たい快楽に支配され、欲望は埋め込んだまま、しっかりと腕の中に濡れた熱い躰を確かめる。
不規則な肉の収縮が透明な液体が蜜を溢れさせ、まだ肉茎を戦慄せていた。
室井が吐き出した情熱が菊座から零れ、二人の太腿を伝い、急速に酸素を欲する荒い息遣いが放心させた。
「・・顔、見せろ」
またぎゅっと中が締まる。
青島の躰もまだ震えていて、目尻から同調した雫が零れ落ちた。
「・・・・こん、な・・っ、めちゃめちゃな、抱き方・・っ」
「まだ・・・、駄目、・・ッ、なのか?」
「恋人、みたい、じゃん・・・ッ」
荒い息が室井もまだ整わない。激しく胸筋が脈動し、言葉を続ける。
「選べ・・ッ、今ここでッ、おまえが・・・ッ」
「・・・・・・俺、がッ、決めるの・・・、っ、」
「決めてくれて、いい・・」
青島だけが知る男の姿が妖しく闇に輪郭を取った。
「・・っ、・・・、・・・ああもぉぉっ」
ぐい、と後頭部に回された手で引き寄せられて。
熱に満ちた視線が震える指先を捕らえて交差する。
引けないよと再度問う青島の声は色づき情後の気怠さに震え、室井を栗だたせた。
いいのと目で示す手を握り、決意を伝える。
荒い息が徐々に鎮まり、辺りに静けさが戻る。
「あなたが好きだ」
吐息に変わった熱が混じる距離で、青島が口唇だけでそう告げると、それを閉じ込めるように室井が青島の口唇を塞いだ。
ああ、くっそ。
言葉の破壊力は絶大だ。
恫喝とも言える恋の兇悪さに室井は心臓さえ止まるかと思った。
このまま溺れてもいい。
何も惜しくない。
何もかも投げ捨てたって後悔はないだろう。
それは汗に濡れた肌の美しさと相まって、妍冶で魔性的ですらあった。
「あんたは・・・一生言ってこないと思ってました」
「腑抜けだと思われてたんだな」
「まさかこんな荒業でくるとは思いませんでした・・・」
「・・・」
「んん・・・、ヨすぎて、飛ぶかと思った」
瞠目する室井に、照れくさそうに首を傾け、青島が室井の指に歯を立てる。
「・・・・まだ聞いてないよ」
瞬く透明な瞳は、深く濃く、悠然とした想いに満ちていた。
見つめ合う秀麗な室井の眼差しにも、呼応した真剣さが灯る。
「一晩だって足りない」
「あんたがそんな饒舌だとは思ってませんけど」
「甘くみるな。勝負所は手を抜かない主義だ」
「―――ははッ・・・俺、室井さんのそういうとこ、気に入って、マス」
柔らかく慈しむように室井は青島の額に額を押し付けた。
もう絶対離さない。
「キスをください」
噛み締めるように青島がその言葉を告げ、腕を伸ばしてくるので
室井も長い時間を経て今夜ようやく恋人となった年下の可愛い彼氏を抱き返した。
「キスは、ベッドで」
噛み締めた吐息は喘ぎを滲ませ、木の葉のようにそっと零れ落ちる。
***
場所をベッドに移そうと室井が身体を起こす。
青島の手も引き、起き上がらせた。
ぽてっと座ったまま、青島が気怠そうに髪を掻き上げる仕草が大人びて色っぽい。
冷えたミネラルウォーターを取りに行こうとして、室井は一度振り返る。
煙草を探し出した青島の後ろ髪が跳ねている様子を漫然と目に映した。
「愛している。・・・.君だけを」
「ッ!え!今言う?!」
振り向いた青島のマヌケ面は史上最強だった。
ずっと隣で。ずっと近くで、生きていく。
happy end

新パソコン記念。らぶらぶえっちでした。
付き合ってもいないのにナチュラルにえっちしている二人を描きたかった.。
20170714