登場人物はふたりだけ。ヤっちゃったモンはヤっちゃったのです。青島くん視点。
B面とストーリーに繋がりはありません。
密室~A面

目が覚めても、まだ辺りは暗くて藍色の大気が朝には遠いことを理解させる。
背後にもうひとつ人の気配を感じて、曖昧な記憶を辿るように青島は浅い息を落とした。
呼吸と共に軋み、痛みを覚える躰に、朧げな記憶は所々鮮明となる。
今夜、初めて室井に抱かれた。
どっちが誘ったとか、決めたとか、そういうことではなかったと思う。でも多分、青島が誘ったことにはなるのだろう。
愛とか好きとかそんな言葉もなくて、ただ、欲しいと囁かれ、その瞬間、骨の髄まで痺れた。
掠れた男の声だった。
この高貴な男に求められたのは、世界中の誰でもない、俺なんだ。
「起きたのか?」
やけにはっきりとした声が聞こえ、一瞬はぐらかそうと思った矢先、室井の腕に囚われ、先制される。
室井の筋肉質の腕が腕に回され、腰に回され、くいっと引き寄せられた。
やだ。なんか女扱いされてるみたいで。
ってか、夕べは散々女のようにヤられちゃったんだけど。
罪を共有した証のように耳朶を後から甘嚙みされ、青島は藻掻いた。
まだ下着も付けさせてもらえない全裸だが、背後の室井も服は何も身に着けていないのが、肌に当たる陰毛から推察される。
「おっ、・・起き、たっ、ハイ、起きましたっ」
室井の名誉のために言えば、それまでの室井は決して青島を押し倒そうとはしなかった。
いつものように仕事上がりに電話が来て、他愛のない話や仕事の進捗や最近の本店の様子なんか、徒然に話してくれて
そんなの勿論室井から言うわけもなく、青島が聞き上手ってだけだ。
でも、そんな夜が何度か続いて、やがて室井の方から少しずつ話してくれるようにもなって、ああそうかと何となく気が付いた。
だから、思わず口に出てしまった。
室井さん、・・会いたいなら来れば。
「そんな顔をするくらいなら、なんで家に上げた?」
「それは」
「私を招いて、こうなることは予想できなかったか・・?」
「けど」
「ずっと前からこちらの気持ちは決まっていた。ただ本気になるほど君を幸せにできるのかという疑問が生まれてきて、その先が怖かった」
室井が肘を付いて上から見下ろしてくる。
横目でチロリと確認だけして、青島は視線を前へと反らした。
二人が時間を重ねて心を重ねていくうちに、もうとっくに、お遊びの関係では説明できなくなっていることくらい、分かっていた。
それを大人の常識とか理性とか立場で制御できる類では既になくなっていたということを、当事者である二人だけが気付いていなかった。
二人きりになる密室が、どれほど危険であったかということも。
心の底に仕舞いこんでおくだけの想いには、もう、しておけないと、アパートの扉を開けた室井の目は隠していなかった。
歪んだ焦燥を暴いたのは、どちらだったのか。
「俺の本音、知ったら、あんたの方がつらい思いするんだと思ったんだ」
「・・・」
「誰かに知られたら、とか、あんたが変な目で見られるのもやだし、とか・・」
今更言い訳にもならないことを徒然と口にする。
一体何の弁解なんだか、青島にだってわかっていない。
「そんなのも、幻想だな・・交じり合えない人間は必ず出てくる」
「あんたこそ、味方いないんだろ」
室井の本店での立場を青島がリアルに感じ取っているとまでは言えない。
それでも、派閥だの出世だの、色んな柵の中でこのひとが戦っていこうとしている意思は、感じ取れる。
多少の皮肉は、むしろ、「だったら何故そんな男に躰を与えたのか?」という問いに帰結する。
聡明な室井がそれに気付かぬわけもなく、流してくれるはずもなく、室井の指先が青島の顎を捉えた。
「夕べも今も、断らなかったくせに」
室井の腕に再び囲われながら、まだ湿っているそこに再び宛がわれたものに、青島は思わず目を丸くした。
今まで眠っていた筈だ。先程までの熱い名残は消え失せ、あんなに同じ高さで熱くなっていたのに、朝露に晒され、お互いの肌は冷えている。
なのに、室井のそこは濡れそぼり、硬く太くなっていた。
何となく逃げを打とうと捩った身体を抱き込まれ、室井の硬く熱いものが、承諾もなく背後から突き刺さってくる。
「はッ・・、・・ぁっ・・」
ゆるりと挿入されたものの息詰まる圧迫感に、青島の指は白くシーツを握り締め、その質量に軽く仰け反った。
その腰を、室井の傲慢な手が押しとどめ、根元まで強淫に受け入れさせられる。
みっちりと埋め込まれたそれはドクドクと脈打っているのが分かるほど、青島の内壁も敏感になっているままで
数時間までの行為の烈しさを伝えた。
両手を前に捕らえられ、室井がうなじに幾つもキスを落としてくる。
舐め回されながらうつ伏せにされると、そのまま室井が圧し掛かり、完全に支配下に置かれた。
「・・っ、・・っ」
熱く太いものを咥えさせられた状態で、室井は律動はせず、うなじや肩に甘い疼きを植え付けていく。
筋肉質の胸板はさらりと冷たく、そのあまりの違いにも青島は慄いた。
同じ温度じゃないことが、もう不自然に感じる感覚が、既に麻痺しちゃってるんだろうか。
青島の背中は無駄な肉付きのないくせに、どこか柔らかさを持ち、すらりと伸びた背中が夜気に奪われ、肌を白く浮かばせる。
綺麗に反り返る、その端正なラインを室井の紅い舌がじっくりと堪能していく。
「こうして男に犯されているのに」
「お互い様、だろ・・夕べは随分と愉しんだでしょ・・あんたも」
「憶えているのか?」
恐らく忘我のままに哀願していたことを指摘され、青島の頬はカッと染まった。
「・・ぼちぼち・・ですけど」
息遣いすら感じさせず、ただ細長い指先で青島の髪を指に愛おし気に絡める室井の成熟した態度に心臓がドクンと鳴る。
首筋を降りた室井の口唇は、柔らかく青島の肌を味わいながら、肩から肩甲骨へと降りて行った。
「ぁ・・・、ぁあ・・、は・・ぁ・・」
妙に敏感な躰は、室井に吸われるたび、全身に刺激を走らせた。
心地好いというより、痺れを伴う。
柔らかい接触を繰り返すだけのそれは、熱だけを肌に残し、消えていく。室井の指先が辿った後が、電気みたいに痺れていく。
組み伏せられ、迷いなく昂ぶらされていく身体にこっちの思考が追い付かない。
なのに埋め込んだ肉は動かない。
触れ合う互いの熱に、青島は眩暈のような錯覚さえ覚えた。
ああ、ほんとうに、室井さんが、ここにいる。
「・・ァ・・・ッ、ろぃ、さ・・・っ」
急速に湧き上がる濃密な官能の予感は、今更ながらに期待と恐怖を青島に呼び起こす。
それを見越した強淫だったのだろう。まるで忘れたい罪を思い出させる行為に近い。
ふと見交わす甘い視線の奥に切迫した空気を感じ取り、より確かなものを欲しがっていたのはきっと気のせいではない。
その方法がお互い分からなかっただけだ。
「・・ぁ・・、はぁ・・・」
ねっとりと、身体の内から熱を引き出す室井の技巧に、青島がシーツを掴んで、枕に顔を突っ伏した。
じわじわと、追い詰められていくみたいだ。
何で無防備に室井にこんな淫猥なことをさせているんだろう俺は。やめろと言わない青島の指先が、走る熱を逃がすためにシーツを手繰る。
男に、こんな風に愛されるのは、そう簡単に受け入れられる光景じゃない。
でも、腰がビクビク震えている。
「おまえこそ、なんで、誘った・・?」
「えと・・・、き、きまぐれ?」
ふ、と背後で室井が低く哂った気がした。
途端、室井がぬるりと腰を突き上げる。
「・・アァッ!」
不意打ちの攻撃に、まるで女みたいな声を上げて青島が室井に尻を突き出す。
「気まぐれで人を落とすな」
「お、・・おち、・・落ちたの・・?」
「ああ・・・見事に」
室井の手がするりと腕に滑り込み、軽く引かれて仰け反らされると、もう衝撃を受け止めることしかできない。
室井が肌を打ち付けるように腰を挿れ始めた。
深くまで突き刺さり、ずるりと抜け、またぐちゅっと埋め込まれる。その度に、青島が喘ぐ。
「・・・おまえは?」
何を問われているかくらいは、わかった。
でもパンパンと穏やかなリズムで肌を打つ卑猥な音、アソコから聞こえる粘性の水音、荒げた男の息遣い。何よりたった一晩で巧みに快楽だけを与えてくる室井
の動きに
青島の目から幾筋も雫が落ちていく。
「どうせ君のことだ。大凡の見当はついている」
「・・?」
「身を引くという行動は、君が思うほど、そんな綺麗ごとじゃない」
答えない青島に、勝手に沈黙を否定と解釈した室井が、青島を串刺しにしたまま、やけに落ち着いた声で語り掛けてくる。
止まない律動で、それを堪えるのに必死な青島は、ただ、あっあっと言い続けた。
男に胸を嬲られ、股間を弄られ、喘ぐ屈辱的な態勢に、顔も頭も熱くなっていく。
「一晩だけの、つもりだったか?」
「・・あ・っ、ぁあ・・」
身体中弄ってくる手が、巧みに痺れを齎し、青島の膝が崩れそうになるのを、室井が赦さない。
弛緩する身体を反らされ、はしたない場所を弄られ、肉の交わりが高める原罪のやり方に
矜持も理屈も忘れて堕とされていく。
腫れあがり、蜜を飛ばしていた芯を握られ、そのまま腰を大きく回された青島は室井の腕の中で身震いするほど感じた。
顎を反らして、成すが儘に揺さぶられていく。
巧みな愛撫に、嫉妬すら忘れて身を委ね、だが、達しそうになった直前、根元をぎゅっと握られてしまった。
「それを、私が赦すと思ったか?」
「アッ、アッ、・・むろっ、さん・・っ」
「初めてのわりには、上出来だ」
夕べのセックスから、室井の主導権は変わらなかった。
まるで子供みたいに与えられ引き出される愉悦に喚くだけで、逃がしてもらえないことくらいは分かっていたけど
あんなに好き勝手めちゃめちゃにされるなんて、強がりも奪われる。
「いずれ、後だけで達けるようにしてやる」
「・・・は・・っ、・・ふ・・っ・・ああっ」
意思の強さを表わすように力強い漆黒の瞳に晒された躰が、背中から熱い。
その瞬間、最奥を抉られた。
きゅうっと痙攣する甘い疼きにグンと仰け反り、息が止まる。
「ぁっ・・、あんたこそ、誘われたら、誰でも抱くの・・ッ」
余りの強烈な淫戯に煽られ、不用意な一言を叫ばされたことを、青島は内心で舌打ちした。
これじゃまるで、嫉妬してるみたいだ。
そのまま力の抜けた青島の躰に、室井も併せて体重を乗せる。
振り向かされれば、そこにはシャープな輝きを放つエレガントな瞳が、一寸の熱も狂いもなく冷徹に見つめていた。
瞬間、悟る。
熱くされているのは、俺ばかりだ。
股間を勃起させ、男を喘がせても、全部男の生理現象というだけで、室井はちっとも昂奮していない。
取引も、駆け引きも、性衝動も掛け値に出来る、エリートキャリアの逸材で
これは、彼にとっては手段の一つだ。
捜査会議で操るのと一緒だ。
「ァッ、ァ・・ッ」
顎を捉えてくる指先は思いの外、力強い。
不意を突かれた隙を、室井は見逃さなかった。
乱れたシーツの上で絡まる二つの裸体に、掛かっていたタオルケットがベッド下に落ちていく。
最奥を抉られ、室井の顔を見ながら青島は何度も喘いだ。
深く押し入ってくる灼けそうな熱の塊に、全身が蕩けていく。
口を大きく開け、淫らに男を誘う紅い舌を覗かせる。
「なんか、どうにも止まらないな・・・」
強烈な愉悦に視界が滲んでいた。
ぬるぬると下腹部で動いていたものが、ずるりと引き抜かれる。
仰向けにされ、両足を割り裂かれると、室井の手が青島の片足を肘にかけ、大きく開かされる。
その痴態に羞恥を覚える間もなく、そのまま胸に付きそうなくらいに折り曲げられた。
恥ずかしい部分が室井の眼前に惜しげもなく晒され、娼婦のように男に媚びさせられて組み敷かれる。
強烈な瞳で見下ろされ、黙ったまま室井は再び侵入してきた。
室井が足を抱えたことで裂くほど開かれた股が、豊かな太腿を露わにする。
「キスをしてくれ。そうしたら許してやってもいい。今は」
「今は」
「色々と腹立だしい」
熱を持ち、ジンジンと疼く下肢から際限なく湧き上がるものが、既に夕べ泣き喚く程教えられた身体が憶えていて
壮絶に快楽だけを拾いだす躰に、憎しみすら覚えた。
こうして、言われるがまま脚を開く。
まるで条件反射のように青島の瞼が伏せられ、室井の薄い口唇に柔らかく押し当てる。
「不満、ですか・・?」
「・・・」
「・・ホンキ、ですか・・?」
青島からのキスを黙って見下ろしていた室井は、黒々とした目に強い焔を灯らせ、押し黙った。
不意に青島の肌に鳥肌が立つ。
室井が青島の手を取り、握る。
「・・・や、やっぱ、言わなくていいです」
何となく危険な香りを察知して、青島が遮るが、室井は口端を持ち上げて性質の悪い微笑を浮かべた。
なんとなく目許を覆おうとした手を拘束される。
「はっきり言おう。そうだ、望んでいたのは、俺の方だ」
ああ、と溜息にも似た息で、青島が天上を向き、目を閉じる。
室井の中の、何らかの扉を開けてしまったのは、やっぱり俺なんだ。
ずきんと痛む心臓も、張り裂けそうだ。
「・・・、こんなとこでそんなこと言うなんて卑怯ですよ」
そうか?と片眉を上げて見せた室井に、青島が濡れた瞼を持ち上げる。
伏せられた目線。目尻が朱を叩き、薄っすらと膜を張る瞳が闇を受けて蒼に深まる。
「はじめてじゃん・・・」
きっと欲しがっていることも、恐がっていることも、感じ取られている。
どんどん好きになる。手放せなくなっていく。こっちは。
この想いに底なんてない。囚われたそこから新たな深みに堕ちるのだ。
それさえも、もう自分の招いた結果だ。
「まるで、恋のコクハクだ」
「さっき、そう言わなかったか?」
室井が浅い入り口部分をくちゅくちゅと音を立てて嬲り、長い指先は白く映え、青島の頤を持ち上げる。
本気なのだということを分からせるためだろう、視線だけは外させてくれない。
知ってた気がするその瞳の意味も、昨夜自宅に誘った時に微かに予感した期待も、それでもこうなることまで覚悟していたかは
きっと室井だって分かってない筈だろうに。
でも、室井にしてみたら、青島に先に仕掛けられ、タガを外された。
汗一つ掻いていないザラついた男の肌が、屈強に圧し掛かる。
「きっと、俺たちは止まれない」
俺たち、と室井は言った。
それだけ言い含めると、目を瞠る青島の瞳をまっすぐに射抜きながら、室井はゆっくりと青島を再び串刺していった。
圧し掛かってくる屈強な質感が昨夜の記憶を苛む。
顎を反らす青島の肩を抑え、逃げを打つ身体を縫い留め、太く滾る雄を押し入れてくる。
「・・はぅ・・っ、・・ァア・・、ぅあぁ・・っ」
まだ男を受け入れることには然程慣れていない癖に、抵抗らしいものはせず、室井の思うままに肉を受け入れる。
凌辱されていく。
いっそ笑いが込み上げそうだった。
こんなにも捧げてしまいたいのか自分は。
「後悔、して、んの・・?」
「感謝の間違いだろ」
青島の瞳は驚きを乗せてはいたが、底のない深い森の泉のような静謐さの色を湛えた。
艶めいた髪の奥から室井をじっと見つめる美しい珠玉の宇宙に、やはり謹厳とした室井が映り込む。
そうだ。きっと、朝になって後悔するのは、俺の方だ。
「・・・」
「・・っ」
何だかすごく堪らなくなって、青島は自分からキスをした。
直ぐに両手で頭を掴むように抱かれ、室井もキスを深めてくる。
性急な舌が咥内いっぱいに押し入ってきて、しつこく貪られ舌の厚みも温度も味も覚えるくらい、猥らに掻き混ぜ合った。
隙間なく塞がれ、青島の顎が少し反る。
腔内の隅々まで、舌先で嬲られる。
「青島・・」
噛り付くように獰猛に口唇を塞がれ、室井が青島の頭の横に肘を付き、青島の頭を固定する。
ねっとりと舌を絡ませ、情熱的なそれに応える余裕も奪われ、酸素も失い、ただ緩急をつけて吸われる巧みな動きに眩暈が起きてくる。
何が何だかわからなくて、悪い酒に酔ったみたいで。でも、朦朧としてくる意識の底でこの距離じゃなきゃ感じない室井の熱だけが妙にリアルで
その匂いに噎せ返る。
「んん・・っ、んぁ、・・ん・・っ」
喰われてしまいそうな口付けをしたまま、室井が余裕も与えず、腰を振り出した。
昨夜散々擦られて腫れあがっているそこを、気持ちよさそうに突いてくる。
「ンッ、ん、くぅ・・ッ、んん・・ッ」
すごくデカイッ、深いっ。
熱くて硬いので押し広げられて、動けないのに強引にきもちいとこ擦られて、息もさせてもらえなくて
気持ちいいのか電気が走ったみたいな痺れが色んな所から溢れてくる。
「どして、おれ・・っ、こんな・・・っ」
感じるんだろう。
翻弄されるばかりで只必死に、自分を翻弄する男の背中に縋りつく。
「可愛いな。・・青島」
「んっ、ああ・・・、く・・っ、ふ・・っ」
「俺を恨むか?」
汗ばんだ青島の額を掻き揚げ、室井は恭しく口付けた。
触れる直前に見た、今まで見たことの無い男の顔が青島の胸を焦がしていた。
繊細な指先と、子供染みた発言とは裏腹に、室井の口唇は大胆に青島の肌のあちこちを弄っていく。
ねっとりと、淫らな水音を立てるそこは、悦ぶように咥え込み、躰の力が奪われていった。
夕べよりも深い快楽だけを選んで引き出していく繊細な指先は、自分には無い経験に裏付けされた男のもので
これまでの彼のベッドシーンを想像させる。
これまでどんな女をどんなふうに喚かせてきたのか。
こんな室井の目を見た女は、どのくらいいるのか。
「恨んでいい、だから、忘れるな」
雄の本能の動きへと変わった室井の楔に、最早酸素さえうまく取り込めず、ただ室井の思うようにもう止め処なく嬌声が口から溢れ出た。
「ああ・・・っ!あああっ・・・・!」
この男との始まりは、誰にも内緒で交わした約束の日まで遡る。
出会って、ぶつかり合って、意思を通わせ、躰まで奪われた。
その一歩、たった一匙逸脱した決断が、徐々に加速を付け、気付けば大幅に脱線している。
こんな結末しか、本当になかった?この結末を、望んでたのは誰だ?
「やあぁっ・・・っ!!そこッ、あっ、だめぇ・・・っ」
室井が青島をきつく抱きしめなおし、激しく腰をうねらせながら、これ以上ないくらいの勢いで最奥をえぐってくる。
全てがもどかしい。
室井の後頭部を引き寄せ、青島から口唇を押し当てる。
肌を嬲るだけの愛撫では、もう足りない。
優しいだけの愛情では、もう足りない。
硬い男の躯体を掻き寄せ、その首筋に顔を埋めた。
本当の室井を知りたい。
だから今は、もっと何も分からなくなるくらい崩れるほどの愉悦が欲しい。
こんな甘蜜を味わうような満たされ方をしたら、蕩けて形を失いそうになる。
やっぱり、嫉妬してるかも。
「むろ、さん・・っ、おれ・・っ」
繰り返し体内を灼く室井の欲望に、身体は痺れて濡れて、熟れた肌をざわめかせた。
せめてのお返しと締め付ければ、それを待っていたかのように、抉るように掻き回され、青島が小刻みに痙攣する。
ベッドを軋ませがら、一層烈しく打ち付けられ、うねるような栗色の髪は汗で湿り、その奥から甘い色を湛えた透明の瞳が光る。
「――・・・」
唾液も飲み込めなくなった口で、何か言おうと思ったけど、言葉にはならなかった。
舌先で口唇の輪郭を辿られ、割るように侵入した口付けに甘く蕩けていく。
「おまえをどこにも行かせたくないだけだ――」
境目が無くなる程に溶けあって、こんなに瞭然たる刻印を焼き付けられて、この先をどうすればよいのだろう。
強い瞳が見下ろしていた。
逆境に立ち向かう強さを備えていて、大きな悲しみを乗り越える色だ。
暖色のなかに垣間見る芯の強さが溢れている。
だが、この男はこの夜、本当に素面だったんだろうか。
本当に俺に誘われたんだろうか。
薄れゆく意識の中で、青島はぼんやりと思った。
happy end

未発表作品。室井青島を密室に二人きりにさせちゃだめというお話。
室井さんは青島くんの推察どおり、そんな筈ないって気持ち否定してたのに、先に仕掛けられて、誘惑に負けてえっちしちゃったことに、男のプライドがずたず
たになったんです。
20211027