13. 絶対不可侵領域
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ふと、気圧の変化を肌で感じ、青島は熟睡していた意識を半分覚醒させた。
深夜に帰宅し、シャワーを浴びるだけで済ませた疲れた身体をベッドに投げ出したまま、結構な時間が経っているような感覚がある。
蒸し暑い東京の夏の夜。エアコンは点けっぱなしだ。
そのさらりとした肌に、パジャマ代わりの綿シャツの隙間から、湿度の高い夜風が撫ぜ、深夜の来訪者に気付いた。
眠くて瞼は開けられないが、気配で室井だなと思う。というか、この部屋の合い鍵を所持している人物は他に居ない。

一言も喋らないその影の主が、そのまま青島の腹にかかっているタオルケットを引き剥がして来た。
潜り込んできた腕に身体をそのまま引き寄せられ、ベッドに加減なく押さえ付けられる。
退けようと伸ばした手を取られると、口唇も塞がれた。

「ん・・・っ、ふ、」

眉を切なげに寄せ、青島が緩く首を振る。
簡単に外れた室井の口唇がそのまま首筋に埋もれた。
舐めるというより吸い付くような強さで舌を這わされ、青島は膝を立ててシーツを掻く。

「暴れるな」
「こんな夜中に来て、なんだよ・・・」

舌足らずに漏らす口唇を、もう一度塞がれ、ほぼ一方的に舌で割られる。
侵入してきた熱く滾る舌に、慣れた仕草で口腔を掻き混ぜられ、肌がざわついた。
パジャマ代わりのシャツをたくしあげられ、室井の指が裾から入り込み、脇腹から肌を撫で上げる。

「・・も・・ッ、何、すんだよ・・・っ」
「考えていることは同じだと思うが」
「こんな夜中に?!」
「じっとしてろ」
「他になんかいうこと・・・ないんかよ・・」

身体ごと乗り上げてくる室井に襲われていることに反発心が芽生え、両手で青島が室井の身体を押し上げる。
しかし、既に組み敷かれている状態では、そんな抵抗など効果はない。
舌で耳元を嬲りながら、両手は泣きたくなるほど残酷な器用さで快楽だけを引き出し、下がっていく。
さらりと這っていた室井の細長い指先に背中を辿られ、少し浮き上がった背筋がざわりとそそけ立った。

「ア・・ッ、ん・・・っ、も・・ヤりたいんなら、あんた、奥さんとやれよ・・・っ」


この男は、二年前に結婚をした。
かなり上のキャリアから持って来られた良縁話ということだった。
それを得た室井は、結納より先に、ただの愚痴友達となっていた青島にも教えてくれた。
黙ってそれを聞く青島の横で、室井は酒を見降ろしながら事実だけを淡々と口にした。

やがて、結納が済み、媒酌人だの式場などの日取りも決まり、いよいよ式を翌日に控えた前の夜。

青島のアパートを連絡も無く、あの日も深夜こんな風に突然訪れてきた室井に、青島は無理矢理、躯を開かれた。
ほぼ乱暴と言っても差支えなかった。
厭だと咽ぶ躯を勝手に昂ぶらせられ、有り得ない箇所に埋め込まれた淫棒に、初めての享楽を憶え込まされた。
手酷い仕打ちの意味も告げず、理由も分からぬまま、明け方の宵の中、去っていった室井は
その日、結婚をした。

あの日の意味は、未だに聞かされていない。

それからどういう訳だか、室井との仲はこんな風に歪な形で続いている。
ふらりと訪れては、青島を抱いて、去っていく。
不倫になるのか、浮気になるのか。情事の最中も、室井は何かを語ることはなかった。


「・・ッ、あ・・・、痕、付けんなよ・・」

聞いているのかいないのか。
室井は片手で青島の胸元を舐り、紅く熱を持ち腫れ始めたもう片方の突起に執拗に口唇での愛撫を繰り返す。
時折見計らったように立てられる歯が、的確な刺激を齎した。
筋肉質の腕の中で、顎を逸らせば、室井が背中を引き寄せる力を強め、背中を逸らされた弾みでシャツが肩から落ちていく。
浮いた腰からも手慣れた仕草で器用にトランクスも下ろされ、素足が絡まり、縫い付けられた。

艶肌の感触を確かめるように、さわさわとあちこちをまさぐっていく上から下へと辿る高貴な指先。
指の腹で掠めるように内股を愛撫された後、僅かに反応し始めていた熱塊に手を添えられ、覚束ない喉声が青島の喉を震わせた。
まだ消えない羞恥から、腕で口元を抑える。
軽く反り返り始めた身体を支えたくて、青島は片手で室井のワイシャツを引っ張った。

「ん、ん・・・っ、ヤだって・・・」
「もうこんなになっているのにか。それとも、やはり、犯されるのが好みか」

意味深に意地悪を言われ、青島が苛烈に睨み上げる。
すると、直接熱芯を擦られ、青島の腰が室井の下で淫猥に揺れる。

「・・ッ、ァ・・ッ、あぁっ、・・くそ・・」

先端を集中的に弄られることで引き出された痛いほどの熱が腰に集まる。
青島は顔を背けて歯を食いしばった。

「いい顔だ」
「こんなことッして、いいと思ってんのかよ・・・っ、ぁあっ」

ひときわ強く擦られ、仰け反った。
力の抜けた両手を奪われ、片手で頭上で纏められてしまう。

「妻のことは、毎晩抱いている。・・・・・と言ったら、どうする?」
「絶倫野郎・・・ッ」
「それだけか?」
「そうだよ・・・っ、放せ・・・!」

隅々まで知られた躰を、思うままに操られていく。
きっと、粋がる俺の反応さえ、室井を煽るスパイスで、昂奮しているんだ。

細長い相変わらず清潔そうなこの指が、知らない女性を肌を辿っているのかと思うと、逆に青島の芯が熱くなる。
罪深いのは、室井なのか。それとも青島なのか。
その器用な指に肌を暴かれ、淫猥な手付きで熱塊を撫で上げられ、青島は眩暈のするような快楽に、世界をきつく閉じた。

「・・・ん、ァア・・ッ・・・」

両手を一纏めにされた躯が、シーツの上で海老反りとなる。
卑猥に広げた足先がきゅっと縮まり、ほのかに熱を持つ内股を小刻みに痙攣させる。
その姿を、月灯りの元、室井に視姦されているの視線の強さが、肌を焼き、躯だけでなく感情までも昂ぶらせていく。

「は・・・ぅ・・・ッ」

ローションに塗れた幾分冷えた室井の指先が後蕾へと滑った。
襞を楽しむように愛撫したあと、慣れた仕草で挿入させてくる。
弛緩した躰はそれを喜悦のままに受け入れ、ゆっくりと抜き差しされ、無防備な粘膜を弄られる。

こんなことに何の意味があるんだろう。
どうしてこのひとはこんなことをするんだろう。

「ぁあ・・、ぁ、ぁあ、そこ・・・っ」

されるがままに両脚を大きく開き、青島は度重なる甘く鋭い刺激に堪えた。
室井の指がぐりぐりと熟れた内壁を弄り、広げるように掻き回されると、次第に甘い疼きが内から湧いてくる。
それを見計らったように、室井の指が増え、更に奥までを弄られる。

後蕾をほぐされ性器を扱かれれば、青島はビクビクとうねり、震わせて声を抑えるしか出来なくなる。
 容赦のない愛撫に、青島は顔を赤らめ、いやいやと顔を緩く振った。

「・・・っ、んぅ、た、んま・・・っ」
「いやらしいな」
「・・あ、あ・・っ、いや、そこ・・っ」
「嫌?こんなぐちゃぐちゃに濡らしといて嫌なわけないだろう」

反射的に厭と声を漏らせば、叱るように後蕾に咥えさせられている二本の指がグッと左右に開かれた。
無理矢理広げられた肉から液体が流れ落ち、くちゅりと淫猥な音を上げさせられ、羞恥と共に身体が火照る。

「なんて顔だ。達く寸前の貌をしているぞ」

同じ男として悔しいのだが、下唇に甘く歯を立てられ、舌先で割れ目を淫蕩な力加減で辿られれば
その巧みな男の仕草は、身体の何処までも侵食されていく錯覚に、力ごと奪っていく。
快楽に落ちていく。
もう、抵抗する気はないことは、熱った躯が室井へと伝えているだろう。

軽い畏れを感じ、顔を逸らすと、誘うような甘い息が青島の口から漏れた。
そのまま濡れた口唇が頬を掠め耳朶を甘噛みしてくる。それにすら、過敏に震えた。
指はいつのまにか三本咥えさせられている。

「・・・っ、ぁあ・・・、ぁあ・・・、むろぃ、さんっっ」

舌で肌を舐られ、両手で熱塊と蕾を同時に刺激され、青島は大きく戦慄いた。
室井の手に容赦はなかった。
青島が叫んだ瞬間、室井はその口唇を塞ぐ。
押さえ付けられたままの躯が跳ねて、青島は簡単に欲望を絞り取られた。

快楽に落ちたその顔をたっぷりと見降ろしながら、室井は間髪いれずに青島の両脚を肘に抱える。
持ち上げ、わざと左右に大きく広げると、準備の整った後蕾の前で、ぬらぬらと銀色に月灯りを受ける室井の反り返った赤黒い淫棒が、密着する。
室井が腰を回し、襞を刺激すると、青島の抱え上げられた足先がピクピクと痙攣した。

「やらしいな。もう待てないか」
「あんたもだろ・・・」
「・・・・」

雄の眼をした室井が覆い被さるようにして、見降ろしてくる。
熱塊の先端を爪で弾くように刺激し、後蕾の皺だけを淫棒で突く。
中途半端な刺激だけで嘲笑う男に、青島は恨みがましい目を向けた。

焦らされるままに、腰が震えてしまう。
俺に言わせるつもりだ。

「ふざけ・・・っ・・ぁ、・・く、・・っ」
「欲しいと言うんだ」

視線で命令され、躯が震えた。
熱塊の根元を絞られ、後蕾を何度も擦られる。

「ア・・ッ、ァア・・・ッ!も、もぅ・・っ」
「ん?」
「む、ろぃさんッ」
「どうされたい」
「だから・・ッ」
「焦らされたいか?」
「さっさと、挿れ、ろよ・・・っ」
「ちがうな・・」

声にもならない息を肺から溢れさせていると、慄きながら噛み締める口唇を指先で解かれ、強請られる。

「犯して・・ッ・・」

黙ったまま、室井が淫棒をゆっくりと挿入させてきた。
男に慣れた躯が、簡単に雄を受け容れていく。
根元まで挿れこむと、室井はそのまま、腰を大きくねっとりとグラインドさせた。

「ぁあ・・っ、はぁ・・っ、」

ようやく与えられた刺激に、悦ぶように青島の身体は汗を滴らせた。
打ち震えるその肌を、室井が輪郭を辿るように淫猥に辿る。
室井の淫棒が、熱い。

「それから?」
「はやく・・っ」

そのまま、室井は大きく律動を始めた。
動きに合わせて、青島の髪が揺れ、緩く大きく穿つ甘い責め苦に、青島は歯を食いしばって堪える。
汗の粒が光る肌は仄かに染まり、濡れた前髪が額に張り付き、シーツに束になる。

「ひ・・っ、ん、あ、ぁあっ、」
「気持ちいいと言ってみろ」
「ぁあ・・、く、ふ・・っ」

背中に回っていた室井の手に、腰をくいっと持ち上げられるように両手で抱え込まれる。
無理矢理逸らされ、強請るように突き出す形になった胸の尖りを室井が舌で弄る。

「ああ・・っ、はっ、あっ、あ・・っ」
「言え」
「・・くそ・・っ」

悪態を吐けば、室井が楽しそうに笑った。
そのまま深く緩く抉ってくる。
緩やかな波のように揺さぶられ、青島は滴り落ちる甘い毒に悶えるように顎を反らした。

「はっ、・・アァッ・・、アアッ・・」

愛がないなら、こんな抱き方をしないで欲しかった。
身体中を蕩けさせられ、ぐずぐずに崩れていく。
たっぷりと濡れた後蕾が、室井の雄々しい淫棒を根元まで咥え、水音を立て、爛れた快楽に腫れあがっていた。
そこを、広げるように室井が腰をグラインドする。
堪え切れず漏れた嗚咽が、室井の劣情を煽るようで、室井の息も荒くなっていく。

「もっと脚を開け・・・」
「あ・・っ、ん・・っ、んぁ・・っ」
「そうだ・・・。熱いな・・・もうぐちゃぐちゃに蕩けているぞ・・・」
「やっ、ゃあ・・っ、ふぅ、ぅん・・っ・・」
「少し腰を上げて・・・そう、そのまま振ってみろ・・・ああ、上手だ」
「あぁ・・ん、い、い、・・・ゃあ・・っ」
「ぁあ・・・、すごい・・、気持ちがいい・・・」

室井の太い淫棒を咥え込み、女宛らの高い声が出て、自分で恥ずかしくなる。でも、止まらない。
淫猥な言葉に煽られて、我を忘れて堕ちていく。

「うねって波打ってる・・・・そんなに俺のペニスが気に入ったか」
「はぁ・・っ、ぁ・・っ、そこ・・っ、」
「ここか・・・?・・やらしい躯だ・・・」

濡れた声で囁かれ、官能的な動きをする指先に内股を撫ぜられ、手酷い甘さに跳ねる身体を持て余す。
もう強気で勝気な青島はいない。
従順に躯が応え、室井の思うままに甘い命令に従わされ、反応させられる。

「ァ・・ッ、ぁあ・・っ、ああ・・っ、も、イク・・・っ、むろ・・さ・・・!」

眉尻を下げ、淫乱に満ちた顔を晒して、青島は欲望を強請る。
室井が腰の動きを妖艶に回すものに変える。
律動させるだけでなく、奥を抉るようにグラインドさせた。
熱を持って爛れている媚肉を深くまで穿たれ、青島は声も上げられずに仰け反る。
ピリピリと身体中を走る電流のような快感に、青島は必死にシーツを両手で掴んだ。

怯まず重ねられた室井の口唇に、青島の嬌声が吸い込まれる。



ギシギシとベッドが鳴く音に、二人の男の荒い息が夜に溶ける。

「あ・・っ、は・・っ、ぁあ・・・っ、ぁあッ」
「くっ、ふ・・っ、ふ・・・ッ」

今夜の室井は優しくて、そしてどこか意地悪だ。
既に室井も一度吐きだし、青島は何度吐きだしたか分からないが、二人はベッドにまた組み合わさっていた。

喘ぎながら、青島は腕で顔を隠す。
室井の肉が奥に突き刺さる度、ゾクゾクとした電流が走り、容赦なく快楽を引き摺り出されていく。
その手を剥がされ、横に縫い付けられた。
筋肉質の体に覆いかぶされ、両手は一本一本指を絡めながら頭上で自由を奪われる。

「そんなッ、見んな・・っ」

黙ったまま腰を振る室井の視線が痛いほど身体中に突き刺さっているのが分かる。
的確な刺激に潤み始めた瞼を開ければ、室井が快楽に歪む青島の顔を視姦するように真上から見下ろしていた。
その強い漆黒の闇も快楽に落ちゾクリとする。

「ぁ・・っ、は・・っ」
「クぅ、ふっ、うん・・っ」

あんなところに男の逸物を深々と咥え、しかも自分の熱塊も善がって蜜を垂らしているなんて。
それを見られているということがこの上なく恥ずかしい。

顎を逸らし、口を大きく開け、青島の目尻が光る。
啜り泣きのような息を漏らし、青島は男に媚びる。
頑是なく首を振った。

「・・ぁ・・っ、は・・・っ、ん、なん・・っか、今日、ちょっと、はげし・・・・っ」

室井が肘に乗せていた青島の脚を肩に担ぎあげた。
そのせいで広がった後蕾を室井は容赦なく突き上げる。
栗立った肌に合わせるように、室井が緩く腰を回し水音を立てると、恥知らずな腰が教えられた通りに強請るように浮いた。
媚びるように、青島の媚肉が室井を締め付ける。

室井の淫棒が前立腺を数度突き上げた時、青島はまた身体を海老のように反り返し、淫らなままに達った。
室井はそれでも律動を止めない。

「んっ・・くっ、あうっ、ふぅ・・っ」
「どうだ」
「イイ・・ッ、イイ・・ッ」

何度もイキすぎて怖くなる。
どうして今夜は。
ひく、ひく、と痙攣しながら歪んだ天井を仰ぎ、青島はどこまでも続く責め苦に耐えていた。
女のように脚を広げさせられ身体を切り裂かれても尚、聞くに堪えない自分の甘ったるい声が溢れていく。

「あぁっ、あっ、あぁあっ」
「可愛いな・・・」

俺の中の熱の欠片のほんの少しでいいから、このひとに知ってほしかっただけなのに。
どこでこんなに食い違ってしまったんだろう。

「ああ・・・っ、くぅぅ・・あぁ・・ッ、アァッ・・・・っ」
「あとで・・・・・おまえに、話がある・・・・」
「・・・ぁ・・・っ、は・・・っ、な、に・・・」
「この躯も心も・・、全部俺のものだ・・・」

言っている意味が分からず、揺さぶられながら、自分を犯す男を揺れる視界で見上げる。
視線だけ寄越し、室井は青島の腰を抑え、穿つ動きを幾分強めた。

「ァア・・ッ!」
「もう、逃がさない」
「やぁっ、あっ、あ・・っ、い、いい・・・っ、そこやめ・・っ、ぁああんっ」

無意識に逃げ上がる汗ばむ腰をグッと引き戻され、両手で押さえ付けられたまま、同じ個所を小刻みに楔で打たれる。
ピチャピチャという音と共に、内股が紅く染まり、熱を持って爛れ、小刻みに淫蕩を室井に伝えた。

「あっ、あっ、あっ、あぁっ」
「っくぅ、・・最高だ、おまえの躯は・・・っ」
「んぁっ、ぁあっ、ぁうっ、」

白い脚が暗闇に浮かぶ。
腰を引き寄せられ、深く穿たれる度に、青島は頬を羞恥に染め、甘い悲鳴を上げた。

底の底まで奪われて、媚肉を強く緩く擦り上げられる強烈な感覚に支配されて、ざわりと肌がそそけ立つ。
淫猥な格好で腫れた媚肉を掻き回されれば、快楽に怯える指先を引き寄せられ、甘く誘われる。

「おれが、欲しいか・・・?」
「あ・・っ、も・・・・っと・・・ッ、欲し・・・ぃ、欲しッ、ァッ、もっと・・っ」

自分が何を口走っているかは、理解していなかった。

「ゃ、はげしっ・・・ぃ、も、ソコ・・・ッ、あ・ああぁっ・・ッ!」
「くぅ、なんで・・・おまえなんだ・・・ッ」
「あぁっあんっあっ、んやっ、はぁっ、あぁんっ、も・・・と!あっあっ、あぁっ、ぁああっ・・!」

俺ばっかり欲しがらされて。
今までこんな鳴かされるセックスをしてきたことがなかった。
分からないことだらけの違和感の中で、身体中を男に支配され、何もかもが思うように進められないもどかしさにも蕩け、浅ましく喉を鳴らし
密度を濃くしていく快楽に導かれて、青島はただ咽び泣いた。

先に逃げたのは、あんたなのに――



***


荒い息が治まらない。
顎を取られ、上向かされることで、青島は重い瞼を上げた。

「今夜、君に告げることがある」

耳に歯を立てられ、少し噛まれると、そのままそこに、熱い息が吹き込まれた。

「君に好きって言ったら迷惑か?」
「何、言っ・・ん・・すか・・・?」

刺激に対して反射的に上がるものを無理して堪えていた名残りで、喉が枯れていた。
情けなさと痛みに、青島は少し眉を顰める。

「じ、自分は女抱いていたくせに・・・?」
「何でおまえなんだろうな・・・」

今更何を言い出すのか。

「二股してたくせに、今更なん、だよ・・・っ」

その罪を俺にも担がせた。
共に堕ちるなんて、幻想だ。この男は自分だけ自己保身を図った。

「何もかもを一緒に叶えることはできない。俺が結婚している間、おまえを逃がさないように縛り付けておく必要があった。・・・誰にも渡さない枷だった」

事態に追い付けない。
疲れきった躯は明確な思考もはく奪する。
ただ分かるのは、室井に因ってここまで性の烙印を施された躯では、確かにもう、他の人間を愛することも、他の人間で満たされることも、不可能だろうという 絶望感だ。
そして、もしかしたら、それは室井も同じなのだろうということだった。

「明日、妻が・・・元妻が離婚届を持って実家に帰る。君を俺の正式な妻にする」
「だ・・っ、だれがなるか・・っ」

室井の口唇が近付く。

「や、やですよッ」

キスから逃げようとする顎を捕らえられ、囲われた。

「あんたにバツを付けられない・・・っ」
「離婚届は役所に提出するものではない。もう、後悔するのはたくさんだ」

言い終わらないうちに、口唇を重ねられる。
捕まえられたことに、素直に喜ぶ気持ちはもう湧かなかった。
でも、どうあっても逃げる隙がないことだけは、理解した。

冷たいキスに溶けていく思考は、何も残さず、青島はそのまま意識を途切らせた。






happy end?

index

室井さんは断り切れない縁談を隠れ蓑にし、その間青島くんを手に入れる準備をしていたんだけど、その辺を一切伝えない俺様カレシなので、泥沼
20210414