登場人物はふたりだけ。媚薬ネタ。室井さん視点。
A面とストーリーに繋がりはありません。






悪戯~B面
line
「えーっと、ここってえっちホテルですよね?」
「そして違法ドラッグの密売所だ」
「どこ情報?」
「ニュースソースをバラすと思うのか馬鹿者」
「部屋は?」

室井にしては粗雑にルームキーを放り投げると、黒コートを肩から滑らせた。

「右隣だ」

なるほどと呟くも、まだ不可解なことはいっぱいあるのだろう。
青島はヘンな顔をして棒立ちのままだ。
もふもふのミリタリーコートから少しだけ見える丸っこい指先をきゅっと握り、そわそわと部屋の中を見回す。

「なんで俺とあんたで張り込むの」
「好きだろう?」

室井は白い手袋を嵌めつつ、荘厳な瞳を向けた。
切れ長の豪胆な視線に、青島の目も勝ち気に光る。

一倉からの要請で、いつかの借りを返せと室井が駆り出された。
そんな借りは、どの借りだと突っ込んだところで、一倉には煙に巻かれるのがオチである。
一人で現場に踏み込む手筈だったが、警察官はツーマンセルが基本だ。
湾岸エリアのホテル街は青島の方が地理も詳しいだろうと、同行させた。

「出てきたところに職質を掛けろ。後面部屋で薬対の連中も控えている。気を抜くな」
「薬対?そういえば室井さん、同期がいませんでした?」
「だからなんだ」
「つまり押し付けられたんですね」

ジロリと背後の青島の睨めば、青島はペロッと舌を出し、悪びれずに肩を竦める。

「で?何の薬?大麻?脱法ハーブ?」
「・・・」
「室井さん?」

急に口籠った室井に、訝し気に青島が背後から覗き込む。
室井は眉間の皺を三倍に増やし、目だけギロリとさせた。

「あ、ヤバイやつ?」
「・・・・・・・・・・・セックス・ドラッグとのことだ」

室井の指が間髪入れずに自分の肩越しで固まる青島の顎を捉える。

「興味は持つなよ、いいな?」
「ももももちませんよ・・っ、何考えてんですかっ」

どうだか。
これまでの経験上、あまり説得力がないことは、青島の中では計算に入らないらしい。
コートを棚の隅に置き、室井は白手袋を装着した手で無線の確認をする。

『私だ。現場到着』
『了解。15分ほど前に背格好の合致する男女一組が入室、以後変化なし』
『了解』

神妙な顔で聞き取っていた青島も、目線で頷いた。
が、いつの間にかベッドに腰掛けている青島は、自らも白手袋をぎこちなさそうに嵌めていく。
ラブホテルのベッドは当然広く、ムーディな照明が彼の肌を色付かせ、行為以外することのなさを物語るインテリアが、室井の目線を釘付けさせた。
無防備に開けられたいつものネクタイがやけに婀娜っぽく反射する。

「確保の体制は?あっち?ですか?」
「――ああ。譲ってやれ」
「いつ頃動き出しますかねぇ。一発ヤってんの待つんですか?」
「ここは取引のみに使われていると見られている。恐らくそれはないと思うが、場合によっては」
「長いやつだったらどうするんですか?」
「長い?何がだ?」

背景がラブホテルということ以外、真剣な顔の青島と的を得た質問に、つい天然な返答をした室井に
青島は、色香を仄めかす瞳でにやりと笑った。
空かさず、意味を悟る。

「待機だ」

視線を外し、眉間を三割増しに顰めて、室井が薄い口唇を尖らせる。
ベッドの後ろに両手を付きながら、青島が瞼を伏せて笑った。
忌々しくも無言で、室井は前を見据える。
前と言っても、カーテンしかない窓だ。

「ガマン強い男っていますよねぇ?」

誰を揶揄しているのか、何を指しているのか。
青島が世間話のように話題を口遊む。

「どんなに長くともこの時間なら“ご休憩”だ」
「室井さん、こおゆうとこ、使ったことあるんですか?」
「・・・君は?」
「あるに決まってんでしょ。うちのアパート、ボロイもん。ってか質問に質問で返すの、ずるいですよ」
「誘導尋問が下手なんだ」

ちぇ~っと膝に頬杖を突く青島が、無造作に長い脚を折り曲げ、ぷいと横を向く。
さり気ない仕草なのに、肉体の芳しさを感じさせる男に、室井は軽く目を走らせた。
スラリとしたハンサムな男はこんな部屋でも清潔そうだ。
不可思議な気持ちを探るように、室井はベッドのスプリングで遊ぶ青島をぼうっと見つめる。

「!」

直後、室井の漆黒の目が険しいものに変わる。全身に緊張を走らせた室井に、青島も機敏に反応して立ち上がった。
白手袋をした人差し指をピンと伸ばし、室井が青島の口許に宛がう。
事情を察した青島の耳にも、やがて隣の気配が聞こえてくる。
そして扉が開けられる音。
同時に部屋を飛び出すと、廊下には男女カップルを装う人物と、その背後に警察官らしきダークスーツ姿の男が二人、控えていた。

「警察だ。少し身体検査にご協力を願いたい」

手帳を眼前に翳し、室井が発すると同時に、背後の警察官二人が男女の身柄を確保する。
腕を捻り上げ、パンパンと身体を叩いて軽く身体検査を行えば、内ポケットから札束、尻ポケットから錠剤が出てきた。

「室井警視!」
「彼の取り調べから始めろ。我々は引き続き部屋の捜索をする。クスリが本物かどうかも鑑識に送れ」
「ハッ!」

敬礼をした刑事二人に両脇を抱えられ、一同が去ろうとした時、女が笑った。

「無駄よ。彼、ただの運び屋だもん」

だからさしたる抵抗もなかったのか。

「つまり、首謀者は他にいると?」
「さあね?」
「君はその人物を知っているのか」
「知らないわ」
「だったら何故、彼が売人ではないと分かる」
「あなたこそ知らないの?その部屋が買い取られているコト。そこ、取引場所よ。中にはクスリがいっぱいなの」

室井はじっと黒目がちの瞳で女を見据える。
言葉を発せず、連れていけと顎をしゃくった。

辺りに静けさが戻った頃、ようやく背後で壁にもたれて控えていた青島が口を開く。

「信じたんですか?今の」
「調べてみればわかることだ」

確かにね、と頷いて、青島が白手袋を口に咥えた。


*****


再び最初の部屋に戻った二人は、捜査した戦利品をテーブルに並べ、青島のバッグにあった使い捨てカメラで写真を撮っていく。
女の証言通り、室内の至る所からは錠剤が幾つも出てきた。盗聴器もあった。
それでも俄かには信じがたい。

「これ、ホンモノですかねぇ?」
「恐らく全部偽薬だ。予めこうなることを予想して仕込んでいたんだろう」
「どうしてわかんの?」

指先で錠剤の一つを押し潰し、その粉を室井が舐める。

「・・、市販のお菓子だな」
「まじで?」

青島も真似してぺろっと舐める。

「あ!これ、知ってる!どこのだっけ、ん~・・、結構有名な菓子メーカー、だ」
「形が少し小さい。それと、本物はもう少し甘ったるい味がする」
「え、ええっ!室井さん、本物の味、知ってるんですか!」

室井の発言に青島がびっくりした様子で顔を上げる。舐めていた指が空中で止まっている。

「・・・俺、知らない」

そこに無線が入る。

『室井です』
『どうだった』
『粗方終わった。偽薬らしきものが幾つか出てきている。鑑識を呼んでくれ』
『つまり、その部屋が密売所というのは嘘ってことか?』
『お前、その程度の不確かな情報で俺たちを寄越したのか』
『俺たち?』
『・・・青島がいる』
『ほおおおおお』
『なんだ』
『いや?で、こっちも少し吐いた。クスリは本物だった。その部屋で今晩も取引が行われると言っている。お前、そのままそこに待機してろ』
『そのまま?』
『ああ、現れるまでだ』
『おい・・ッ』
『だからってヤることヤんなよ』

一方的に言って通話は切れた。
室井は舌打ちをして、こンの怠けもんがぁと罵る。もちろん秋田弁なので青島には良く解からない。

「えっと・・少し聞こえちゃった。朝までここにいるんですか?」
「そうなるな」


****


ベッドの右脇と左脇に腰を下ろし、ひたすら待つ時間が始まった。暇である。
会話も続かない。

「ねぇ・・、さっきの話ですけど」
「なんだ」

背中越しに聞く青島に、背中越しに室井が答える。

「セックス・ドラッグって、要は媚薬ですよねぇ」
「それが?」
「どんな味なんですか」
「大した味じゃない」
「甘いとか、ピリピリするとか・・」
「知りたいのか」
「しししりたいっていうか・・っ、け、刑事として知っておくべきじゃないかと思っただけで!それに・・!」

少し青島が口籠る。
横目で先を室井が促す。

「室井さんが知ってて、俺が知らないってのが、なぁんか悔しいってゆーか・・」
「なんだその理屈は」

雑談に手前良く付き合う室井の口調に、青島が勇んでベッドの上で振り返る。
遅れて、室井がポケットから小瓶を取り出し、青島の目の前に翳した。

「こっちが本物だ」
「液体?」
「錠剤よりも即効性がある」
「なるほど。ソースがいるんでしたっけね」
「大がかりな組織が背後にあると、もっと精巧に作られてくる。その場で判断しなければならない時も出てくる」

へぇ~と模範的な顔つきで青島が頷いている。
訪れる、奇妙な沈黙。
少し、室井は嫌な予感がした。

「ねぇ・・・」
「だめだ」
「どうして!まだ何も言ってないじゃないですか!」
「・・・じゃあ、言ってみろ。言うだけだ」
「い、今室井さんが持ってるやつ、ほんのちょっと、舐めさせてくださいよ」

ほら来た。

「違法ドラッグだぞ」
「でも知りたいし」
「試したいわけじゃないだろう、だったら無駄だ」
「無駄じゃないですもん!あと、別に試したいって言ってるわけじゃ」
「とにかく駄目だ」
「ええ~・・・」

まるで子供がおやつを貰えなくて駄々を捏ねるような言い草に、室井は横目でジロリと睨んだ。
だが、室井のそんな顔にも、青島は今更怖じ気づかない。
室井は朴訥で口数も少ない。親和的な雰囲気が全くないため、あっさりした顔をしていることもあって距離を取る者も少なくない。
出会ってから妙な縁で関わり続け、友人とも同僚とも言えない、奇妙な距離感が、こういう時は仇となる。

「君はこれをどういう時に使うものなのか分かっているのか」
「え、それって、そんなちょっとでキモチ良くなっちゃうの」
「人によっては」

ごくり、と青島が喉を鳴らしたのが分かる。
ジッと視線を交わした。
次の瞬間、室井が青島の腕を引き、バランスを崩したところで馬乗りとなった。

「・・ァ・ッ、・・しま・・ッ」

ベッドのスプリングが軋み、二人の身体がバウンドする。
室井は素早く青島の両脇に手を付いた。

「す・・・げぇぇ・・・」
「感心している場合か」

身の危険も忘れた青島が室井の早業に目を丸くする。
思わず室井は苦笑した。

「こんなに隙だらけでどうする。自白剤でも飲まされたら君はイチコロだな」
「キャリアと一緒にしないでくださいよ」
「媚薬は、もっと大人になってからだ」

小さく笑んだその大人びた口許に、青島が幼い目で室井を見上げ、室井こそ、その視線に吸い込まれそうになる。
何となくじっと見つめ合った。
しんと静まり返ったこの部屋が、やけに心の襞を駆り立てる。

先程、帰れと言わなかった室井も、帰りますと言わなかった青島も、どっちもどっちだ。

何処か不自然な間が、お互いが言葉にしないでいるためにぎこちなさを増幅させる。
外せない視線、ジリジリと導火線のように焦げていく秒針。
だが勘弁してやるかと室井が力を抜いた。
瞬間、引き剥がしてくると思ったその両足が、予想外の動きで室井の腰元にかかり、室井は軽く堰き止められる。

「青島」
「室井さんこそ、此処がどこだか忘れたわけじゃないでしょう?」

こんな状態でも負けん気な視線はむしろ歓迎したい。
したいが、自分はそれほど理性的な男ではない。青島が思うほど。

「論点をすり替えるな。倫理の話をしているんだ」
「だからケーケンってことでしょ?」

微かに青島の声も掠れている気がする。

「シてみる・・・?俺と」
「――何、」

覗き込んでくる潤んだ瞳。
ひたむきな眦と黒々と濡れた睫毛。
焦点が合わぬ距離で融合する視線。

馬鹿な答えを返したと室井は自分を詰った。


*****


ベッドに横たわったままの青島の上に室井が跨り、小瓶の蓋を口で開けた。
ガラスが擦れ合う音が、これから始まることへの予感を示し、人の心を弄ぶ。
室井が指先にごく微量、少し濁った液体を掬い取った。

「少しでいいんだ」
「それだけなの・・?」

そう言いながら、青島が薄っすらと紅い口唇を開く。
蜂蜜のように少し粘性のあるそれを、室井は下唇に擦り付けるように与えると、青島は室井の指ごと、ちゅぷっと口に含んだ。
青島の熱い舌が室井の指先を含み吸い上げる。

「怖くないのか」
「興味の方がある」
「一番最初に興味を持つなと言った筈だが・・・」

そうでしたねと小さく目で詫びる青島にジト目を与え、室井は小瓶を内ポケットに仕舞った。
そのままジャケットを脱ぎ、ベスト姿になる。
スーツはサイドテーブルに投げた。

「15分もすれば効いてくる」
「使ったんですか?」
「知りたいのか?」
「だから・・・質問に質問で返すのはずるいですよ」

お互いの体温が嗅ぎ取れる態勢でいるせいで、青島の煙草と海の匂いが室井の瞼を伏せさせる。

「何が知りたい」
「ん~・・・誰と使ったのかなぁとか」
「そんなことが知りたいのか」

へへと笑って青島が髪を掻きあげる。
すらりとした腕と、整った顎のライン。やけに男臭い仕草は、先程感じた時よりも嫌味なほどこの部屋に融合し、見知らぬ青島を引き出してくる。

「静かだ」
「ラブホテルが防音に乏しかったら苦情がくる」

それは、まるで少年のようなあどけない笑みだった。気を許されている腐れ縁は、何かの褒美に近い。
気怠そうに、青島がネクタイを指先で軽く解く。

「少し暑い。・・気がする」
「――、効果も30分くらいだ。気に病むことでもない」
「・・・シないの?」

室井は黙って青島を見下ろした。
危うい視線は脆く、室井を信じきっている瞳は、だが逆に男を苛立たせる。

ただ見つめ合った。
次の瞬間、室井は青島に口付けた。


****


「・・・・・ん・・・ハッ・・・・・むろ・・さ、・・・せめて、電気・・・ッ」
「だめだ。そんなに簡単に従う気はない・・・」

室井はシーツに埋もれる青島の両手に指を絡ませた。
キスに没頭しているのはどちらなのか、室井が執拗な動きで青島の口を封じる。

「ン・・ッ、は、・・ッ、ふ・・・」

シャツ一枚の身体を室井の手が弄り続ける。
ゆっくりと、じわりと、全身に回る毒を誘うように、室井の指先が艶めかしく這い回り、その感覚を引き出してやる。
やけに熱い躰は、行為のせいなのか、クスリのせいなのか。
首筋を舐め上げながら、室井は青島の外れかけたネクタイを乱暴に抜いた。

「手、放してください・・・」
「それも、駄目だ」

焦点が合わないほど口唇が触れそうな距離で、室井の掠れた恨みごとが青島の口唇にかかる。
両手を頭上に纏めて縫い付けた。

「・・・なんか、怒ってる?」
「怒ってはいない」
「でも、」

悪足掻きをする口唇を室井は上から塞ぎ、その口腔へと押し入った。
ねっとりとした肉の柔らかさは火傷しそうに熱く、唾液は溶けそうなほど甘い。
青島とて、室井の侵入を完全に許したわけでは決してないだろう。
だが青島はその透明に瞳を閉じ、己の口を吸う室井の技巧に翻弄されていく。
貪るように舌を絡め取り、吸い上げ、味わい、時折水音を立てて耳から辱めると、青島が切なげに眉を顰めてキスの角度を変えた。
離れない口唇は、まるで情熱的なそれのように交じり合う。

「・・ァ・・ッ」

シャツの上から青島を撫ぜ回していた室井の指先が胸元を弾いた時、キスに夢中になっていた青島が小さく呻いた。
室井が視線だけで盗み見れば、唾液が滴るその顔は朱に染まり、激しいキスのせいで息は荒く、室井のせいで捲り上がったシャツの裾から、わき腹がビクンと跳 ねる。

「ぁ・・、や、その、なんか・・・」
「効いてきたか・・。中には暴れる人間もいる」
「そ、なの・・」

片手で抑え込んでいた手を、握り合うように両指を絡め、もう一度頭上に押し付けると
室井はキスを再開した。
室井の高潔な舌先が青島の顎を辿り、首筋を舐め、そのままシャツの襟元に潜り込んでいく。
つつ、と忍びいる巧みな舌戯に、青島が硬く目を閉じてその淫戯を受け止める。

歯で殊更ゆっくりとボタン外し、焦らすように開いていけば、青島の艶やかな肌がホテルの下品な照明に反射した。
いつもは着ているインナーが今日はなく、シャツをはだけた青島は、まるでこうなることを期待していたかのように室井を誘惑した。
汗ばむ瑞々しい肌が、香しい。

「むろい・・・さ・・・ん・・・」

首筋に顔を埋めて肌を吸い上げ、舌先で舐め上げながら、室井が鎖骨、肩へと口付けを落としていく。
その度に青島の身体が室井の下で、身を捩り、足でシーツを乱し、ビクビクと痙攣する。
舌先は丹念に胸の突起を弾き、潰し、捏ね、その硬さを愉しんだ。
手は解放しない。

「ん・・っ、く・・ぅ、、や・・っ、あ、んふっ」
「厭?こちらには凄く感じているように見える」
「ふっ、・・っん、んっ」
「感じているんだろう?」
「くすぐったい、だけだ・・っ」

否定しつつも、室井が舌で胸を弾く度、青島は目を潤ませた。
加速的に変化し乱れていく青島を、室井はじっくりと観察する。
青島の両手を抑え付けているため、室井も両手が不自由なまま、膝頭で青島の股間を軽く擦り上げた。

「ふ・・っ、・・ぁ、アッ、あっ、室井さ・・・ッ」

続けてかぷりと耳を食まれ、舌を入れられ、ぴちゃりとした音に青島の背中が震え、身悶える。
思った以上に甘ったるい吐息が青島の口から溢れ出てきた。
ホテルのオレンジがかったの照明は、火照りだす肌を艶かしい野性味に色付かせているように、室井を淫らに錯覚させた。

「ん、ちょ・・・、待っ・・・、なんか・・」
「散々忠告はした」

擦り上げる緩やかな膝は緩めない。
室井の身体も青島の上で妖艶にうねる。

「アッ、ん、ぁつ・・い・・、ん、だめ・・」
「君が誘ったんだ・・」
「知らな・・っ、・・わかんな・・ぃ・・っ」
「こんなだぞ」

膝頭で揉むように股間を刺激すれば、青島は泣きそうな顔で室井を見上げた。
青島の肉棒はスラックスをはっきりと押し上げ腫れあがり、異常なほどの反応を見せ、反り返ってその身に起きていることを室井に教えてくる。

「怖くなったか」

青島が小さく息を途切れさせる。

「あんたが、相手ですもん・・っ、こわくは、ないです」

少し驚いて室井が行為を止める。
ニヤッと笑って見せた青島の頬は少し汗ばんでいた。

「でも、なんか、チョット身体・・・熱くて・・・」

はあっと熱を孕む息を落とし、青島が呼吸を乱す。
首を向こう側に倒したせいで晒されるうなじも、室井に乱された鎖骨も、片方立てた長い脚も、どこもかしこもほんのりと火照り
室井を甘い香りに誘ってくる。
ごくりと室井の喉が鳴った。

「そんな色っぽい姿を見せられたら、こっちも持たないな」
「え・・・?」

いうより早く、室井がスラックスの上から青島の太腿を撫で上げた。
途端、青島が顎を反らして背を浮かせる。
長い脚を片方立て、クンっと持ち上がった腰、漏れる吐息は、どれも極上の素材であることを見る者に知らしめた。

片手で青島のバックルを外し、スラックスのチャックを下ろす。
まさかそこまでされると思っていなかった青島が、驚いた目で見上げてくるが、それを視線でいなした。

「任せていろ」
「っ」

トランクスごと下着をずらすと、青島の肉棒は既に蜜を溢れさせていた。
煌々とした人工の灯の下で天井を向き、黒々とした陰毛を灯りの下でまじまじと目にし、室井の指先がそこをさわさわと弄る。
膝まで下ろされた服が拘束となり、青島の引き締まった内腹が、うねる。

「ぁ・・・あ・・・あ・・・」

青島が頑是なく首を振り、身に起こる変化に涙目となって室井を見上げる。
その表情に、室井の何かは切れた。

「み、ないで・・くださ・・っ」

室井は青島のシャツを思い切り引き裂いた。
飛び散ったボタンがキラキラとマットに舞う。
歯を食いしばり、荒い息遣いを漏らす青島の両手を更に上に捩じり上げ、ネクタイを巻いてベッドサイドに括りつけると
露わとなった細くすらりとした半裸の肉体に、室井はうっとりと指先を這わせた。

「私に、こうされたかったんだろう・・?」

敢えて耳元に吹き込めば、青島の目尻はほんのりと羞恥に染め上がった。
その色付く様が、美しい。

「覚悟はできているな?」
「・・・っ、は、・・えー・・、っと、・・覚悟?」

薄っすらと笑みだけで応えた室井に、青島はただ持て余す身体の変化に啜り啼く。
自由になった室井の指先が青島の括れのあるボディラインを肩から、胸、脇腹、腰へと撫でおりていく。
少しの刺激で青島は眉を顰め、その表情に奇妙な満足さえ抱く傲慢さに、室井の瞳には鋭い焔が陽炎のように揺れた。
それを敏感に感じ取り揺れる青島の怯えさえ、室井をぞくりと泡立たせるだけで。

「黙って感じていろ」

室井の口唇はさらに下へと降りていき、首すじや鎖骨のくぼみを愛撫して青島を戦慄かせる。
右を円を描くように揉みながら、左を舌でぺろぺろと舐めたら、青島は骨張る喉仏を室井に晒し、ベッドで跳ねた。
背を反らし、だが両手は拘束されているためスラックスが纏わりついた下肢を不自由そうに前後に揺らす。
そこで蜜を垂らし既に陰毛をぐしょぐしょにしている肉棒を室井が掴み、上下に梳いた。

「くぅ・・ッ、・・くぅ・・ッ」
「ここがどこか忘れたわけじゃないだろう?」

先程の台詞を意趣返しし、室井が暗に声を出せと命令した。


*****


熟れた果実のような青島の果実は、微かな煙草の匂いと共に、甘く淫らに室井を誘い込んでいた。
肌の瑞々しさと滑らかな舌触りと手触りに、服をすべて、室井に剥ぎ取られ、シャツだけが腕に包まった青島は
全裸にされてた無防備な肢体をベッドに晒していた。

「やめっ、あん、もう、・・んぁッ」

青島が両手を拘束されたまま、背だけ浮かせてまたビクンと震える。
その目は蕩けるように歪み、荒い息で胸を激しく上下する。

「どうされたい」
「あ・・あ・・・、んぁ・・」

聞こえているが理解できないように、青島が顎を反らす。

「何を、されたい・・?」

卑猥な質問と共に、愉しむように室井が青島の肉棒の敏感な筋を指で辿る。
急速に湧き上がってきた見知らぬ快楽に、戸惑う部分もあるのだろう。青島は全身を室井に委ねていた。
頑是なく振る髪が頬に流れ、汗ばんだ肌を一層熟れさせる。
まるで吸い付くようなうしっとりとした肌触りには、室井は陶然となった。
指先で先端をグリグリと押しつぶすようにしながら、室井は青島の鎖骨を咬んで所有印を刻む。
次の瞬間、青島はそこを強く吸われて身体をのけぞらせた。腕と足とはそのままに背筋が浮き上がる。

「やあ・・っ」

初めて上げた高い声だった。
その声に煽られるように、室井が桜色の内腿の一点に口付け、強く吸うと、青島はひどく甘い感覚に、顔を横に振った。
足は室井によって大きく広げられ、中心は蜜を異常に零していく。
青島の反応に気をよくした室井が、さらにその箇所を攻め立てていく。

「ああ・・ッ、あん・・ぁあ、・・んぅ、い・・っ」

室井が青島を容赦なく攻め立てていく。
陥落までもう間がないことを室井は知っていた。

「私の前で達ってみるか?」
「はぁあ・・っん、そんな・・っ、あ・・っ、ああっ」

室井は限界を訴える青島の雄を口に含む。
青島の頬は紅潮し、口を開け、腰はさらなる刺激を欲して室井に自ら押しつけられた。
願い通り、室井がその雄を咽喉の奥から締めつけた。
途端室井の舌の上で青島の雄はびくびくと跳ね上がる。敏感なくびれに歯を立てれば青島は身もだえした。

「や・・ぁ、ヤだ、イイッ、すご・・っ、どうしよ、室井さん・・っ、ろぃ、さ・・ッ」

四肢を硬直させ、腰だけを突き出した卑猥な格好で青島が達した瞬間、室井はさらに強く雄を吸い上げた。
強烈な解放に導かれ青島はびくびくと身体を震わせながら、途切れ途切れに声をもらし、何度も何度も室井の口に欲望を解き放つ。
ベッドの上で、腰だけが跳ね上がっていた。

「あ・・ぁ・・ああっ」

室井が散らした情痕が、華のように染め上がり、弛緩した青島の肉体の上に仄かな色香を放つ。
その両足を開くと、青島の吐き出したものが室井の口からも下肢からも大量に滴り、染みを作った。

荒い息を落とし、全身で快楽の余韻に耽っている青島の髪を室井は片手で梳き上げる。
ちゅ、と髪にキスを落とすと、青島が瞼を持ち上げた。
青島が伏目がちに睫毛を震わせ、濡れた瞳が電灯を美しく反射した。
言葉を交わすことなく見つめ合い、青島が睫毛を震わせる。
恐々と室井にキスを強請ってくる。
意図を悟り、室井も黙って口唇を重ねてやった。

苛烈な快楽に呆然としているのか、クスリで意識が朦朧としているのか、青島はもう無防備に室井に侵入を赦した。
顎を反らし、舌を差し出し、室井のキスを受け止め、その端正な顔は紅潮している。
まだエクスタシーの最中にいることを教えるが、室井は甘いキスを与えてやった。
ゆっくりと青島の手が持ち上がり、室井の髪を愛し気に掻き回した。

「ッ」

途端、室井が青島を押し倒す。
そのまま、自身のネクタイも引き抜くと、ベストも放り、ワイシャツのボタンもそここに、バックルを外し、室井も上半身を露わにする。
膝で脚を割り裂き、室井を挟む様な形になった青島に、室井は覆い被さった。
肌と肌が触れ合い、反応し合ったペニスと陰毛が重なり合う。
蕩けた視線に苛烈な視線を向けたまま、室井は自分のペニスと青島のペニスを併せて握った。

「まだ、だろう?」

何がなのかを問わなくても、青島はもう忘我のままに小さく頷いた。
既に反応を戻した青島のそこから、新たな蜜が溢れだし、くちゅくちゅと水音が響く。

「室井さん・・が、エロく見える」
「重症だな」

室井はそのまま未開拓の秘花に指を這わせた。

「・・・なに、させる気・・・・」
「脚を大きく広げさせて、ココ、に俺のモノを突っ込んで、喚くほど善がらせてやる・・・君は、この口で俺に強請るんだ・・・そして、俺の蜜をたっぷり注ぎ 込む・・・」
「おれ・・、を、喰う、の・・」

クルクルと円を描く様に花襞を嬲れば、強すぎる快楽に弛緩していた青島の躰は、もうそれを受け止めるしかない。
際限のない快楽に流石に怖がっているのが、室井に縋るその指先に見て取れた。
その白く力む指先をちらりと目視し、室井は青島の汗ばんだ額を片手で掻き揚げた。

「君から私を強請らせてやる」

そして、愛し気に室井の頬を指先で撫ぜていた青島の手をガシッと掴み、止めさせる。

「そういうことはしない方がいい。男を煽るだけだ」

今の青島には何を言っても正確に伝わっているかは不明だった。
とろんとした顔で見上げられ、室井は一瞬の沈黙の後、激しく口付ける。
自ら舌で誘惑してくる青島に、一層激しくキスをし掛けながら、室井は酸素ごと甘い口唇を奪っていく。
溢れた唾液を追って、顎から鎖骨を獣がむしゃぶるように口唇を這わせていく。
透明感ある肌が弾力を伝えてくる。

これじゃ、媚薬を飲まされたのはこっちのほうだ。


*****


「あん! あああ! あっ、あっ、あっ、そこ、あっ、・・っっ」

最早室井の舌と指が触れていないところは青島の躰にはないというほどに、胸を腹を背を、指先も足の指の先まで確かめる。
室井を受け入れるそこは念入りに執拗に舐め解され、ひくひくと蠢きながら、どろどろに蕩けて室井がやってくるのを待ち侘びていた。
痛みよりも快感だけを選んで与えていくため、室井はゆっくりと腰を振る。

「もっと舐めて・・っ」
「やらしいな」
「ああん、それ、そこは・・っ、はぁ・・っ、はっ、ぁあ、」

哀願され、両方の乳首を同時に弄ってやれば、青島は忘我のままに喚いた。
均斉の取れた身体を力ませ、うねらせ、涙をはらはらと流し、更に室井に教えられた強請り方を巧みに駆使して、なんとか快楽を解放しようと必死だ。
自ら下肢に手を伸ばし、慰めようとする。

「黙って、愛されていろ」

自ら股間を擦り上げ、胸の尖りを揉み、腰を振る姿は眼福だった。
底から無限に疼く快楽に戸惑い、室井に晒す裸体に苛烈な羞恥を煽られ、身体も奪われる展開に、思考も身体も付いてきていないのだろう。
青島は泣き腫らした顔で、舌足らずに喘ぐだけとなっていた。

「起きるんだ」

身を起こさせ、対面座位となり、その上に跨らせる。
両足を室井が腕に担ぎあげれば、青島の躰は自身の重みでずぶずぶと室井の雄を咥え込んだ。

「あ・・あ・・、きつ・・・」
「キモチイイのか」
「いい、いい・・っ、ぁあんっ」
「こっちがおかしくなりそうだ」

怖がる気持ちを悟られたくないのか、全部が埋め込まれると、青島が室井の肩に縋るように顔を埋めた。
甘える仕草に、室井の手も柔らかく青島の髪を指に絡ませる。
しばらくそうしていると、青島が軽く身動ぎ、室井の頬にキスをした。
熱に浮かされた瞳が、うっとりと室井を見上げてくる。

「それで、どうしてほしい」
「室井さん、エロ過ぎ・・」
「ば・・か。・・そのまま自分で動いてみろ」
「恥ずかしい・・、でも・・ど、しよ・・・気持ち、いい・・」

我慢ならない腰をもう遠慮なく押し入れ、室井はその奥まで奪っていく。
ぎゅうっと室井の背にしがみ付く青島が室井の動きに合わせてぎこちなく腰を揺すってくる。
なんという夜なのだろう、今夜は。

「感じやすいのか・・」
「ええ・・?」
「少し、反応が強い」
「それ・・っ、ほんとに、クスリの、せい、だと・・・っ、思います・・?」

答えずに、室井は尻を両手で掴み、腰を深く入れた。
煩い口を黙らせるため、室井は覆いかぶせるようにキスを仕掛ける。
深く、浅く、奥まで貪り、舌を絡めとる。
圧迫した腔内を必死に開き、青島が喉を唸らせた。

「んんっ、・・んぅ・・ッ」

片手で青島の反り立つものを素早く上下すると、青島がキスを解こうと呻く動きもキスで動きを封じ、顎を捉えて上向かせる。

「――ッッ!!」

挿入されたまま、青島はまた達した。
室井を咥える肉がきゅうっと痙攣することで、室井自身も小さく呻く。
額に汗を滲ませながら、室井は何とか堪え、青島の顎を乱暴に掴んだ。
 
「君は、俺だけのものだ・・・、それだけ、・・忘れるな」

流石に自分が言っている台詞が狂気染みていることくらいは承知していた。
だが、こんな夜でなければ言えない台詞は長らく胸の内で燻っていた火種でもある。
クスリで全部忘れてくれていい。

「俺がどんなに君に狂っているか思い知らせてやる良い機会だ・・・」
「・・ふ・・ぁ、も・・ぅ、・・し、・・ってるよ・・・」

身体中の神経が剥き出しになっている青島は何処を触っても甘く啜り啼く。
括れた腰に手を回し、再び室井も青島を揺さぶれば、青島もまた室井を咥え込んだ腰を妖艶に上下する。

青島が涙を流し、肌を朱に染めて善がり狂う姿を見下ろして、室井は口唇を噛んだ。
こっちが狂わされる。
零れた唾液の道筋を辿って、舐め上げ、カリッと首筋に歯を立て諫めると、狂暴な言葉のままに皮膚を少し裂いた。

「知らない。おまえは。何も・・・俺がどんなにおまえに囚われているか――まだ分かっていない」
「・・・室井さん・・・だいすき・・・」
「・・・」
「・・すきだよ・・」

不安気なまま可愛く愛を囁く青島の瞳が室井の中の狂気を感じ取る。
こんな薬物に犯された状態で告白されても、それはきっと下薬と共に消えていく。
室井は哀しく笑むだけで、俺もだと心の中で返事した。






happy end

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未発表作品。
室井さんが青島くんに舐めさせたのは違法ドラッグではなく、もう一つサンプルとして持っていた合法のものという裏設定。念のため。

20211021