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1.最後の恋






e11最後の恋
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最初に思ったのは、何故青島がここにいるのかということだった。
私はとっくに捨てられた男だった。
なのに招待状もない室井の結婚式に、彼はひっそりと来ていて――

「青島ッ」

思わず叫んでいた。
呆然とする置き去りの花嫁。動揺する参列者。教会の鐘が鳴り響く。
どよめく人垣を掻き分け、押し退け、室井は手を伸ばす。

「な、なに・・あんた、」
「君はおとなしく私に連れ出されればいい!」

そもそも俺は婚姻に夢を持ちすぎていた。周りはみんな割り切っていたじゃないか。
俺たちの関係は“いい縁談”に負ける程度のものだったのか。

驚く群衆の中央で引き摺るように濡れる彼を連れ去り室井は式場に背を向ける。
二度と振り返るものか。
きっとそれでも手を離す決断など青島はとうに覚悟をしていて
すべてを賭けて青島は室井に人生の勝負を挑んでいた。
他の誰か、ではない、室井に、だ。
身も心も未来も差し出せるほど、青島にとって室井は惜しくない男だった。
何も残してもらえなかった。
そんな彼に現れた一雫は、抗う青島を力の限りに抱き締める。

「突き離せッ、突き放せばいいッ、それが出来ないならおまえの本音くらいッ、・・告げてみろ・・ッ」

馬鹿野郎・・・ッ!
心の中であらゆる悪態を吐きながら室井は身体を入れ替え青島を芝生に組み敷いた。
散り散りの蒼い芝生が教会の十字架に飛ぶ。
愛の調べは遠く澄んだ鐘の音に、取り返せない未来を偲ぶ。
気付けなかった自分を詰った。
取り返せない時代を憎んだ。
それでも俺には恋だった。
縋るような青島の指先が、ただ強く室井のタキシードを握り返していた。
20240131









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2024/01/31~