登場人物はふたりだけ。上か下かはどっちが優勢かを決める大事な通過点。青島くん視点。
A面とストーリーに繋がりはありません。
密室~B面

濡れた服が縛りとなって、もどかしさは倒錯的な疼きを生んだ。
雨を打つ窓枠から差し込む僅かな灯りが、青島の肌を艶やかに香り立たせる。
せめて震える躯を隠そうと、思わず青島が手の甲で口元を覆った。
恥ずかしがるその手を室井が柔らかく、だが強引に取り外す。
「・・・」
それが男としての悔しさなのか、それとも未知の感覚を引き摺られる恐怖なのかが分からなくて、青島が縋るように室井を見上げれば
そこには獣染みた男の目があった。
全ての色を拒絶する漆黒に、囚われる。
「いいの・・」
「おまえが、選んでいい」
言いつつも、同じ男としては腹が立つほど逞しい腕がしっかりと回され、微かなフレグランスがこの距離にきて漂った。
室井の肉厚の肩幅も胸板も、青島とはまるで違う。
繊細に丁寧に鍛え上げられた男の芳しさと逞しさ、引き締まる肉、圧し掛かる熱に咽返り、青島は逆上せあがり、ぼうっとなった。
「なんか、言ってください・・」
「おまえが・・言え・・」
縋るように身を預けることも、肩口に顔を埋めることも、できない。
慈しむように髪を掻き揚げられ、手の甲で雨に濡れた頬を撫でられた。
その手は少し、他人行儀だ。
ポタポタと、どちらの髪からも水滴が流れ、傘も持たずにこの雨の中を帰ってきた不手際を、極上の蜜にすり替える。
暗闇で灯る瞳に罪の味を教えてほしくなる。
「・・ぁ・・」
不意に、首筋に甘く口付けられ、青島は小さく呻いた。
痛みを残さない強さで吸われ、甘い疼きに期待よりも不安と恐怖が綯交ぜとなる。
頬を捕らえられながらネクタイを引き抜かれ、室井に腰を押し付けられた。
肉から薫りたつような、強烈な雄の気配に引き摺られるまま、青島は自分を乱す男の名を、辛うじて呼んだ。
焦点がぼやけるほどの至近距離で絡み合う眼差し。
青島の輪郭を辿り、髪を緩やかに指先に絡め、室井は気怠い息遣いで逸る想いを殺した。
まだ玄関先で、コートも脱いでいない。
湿り気を持つ大気がうっとおしく鼻腔を擽り、生温い息遣いが肌を舐める。
均衡を保つ熱に堪え切れず、青島がもう一度、震える吐息だけで名を呼んだ。
刹那、室井が青島の口唇を奪う。
「ッ」
奔る胸の痛みに、一瞬青島は身を引く。
直ぐに離れようとしたその口唇を追って、室井が今度は強引に塞いだ。
ドンと拳を叩きつける音が耳の脇で鳴る。
噛みつくように合わせた口唇は、怒りに満ち、薄くて冷えていたが、青島の口唇を舌で辿り、吐息ごと奪っていく。
何度も擦り合わせては深め、ぴったりと口唇を合わせ、呼吸から閉ざしてしまう切羽詰まった口付けに、青島も目を閉じた。
舌を引き摺り出し、吸い上げるように絡ませ合う淫猥な動きは、清廉な男からはかけ離れ、怯えに似た戦慄が青島を足止めする。
「・・ん、・・んぅ」
これが二人の初キスだった。
甘い言葉などもなく、狙った獲物を逃さぬ周到さで手加減もなく濃厚な交わりを求められ、それに応えるだけで精一杯な奪い合う口接は
これまでどれだけ耐えてきたか、その節度を表していた。
触れたかった。欲しかった。こんな出会いじゃなかったらもっと簡単だった。煮詰まり過ぎた情火は言葉なんかじゃ伝わらない。
痛みを伴う強さで擦り合わせ、角度を変えて吐息ごと飲みこめば、青島の眉が切なそうに歪んだ。
その貌がまた室井を煽る。
闇に溶け込む相手を見失わないように、相手が誰かもわからない夜更けが、ふたりを隠し、唾液が闇に光る。
徐々に立っていられないくらいのキスに、青島の顎が持ち上がり、足元がふらついた。
室井が壁に青島を押し付け、より深く貪り続ける。
「・・ッ・・、ふぅ・・っ」
一方的で、意識すらも置き忘れたような、快楽よりも痛みを覚えるようなキスは、ただ獣染みた肉の交わりの濃密さを予感させた。
揺るぎないキスに巻き込まれ、青島は求められるまま口唇を赦していく。
酸素を要求する指先が、濡れたシャツを滑った。が室井には届かない。
「・・ァ・・ッ・・」
叱るように舌をきゅうっと強く吸われ、走る痺れに青島の膝がカクンと崩れた。
途端、腰から引き寄せられ、重力を失う。
室井に担がれ、そのまま近くの部屋に連れ込まれる。
寝室だった。
そのまま揃ってベッドサイドに崩れ落ち、お互いをただ抱き締め合った。
まだ行為に挑む勢いを諌めようと顔を背ければ、水滴を残す青島の髪が青白い夜のシーツに散らばり、酸素不足に喘ぐ。
その隙に室井が青島の濡れて重くなっているジャケットもコートも剥ぎ取り、肩から滑らせる。
無防備に逸らされた青島の長い首筋が紫紺に陰影に蠢き、その嬌態を室井は切れ長の瞳で視姦し、覆い被さった。
「卑怯だ・・っ」
「・・どっちがだ?」
強かで計算高い男を、俺から喰らい付きたかったのに。
承諾もなく主導権を奪い、どんどん行為を身勝手に進める男に、青島は荒げた息の奥で、片手で制する。
だが、その手も握られる。
「おまえが好奇心旺盛なのは分かった。・・・が。それで全てを納得したわけじゃないんだ、悪かったな」
「意地ワルイ・・」
室井をなんとか避けようとする仕草も、室井を煽ることにしかならず、室井が満ち足りた笑みを湛えた。
ベッドサイドに沈み込み、その両脇を腕で囲って逃げ場を立つ男を、青島は上目遣いで窺う。
じっと見つめ合った。
口を開いた方が、負けだった。
何か確かなものを白状した方が、この長い闘いを無意味にする。
どうするのか。
このまま続けるのか。
許可を探る沈黙は、見つめ合う視線に答えを孕ませる。
青島が震える指先で、官能的に動く室井のその口唇をなぞった。
今夜、こうなる予感がしていた。
それはきっと、室井も感じていた筈だ。
雨が降った。そんな小さなことが切欠になる。
室井が手を伸ばし何かのスイッチを回した。
部屋の照明がぼんやりとした輪郭を浮かび上がらせる。
白い壁に大きく浮かぶ二人の影。やけにムーディな視界に揺れる、男の瞳。
そのまま視線が外せなくなる。
快楽の匂いをひっそりと漂わせるような青島の鮮明な眼差しは、室井だけを映して光る。
次の瞬間、二人は同時に口付け合った。
「・・っ、は・・ッ、室井さ・・っ」
合わせるように青島が室井の後頭部を自らに押し付ける。
あまりに強い口接は、堰を切ったような揺蕩を引き摺り出し、途切れなく与え続けられる切ないほど優しい熱に、青島の目尻が滲んだ。
今までにここまで激しいキスはされたことがない。無論したこともない。
咽ぶ息さえ奪われていく。
それで、構わなかった。
呼吸が出来なくなっても、それでこの男を手に入れられるのであれば、引き換えに酸素くらい、安いものだ。
眩暈のような浮遊感に、少しだけ中断を求めた手も拒まれ、喉奥まで喰われていく。
上向いて酸素を求めた口唇を真上から塞がれ、肩を抱き込まれた。
ベッドと室井の胸板にしっかりと挟まれ、動けない青島に、室井は容赦なく口付け、隅々まで舌で探ってくる。
背後には、男の意図を黙々と伝えるベッド。
この激しいキスの先にあるものを、今更知らない無垢ではない。
「んぅ・・っ、は、むろ・・さ・・っ、」
室井に貪られながら、素の室井を感じ、こんな男だったのかと今更に遠く思う。
いつになく凶悪なキスにも先手を取られ、相手を見る余裕も失い、青島は成すがままに腔内を嬲られた。
普段と全然違う。
こんな激しい室井は知らない。
それだけのことが、こんなにも俺を掻き立てる。
「なんて貌だ」
ようやく解けたキスに息を荒げて陶然とした瞳で見上げる青島に、室井が歪んだ笑みを落とした。
すっかりと力が抜け落ち、唾液に濡れた口唇は赤く腫れあがり、睫毛は濡れていた。
雨を吸った栗色の紙が色濃く艶めき、青島の若い肌を引き立てる。
ベッドサイトに頭を預け、青島は荒げた息を整え、上向いて目を閉ざした。
こんな一方的になることは、計算にない。
室井が青島の上気したようなほんのりとした赤みを添えた頬に手を滑らせ、もう一度キスの許可を目で尋ねてくる。
このままもう一度キスされたら、きっと、蕩けさせられてどうにかなってしまう。そう予感がした。
思考の片隅で何かが微かに警告したが、青島の瞼はゆっくりと伏せられていく。
この男に、ここで見逃してもらえるとも思えなかった。
「・・ん・・んぅ・・」
くちゅ、ちゅぷりと、唾液の混ざる音が忙しなく立てられる。
膝立ちの室井に両手を回し、青島も腰を起こして室井を引き寄せた。
腰に手を回され、ぐっと抱き込まれ、二つの影は密着する。
はあっと荒げた息を聞かせ、室井が何度も何度も青島のふくよかな口唇を堪能する。
「・・っ、ぁ・・、ん、んぅ・・ッ」
まだキスだけだ。
キスしかされていないのに、朦朧として平衡感覚を失い、青島は室井の腕にしがみ付いた。
膝を割られ、室井がそこに身体を入れているせいで開かれた内腿が、自身の体重を保つことを放棄して、小刻みに震える。
背筋を指先で辿られると、軽く仰け反った肌は力も入らず、男を強請った。
「だらしないな・・」
「・・んな、こと・・・」
気付かれた羞恥に染まる目尻から激しい口付けを与え、室井がひっそりと囁いた。
耳元に掛かる熱い息と高潔ながら淫靡な姿はそれだけで犯罪的な旨味を持つ。
シャツを剥ぎ取られ、ネクタイを引き抜かれ、衣擦れの音が忙しなく雨音に混じった。
室井にスーツを脱がされるのも、抗うことすら忘れ、カクンと青島の膝が折れた。
「くそ・・っ・・」
室井の胸にぱふっと受け止められ、悪態を零すが、そのまま青島は室井に身を委ねる。
片手で背中を強く緩く撫ぜ上げられ、そのざわりとした手の平に感じている頃、室井に下着ごと手際良くスラックスまで寛げられていた。
そのまま、それが承諾であったかのように、室井によってベッドに仰向けに寝かされる。
まだほとんどスーツを着たままの室井が乗り上げ、身体を重ねた。
「・・室井さん・・」
無口な男だということは分かっていた。誘う言葉などくれる筈もないことも、分かっていた。
そして、これからこの男に自分が何をされるのかも。
「脱げよ・・」
せめてそれだけ言うと、室井は黙ったまま身を起こした。
室井が自分のネクタイに手を掛ける。
顎を少し反らすその仕草に、思わず青島は目を反らした。
自分だけ脱がされている状態が気恥しくなる。
見下ろしてくる男の視線に、羞恥を煽られる。
やはり、薄い口唇は横に引き結ばれたままだった。
室井が青島を見下ろしながらベストを剥ぐと、逞しい胸板と滑らかに引き締まるウェストラインが闇に浮かぶ。
ネクタイをベッドの下に捨て、ワイシャツも飛ばし、ベルトも捨てる。
室井が肉を露わに全裸となっていく様子を、青島は横目で認め、頬を染めた。
凄く、色っぽい。
見られることを生業とする男の品格だ。
けど。
余裕ぶって、男臭くリードを取ってたけど、このひと結構ランボーだ。
あれとか、ブランドスーツじゃないの?
しわくちゃになっちゃうと思うけど。俺の安物スーツと違って。
今落ちたのってスマホじゃん?
想像するよりずっと、この男は無頓着だ。
――違う、彼も切羽詰まっている。
彫刻のような美しい肉体を朗々と見せ付けた室井は、もう一度青島に圧し掛かってきた。
雨によってすっかりと崩れている黒髪から滴った水滴が、青島の頬に落ちる。
どくんと青島の心臓が激しく脈打つ。
青島はただ魅入るように、紅い口を薄っすらと開け、室井を見上げた。
美しく逞しく、気高さを失わない男に、もう、めちゃくちゃに心奪われたあの日が蘇る。
室井が青島を欲しがってくれるなら。
黙ったまま室井は動かない。
沈黙が、青島が茶化そうとした空気さえ凍てつかせ、青島の中の怯えをさらけ出す。
青島に馬乗りとなった室井の指先が、全裸の青島の躰を上からゆっくりと焦らすようにボディラインを辿り下りる。
青島が片手をゆっくりと室井の後頭部に回し、軽く引き寄せ、こつんと額を押し当てた。
「はやく・・」
室井がじっと見る。
明らかに室井の黒々とした瞳に焔が灯ったのが分かった。
無口な男だということは、分かっていた。
だからこそ、室井の行為に嘘はない。
「もう、だめだ、逃がせない・・」
それがどういう意味であれ、その一言は青島をほっとさせた。
傍に居ていいんだ。
だったら肉の底まで奪われたい。骨までしゃぶられたっていい。この高貴な男に。
引き換えに、上級官僚の仮面がはがれた所を、俺だけに、見せろ。
「もっかい・・・さっきのキス、して」
上向いて薄く開き誘う青島の濡れた口唇を、室井は目を眇めて見下ろし、親指でスッと拭った。
それが合図だったのか。
寸暇なく、室井にしっかりと上から塞がれ、分厚い舌を埋め込まれた。
陶酔したような口接に時間の感覚も麻痺し、甘い刺激に全てが曖昧に痺れていく。
腕を取られ、シーツに甘く縫い付けられた。
「ん・・っ、んぅ・・・」
朦朧としてきた青島は、必死に室井の舌戯に付いていこうと、両手を回して口唇を寄せ、無防備な口腔を差し出せば
呑み込み切れない唾液は光の筋を描いて垂れ落ちていく。
息を乱され、脚を絡ませ、室井の肌を感じて、蕩けさせられていく。
良く知る匂いと温度。微かな整髪料の香り。それから。
何の抵抗もなく、室井が青島の膝を割り、その間に身体を滑り込ませた。
男を挟む形になっても、キスに没頭している青島は、無意識に室井の首に両手を回す。
身体が密着したため、既にすっかりと熱を持った室井の楔が青島の腹に当たり
その太さに青島は薄っすらと目を開く。
「・・ああ・・」
長く深いキスが外れた時、青島の口から甘い吐息が零れた。
神経質そうな室井の長い指先が、キーボードを叩く事務的な指が、今は淫猥に青島の肌を辿り下りる。
首筋から肩、胸、そして脇腹へ。それはそのまま腰を擦り、太腿を撫で上げた。
それだけで青島の背は反り返った。
「は・・ぁ・・・・っ」
「なんて躰だ」
「・・けっこ、焦ってます・・?」
室井は言うより早く、少し反応を始めていた青島のペニスを掴み、すっかりと反り立つ自分自身と共に握った。
灼けるような肉の大きさに、青島が目を見開く。
「あ・・ぁ・・、ああ・・っ・・」
室井の手淫に導かれ、急速に込み上げてくる情動に、青島は思わず声を上げる。
男の性器を一緒に擦られて、重なり合う熱も、湧き上がる愉悦も、追いつかない。
この太く凶暴なモノでこの先どんなことをされてしまうのか、青島の顔が歪んだ。
その顔も室井を雄に変えるだけで、室井の手は迷いなく上下する。
「・・アッ、・・ァ・・ッ、アッ」
室井に巧みに解かれて蕩けていく。
室井を挟んで開かれている両足を、もう自ら広げて震わせる。シーツを頻りに掻き毟る。
その嬌態に、室井の目が青島の下半身に釘付けとなり、婉然と目を染めた。
「感じているのか」
腰を振るようにペニスを擦り合わせ、室井の艶麗な身体が青島の上でうねる。
欲しがられていることを勘付かせ、その覚悟を待たなくても奪うつもりであることを青島に悟らせる。
くちゅくちゅと、どちらのものとも分からない粘性の水音が聞こえ始め
青島は啜り泣くように細い息を途切れ途切れに訴えた。
「それっ、イイッ、ゃあっ、きもちっ・・ああっ・・」
何もかもが自分の思い通りに進められない青島の瞳が深まって、度が過ぎた室井の情欲を加速させた。
室井が顔を近づける。
無意識に青島も顎を上げてその口唇を受け止めた。
今夜の室井はキスだけで慰撫するようで、酷く青島を惑乱させる。
触れてくれるのは、口唇と、ペニスだけ。
舌を絡ませながら、上からも下からも水音を立てる。
「ぁ・・青島ッ、・・青島・・ッ」
室井の手が頂点へと誘う動きに変わり、激しく擦り上げられた。
「あっ、あっ、だめっ、だ、めだ・・っ、室井さん・・ッ」
啜り啼くように息を切らせて青島が脚を広げたまま腰を振る。
こんなのありかよ!いきなり達くなんて!しかも室井さんの前で・・!
上では室井も腰を激しく振っていて、水滴なのか汗なのか、雫を飛ばし、鼻息も荒く迸る筋肉を光らせ薫らせる。
青島は自分の股間を見ながら込み上げる愉悦に足を大きく広げた。
白い内股が震えている。
こんなかっこ・・!もうだめだ!そう思った、その瞬間。
「?」
まだ青島の腰は疼き、膝は震えていて、昇華していない。
だが室井が動きを止め、眉間を深く寄せて目を閉じ、息を殺していた。
殺すような吐息と、官能に染まる目尻に壮麗で壮絶な色香を見る。
達きそうなのだと、朦朧とした頭でもピンとくる。男だからこそでもある。
「・・イッて・・」
「――!」
青島が手を伸ばし、二人のペニスを握る室井の手にそっと自分の手を重ね、つつ、と室井のペニスを伝った。
妖しく囁いた青島の声に、途端、驚いたように室井が目を見開き、続けて室井の腰がグッと力んだ。
驚いて見れば、室井が苦悶の表情で眉間を寄せ、薄く口唇を開き、特有の表情で震わせた。
大量の精が青島の腹に撒き散らされる。
小さな悪態が聞こえ、室井が青島の肩に額を押し付けるように覆い被さった。
「くそ・・・先に・・・」
どちらかというと、早漏というよりは遅漏で、しかもしつこそうなイメージだったのに、普段の忍耐とのギャップが尋常じゃない。
喘ぎながら呼吸を乱す室井が、より深く息を吸う。
オトコがイく顔、初めてみた・・やばい、すっごく――
青島は気怠い腕を持ち上げ、室井の硬い背中にゆっくりと手を回した。
「やっぱり・・・けっこ、焦ってました・・?」
「――初めて君に触れるんだ。昂奮しているに決まっている」
そうなの?
何だかおかしくなって、青島が室井の耳を軽く咬んだ。
娼婦のように舌先で耳を辿る艶めいた刺激に、室井がピクッと震え、ゆっくりと頭を持ち上げる。
雄の目をするその顔は、諫めるように深い眉間が刻まれている。
「君を先に達かせるつもりだった。抱く男として。・・あまりに、その、艶めかしくて、持たなかった」
「・・・」
「呆れたろ」
室井が青島の顎を捉え、小さく問う。
臈長けた瞳を流し、青島は、室井を見上げる。
「こういうの、慣れているのかと思った・・」
「多少の知識はあるが・・・、特別な人間に触れるのは、別格だ。・・クソッ」
「室井さん・・・さ、いつから、俺のこと」
「もう、何年も前だ。頭の中では君を――何度も犯していた」
無口な男が、先に達した負い目からか、静かに告げてくる。
冷徹な男の情欲が静かに青島の中へと染み入ってくる。
じっと見上げていれば、室井と視線があった。
「青島、ずっと欲しかった・・・」
鋭い焔を浮かべて、室井が熱っぽく掠れ声で囁いてくる。
額を押し付け、両手で頬を掴まれ、熱い眼差しで、室井が短く訴える。
ほしい、と一言、囁かれる。
飾りの言葉もない。甘い文句もない。無口な男だということは分かっていた。
「室井さん・・・イかせて・・・」
もう負けでもなんでもいいと平伏すような声音に、青島はこの男がどんなふうに自分を玩弄するのか、見てみたいと思った。
この男に、嬲られたい。
この男に、全てを弄られたい。
室井が身体を上げ、斜めになるほど顔を傾け、青島の口唇に触れるだけのキスを仕掛けてくる。
今度は躊躇わず、室井の指先が身体のあちこちを弄ってくる。
胸を弾かれ、両手で揉まれ、舌先で肌を嬲られる。
「・・ァ・・ッ、・・ァ・・ッ、」
じんじんと痺れてくるまでじっくりと吸われ、ツンと立ち上がった突起が朱く腫れあがっているのがわかった。
そんな身体を見られていることも恥ずかしく、青島は顔を背ける。
差し出した身体は室井に丹念に味わわれ、それこそ室井の舌が触れていないところなどない頃には、青島の身体には幾つも痕を残されていく。
胸を指と舌で弄りながら、室井は青島の萎えた芯も成熟した男の動きで愛玩し、更に青島を追い詰めた。
敏感になった胸の痺れと腰の疼きは直結する。
「あ・・、んぁ、んぁッ」
宣言通り、大人の巧みな戯弄に、羞恥心など剥ぎ取られる。
すごい、さっきより、ずっと、ポイント突いてて。
隠そうとするほど、性感帯を暴かれてしまう。
「なん・・っ、ゃあっ、・・どしてッ、こんな・・っ、あっ、あんっ」
じっとりと室井に見下ろされ、青島の躰はシーツの上で更に猥らに跳ねた。
自ら脚を広げ、愛撫を強請って、腰をくねらせる。
巧みに引き出される快楽の波に、身体が勝手に、男を強請りはじめる。
「たまらない」
「ん、も・・っ、はっ、ぁっ、あんっ、・・む・・ぃさん・・っ」
蕩けた躰にはもう達くことしか考えられなくなる。
脚を室井の手で更に大きく開かれ、内股を淫猥に愛撫され、付け根を意味深に這い回る指先にも震える。
卑猥な格好を強いられて、陰部を開かれながら、青島は赤い顔で腰をいやらしく前後し、胸を反り返らせた。
雨で濡れていた筈の肌は、今は汗と唾液で滑り、熟れたように熱っていた。
「・・ぁあ・・っ」
均斉の取れた青島の躰が年上の巧みな愛撫で開かれ、その嬌態に室井が一言、青島の耳に囁いた。
情欲に濡れて雄の色香を滲ませるその笑みに、青島の躰の奥に一際大きな波が来る。
今夜、青島はこの部屋で室井に犯される。
happy end

未発表作品。
室井青島を密室に二人きりにさせちゃだめというお話。
室井さんを初めて早漏にした珍しい一品です。踊る全盛期でも室井さんの先行きは見たことなかった気がする・・。
やはり青島くんを満足させるためにとことんしつこく奉仕して欲しいのが理想ですが、たまには好きすぎて持たない情けない室井さんで。
20211104