シーズン企画
インタビュー形式。さらっと笑い流してください。時間軸は未定。でもなんとなくファイナル後
をイメージ。
平成が終わってしまったためよくよく考えたら平成
に於ける実写邦画歴代興行収入第1位の座は永遠に破られることはなくなったということに気が付きました。
日本実写映画としての記録はこの先良い作品が生まれどんどん記録を塗り替えていってほしいものですが平成のトップの座は確定です。おめでとう!!ずっと好
き!
愛と呼ぶならご自由に

1.新城賢太郎の場合
全くふざけた話ですよ。あんな庶民の何が良かったんだか私には分からない。
なのに結果を見れば一目瞭然だ。
しかしそれも必然性を持たない幸運だと私は考えています。瓢箪から駒に過ぎない。
確かに何かを持っているんだろうとは思いますが、キャリアの立場から言えば所詮児戯、凡人の域ですよ。
なのに口を開けば「青島、青島」って。見ているこっちが気恥しくなる。馬鹿馬鹿しい。
ええ、ただ、そうですね。青島に会って室井さんは変わった。それだけは瞭然でしょう。
いい大人になってから変われることが出来るというのは、安易なことではないし、それを成し遂げた室井さんにも、起爆剤となった青島にも
その意味では敬意を持ってますよ、これでも。
そこで留まらず更なる専有を求めて欲が過ぎる辺りも・・・個人的には嫌いじゃない。
キャリアは常に貪欲な姿勢を持つべきだと常日頃考えていますから。
室井さんには青島が必要なんだとは思う。青島はどうか知りませんがね。
それに、分かっているつもりですよ。室井さんが見せたかったもの、託したかったもの。その存在を重ねて構築しているのであろう頭の中の理想郷をね。
青島という警察に最後に燈された希望の光を。
私もそこに懸けてみてもよいと、馬鹿げたゲームとはいえ、納得させられる。ええ、乗り掛かった舟ですから。
尤も、キャリアというお立場を考え、手を出す――失礼、手を取り合う、とでも言い直しましょう、結託するというのは
少々軽率だったのではないかと。
貴方に護り切れるのかという意味で疑問は残っています。
この封建的かつ閉鎖的空間に生きる中堅の者にできることなんてたかが知れている。
私ならそんな危ない橋はまず渡りませんね。
恋とは愚かなものだ。そんな胡散臭いもので縛られる人生ならば、私は相手を選ぶ。
私ですか。御冗談を。でも魚心あれば水心と言いますしね。
誰かと共に生きるということは、一種の熱情のようなものだ。それがどう増幅するかは意外と大差ないのかもしれません。
心配?いいえ、彼らの未来に配慮なんかしませんよ、私は。
仮に潰れたとして、そこにあるのは、ライバルが一人減ったということと、無名のノンキャリが一人消えていたという事実だけですから。
2.一倉正和の場合
ああ、赤の他人が見たら気付くことはないと思うね。現にほとんどのキャリアは室井と青島の裏の繋がりには勘付いちゃいない。
室井が徹底して教育してるんだろう、あれは。あらゆる面でな。
当然だ。男ならそこまで責任は持つべきだ。
それでも警察学校時代からの付き合いの俺から見れば、その変化は目に余るほどだ。
まず、視線があからさまだ。
顔には出さない男だが、大事にしているのは見てれば分かる。
誘導尋問には掛からないが、その信条は見え見えだ。誰に心頭しているのか、とか、誰に認めたがられているのか、とかな。
口は堅くとも、奴は口下手なだけさ。
その意味じゃよく口説き落とせたなと感心しているくらいなんだ。
それにな、あいつら、セットで見てると面白いぞ。
自由奔放な青島に勝ち気な室井が振り回されている。茹蛸のようになってムキになっているから可笑しいもんだ。
ああ、見た目は涼しいポーカーフェイスをしてやがるよ、内面のカオだ。俺には分かる。
それをな、青島も分かっていて揶揄っている風で、目が合うと意味深な視線を寄越してきやがる。
ったく、そんなところが青島の器量ってやつで、室井を抜け殻にした一手なんだろうが。
この間もな、「ローマの休日」のラストで揉めてたぞ。なんであの映画で揉められるのか、俺にゃ理解できんね。
まったく。出会った当初は色白で世間知らずな田舎モンだったのによ。
線の細い見てくれに騙されたよ。無口ってだけで根っこは暴れ馬だった。それを自分でも分かっていたがどうにもできないでいたってところなんだと思う。
なのに、だ。
基本そんな室井が青島に合わせている。これがまた不思議な光景だよ。平等なのは、惚れた方が負けってことさ。
室井は自分を解放させ制御する術を自分で見つけたんだろう。
強いて言やぁ、・・・そうだな、青島は付き合いはいいし、呼吸もぴったりな辺りムカつくんだが
青島は恐らく・・・いや、これは確証はないがね、・・・今更手を離すことはないだろうが、ここまで室井に入れ込まれちゃな、だが、どこか室井に対して――
未だ隙が見えるんだよな。遠慮とでも言い直そうか。
背伸びっていうかね。追いつけない夢を追いつかせたくないような、そんな理想を室井に重ねている。
そんなんでこの先大丈夫かって言いたい。あ、室井にな。
そして青島に雑に扱われるたび、室井は夢中になっていく。
マゾヒズム?――逆だな。あれはな、隠れサディストだ。支配したいんだよ。究極の独占欲だ。
え?夜の方?・・・馬鹿野郎、ああいうムッツリ抑制系はベッドで豹変するんだよ。
セックスまで奥手でリードされてたら俺は友人を止めるね。キャリアにそんなヘタレは必要ない。
青島は元来モテ男だろう?仕事に熱血でもああいう自信家は、基本ガッツいていない。
だからこそ、室井にゃ丁度良いのさ。
気紛れな青島みたいなタイプから手綱を奪い取れるくらいじゃないと、そもそもこの恋に足を踏み入れる資格もないって話だろ。
ああ、応援はしない。クビを突っ込むだけ馬鹿を見る。身近に面白いネタが転がってたら味わうのがオツってだけさ。
3.A刑事の場合(警視庁捜査一課所属。階級:警視正)
ああ、すみません。匿名でお願いいたします。
私の所属しているところは反勢力と申しましょうか、まだ根強い派閥に属しておりまして
現在の風潮に悲観的な意見を持った老翁が多く。
いえ、私の一存ではなく、東大のゼミ繋がりで連綿と続く先輩からきつく言われているんです。はい。
室井慎次警視監。はい、よく存じあげておりますよ。あれだけのトップクラスですから。今や警察の者で知らない人間はいない。
彼は1998年11月のあの副総監誘拐事件から頭角を現した俊傑でしたね。
それまではパッとしない男だったのに、あれを境に彼の名はよく耳にするようになった。今や次期副総監とまで噂されているエリートキャリアだ。
だがその経歴は実にユニークだ。
東北大出身という風変りなハンデを背負い、どちらかといえば軋轢を持つ異彩で、賞罰も盛んだ。
2005年の新宿署の不祥事から、更に親密感を削ぎ落し、プライベートまで徹底してクリーンに仕上げられている。
何が彼をそんなに鉄壁にさせるのか、そして周りが彼を祭り上げるのか、実に奥深い闇に包まれていて、まるで彼そのもののようじゃありませんか。
私は当時を知る人間ではありませんがね、その後ろには高名な後ろ盾がいるとか、無名のノンキャリが影武者となっているだとか
様々な噂が絶えない男ですよ。
いない筈はないんです。
人は一人じゃ生きていけないし、ここは一人で戦うにはあまりに苛酷な場所です。
でも室井慎次という男はそれを一切悟らせない。
側近の部下でさえ知らないという話です。
ですから、そんな不気味な男を信じられますか?と。
私個人の意見じゃありません。上で燻り甘い汁を舐める定年を待つだけの連中の戯言ですよ。
今の警察は大きく言ってその二派に割れているといっていい。
それを今後、室井慎次という寡黙な男がどう統制を取っていくのか、楽しみですね。
いえいえ、表立って彼を支持する人間は今もいませんよ、どう転ぶかまだ誰も読めていない。
彼の孤高な立場はそれだけ不安定ということです。
ですが、隠れファンは多いでしょうね。みんなどこかでそんなロマンティシズムを求めているんですよ。
漫画だってハリウッドだって、ヒーローものは王道だ。
私だって密かに彼を支持している一人ですから。
それにしても――彼の相棒とやらは一体誰なんでしょうね?
4.沖田仁美の場合
はい、室井さんは今も尊敬する上司です。私は彼の下で働けることに誇りを持っていますわ。
室井さんの描く確固たる未来像は信頼に値するものであり、もっと早くに評価されるべき人材であったし
今ももっと強かにアピールすべきことでしょう。
それは私の仕事だと考えています。
新城さんもまた、室井さんを支える有能な片腕ですわね。一見水と油のような関係に見えますが、男と男の仲なんて分からないものですのよ。
噛み付き、いがみ合い、貶め合って、そのギリギリの均衡の中で確かなものを実感する。
あれはあれでバランスが取れているんです。
・・ああ、分からないと言えば――ふふ、みなさんは知らないと思いますが、室井さんはもう一人、信頼に足る方がおりましたわね。
・・やだ、これは内緒ですのよ。私は室井さんの足を引っ張るような趣味はありませんし、口が堅いのでお教えすることはありませんわ。
でもね。
室井さんがその方を見る時、こう、視線をじっと向けてから静かに反らし、背を向けた後、密かに浮かべる表情をご覧になったことあります?
人知れず咲き誇る小さな小さな変化ですけど、それはもう、言葉ではない何かが溢れていますの。
ええ、何かを確信に導くようなね。
あまり見せることはないのですけど、私も一度、拝見したことがあります。
圧倒されて、人の目を奪うだけの、壮絶で崇高なものでした。
掛ける言葉もなく、挨拶を交わすでもなく、ただ背中を向ける。
その仕草は、恐らく背中を見せることで伝えているものがあるんでしょうね。
それこそ口では伝えきれないほどのたくさんのかけがえのないものがそこには封じ込められていて、大切で、
その真っすぐで高潔なお背中を預けることで、室井さんもまたその絆を確信しているのだと思います。
多くのものを背負い、これからの国を代表する場所で益々晒される冷たい風に立ち向かう男の姿です。
そっと寄り添える相手がいるというのは
室井さんが唯一自分に戻れる場所でもあるのでしょう。
二人きりの時には、どんなお顔を見せられているのか、興味ありますわね~・・・あらやだ。忘れてください。
素敵なご関係ですよね。
ですから、室井さんはその方を失うわけにはいかない。手放すはずもない。最後まで護りぬく義務と決意がある。
必死に隠され、誰にも告げられておられないのは、そのためです。
巡り合えた、それだけで、それもまた才能に値すると私も思います。
私もいつか、そういう方に巡り合いたいものですわ。
5.真下雪乃の場合(旧姓:柏木)
正直、私は反対です。室井さんがどれだけ優秀で、とか、どれだけ権力を持とうとも、本庁の立場で青島さんを護り切れるとは思いません。
いざとなったらキャリアがまず保身に走らないと国家が崩落するからです。
なのになんで青島さんを手放さないの?って思います。
愛しているなら、身を切るべきだわ。中途半端にきれいごと言ったって、傷つくのはこっちなんですから。
男の人って幾つになってもそういう子供染みた夢を見たがりますよね。もっと現実に生きないと。
いいえ、直接言ったことはないです。だって、やっぱり・・・青島さんが室井さんがいいって言うんですもん。
言われたことはないんですけど、なんか、そうなのかなって。あの二人。
あの顔見たら、何も言えなくなっちゃう。
だって、マシュマロが蕩けたような顔して室井さんの話をするんですよ!
今どんな顔してるか自覚してる?って聞きたいくらい。
言ってることも半分は苦情というか駄目出しなんですけど、よくよく聞いているとオチは結局自慢話で。
何これ、私、惚気話聞かされちゃってるの?って。
あ、だから私、青島さんじゃ埒が明かないと思って、室井さんには言ったことあるんですよ!
青島さんを誑かすのは止めてって。本気ならもう構わないでって。
え~・・?そしたら~・・?
そしたら・・・まあ、「ちゃんと考える」ってお返事はもらえたんですけど・・・・。結局あれから随分経つけど二人の関係に変化があったわけじゃないです
し。
別れようって室井さんから切り出したら、青島さんは絶対ごねないと思うんですよ。
だって青島さんってそういう人じゃないですか。
一番に考えるのは相手の幸せであって、相手の気持ち。室井さんの将来を考えちゃったら余計、そうだよねって納得してあげられる人なんです。
それがないってことは、だから、つまり、室井さんは未だに青島さんにそれを告げてないってことで・・・。
そんな自分勝手な気持ちで青島さんに触れてほしくはないですよ?・・・なんですけどぉ。
もぉやんなっちゃうな、でもね、私が「別れてあげて」って室井さんに告げた時、室井さん、しばらく考え込んだ顔して、全然私なんか見えてなくて
随分と長い沈黙があったんですよ。
その沈黙がね・・・。
すっごく怖いくらいの渋面で、ちょっと、鳥肌が立つくらいでした。
その顔見て、ああ、な~んか、青島さんのこと、本当に好きなんだな~って。
その沈黙が長ければ長いほど、即答できない彼の葛藤みたいなものが透けてきていて、言葉では何も言わなかったんですけど
大事なんだな~って伝わっちゃって。
それ見せられたら、なんか、私が好きな者同士を別れさせようとしているだけの意地悪女になった気分で・・・まるで悪者なのよ私が。
そんな風に私が感じたくらいですから、ずっと傍にいる青島さんがどう感じるかなんて明白でしょう?
正直、今も私は反対ですよ。私だって青島さん大好きですもん。
でも私も色々修羅場を経験してきましたし、そういう人のアウトローな部分、見せられちゃうとね、人が人を求める行為自体が尊いものに思えてきちゃうもんな
んですよ。
それがどんな形であれ。
室井さんのことは、今は、ほんのちょっぴり、信じてもいいかな~って感じです。
警察のトップも見えてきたし、ここらで男を上げてほしいですね!
もぉぉ!泣かせるようなことしたら絶対許さないんだから!
でもね~、答えはあの二人にしかないのかな~って、今は思ってます。
6.恩田すみれの場合
なんかね、もう理屈じゃないのよ。
え?やだ、聞かされてはいないわよ。青島くん、隠すの上手いし人一倍演技派だし、そこに酔ってる自分がいる人だからね。
あ、室井さんは忙しい人だから会ってない。そう言えば随分と顔も見ないけど、生きてんの?
ん~、気持ちの面では複雑なの。だって、その、ほら、あたし、まだ青島くんのこと、好きだから。あ、ここオフレコにしてね。
でも、傍にあることだけが愛じゃないんだな~って、気付いちゃって。青島くん見てるとさ。
男として、女を抱きたいと思わないのかなとか、女にムラムラして反応する部分、あるでしょとか、青島くん見てると言いたいことは山程よ。
時々辛そうに考え込んでんのも見てきたしね。
何よりこんな傍にこんなイイ女がいるのに!
ただ、こういう職業をやっていると、その更に一線を越えた向こう側って世界があることも、身に染みているのよねぇ~。
そこは理屈じゃないのよ。
で、青島くん見てたらさ、どれだけ室井さんのこと信頼してるのかとか、尊敬しちゃってるんだなってことが、言葉の端々から感じ取れるわけよ。
いちいちそれに反論してるのも面倒になってくるし、こっちもそんな暇じゃないし。
ああ、もう、室井さん大好きなのね、それでいいわって感覚?
あたしのことも見てよ!って時々思うけど、でも相手が室井さんじゃね~、あの眉間のシワを見ただけで萎えるわ。
青島くん、よく見てて平気よね。
おかげ様で、あたしン中、要らぬ室井情報てんこもりよ!
青島くん、警戒しちゃってるのか、滅多に室井さんのことも口にしないんだけど、それでも聞くと最近は答えてくれることもあって。
どうでもいい室井さんの昨日見たテレビとか一昨日買ったコンビニグッズとか知ってるわよ!ほんと、どーでもいいっ!聞いたあたしがバカ!
おまけに、撚れたシャツの間から肌に残されたものなんかチラ見しちゃった日には、あたしの目もばかばかっ!
この間なんか、駅で電話してんの見掛けちゃったんだけど、その会話、立ち聞きしなきゃ良かったわ。
ええ、あれはデキてるわ。絶対!
ん~、てか、あたしが気になっているのは実は青島くんじゃなくて室井さんの方。
室井さんのこと、一番分かっているのは青島くんだと思うの。室井さんはそれに甘えすぎ。
少しキャリアとしての自覚、足りないんじゃないかしら?
迂闊に痕跡残すようなヘマはしないとは思うけど、ギリギリのラインにキスマーク付ける辺り、どんだけ自己主張強いのよって感じで。
男の人って、ゴムを付けないとか、ほんとベットマナーがなってないっ。
あ~・・でもそんな周りがごちゃごちゃ言うようなこと、全て飲み込んじゃって背負っちゃったような顔しちゃってさ!
なによ、青島くん手に入れたのに嬉しくないの?って小一時間問い詰めたいわ。
ずるいよ。あたしが欲しかったもの全部独り占めしたくせに。
――青島くんはさ、ああいう人だから、どうやったら室井さんを護れるかを考えたら、きっとかなり危険な結論を持ち出すような気がするの。
そんな風にお互いを護り合うっていう感覚は、男女間には馴染まない感覚よね。
対等な立場で同じ責任を負い合うって、青島くん、そういうことがしたかったのかな~って思うと、あたしにはもう何も言えなくなる。
泣けてくるなもぉ。
青島くんがそういう生き方を選ぶっていうんなら、室井さんにはそれ以上の覚悟を持って青島くんを幸せにしてあげてほしい。
室井さんを幸せに出来るのは青島くんなんだろうけど、室井さんは青島くんを幸せに出来るだけの力を付けてから手を出したんでしょ。そう信じるしかないじゃ
ない。
じゃないと、あたしが奪いに行っちゃうんだから。
7.室井慎次の場合
人は、能力の欠けた部分を補う半身なのだろうと言うんだが、違うんだ。
私のキャリアとしての資質など、どうでもいい。仮に首を切られたところで、どうでも良くて、青島との約束だけが大事で、出世が二の次になって。
ああ、こんなことを言うと青島に怒られるんだが。
それに警察トップに立つことは、この世界に入った時からの私の夢であり目標だった。
そこに今も強い執着と確信を抱いている。
ただ、そういう個人的なこととは別に、一心に私を認め、必死に向かってくるいじらしさが、可愛いと思ったんだ。
そこに余計な感情は何もなくて、ただ純粋に、欲しいと自覚した時、そのリアルさはそれまでの比ではなかった。
彼が傍に居たら、どれだけ美しい世界が見れるだろうって思ったら、止まらなくなったんだ。
笑うか?いや、笑われることも承知の上だった。あの頃は。
こんな何もない男に何も与えてやれないのに、何かが足りないと胸の奥が悲鳴のような渇望を叫んでいた。
恐る恐る差し出した私の手を震える手で握り返してくれて、見えない未来を誓い合った。
その日の泣き出したいほどの感情が、君に分かるか?
怯えて素直になれない私には、常に私の一歩先を行くアイツじゃなきゃ駄目なんだ。
どうすれば笑ってくれる。どうすれば選んでくれる。どうすればアイツを満たしてやれるのか。
考える傍から奪うばかりで、情けなくも、答えには未だ辿り着けていない。
――ああ、立場上の偏見からは、護り切るつもりだ。
私のためじゃない。私のために傷つく青島のためだ。何が何でも隠し通すし、何が何でも泣かせない。
崖から飛び降りるつもりで飛び込んだ恋路だったが、今は違う。
きちんと護れるだけの甲斐性と、支えられるだけの力を得る。そのために手段は選ばない。そのツールの不浄は吟味することじゃない。
ああ、だが、信念に恥じない選択をすることはここに誓おう。
笑われないよう、排他されないよう、戦っていけると思う。
私をそうさせてくれたのも、青島だ。
その意味ではあれは、私への天からの使いに他ならない。ああ、ここは内緒にしおいてくれ。知れたら後でどう揶揄われるか分からない。
アイツは口達者で、私をおちょくっては遊んでいるんだ。
この間もプリンを食べてたら笑われてしまった・・・(赤面)
絶対舐められてる。絶対私のことを融通の利かないつまらぬ男だと思っているんだ。忌々しい。
男の沽券にかかわる由々しき問題だ。
――すまない、夜の営みについてはプライバシーに関わることだから控えさせてもらう。
ただ、あれは私を誘惑する達人だとは付け加えておく。
ただ、相応の理由で青島が欲しいわけじゃない。
男として、惚れ抜くと決めた。だから唯一のか細い一本の糸のような繋がりを、断ち切ったんだ。
決して手に入らないものだと知っていた。心より先に身体が欲しがり、爪の先まで欲しがる醜いエゴイズムなど、知られたくない。
目が眩むほどの飢餓と快楽を混ぜた陶酔の世界を歓喜と欲望が暴走し、こんなにも狂いそうな怪物のようなもの巣食っていたんだとの自覚は
今でも空恐ろしいとすら思う。
ただ可愛くて愛しくてたまらない。
こちらばかり惚れさせられて悔しい。そしてただ青島しか見えなくなった自分が、恐ろしい。
あの清冽な眼差しの前に身を晒した時、そこにどれだけ残酷な痛みと甘美な苦みを孕んでいるかなど、青島は知りもしないのだろうが。
その恐怖を抱き、決意させられたとでも言うべきか。・・アイツといると色んな覚悟を強いられる。
それがまた、嫌じゃない自分に気付かされる。
あれが自由であってほしい。それが私の唯一の願いだ。
こんなにも幸せにしてもらって、この先私は何を返してやればいいのか分からない。
飽きるほど傍に居て、どんな未来が来ても、一歩ずつアイツの歩幅が馴染んで、私の好みが交じり合って、そうして歩いていけたら、それでいい。
8.青島俊作の場合
え?コレ、何のインタビュウ?・・・室井さんについて?
――悪いけど、答えらんないよ。帰ってくれる?
んもぉ、しつっこいな、なんなんだよ・・・・・え?・・あ。そう。室井さんも答えたの?
まあ、なんていうか、変人の域のひとだったよ。
口を開けばお堅い話が飛び出てくるし、私生活は未だ謎だし、こんなんに付き合う女が良くいたなって感じ。まあ、数は俺より少ないみたいだけど。当然だっ
て。
顰め面で愛なんか囁かれてみろ、何の呪かと思うだろ。
いっぱい色んなモン抱えちゃってんだな~ってことは直ぐに気付いたけど、そんなのは日本の平均的なサラリーマンだって条件は一緒だ。
裁けない辺りが不器用なひとなんだなって思ってたら、口まで不器用ときた。
そりゃ誤解も擦れ違いも起こるに決まってる。
舐められたら噛みつかなきゃ生き残れないし、周りから孤立してんのも自己責任だし、仕事を回すのも能力のうちだ。
このひとには理解者が必要だけど、ママになるつもりはない。
なにこれ、俺がそこまで解読しなきゃだめなの?って思ってた矢先だったかなぁ。
あ~、やられた~って思ったのはさ、それでも立ち上がる雑草魂ってゆーの?
キャリアなんてみんなプライドの塊で、自己利益しか口にしないのばっかだけど、そんな中で、打たれても打たれても立ち上がる姿、見ちゃったから。
武士なんだよ、いわゆる。
エリートキャリアの中で東北大っていう出身派閥の負い目も、そういうのって普通自慢になるのにここでは毒だ。
偏見と好奇の目で見られて、それでも堂々と胸を張って渡り合おうとする、あの後ろ姿。
今でも覚えてる。
気難しい顔をして、この世の不幸を一心に背負っちゃった顔をして、蔑まれて、叩かれて、それでもこのひとは、後ろを向かないんだ。
そう思ったらもう、目が離せなくなっちゃった。
ハラハラっていうのも確かにあんだけど、とにっかくかっこよくって!!
この人なら絶対逃げないんだなって純粋に信じられた。
出来るか出来ないかじゃない、やるかやらないかが大事なんだ。
ヤル気、あんなら付き合ってやろうじゃん、って、この人と心中する決意は割とすんなりできたよ。
その後、マジに告られてびっくりしたのはまた別の話なんだけど、その頃には俺ももう頭ん中も胸ん中も心ん中もあのひとでいっぱいになってて
それが恋とか愛とか自覚する前にすっかり忘れられなくなってた。
切って切り離せなくなっていたのを、頭脳戦は得意の室井さんが見逃してくれるはずもなく、怯んだ隙を突かれて。
目を反らしたら何かとんでもないことが起こってしまう予感がして、二人の間にあった危うい均衡が、その時、崩れた。
やっぱり変人の域の人の行動ってわっかんね。
ま、そういう俺も抗いきれなかった弱さの奥で、今この一瞬だけだからって思った甘さは――言い訳か。
あの気高くて性なんか知りませんって気難しい顔してる室井さんがだよ?!俺を押し倒して電気しょってる映像は未だに衝撃的。
えろかったよ~?もう言葉じゃ言えないくらい。
一度吹っ切ってしまった室井さんの迫力って、止められる人、いないんじゃね?
エリートの道進んで来たひとって、どこでああいう情報手に入れんのかね?
えっちぃこと、俺ら庶民より知ってるよ。知識だけは増えるんだろうなぁ・・。
色々試されちゃって・・・、ぇ、あ、しまった、・・・ばばばばかやろ、言えるわけないだろ・・ッ。
で!それからも色々あったけど、二人で歩いてこれた道は俺ん中では極彩色。
大人の分別も、行儀良い脈絡も脱ぎ捨てたような室井さんの、欲望だけに染まった瞳で射貫かれた時の泣きたいような気持ちを、俺は忘れない。
時々子供みたいに駄々こねて頑固になって一人で背負っちゃうのも、室井さんの愛嬌でしょ。
今は足枷にならないよう日々注意してるって感じ。
なんだかんだ言って、あのひと、あれでもキャリアだから。バレた時のリスクって計り知れないんだよね。
最初の頃はいつでも身を切れるようしてた俺のかわいい覚悟も、そんなのキャリアの室井さんを騙し続けることなんて出来るわけがなかったんだよ。
あっさり見抜かれて、すっげー叱られて、それからはもう室井さんにおまかせしてる。
ちょっと不満だけど、それで丁度良いみたい。
願わくば。
どうか、どうか、そんな俺たちの未来がこのままずっとずっとずぅっと続きますように。
interview 2019.5.19 都内某所

1は、新城さん。心の奥では室井さんを認めているのに、こういう言い方しか出来ないのが新城
さん
2は、一倉さん。彼にとって室井と青島はおもちゃ。
3は、モブ。外野から見た室青。
4は、沖田さん。女性視点。女はするどいのです。
5は、雪乃さん。一番現実的。シビア。そして一番行動的な女。
6は、すみれさん。恋する乙女。そして女の子はやっぱりシビアなのです。
7は、室井さん。ぞっこん。
8は、青島くん。
『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』2003年公開/興行収入173.5億円
実写邦画歴代興行収入第1位 邦画歴代興行収入第8位(平成)