登場人物はふたりだけ。擦れ違いらぶ。青島くん視点で強引ネタ。
B面とストーリーに繋がりはありません。






望蜀~A面
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無傷の答えなんて、もうないんだ。


黙ったままの影が青島の横に立った。
本店に呼び出しを受け、一課の連中に紛れて膨大な資料チェックを命じられていた矢先のことだ。
類似する事件の中から今回の容疑者の特定につながりそうなものを洗い出す。
あまりに分量が広くて所轄まで借り出されている。
黙々と監視カメラチェックを繰り返す青島の周りも、もう三日寝ていない中年オヤジが人相が変わりつつある掃き溜めとなっていた。
いっそ幻覚すら見えそうな、そんな頃合いだ。
ファイルを指先で弄んでいた青島が、隣に立った影を訝し気な顔で見上げた。

「ちょっと、来い」
「うそ、ぇ、どこ・・・っ」

室井だった。
朦朧とした意識がハッと我に返るころには引き摺られている。
徐に一度掴まれた手首は解けない。
一課連中の好奇の目と、またかの目に晒され、あわあわとするまま連れられて行く。
逮捕術だけでない、剣道に柔道などの柔術に長けている室井に、そう言えば勝てたことなんか一度もなかった。
散乱する資料の段ボールにけつまずきながら強引に会議室を連れ出されると、そのまま室井は突き当りの扉に向かう。

「室井さん・・っ!おれっ、いま、しごとちゅう・・っ」
「許可は取った」

いつの間に!?てか誰に!?
なんかめっちゃ怒ってる・・!なんで?うっそでしょー!
だが、俺の方が嘘だった。俺は怒っている理由にめちゃくちゃ心当たりがある。
何故なら今現在進行形で喧嘩中だったからだ。
でもまさか、職務中に奇襲かけられるとは思わなかった。

「はっ、放してくださいよっ」

まだ怒っているんだからねという抵抗虚しく、扉を開き、先に部屋へ押し込まれると室井も入室し、そのまま更に裏手の扉から外に出る。
なにすんだと青島が息を吸ったのと同時に、くるりと態勢を入れ替えられ、背中は扉に押し付けられた。
そのまま荒っぽく口唇を塞がれる。

「んん・・・っ、んっ、んぅッ」

抗議の呻きを上げるが手首を扉に縫い付けられ、身体ごと圧し掛かるように抑え込まれると、あっと言う間に、口腔への侵入を赦してしまった。

「・・ぅ・・っ、ぅ、ん・・っ」

室井の舌が艶めかしく這い回り、青島の歯列をなぞり、ざらりと舌を巻き上げられる。
馴染んだ男の唾液の味に、勝手に身体は震えた。
そうさせたのは他でもなく、今自分を犯しているこの男であることが、今更ながらに恨めしい。

ってか、うそだろ、本店でこんなことする人だっけ?庁内でしていいんだっけ?だめだよね?!ふっつーに!!

我に返り、持っていかれそうになった悦楽を怺ると、逆に媚びるような甘ったるい呻き声が漏れた。
カッと赤面しながら、凌辱してくる男を引き剥がそうと身を捩る。
肩を引けば胸に囚われ、足を上げれば内股に入り込まれ、力で押し返せば腕ごと抑え込まれて舌を絡め取られた。
縫い付けられた身体は最早逃げ場を失い、すべて先読みされた動きに、室井のキャリア然とした素質を再確認する。

「・・ま・・っ」

待ってください、その一言を言う隙も与えて貰えない。

「んんーっ・・ん、・・・ぅ・・・ん」

めっちゃ怒ってる・・!
けど、俺がワルイの?!

それは数日前のベッドの中でのことだった。
肩を抱かれキスをされ、そういう雰囲気になってソファに押し倒された。
そこまではいつもの流れだったが、あの日は電気を点けたまま盛り上がってしまった。
浩々と照らされる下であちこち舐められ、弄られ、達かされ、ベッドに連れ込まれた後もわざと電気を消してくれなくて
酷く淫らな格好を強いられた。

“会ってもヤってばっかりだ”
“こうでもしないとおまえは応えもしないじゃないか”
“俺にオンナを期待すんなよ!”
“そんなに俺に抱かれるのが嫌なのか”
“知らねーよ、あんたとしか寝たことないんだから!”
“君はセックスを誰かと比べて選ぶのか!”
“そうね、それもいいかもね!”

売り言葉に買い言葉だった。
だが蟠りが解けず、モヤモヤしたまま明け方の官舎を飛び出した。
翌日からずっと本庁に缶詰となって、室井とも音信不通となっている。

「朝にはいない、連絡も寄越さない、電話にも出ない、こちらにも堪忍袋というものがある」

いつもは室井の方が出張だ会議だと、一か月くらい行方不明になるくせに、なんで俺の方は文句言われるわけ?
ってか、でんわ、気付かなかった。やっべ。

「ん、・・だから、・・んん・・っ」

ケータイは多分電池切れだ。本店に缶詰となって以来、外にも出ていない。でもその言い訳も最早させてはくれなさそうだ。
力を込めて腕を捩ってみるが効果はなく、抑え込まれたまま、仕置きとばかりに痛いほど舌を吸い上げられる。
嬲られすぎて、口がじんじんしてきた。

悪足掻きしたところで、大した成果がないのは最初っから知っている。
俺が室井さんに強気に出られないのもあるけど、そもそもこのひとの本気に勝てるひとっていんの?
選ばれし精鋭のエリートキャリアをこんなとこで知らしめる。

甘く絶え間ない刺激に少し力が抜けかけたのを見計らい、室井は青島の両手を頭上に縫い付けた。
多少抵抗は出来そうだけど、したら、更に怒るんだろうなぁ。

ネクタイを解かれ、シャツを引き出され、ボタンが弾け飛んだ。
裾から侵入した指先が、肌を玩弄し、背筋を淫猥に遊び、腰を回って尻を揉まれる。

連れ込まれた先が、取調室だの会議室なんかじゃなくて、せめて建物の裏だったことは幸いだった。
仕事中に無暗に思い出しちゃうじゃんか。
でも外ということはいつ誰が通ってきてもおかしくないわけで。

「暴れると、聞こえるぞ」

ビクッと震えた隙を狙われ、顎を親指で抑えつけられる。そのままより深く室井の舌が侵入してきた。
喉奥まで分厚く熱のある肉を押し込まれ、青島は思わずきつく目を閉じる。
息が苦しく、内から引き出されるざわりとする感覚が膝の力を奪った。

どうしてこの男は昔から、冷静なくせに時々こんなに無鉄砲に解放しちゃうんだろ。
青島にだけ見せるその姿は、愛おしくもいじらしくもあり、危うくもあって、ふと泣きたい気にもさせられる。
好きなんだ。やっぱり。
負けでも罪でも。

ゆっくりと引き離された時には、すっかりと青島の目は潤み、扉に体重を預けていた。
室井が気怠い仕草で、青島の濡れた口唇を親指で拭う。
滾るような瞳の熱さは、仕事のクライマックスで見られるような強さで
ジャケットもずれ落ちた青島とは異なり、一糸乱れぬダークスーツがより一層の背徳感を煽った。
かっこよすぎて。
見ていられなくて、思わず視線を避けた。
強請るように反らされた青島の細長い首筋を、室井が舌でゆっくりと辿る。
高潔で純朴な男の濡れた感触に、青島が身体を竦ませた。

「これから俺がしたいこと、分かったか」

低く掠れた声で問われ、青島はただ自分を壁に押さえ付ける男を見上げた。
ストイックに鍛え上げられた肉体美が、スリーピースのラインを見事に造形する。

どうして自分がこんなことをされているのか分からない。
どうして室井がこんなことを望むのかも分からない。
でも、逃げたいとも思わなかった。
正直な身体がその潔癖な指を欲しがり、崇高な黒い眼差しに射抜かれ、奥から爛れさせる交わりを期待している。
引く気なんかないくせに、こちらに強請らせる男の本能に、しくじったなと青島は舌を巻いた。

「たぶん、わかると思うよ」
「・・・」

ざらつく舌でゾロリとまた首筋を舐め上げられ、紅く咲く所有印が青島の張りのある肌に幾つも散った。
手首を頭上に抑えつけられたまま、片手で腰から下半身を辿られ、意に反して青島の敏感な身体は期待に戦慄きだす。
急速に湧き上がる壮絶な快楽に驚く間もなく、シャツを乱され、無駄のない指で肌を暴かれ、いちいちピクッピクッと震える身体に室井の指も密度を増し
耳朶に乱れた息遣いが吹き込まれて
青島の堪え切れない喘ぎが頑なな口唇を開かせた。

このひとは分かっていない。男に抱かれてまで俺が本当に欲しいものは。

「でも・・・俺はあんたの立場を脅かす真似は、できません。それが納得できないならそれまでってことだよ」
「君に俺が必要ないと?」
「そろそろ俺を、逃がしてくれませんか・・」

室井が軽く歯を立てる。
再び角度を変えて深く荒々しく口付けた。
高級スーツの中で既に硬く勃ち上がった雄を隠そうともせず、淫乱に腰を揺すりながら、青島の股間に擦り付ける。
駄目と分かって吐いた台詞さえ、受け入れてもらえない。
性の本能のままの姿に、室井によって割られた膝を掻きながら、青島は顔を背けて息を殺した。

「いやです・・・なんで退いてくれないんです」

高潔な指先が這い回り、ボディラインを確かめるように弄られ、腰の傷を探り当てた。
ゆっくりとなぞられる。
その度に青島のスーツは乱れ、少しだけ汗ばんだ若い肌が仄かに薫り立った。
熱を帯びた吐息が青島の口から零れていく。悦楽に惑い躊躇う麗しい姿に、室井が更に欲情されていく。

「分かってんのか・・・?俺にこんな決意をさせたのは、おまえだ」
「・・ア・・ッ、ン・・っ」

頑是なく青島が首を振る。
抵抗する素振りを見せたが、キャリアの拘束力はもうその程度では解けない。
ついに、勝ち気な瞳を緩め、青島がまいったなと膝を崩せば、室井は爛熟した顔で、色っぽいと囁いた。

雫の光る眼差しで青島が恨めし気に室井を見上げる。
的確な指が、恨めしい。
こんなところまで堕として穢して、今更無責任になかったことにする方が、都合良すぎるんだろうか。
全然届かない。全然遠いひとだ。最初から。

「ばかやろう・・・」

頤に手を掛けられ、上向かされた視界に映ったのは、ニコリともしていない室井の真黒い瞳だった。

「君は変なところが純情だ。・・悪かった。苛めすぎたな」

柔らかいキスで口唇を塞がれ、濡れた睫毛を舌先で舐められ、青島は成すが儘に瞳を閉じた。
汗ばんだせいで濡れた前髪が狂おしい目元を隠してくれる。

「君が他の男に抱かれたり、他の男に盗られるというのでなければ、それでいい」
「行くかもしれませんよ」

青島の表情を見て、室井が小さく目尻を眇める。
どうやら簡単に見抜かれているようだ。

「それに、君が本当に欲しいものを、私は知っている」

項に濡れた口唇が当たる。
腰は左腕で抱え込まれ、大きな右手はあっという間にバックルを外し終えると、スルリと胸元に忍び込んできた。
拒否を伝えるよりも前に胸元の弱いところ探り当てられて、息が漏れた。
一昨日室井が印した朱痕が熱を帯び始めた躰に鮮やかに浮かぶ。

青島は頼りない瞳で室井を見上げた。
真摯な漆黒は、青島が初めて信じられると確信した大階段と、なんら変わっていない。
知ってるの?
視線だけで問いかける青島に、バレていると視線で室井は答える。

「証が欲しいんだろ?」
「──!」

俺が男に抱かれてまで欲しいものは。

長い時間をかけ息を止めていた青島は、室井の後頭部に覚束ない指先を差し込み、長い首を傾け室井にキスを返していく。
吸い付くような動きに、室井の口唇は薄っすらと悦楽の笑みを滲ませた。

「証、くれるの・・?」
「くれてやる。おまえにだけやる。何も欲しがらないおまえがただ一つ欲しがってくれたものだから、ちゃんとやる」

ベッドの中でも当然受け身であるだけに、多少の奉仕はあっても、基本室井の主導となる。
プライベートの付き合いは、想像以上に室井は大人で、我侭など言える雰囲気ではなかった。
告白も室井からで、青島から好きという言葉を聞いたのはその最初だけなのだが、そこんところの記憶は青島にない。

微かに笑ったような泣いたような、くしゃくしゃの顔で青島は俯くが
その口唇を吸い上げるように室井がキスをする。
指先で首筋を愛撫し、既に解かれたネクタイとシャツをはだけさせ、その中に指先が忍び込む。
的確に這い回る五指に導かれ、青島は身体を赦した。
あの時も。
深く舌を挿し込まれながら歯列を犯し、背骨を辿るように指先を這わされると、青島の躰は小刻みに震えながら反り返った。
その隙に室井が青島の両脚を膝で割る。

「むろ・・っ、くっ、・・はぁ・・っ」
「おまえは俺のものだ。わかったか」

首筋を室井の濡れた息が辿る。
左手で背筋を弄られながら、右手で胸の尖りを嬲られ、態勢を保ちたくて青島は室井の背中に縋った。

「だ、だからって、俺は蝕むようなこと、したくなかったもん」
「そうなんだろうな。だからこそ、俺はおまえを手に入れたくなった。俺を、俺よりも大事にしてくれるから」

嫌われたって、破滅させるよりマシだから――
こびり付いた自分の思考に、青島は小さくはにかんだ。
微かな吐息が室井の襟足を擽り、雄の本能を刺激する。

公にも出来ない、人にも言えない、そんな関係だって分かってる。
俺を捨てていっていい。利用するだけして、伸し上がっていってくれんなら本望だ。あんたの中に俺を残してくれなくたっていい。
だけどせめて、その時には、俺と乗り越えたんだって。あんたの人生に俺がいたんだって。
その証を俺に残していってくれ。

薄っすらと目を開ければ、滲んだ視界に黒々とした虹彩が間近で見つめ返していて、お互い探り合うように絡め合っていく。
力の抜けかかった腕を持ち上げ、青島は室井の首筋に手を回した。
角度を変えて塞がれる薄い男の口唇の動きに任せ、瞼を伏せ、自ら舌を求めていく。
髪を掻き揚げられ、後頭部をくいっと引き寄せられ、青島は甘い息を上げながらキスを強請った。

こんな、威圧感たっぷりの警視庁と霞が関の空の下で、一部の隙もないブランドスーツを着こなし、髪を固めた官僚が
男に欲情して身体を火照らす姿って、なんか、もお、ソーゼツに、エロティックだ。
自分の方は既にベルトも外されチャックも下ろされ、はしたない嬌態を晒していることには気付かず
青島は目の前の雄のネクタイを乱暴に手繰ると、首を傾けて口付けた。

「そんな強請り方、どこで覚えた」

淫奔な表情に変わり、室井を見つめる青島の顔は目尻を染めあげ、雄を巧みに誘う。
喉を低く鳴らし、室井は青島の胸元を捏ねる。
赤く腫れあがった二つの突起は、陽に晒され一層卑猥だった。

反応を始めた下半身を握り込まれ、上下に擦られると、それだけで押し殺しきれない喘ぎが青島の口から洩れていく。
ねちゃねちゃと水音が聞こえる音も恥ずかしく、羞恥に絶えないのに、躰は反応し、室井を挟んで大きく開いている脚も勝手に広げられていく。
ご褒美のように後の穴も刺激されれば、もう顎を反らして青島は啜り啼いた。

「アッ、そこっ、・・やめ・・っ、だめ・・っ、イっちゃう、イくから、やめ・・ろ、マズイって・・っ」

だが室井の手は止まらず、強請るように突き出した胸元を吸いながら、両手で同時に前も後もぐちゃぐちゃにし
痺れるような快楽に押し殺した息が乱れて掠れた。
すっかりと下ろされたスラックスとトランクスが足元を拘束している。
直接陰部を露出している卑猥さは、室井の目を雄の色に変えた。
こんなところで、おれ。

「こ、こんなとこで、こんなこと・・。俺の言い訳、考えてくれてるんでしょうね・・」
「自己保身に走るのは誰の受け売りだ?」
「・・あ・・っ、はあ・・っ、だめ、やべぇ・・っ」

室井の肩に両手を置き、嬲られる快楽に躰も思考も狂い、自ら腰を突き出し、腹筋がヒクつく。
室井の頭の中で俺はまだ誰かに抱かれた設定なんだろうか。
ヤキモチに染まった室井の指先が巧みに青島を昂らせた。

「室井さんっ、室井さん・・っ」

切羽詰まって呼ぶ青島の声は無視され、射精感だけが昂り、自ら足を大きく広げてしまう。

「本当は誰より寂しがり屋で、意地っ張りで、一人で無茶をする。君を監督指導する人間が必要だ。つまり、君には俺が必要だろ?」
「そのッ、監督指導って、セックス、も、入ってるの・・」
「当然だ」

当然なのかよ。
そう思った時、昂りの根元を握り込まれた。
何でって室井を見れば、意地悪そうな雄の顔で、眉間を寄せている額を青島に押し付けてきた。

「さあ。どうしようか」
「どう・・って・・!」
「仕事中なんだろう?あまり席を外すのは感心しない」

根元を握り込まれたまま、先端を親指でぐりぐりと押しつぶされ、強烈な射精感に息を殺す。

「ぁあ・・っ」

どうにかやり過ごすが、室井は今度は胸の尖りをカリッと齧りながら、俺のペニスを上下した。
乳首をちゅうっと吸われる痺れに目が眩む。

「ああ・・っ!・・ぁ・・・」

ビクンと仰け反り、背を反らした格好で胸を尖らせ、思わず声が上がってしまう。
室井はまだ青島の乳首に歯を充てたままで、ニヤリと笑った。
以前、両胸に洗濯ばさみを付けられ、座位で犯され、厭と言うほど感じまくり、腫れあがらせたことがある。
そのことを思いだし、青島はカッと頬が熱くなった。

「どうする?戻るか?」

そう言う聞き方は、感じているんだろう?と指摘されているのと同じで、ますます顔が熱くなった。
一昨日の電気の下でのセックスも恥ずかしかったけど、太陽の下でこんなに嬲られて、しかも感じている姿は、もう羞恥に絶えない。
穴の奥まで室井に見えてしまう。
これも、あの夜の仕置きなんだろうか。
でも、抜き差しならない躰は室井の手に従順だ。
室井の手は再び俺のペニスを上下し、鈴口を押さえたまま何度も何度も先端を揉んでくる。
喘ぎは何時しか歔り啼きに変り、譫言の様に取り止めのない嬌声を上げるばかりだった。

「答えろ、青島」

すぅっと室井の顔が寄る。
耳朶に熱い息がかかり、低く掠れた声で、戻るかと吹き込まれた。
同時にまたしても達しそうな根元をぎゅっと握り込まれる。

「アア・・ッ!」

今度こそはっきりと身悶え、背筋を大きく反らせた。
シャツだけを辛うじて羽織っているほぼ全裸の青島の肉体が、快楽にほんのりと染まり、汗ばんだ艶を持つ青島の嬌態は
壮絶なまでに官能的だ。
当然のように扇情され、視線を走らせた室井の喉を鳴らす。

「イイ・・。さあ、どうする」
「どっ、どのみち無理、だよっ、こんなの・・・戻れる訳がっ、・・あぁっ・・・!」
「なら、わかるな?」
「、れて、―――あんたの、」

口唇が綴る甘い恫喝に魅入られたまま、室井が決して逆らうことの出来ない声が発せられた。
空かさず口唇を塞がれ、軽く下唇を吸われると、それが合図だった。
妖艶に目を眇めた室井が、青島を後ろ向きにさせ、背中に覆い被さった。

「こんなところで強請るなんてヤらしい躰だな」
「でも、すきだ・・」

滅多に言わないその言葉に室井が目を剥いたのが分かる。
次の瞬間、室井は青島の腰を掴み上げると、自らの前を寛げた。
金属音の少しあと、両手で青島の尻を拓かせる。
容赦なく青島の秘花に自らの欲望を宛がうと、雄々しく滾る雄を挿入した。
先端を過ぎたところで室井は携帯用ジェルをぶちまけ、片手で青島の口を塞ぎ、後は一気に串刺しにした。

「――ッッ!!」
「なるべく早く終わらせる」

背後から一言だけいうと、室井は叩きつけるように腰を振り出した。
最初から容赦ない。
ってか、いつからそんなに滾らせてたんだよ、アンタも。

背後から激しく揺さぶられ、視界が定まらない。
こんな雄々しい室井も初めてだ。

「咬んでいい」

節立つ人差し指を口に咥えさせられ、室井が妖艶に腰をグラインドする。
ねちゃりと響く水音に、ジェルが足されたことがわかるけど、擦られる快感に意識は遠ざかる。
すっげえ、快感だ。
情事の最中、室井に縋ったことはなかった。
背中に爪痕を立てることも憚られた。
エリートと呼ばれる高貴な身分の彼に抱かれるせめてものマナーだと思っていたから。
だけど、この場所じゃ。

波打つ動きに怺え、それでも漏れる嬌声に、青島は室井の指を咬んで堪える。
本庁の壁に手を付き、腰を掴まれ、最奥まで穿たれて、身動き取れないのにキモチイとこ強引に擦られて、思考が白濁する。
これじゃ、室井の頂点まで持たない。
少しポイントをずらそうと腰を揺すると、それを見計らったように深くを穿たれ、分かっていたように室井が根元を解放する。
そのあまりの衝撃に青島は達してしまった。

「ぁ・・あ・・・ぁあ・・・」

こんなところで――!!
本庁の灰色の壁に白濁の液が垂れていく。
だが、室井の埋め込まれた怒張はまだ硬く、達している途中から突き上げてきた。

「・・っ!・・っ!」

室井だってベッドの中でもそんなに甘い言葉は口にしない。
黙々と男の躰に没頭し、神経質な性格そのものに、的確に青島の反応を覚えていく。
巧みなテクニックは、青島を酩酊に誘うのにそう時間はかからなかった。

「好きなタイミングで達っていい」

一度達した躰はそこかしこ敏感になっていて、何度も突かれる動きに、爛れた肉壁が小刻みに痙攣する。
視界に映る自分の精液の光景も淫猥だ。いっそ暴力だ。
内股を震わせながら、青島は必死に身体を支えた。
シャツ一枚だけとなり、尻の穴まで丸見えだろうが、もう構う余裕はなかった。

「咬め」

室井が自分のネクタイを徐に引き抜く音がする。
それが指の代わりに青島の口に詰め込まれた。
二の腕を後ろから捕らえられ、仰け反った態勢を強いられ、室井が激しい抽挿に、変えてくる。

「んん・・!!んぅっ!んぅ・・・ぅ!く・・っ!」

ほぼ全裸に近い青島の均整の取れた美しい躰は、筋肉を引き締め、また絶頂に達した。
吐き出した白い液で汚れた壁は、もう言い訳が聞かない。
どして・・っ、今日は何でこんなに感じるんだ?
外だから?本店だから?
なんか俺ヘンな扉開いちゃう・・ッッ。
室井が片手を青島に回し引き寄せると、耳朶を甘噛みして熱く掠れた息を吹きかけた。

「すごく、そそられる」

どきんとして、また滲む視界で後ろで犯す男を見る。
軽く睨めばそれもまた余計に室井を刺激したようだった。
顎を捕られ、キスをされ、青島も必死に舌を絡ませた。
外れたネクタイを伝って唾液が光り、青島の首筋を垂れていく。

好きなだけでは相手を護れない。好きなだけでは愛し合えない。
それでも確かなことは、青島はまだ、室井を愛していていいことだ。

すき・・っ、だよ、室井さん・・っ!
どうなってもいい。もうどうなったって構わない。そう思ってあの日俺はこのひとの手を取ったんだ。

涙目で生きも絶え絶えの青島の目を見て、数多を察せる室井は目尻を細めた。

「わかっている。だから俺に付いてきてくれ、青島」

きっと、このひとは俺の想像以上に修羅場を経験してきて、出世争いで地獄を見すぎてきているのだ。
だから神聖な職場で性行為をしてしまうことにも青島よりもハードルが低い。
いけないことだと分かっていないわけではなく、その程度のことだと割り切れるほどに、身の危険を感じて狼狽えるほど、もう青くはないということだ。

リズミカルに室井が腰を振り、肌を打つ音と粘性の水音に合わせて、青島も激しく腰を振る。

怒ったり泣いたり笑ったり、時には喧嘩して仲直りしたり。腕組んでデートして家族に紹介して。
そんな普通の恋人には、もうなれない。
無傷の答えなんか、もう俺たちにはない。

「へんたい・・、えっち、も・・?」
「君がヤらしいから、ついな」

原罪に満ちた不確かな焦燥を抱えたまま、選んだ使命に身を賭す。
それでも背中から抱いてくるこの男が、唯一の道連れに俺を選んでくれた。
俺も自分の意思で、伸ばされた手を取った。

今更罪を逃れることも、逃げ出すことも、赦されない。
あるのは決して消えない烙印だけだ。

「く・・っ、う・・っ、ン・・っ!ン・・っ!」

シャツのずれた背中に室井が何度も何度も吸い付き、室井が紅い痣を散らしていく。
室井の愛は、こんなにもはっきりと室井の態度に現れる。
それを全身で感じ取った途端、また青島は達した。
イキ続けて、腰の震えも、喘ぐ声も止まらない。
ふさがらない口から溢れるヨダレすら拭えない。
幸せすぎて、溢れて来るものも止められない。

「達く」
「あっ、あっ、イって・・!俺で、いって、くださ・・・っ」

言葉は途中で室井の手で塞がれ、息も止まるほど抱き締められると、室井が青島の体内に熱いものを吐き出したのがわかった。
大量に注ぎ込まれた精は、青島の紅く染まる内股を滴り、地面に落ちる。

室井は青島に挿入したまま硬く抱き締め、しばらくは動こうとはしなかった。






happy end

index

未発表作品。
えっちで喧嘩してえっちで仲直りしただけのお話。
あんまり本店内とか現場とかで節操もなくヤらせるのは踊る二次として抵抗があるので(私が萌えないわけではない)割と新鮮なシチュの珍しい一品です。
攻と受の達するまでの時間差ってのも萌えます。

20211001